歩む




月日が経ち、雄人はすくすく成長した。初のお宮参りは私のお世話になっていた■■神社に行き、三人で撮った写真は、写真立てに入れてテレビ台の二つと並べて飾ってある。建人さんと相談して、結婚記念日は式を挙げたハロウィンの日に決めた。初の結婚記念日に私はまた魔女の仮装をして、建人さんも仮装用のマントを付けて、雄人はカボチャの仮装をした。雄人は手が掛からずとってもいい子だ。そうそう、その日は建人さんと二人でカスクートを焼いてみた。あの店の味とまではいかないけど、中々いい感じにできたと思う。記念日には毎年カスクートを焼いて食べようって、二人で決めて、一緒にパンプキンパイも焼いた。二人で過ごせた時間は短かったけど、今は三人の時間がとても楽しい。建人さんもそうだといいな。最近は建人さんの任務で出張する機会も元に戻り、二三日家を空けたり、一週間家を空けることもある。ちょっと寂しい時もあるし、一人で雄人の面倒を見るのが大変な時もあるけど、彼のご両親や私の祖父母が何かと手伝ってくれている。出張の日も建人さんは必ず連絡をしてくれて、時間があるときは必ずテレビ電話をした。

『小春、今日はなんともないですか。』
「大丈夫です。雄人、ほら見てパパだよ?」
『雄人、いい子にしてましたか。』
「いい子だったよね?今日は少しだけお座りしたんですよ!」
『それは私も見たかった。』
「パパにも早く見て欲しいねー?ふふ、今日撮った動画、後で送りますね!」
『ええ、お願いします。』

本当に稀に、建人さんから怪我をしました、と連絡が来る時がある。家入さんの治療を受けて帰ります、と。そういう時は不安になる事も多くて、でも絶対に建人さんは帰って来てくれる。怪我をした日は必ずどこを怪我したのか見せてもらうようにした。家入さんのおかげで傷は残らないけど、建人さんは命を懸けて人の為に戦っているんだと、忘れないために。人の為に命を懸けて、心も体も痛い思いをして帰って来る建人さんを、少しでも癒せたらといつも思う。だから私は、精一杯の笑顔で彼を出迎えるのだ。

「お帰りなさい、建人さん。」
「ただいま、小春。」



...




雄人が一歳になった。そして初の節句だ。勿論仕事は五条さんに押し付けて休みを取った。あの人はよく人に仕事を押し付けてサボると伊地知君が泣いていたから。雄人を連れて近場の撮影スタジオに向かう。雄人は大人しくされるがままだった。金太郎をモチーフにした衣装を着せ、五月人形の前に座らせる。小春が離れると少しぐずりだしたが、雄人の好きなおもちゃを見せながら写真を撮ってもらった。

「雄人ー、こっち向いてー?」
「雄人、ほら、あなたの好きなクマさんですよ。」
「ふふ、建人さんの口からクマさんって、可愛いですね。」
「…クマですよ。」
「建人さん照れてる?…あ、雄人笑った!」

雄人は私たちの会話がまるで分っているかのように笑った。小春と雄人、二人はいつも笑顔が絶えない。そんな二人を見ていると、私もつられて笑顔になるのだから不思議だ。撮った写真を確認し、現像する写真を決めるとスタジオを後にした。この後は私の両親と、小春の祖父母と会食だ。皆で雄人を囲み、写真を撮った。雄人の誕生日という事もあり、雄人へのプレゼントも貰った。会食が終わり家に帰ると、どっと疲れが押し寄せる。小春も雄人も疲れているだろう。少しソファーで寛いだ後、雄人を抱き上げた。

「小春、雄人をお風呂に入れますから、少し休んでください。」
「でも建人さんもお疲れでしょ?」
「私はまだ平気です。」
「じゃあ、二人で準備しましょう!」

小春はそう言うと、浴室へ向かう。私も雄人の入浴の準備をする。呪術師という死と隣り合わせな仕事をしている私は、出来る限り家族の為に過ごしたい。小春もきっとそう思っているのだろう。何かをするときは必ず二人で一緒に行うことも増えた。勿論、雄人の事も。

「建人さん、雄人寝かしつけたら久し振りにどうですか?」

小春がそう言って浴室の扉から恥じらうように顔を覗かせ、私を見つめた。その姿はとても愛らしく、すぐにでも掻き抱きたい衝動に駆られる。

「ええ、私もあなたに触れたい。」
「ふふ、じゃあ早く雄人寝かせましょう。」
「そうですね。」

二人で雄人を風呂に入れ寝かしつける。私達も交代で入浴を済ませると、ベッドに入った。出張続きで中々触れられなかった小春の体は、変わらず温かくて柔らかい。体つきも出産前と変わらず細いままなのは、きっと産後も彼女が努力していたのを物語っているのだろう。細い腰を引き寄せて覆い被さるように彼女の中に挿入ると、悦びに震える体も更に愛おしく感じる。

「小春、愛していますよ。私の小春。」
「建人さん、んっ、私も…、愛してる。」

何度も舌を絡めるキスをしながら、ゆっくりと腰を動かす。その度に私に吸い付くように絡む彼女の中が堪らなく気持ちがいい。次第に早めた律動に小春の可愛らしくも艶のある声が響いた。



 


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