私の吐血事件があってから、悟は私にべったりと引っ付くようになった。硝子も何かと私の脈を測ったり、顔色を窺って今まで以上に声を掛けてくるようになった。傑はそんな二人に私の話を聞いたらしい。傑もべったり引っ付いてきて、私の手を握っては、じっと顔を見つめて溜め息を吐くようになった。…うん、なんかごめんね皆。
「悟、ちょっと…動けないんですけど。」
「理玖は何もすんな!術式も使うな!」
「傑、悟を何とかしてよ!」
「悟、そのまま理玖を頼んだよ。あの呪霊は私が取り込むから。」
「さっさと終わらせろよ、理玖の体に障る。」
「2人とも大袈裟だってば!」
「「理玖は大人しくしてなさい!」」
「はぁい、すみませんでしたっ!」
3人で任務の時はこんな感じ。いや、うん、心配してくれるのは嬉しいんだけど、ここまで過保護すぎるとなんか逆に鬱陶しいって言うか…。
「はぁ…、」
「理玖疲れた?」
「早く帰って休もう。」
「いや、ちがくて…、」
「こういう時って栄養あるもん食わせりゃいいの?」
「そうだね。硝子にも聞いてみよう。」
「…うん、なんでもいいや。」
この後私1人の任務あるんだけど…このままじゃ2人とも着いて来そうだな…。悟は絶対術式使うなってうるさいし、傑は階段や段差ですら危ないと言って私を抱き抱える始末。いや、どこの時代のお姫様だよ。傑が私を近くにあったベンチに座らせた。私の目の前にしゃがんで顔を覗き込む傑。悟が自販機で飲み物を買ってきてくれた。なぜか悟も傑の隣にしゃがんで私の顔を覗き込む。うっ…そんな、捨て犬みたいな目で私を見ないでくれ…っ、心が痛む…。ついでに血も吐きそう。
「理玖、」
「…理玖、」
「ぐふっ、」
「「理玖!!」」
「だ、大丈夫、ちょっと、2人が可愛すぎて、」
「硝子に電話!」
「理玖、お茶飲めるかい?」
「だから大丈夫だってば!私この後任務あるから、2人は先に帰ってて?」
「「着いて行く!」」
「言うと思った…。言っておくけど、止めても術式使うし、2人とも大人しくしてくれないと怒るからね?」
「「…分かった。」」
しゅんとする2人に犬の耳が見えたのは気のせい…じゃないな。あーもうほんと可愛いかよ。はぁ…2人の顔はだいぶ見慣れて耐性ついてきたと思ったのに、これじゃあ心臓いくつあっても足りないよ…。車に戻って、そのまま次の任務に向かうと、約束通り2人は大人しくついてきた。けど悟は私の手を握って無限を張ってるし、傑も反対の手を握って常に周囲を警戒している。番犬がおがお再来。ささっと任務を終わらせると、3人で高専に戻った。高専に戻るや否や、悟と傑に連絡を貰っていたらしい。硝子がパタパタと駆け寄って私にぎゅうっと抱き着いた。はぇ〜かわよ〜…。
「理玖、また吐いたの…?」
「あ、うん、まあ…少し?」
「どのくらい?何時ごろ?」
「え?えっと…ほんの少量だし、2時間くらい前だった気が…。」
「いつ病院行くの?」
「ア、イソガシクテワスレテマシタ。」
「今から行くよ。」
「へ?」
「硝子、」
「私達も一緒に行くよ。」
「へぇっ!?」
3人に引っ張られて病院に連れられた私。硝子が私の隣に付き添い、悟と傑がまるでSPのように私の周りにガンを飛ばしている。いやいや、ここ病院だから。
「廻神理玖さーん、どうぞー。」
「あ、はーい。」
診察室に呼ばれた私にぴったりとついてくる3人。先生と看護師さんがギョッとした顔をしていた。そうですよね、こんな大人数で来たらびっくりしますよね。スミマセン。
「えっと、吐血したと書いてありますが…、」
「あはは…ちょっとだけです。」
「どういった時に吐血を…?」
「え…どういった時…?」
どういった時って言われても…萌を感じた時としか…。
「こう…心臓がきゅんって、」
「ほうほう…心臓が…、」
「あと何というか、刺激の強すぎる状況と言いますか…?」
「刺激の強すぎる状況…?例えばどういう時ですか?」
「え、うーん…。こう…好きな人達の顔を見たときとか…?」
「好きな人達の顔…ん?えっと?」
「いやぁ、よくわかんないですよね?私も分かりません!だから大丈夫です!」
