花をひとつかみ




「ねえ七海〜、」

前世の記憶を覚えている人間は、この世界にどれだけいるのだろうか。

「…五条先生、きちんと敬称をつけてください。」
「え〜、僕と七海の仲じゃ〜ん。」

『七海建人』…それが私の名前だ。そして、私は前世でも同じ、『七海建人』だった。私の肩に腕を引っ掛けるこの男も、また同じ。前世も現世も『五条悟』という男だった。私と五条さんが勤める都内の私立高校には、私達と同様に前世の記憶を持ち、前世と同じ姿と名前で過ごす人間が複数いる。この学校には『夜蛾正道』、『夏油傑』、『家入硝子』、『伊地知潔高』、『灰原雄』、『五条悟』、そして私、『七海建人』。皆、前世では呪術師という存在だった。…伊地知君は少し違いますが、まぁ、それは置いといて。まるで何かに引き寄せられたかのように、私達はこの学校で教師をしている。

「それよりさ、新入生の名簿見た?僕ビックリして思わず笑っちゃったよ!」
「言われずとも確認済みです。」
「…やっと会えるね、小春さん。いや、今は小春ちゃんか。」
「…そうですね。」
「七海ぃ〜どうする?JKの小春ちゃん絶対可愛いよ?そんでもって絶対モテモテだよ?くぅ〜最高!僕口説いちゃうかも。」
「ひっぱたきますよ。それに、教師が生徒に手を出す事は、」
「あ、いたいた。悟、七海、入学式の最終リハーサル始まるよ。」
「…フー、夏油先生、敬称をつけてください。それと、名前ではなく苗字で呼ぶ事。生徒達が真似します。」
「細かい事を気にするなよ七海、私達の仲だろう?」
「あなた達は相変わらずですね。」
「…なんでキレてんの?」
「さあね。それよりほら、夜蛾校長がお待ちかねだよ。」

3人で体育館に向かう。並べられた大量の椅子と、教員、来賓者用の長机、壇上には年度の書かれた入学式の垂れ幕、そして、飾られた鮮やかな花。春の初め、そして新生活の始まりを意味する入学式で、私は彼女と…前世の妻であった『橘小春』と再会する。この世に生まれて、私は前世の記憶を持ったまま橘小春というただ1人の女性を探しながら生きてきた。そしてついに、

「あ、五条先生、夏油先生、七海先生、こちら、新入生代表挨拶を務めます、橘小春さんです。」
「初めまして、橘小春です。よろしくお願いします。」
「小春ちゃんよろしく〜。あ、僕は五条悟ね。数学担当だよ。」
「夏油傑、古文担当だよ。よろしくね、小春ちゃん。」
「改めまして、私は伊地知潔高です。歴史を担当します。」
「…七海建人です。化学を担当します。あなたのクラスの担任です。」
「そうなんですね!よろしくお願いします!」
「…橘さん、」
「はい?」

小春は私を見上げて首を傾げた。橘小春、前世と同じ名前と容姿。しかし彼女は、私を見ても、

「そ、それでは橘さん、新入生代表挨拶の手順を説明します。」
「はい、伊地知先生。お願いします。」

伊地知くんの後を追う小春の背中を見つめた。小春は…、

「小春ちゃん、覚えてないっぽいねー。」
「私としては覚えていない方が助かるね。」
「傑は小春ちゃんに碌な事してないからね。」
「ははは、」
「笑い事ではありません。夏油さんが小春にした事、私は今でも根に持っていますから。」
「睨むなよ七海、男前が台無しだ。」
「そう言えば小春ちゃんと一緒に悠仁も入学だってね。これまたビックリ。」
「虎杖悠仁か。私は直接会ったことは無いけど、あの喋るメロンパンのせいで彼とも因縁深い。嫌われないといいけど。」
「悠仁なら事情を説明し直せば大丈夫っしょ。2人共七海のクラスだし。それにしてもJK小春ちゃん可愛い〜♡」
「ああ、制服をキッチリ校則通りなのがまた唆るね。ああいう真面目な子程揶揄いがいがある。」
「お2人共、今後は小春のことは名前で呼ばないでください。それと小春を卑猥な目で見ないでください。教育委員会に訴えますよ。」
「おやおや、」
「まあまあ、」
「相変わらずの独占欲なのじゃ。」
「現世でも旦那のつもりなのじゃ。」
「ひっぱたきますよ。」

