【あなたは迷っています。選択してください。選択すると呪力を80消費します。(残り呪力:126)】
【1.2級呪霊を祓う 2.両面宿儺の指を回収する 3.2級呪霊を祓って、両面宿儺の指を回収する 4.両面宿儺の指を回収し、来たる日に虎杖悠仁に拾わせる 5.なにもしない】
「はぁ…はぁ、うっ…げほっ、」
息が上がって苦しくなった私はその場に蹲る。虎杖悠仁を高専に通わせるにはやっぱり、
「…4番、」
【4.両面宿儺の指を回収し、来たる日に虎杖悠仁に拾わせる を選択しました。呪力を80消費しました。(残り呪力:46)】
カタン、と目の前に小さな木箱が現れた。これは、間違いない、
「宿儺の指…、」
震える手で木箱を掴み、蓋を開ける。呪符の巻かれたそれは、紛れもなく特級呪物「両面宿儺」の指だ。漫画で見たまんまだった。
「どうしよう、どこに隠そう…。隠さないとだよね…。」
呪符が巻かれてるとはいえ、このままこれを高専に持ち帰ればすぐにバレてしまう。考えろ、どうする、どうすればいい。
「…お母さん…、」
そうだ、お母さんは封印術が使えるんだ。お母さんに宿儺の指を封印してもらって、…いやでも、もしそれが高専にバレたりしたら、お父さんにバレたら…、
「セレクト、」
【あなたは両面宿儺の指を隠そうとしています。選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:46)】
【1.隠す 2.隠さない 3.なにもしない】
「…い、1番、」
【1.隠す を選択しました。呪力を40消費しました。(残り呪力:6)】
突然木箱が消えた。いや、正確には私の手の上にあるけど、
「宿儺の器…、」
私は宿儺の指が入った箱をポケットに仕舞った。これは私だけの秘密だ。絶対に誰にも見つかってはいけない。深く深呼吸をして気持ちを落ち着けると、杉沢第三高校を後にした。大通りに向かう途中、小さな公園を通りかかった。そして出てきた好感度イベント。え、誰だろ…。すぐにイベントを選択した。公園の中には数人の子供たちが砂遊びや滑り台で遊んでいる。ふと足元にボールが転がってきた。
「待ちなさい憂太!飛び出さないで!」
え、憂太…?ボールを拾い上げると、こちらに走って来る小さな男の子。え、マジで?
「これ、君の?」
「う、うん!ありがとう、お姉ちゃん。」
「お礼が言えて偉いね。でも道路が近いから、飛び出したら危ないよ。はい。」
ボールを手渡すと、ショタ憂太が私を見上げて目を輝かせた。
「お姉ちゃん、お人形さんみたい!可愛い!」
「ん゛っ!」
まさかこの頃から女誑しか…!?
「ありがとう。憂太くんって言うんだね?」
「うん!おっこちゅゆーた!」
「はわわ…、」
自分のことおっこちゅって…可愛すぎる…写メりたい…!!!!けど流石に保護者が近くにいるから無理か。あ、お母さんらしき人がこっち来た。クソ、まだ100%にしてないのに!