「理玖!」
立ち上がろうとした私の腕を悟が掴んだ。ぐっと近づいた悟の顔。サングラスの向こうで心配そうに私を見つめるその顔に、
「ごほっ、」
「「「「!?」」」」
「あ、」
「おい先生、なんとかしろよ!」
「理玖は死ぬんですか!?」
「理玖…!」
「何とかしろと言われましても…初めての症例でして、」
「だから大丈夫だって!もう帰ります!」
「理玖!」
「そんなに急いだら…!」
「待って理玖!」
私の体にしがみ付く3人を引き摺る様に病院を後にした。タクシーの中で悟と傑は私の手をぎゅっと握って離さないし、硝子はチラチラ振り返って来るし、何この3人。可愛いな!?高専に着くと、3人は私を寮の部屋に押し込んだ。制服を剥ぎ取られてルームウェアに着替えさせられると、布団に寝かせられなぜかおでこには濡れタオル。硝子はおかゆを作り、悟と傑は私の手を握ってまたしてもきゅるんとした捨て犬の目で私を見つめる。いやいや、風邪じゃねぇっての。…ま、いっか。なんだかんだ3人とも私のこと心配してくれてるんだもんね。
「理玖…、」
「どこか辛いところはあるかい?」
「大丈夫、3人ともありがとう。」
「理玖、おかゆ食べれる?」
「硝子の手料理残すわけにはいかないよ!いただきます!」
硝子の作ったおかゆを食べて、3人に見守られながら私は目を閉じた。うーん、なんというか、…悪くねぇ…!
次の日目を覚ました私は、私の手を握ったまま眠る悟と傑、私のベッドに体を預けて眠る硝子を見つけて、無事死亡した。
「3人とも起きて、」
「ん…、」
「…あれ、」
「理玖…、体調どう…?」
「3人の看病のおかげで元気になりました!ありがとう!」
私がにっこり笑うと、3人はほっとした顔で私を見て笑った。あぁ…もう、3人とも可愛い…好き…てえてえ…!!3人が部屋に戻ると、私はぐっと伸びをした。いやぁ、なんかよく分かんないけどスッキリした。最近あんまり眠れてなかったけど、3人のおかげでぐっすり眠れたし。
「頑張るぞー!」
猪野君を真似て気合を入れた私は、早速身支度に取り掛かった。教室に向かうと3人はまだ来ていなかった。ずっとあの体制で寝てたなら首とかバッキバキになってそうだな…。あとで3人とも肩もみでもしてあげようかな。そう思いながら携帯を見ると、パパ黒からメールが来ていた。なんだろう?写真だけが添付されたメールだ。写真を開いてみるとそこには、パパ黒に肩車をされめちゃんこ可愛い笑顔を向けるちゃんメグの写真だった。
「がはっ…!こ、これは…可愛すぎる…。」
安定の保存を決め込んだ私はそれを待受けにしようか悩んでしまう。今はショタピーがおにぎりにはむっ、ってしてる写真が待受けだ。くそ…これは…これは大変罪深い写真を送ってきましたな…。とりあえずパパ黒にはメールの返信しないと。なんて送ろう。可愛い?いやそりゃちゃんメグが可愛いのなんて周知の事実だしな。うーん…、
『恵きゅんは甚爾様に似て将来有望ですね!』
うーん、こんなんでいいか?いや、もっと何か…、
『恵きゅん可愛い♡甚爾様も素敵です♡』
こっちの方が当たり障りないよな…。よし、うーん、特別に私の自撮りも送るか。ちょっとあざとく上目遣いの写真にしちゃお。ぐへへ、パパ黒よ喜ぶがいい!ピロリン、と写真を撮って確認する。うん、ばっちし!これをメールに添付して送信っと!
「はぁ…会いたいなぁ…。」
パパ黒に会いたい。けどあんまり頻繁に会えなくなっちゃったし、パパ黒にも家庭があるし…、
「…寂しいかも、」
キュッと胸が締め付けられる。この前あんな別れ方したし、次会う時どんな顔すればいいのかわっかんねぇ…。
「お、もう返信来た。」
『次会う時は抱く。』
「ん゛ん゛っ…!!!!」
一緒に送られてきたパパ黒の自撮り写真に私は無事死亡。出血大サービスを決め込んだところを悟と傑に見られ、またしても3人に過保護に世話を焼かれる羽目になった。そしてそれは1か月ほど続くことになることを、この時の私はまだ知らない。いや、なげぇよ!!いやどうもありがとうね!?!?