入学式が始まり、式典は順調に進んだ。

「新入生紹介。」
「1年A組担任の七海建人です。出席番号順に、名前を呼ばれた生徒は大きな声で返事をして、起立してください。…虎杖悠仁君。」
「応!!」
「…虎杖君、返事は応ではなく、はい、でお願いします。」
「あ、ハイ!ナナミン!」
「七海先生・・です。」

体育館内にクスクスと笑いが起きる。彼も変わらないらしい。虎杖君は泣きそうな顔で私の顔を見て笑った。私は彼の変わらない姿に小さく笑みを返して、誤魔化すように眼鏡を押し上げて次の生徒の名前を読み上げた。そして、

「橘小春さん。」
「はい!」

小春の名前を読み上げた時、私の胸は締め付けられた。愛しい彼女は私に目もくれずに、ただ真っ直ぐ壇上へ視線を向けていた。

「…以上40名を1年A組として認めます。」

学校長挨拶では夜蛾校長が、新入生代表挨拶では小春が、在校生代表挨拶では、生徒会長である灰原が挨拶を読み上げた。入学式を終えて出席番号順に体育館を退場する。私の後ろを虎杖君が着いて歩いた。

「お久し振りです、虎杖君。」
「やっぱナナミン!俺、いっぱい話したい事が、」
「話はHRが終わった後に。」

教室に着いて教壇に立つ。受け持つ生徒達の顔を眺めて、その中に一際目を惹かれる小春の顔を見つけて頬が緩んだ。彼女が私を覚えていない事にショックは受けた。そして10歳近く離れてしまった歳の差に、寂しさも。だがそれ以上に再び小春と出逢えたことに私は意味を感じている。

「改めまして、入学おめでとうございます。担任の七海建人です。教科は化学を担当します。お話する事が多いので、自己紹介はここまでで。今からプリントを10枚ほど配ります。必ず自分達も目を通して、保護者の方にも必ず渡して下さい。1年間の行事等も予め決定しています。必ず確認してください。…こちらのプリントは、」

HRを終えて生徒達が次々に教室を出て行く姿を眺めた。小春を見れば、鞄を整理して立ち上がった所だった。

「橘さん、」
「はい、」
「…新入生代表挨拶、お疲れ様でした。堂々としてとても聞き取りやすい挨拶でしたね。」

そう言うと、小春は恥ずかしそうに笑って礼を言った。前世でも何度も惹かれたその顔に、私は彼女の頬に手を、

「小春ー!」
「あ、悠仁君。」
「あ、ナナミンごめん!邪魔するつもりは、」
「…虎杖君、彼女の事は橘さんと呼びなさい。」
「あ、ハイ、スミマセン。」
「悠仁君、ナナミンって七海先生の事?」

小春が首を傾げた。小春には呼ばれたことの無かった『ナナミン』というあだ名に、不覚にも胸がときめいた。…虎杖君、感謝します。ですが小春を呼び捨てにしたことは許しません。それとこれとは話が別だ。

「七海先生と悠仁君って、お知り合いなんですか?」
「あ、えっと〜…、」
「ええ、まあ。少し訳あって、知り合いました。橘さんと虎杖君は、」
「私と悠仁君は、幼馴染です。家も隣で、産まれた時からずっと一緒でした。」
「…そうですか。」
「あ、あの〜…、(ナナミンなんか怒ってる?!)」
「虎杖君、話があります。橘さんは保護者の方は?」
「あ、祖父母が待ってるので、今日はこれで。悠仁君、また明日ね。七海先生、これからよろしくお願いします。さようなら!」
「…さようなら、お気を付けて。」

小さく手を振って小春は教室を出て行った。残された私と虎杖君。私は彼を職員室に連れて行った。五条さん達と再会を喜び合い、前世の話もした。そして私は1番気になっていた話を虎杖君に聞く。