「すみません、どうもありがとうございます!」
「いえいえ、可愛いお子さんですね。」
「いえいえ、すぐあっちこっちに行くもので、憂太、ちゃんとありがとうは言った?」
「言った!」
「はい、素敵な笑顔でありがとうを頂きました。憂太くん、私の名前は廻神理玖だよ。覚えておいてね。」
「理玖お姉ちゃん…?」
「うん。」
「また会える?」
「会えるよ、憂太くんがもう少し大きくなったらね。それじゃあ、私はこれで。」
「どうもありがとうございました。」
「こちらこそ。じゃあね、憂太くん!」
「ばいばい、理玖お姉ちゃん!」
おっこちゅゆーたの好感度は50%止まりだった。まぁ、仕方ない。むしろあの短時間で50%まで稼げたから良しとしよう。それに、彼はいずれ高専に通うことになるんだし。タクシーで仙台駅に向かうと、帰りの新幹線のチケットを買った。皆にお土産を買おうと売店に立ち寄った時、ふと、見覚えのある髪色が目に入った。そして再び好感度イベントが出た。イベントを選択する。…間違いない、
「…あれ、もしかして、理玖ちゃん?」
「…仁、さん、」
「香織、理玖ちゃんだよ!うわあ、凄く久し振りだね。元気だった?」
「あなたはあの時の、」
「…げ、元気でした!お2人も元気そうで良かった!」
「理玖ちゃん、ずっとお礼が言いたかったんだ。」
そういうと、仁さんは香織さんの足元にいた小さな子供を抱き抱えた。
「悠仁って言うんだ。」
「っ、」
虎杖悠仁だ。
「か、可愛い…っ、」
「理玖ちゃん?」
「あら、どうしちゃったの?」
「す、みませんっ、勝手に涙がっ、」
「いたいいたい?」
ショタ悠仁が私に手を伸ばした。痛い、痛いよ、心が。私は私の勝手なわがままで、幸せになるはずの君の未来を奪おうとしてるんだから。
「とんでけー!」
「ははっ、ありがと、悠仁君、」
「おねーちゃん、げんきになった?」
「うんっ、元気だよ、ありがとう、」
小さな手が私の涙を拭った。その手をやんわりと握りしめて、小さな手の甲にキスをする。ゆじたん…ごめん…ほんとにごめん…、大好き。絶対に、死刑にはさせないから。君を人殺しにしないから。
「理玖ちゃんはこれから東京行きに乗るの?」
「はい、東京に帰ります。」
「そう、残念。私達はこれから、仁さんのお父さんに会いに行くの。時間があったらゆっくりお茶でもしたかったわ。」
「今度時間がある時、またうちに遊びにおいで!と言っても、今日引っ越したばかりだから新しい住所教えないとね。」
「え、どこに引っ越したんですか?」
「この辺だよ。」
「仁さんのお父さんの家の近くに。やっぱり孫の顔が見たいでしょ?」
「そうだったんですね。じゃあ、これ、私の携帯番号とアドレスです。」
「あら、ありがとう。あとで連絡入れておくわね。」
「はい!悠仁君、元気な子に育ってね。」
「うん!」
虎杖ファミリーと別れて、適当に土産を買うと新幹線に乗り込んだ。1人窓際で外を眺めながら、ポケットに入っている木箱を握りしめる。私は最低だ。
「…ごめんね、」
来たる2018年6月、伏黒恵が仙台に向かうその日に、私は虎杖悠仁に宿儺の指を拾わせる。原作通りの展開になれば、悠仁は間違いなく宿儺の器として五条悟が捕らえることになる。死刑を言い渡されても執行猶予がつくし、最悪私が上層部を黙らせればいい。…いや、そもそも死刑にさせない為に、出来ることをしないと。…縛り、そうだ、縛りを利用すればいい。うーん、でもどんな縛りを…。
「…宿儺って恵きゅんらぶだったよね…。いやいやいやいや、だめだめ、きゅんを危険にさらすわけにはいかない。」
虎杖悠仁の体で人を殺さない代わりに、何かの条件を…。うーん…、やっぱり指の回収…?それで宿儺が納得するとは思えないしなぁ…。こればっかりは時間の許す限り頭から案を絞り出すしかないな…。大丈夫、まだ10年近く時間はある。スキップさえ挟まなければ…。
「…はぁ…、結構厳しいぞ、これから…。星蔣体任務もどうするか考えないといけないのに…。」
頭を抱えていると携帯が震えた。メールか。
『理玖ちゃん、香織です。登録よろしくね。写真は悠仁と悠仁のお爺ちゃんです。』
『理玖ちゃん、仁です。いつでも遊びに来てね。あの時のお礼をさせてほしい。』
香織さんと仁さんのアドレスと、一緒に書かれていた電話番号を登録すると、ゆじたんの写真を眺めて保存した。しっかりしろ私、いつかは覚悟していたことだ。原作に関わるということは、そういう事なんだから。そして原作を捻じ曲げようとするということは、それなりのリスクを伴うという事なんだから。はぁ…それにしても…、
「ゆじたんとおっこちゅ可愛かったぁぁああ…!!!!おっこちゅの写真撮りたかったあああああ…!!!」