「小春さん、前世のこと覚えてないっぽい。」
「…やはり、そうですか。」
「俺、ナナミンの代わりに小春さんの事ずっと見て、色んなことから護って来たけど、俺の知ってる前の小春さんと全然変わらなかった。…あーでも、今の小春さん、身体弱いみたいで、たまに倒れるんだよね。本人は貧血って言ってた。あと、両親は生まれてすぐに事故で亡くなって、今は一緒に住んでた小春さんのじいちゃんとばあちゃんと3人で暮らしてるよ!」
「小春ちゃん、前世と殆ど同じような境遇みたいだね。これはやっぱり、七海の愛の力で、」
「悟、教師と生徒の恋愛は御法度だぞ。」
「ヤダなぁ、学長、可愛い教え子の運命の再会だよ〜?そのくらい許してよ〜。」
「学長ではなく校長だ。いくら前世で夫婦だったとしても、今は全くの他人だ。教師という立場を弁えろ。」
「ええ、それは勿論です。」
「悟、傑、お前たちもだ。」
「「…。」」
「なんだその面は。」
「「いや別に。」」
「小春さん、病院には?」
「倒れた時に毎回病院行ってるし、薬も飲んでるっぽい。えーっと、家入先生?」
「そ。現世では死んでも生き返らないだろうから、死ぬなよ。」
「うっす、宿儺もいねぇし、呪いも見えないから無茶はしてないっス。」
「小春ちゃん、また呪われたりしてない?」
「…夏油先生だっけ?ん〜…前世の記憶が勝ってなんか変な感じすんなぁ…。」
「あれは私であって私ではないよ。こっちが本物。仲良くしよう、虎杖悠仁くん。」
「まぁ、ハイ。」
「私達も呪いは見えないし、完全な非術師。反転術式使えたら、私の仕事も楽なんだけどなぁ。」
「悠仁、硝子は高専の時と同じで保健室の先生してるよ。」
「おぉ!」
「で、七海どうする?小春ちゃんの事。」
「…どうもこうも、覚えていないのなら仕方ありません。無理にどうこう出来るものでもないでしょうし、教師と生徒という立場上、下手に関わりすぎるのもよろしくないでしょう。」
「じゃ、僕狙っちゃおっかな〜。前世では小春ちゃんの手料理食べれなかったし、現世で作ってもらおーっと。」
「ひっぱたきますよ。」
「…そう言えば小春さん、ーーーーーー、」

虎杖君の言葉に私は、皆の前という事も忘れて堪えきれずに涙を流した。




...




小春が入学してから数日後、虎杖君に聞いていた通り小春が倒れた。丁度私の担当する化学の授業中、板書をしながら教科書の内容を解説していた時だった。

「きゃ!」
「うわっ、」
「ナナミン!小春が!」
「なんです、…橘さん?!」

リノリウムの床に倒れていた小春に駆け寄って、その身体を抱き抱えた。顔色が悪い。小春を抱えて、他の生徒達には教科書を読んでおくようにとだけ伝えて保健室を目指した。

「家入さん!」
「七海?どうした。」
「小春が、」
「…前言ってた貧血か?とりあえず寝かせて。」

小春の体をベッドにそっと下ろして、上履きを脱がせた。

「小春、聞こえますか、小春、」
「…ん…、」
「七海、小春さんを少し寝かせろ。オマエも授業があるだろ。」
「ですが、」
「起きたら連絡する。」
「…分かりました。」

小春の制服が皴にならないように軽く整えて布団を被せた。保健室を出て化学室に戻ると、授業を再開した。心の底では授業どころではない。休み時間の度に保健室に小春の様子を見に行った。昼休みになり、買い置きしておいたカスクートを手に保健室に向かった。

「まだ寝てるよ。」
「…少し、中を覗いても。」
「はいはい。ここで盛るなよ。」
「そういう心配はいりません。」

前世でも同じようなやり取りをしたことを思い出した。カーテンを少し開けて、小春の様子を窺う。静かに寝息を立てる小春に、私はほっと息を吐いた。カーテンの中に入って、小春の寝顔を近くで眺めた。前世と変わらない愛おしい寝顔に、私はまたひっそりと涙を流した。

「…んぅ、」
「…小春…、起きてください。もう朝ですよ。」
「…んん…建人さん…?」
「小春?!」

小春が…今、小春が私の名前を、

「…あれ、七海先生…?」

目を開けて私を見つけた小春は、私の事を七海先生と呼んだ。私の事を、思い出したと思ったのに、

「…橘さん、大丈夫ですか。」
「…私、倒れたんですっけ。…すみません、ご迷惑をお掛けしました。」
「いいえ、それよりも体調はどうです。」
「だいぶ楽になりました。…えっと、今は、」
「昼休みだよ。」
「あ、えっと、」
「家入硝子。養護教諭。よろしくね橘さん。」
「家入先生、ご迷惑をお掛けしました。」
「私はその為にいるんだ。そんなにかしこまるなよ。温かいものでも飲む?ココアとコーヒーと紅茶、好きなのは?」
「あ…じゃあ…紅茶を、」
「だと思った。好きそう。」

ああそうだ。小春は前世でも紅茶が好きだった。

「…七海先生?」
「…はい、」
「あの、なんだか、泣きそうな顔をしてますけど、大丈夫ですか?」

小春が私を見てそう言った。大きく息を吸って、フー、と吐き出す。彼女の前で涙を流すのは、今じゃない。

「…橘さんが目を覚まして安心しました。お弁当は持って来ましたか。」
「あ、はい。教室にあります。」
「では虎杖君に持って来させましょう。」
「悠仁君にですか?」
「ええ。それと、橘さんの事についてもっと知っておきたいので、お昼を一緒に頂いても?」
「あ、はい、勿論。」

私は虎杖君にLIMEをした。小春のお昼を保健室に届けるように、と送ると、すぐに既読が付いて、虎のスタンプが返ってきた。5分もしない内に虎杖君が保健室に到着し、家入さんが淹れてくれた紅茶とコーヒーを前に、小春とお昼を食べ始めた。家入さんと虎杖君は、気を遣って保健室から出て行ったらしい。

「あ、」

私がパン屋の袋から取り出したカスクートを見て、小春が小さく声を発した。

「どうしました、」
「いえ、その、七海先生もパンが好きなのかなって、」
「ええ、好きです。」

パンも、小春も、今も変わらず。

「私もなんです!実は、パンを焼くのが好きで、あ、食べるのも好きなんですけど、」
「奇遇ですね、私もです。」

小春とよくパンを焼いていた。小春と一緒に近所のパン屋を巡った事もある。私がよく行っていたあのパン屋でも、小春もよくパンを買っていた。

「七海先生、オススメのパン屋さん教えてください!」
「ええ、勿論です。橘さんのオススメのお店も、是非教えてください。」
「はい!あ、今度私もパン焼いてきますね!七海先生にお裾分けしてもいいですか?」
「それは嬉しいですね。ありがたく頂きます。」
「ふふ、やったぁ!」

小春の嬉しそうな笑顔を見て、私はまたぐっと涙を堪えた。それから毎日、何かと理由を付けては昼休みに小春と昼食をとり、色んな話をした。好きな食べ物、好きな色、好きな数字、好きな動物、好きな季節、好きな天気、些細な事まで色々話した。小春は、変わらず小春だった。

「では、そうですね…、好きなタイプは?」
「え…、えぇ…!そんな、先生相手に恥ずかしいです。」
「…失礼、では私から話します。それなら恥ずかしくないでしょう。」
「…まぁ、そうですね。」
「私の好きなタイプは、…料理が上手で、パンが好き。勿論料理もパンも、作るのも食べるのも両方好きです。それから花のような笑顔が素敵で、気が利いて、面倒見もよくて、意地っ張り。ですが、些細な幸せでも私と共有して、大切にしてくれる、心優しい女性です。」
「…なんか、すっごく具体的な理想ですね?」
「…そうですね。」
「でも、そういうの素敵です!七海先生が理想の女性と出会えますように!」
「…ありがとうございます。」

もう、出会っています、私の目の前にいるあなたがそうです、…とは言えなかった。言ってしまえば、きっと頭のおかしい男だと思われるだろう。

「橘さんは好きな男性のタイプは?」
「んー…、私はぁ…、うーん、そうですねぇ。まずはパンが好きな人!」
「同じですね。」
「ふふ、勿論!パン好きに悪い人はいませんから!後は、私が助けて欲しい時に、助けに来てくれる人…?うーん、難しいですね…?あ!ちょっとヤキモチ妬きで、可愛い人!…あとは、私の所に帰って来てくれる人!建人さんみたいに!」
「…小春…、」
「…あれ、私…、」

小春が目を見開いた。私の顔を見て、大きく見開いた瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。

「…嘘…、建人さん…?」
「…小春、」
「あれ、私、なにして…、」
「小春、会いたかった。」

もう涙は堪えきれなかった。小春の腕を引いてその身体を腕の中に閉じ込めて、苦しい程に抱きしめた。小春が私の名前を呼んだ。建人さん、と、昔と同じ呼び方で。私達は互いに抱き合ったまま泣いた。

「小春…、やっと、小春に会えました…、」
「ごめんなさい、私、約束したのにっ、建人さんのこと忘れて、」
「もういいんです。ちゃんと、思い出してくれましたから。小春、愛しています。おかえりなさい。」
「建人さん…っ、ただいま、愛してる…、」

私達は涙でぐちゃぐちゃな顔のままキスをした。額を合わせて鼻先が触れると、2人で泣きながら笑ってキスをした。それから私達は、小春の前世の記憶が戻った事を、五条さん達に報告した。皆私と小春が再び結ばれたことを喜んでくれた。そして、彼も。

「初めまして、でいいのかな?灰原雄です。七海とは昔同期で、今は生徒会長です!」
「はい、建人さんからお話を聞いてました。橘小春です。入学式でお見掛けしました!」
「灰原、昔墓前に挨拶した時の事を覚えてるか。」
「うん、勿論!見てたからね!結婚おめでとう、七海!前世では言えなかったから、現世では誰よりも早く言いたかったんだ!」
「今は教師と生徒という立場だ。小春が卒業したら結婚する。」
「じゃあそれまでは秘密の関係ってやつだね!わぁ…!僕ちょっとワクワクする!」
「頼むから、誰にも言うなよ。」
「勿論!」
「うふふ、まだ先の話ですけど、結婚して子供ができたら、また灰原さんのお名前をお借りしてもいいですか?」
「え、またいいの?!僕に似ちゃったりして!」
「ふふ、」
「灰原に似るのは困るな。」
「なんでだよぉ、七海!」
「でも、また雄人に会いたいんです。私と健人さんの、大事な子供ですから。」
「…うん、きっとまた会えるよ!」
「ありがとう、灰原。」
「あ、結婚式には絶対呼んでね!」
「ああ、必ず。」

灰原の背中を見届けたところで、小春が私の手を握った。

「建人さん!ここで、私の遠慮しない意見を一つ!」
「どうぞ。」
「結婚式の日、またあの日にしませんか?」

そう言って私を見上げた小春に、私は返事の代わりにキスをした。



「…そう言えば小春さん、毎年ハロウィンにカス…なんだったけ、なんかそんなパンとカボチャのパイ焼いてるって言ってた。なんか毎年その日に食べたくなるんだってさ。パンが好きでよく焼いてるし、ってあれ、ナナミン?」



―――100000hit―――
立花様リクエスト
【七海建人の結婚記録】
来世の話。教師の七海と生徒の小春。大人組(七海、五条、夏油、家入)が教師。虎杖が同級生。全員非術師。小春だけ記憶がないけど、思い出して…。

リクエストありがとうございました。
リクエストmailを頂いた瞬間から手が止まらず、色々とこみあげてボロボロ泣きながら書いてました。
家入さんは校医と指定がありましたので、家入さん以外は私の独断と偏見で教科を決めました。
ナナミンが化学教師なのは、ナナミンが白衣に眼鏡にフラスコという三種の神器を身につけて欲しかったからです。
最初は英語教師にしようと思ったんですが、完全に私の趣味です、スミマセン。
また、立花様以外にも以前から来世の幸せな2人が見たいとmailを頂いておりましたので、来世話を書けて本当に良かったです。
小春さんの貧血はナナミンの愛の力♡で治ります。
大人オブ大人ナミンなので、卒業までキス以上はしないでしょうね。
ちゃんと卒業して、またハロウィンに結婚して、毎年カスクートとパンプキンパイを焼いてます。
雄人もまた生まれて、今度は3人で「ベーカリー ナナミン」をオープンしてくれるといいなぁ。



indigo_la_End「花をひとつかみ」



 


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