<指は、宮司の息子が持っています。急いで取り返さなければ、彼が危険です。>
「宮司さん、息子さんがいますね?今どちらに?」
「え!?む、息子は今学校に…。息子が何か関係あるんでしょうか?」
「宿儺の指は息子さんが持っています。理由までは分かりませんから、本人に聞きましょう。」
「す、すぐに学校に連絡します。」
「お願いします。私達も学校に向かいますので。」
「はい。」
宮司が学校に連絡をし、そのまま宮司の車で息子君の学校に向かう。ついた先は中学校だった。宮司の連絡で指導室に呼び出されていた息子君に合流した。
「この木箱に入ってたもの、持ってるなら返してくれる?」
「…持ってねぇし。」
「そっかぁ。嘘はいけないなぁ、嘘は。神様仏様って、信じる?」
「はぁ?信じてねぇし!」
「あらら、神社の子なのに信じてないんだ?じゃあ神様仏様はちゃんといるってこと教えてあげなきゃね。」
中学生だから、まだ子供だから、では許されない事もあるって教えてあげなくちゃね。セレクト。
【???は嘘をついてます。選択してください。選択すると呪力を10消費します。(残り呪力:160)】
【1.声を聞かせる 2.姿を見せる 3.なにもしない】
なるほど、それじゃあ見せた方が早いな。2番。
【2.姿を見せる を選択しました。呪力を10消費しました。(残り呪力:150)】
突如大きなカラスが開いていた窓から入ってきた。カラスは息子君の目の前にとまると、大きく鳴いた。そしてその足は3本ある。
「君のお家で祀ってる八咫烏様が、わざわざお説教しに来てくれたんだって。」
「は、はぁ!?なんで!?あ、足が3本ある…!」
<この戯け者が!!>
「うわっ、いてっ!いたたたっ!」
<神子様にご足労頂いたのだぞ!!反省しろ小童!!>
「さてと、神様はちゃんと見ているってわかったかな?」
「わ、分かったから、やめさせてよ!いたっ!」
「まずは中身を返して貰わないと。」
「ある、あるから!教室にある!鞄に入ってる!」
「そっか。じゃあ一緒に取りに行こうね。八咫烏様、もういいですよ。ありがとう。」
<神子様、どうぞこの小童にお情けを。>
「大丈夫です。彼はもう反省してますから。次悪い事したら、そこら中からカラスたちが君の事をつつきに来るよ。わかった?」
「わかった…、勘弁して…!」
「じゃあ、ちゃんとお家の手伝いもして、神社の事守ってね。お姉さんと約束。」
息子君について教室に向かう。教室には間違いなく宿儺の指の気配があった。呪力が大きすぎてちらほら呪霊が集っているらしい。近場にいたものを十手で祓いながら、息子君が指を出すのを待つ。
「…あれ…?ない、」
「…え、」
「ない…!なんで!?さっきまでここに入れてたのに…!」
「…誰かに見せたりした?」
「…あ、武ちゃんに見せた…。」
ゾッと大きな気配がした。もしかして、宿儺の呪符剥がした…?
「冥さん。」
「何かな?」
「帳を降ろしても?」
「…避難誘導はどうするつもりかな。」
「必要ありません。全て跋徐、回収を優先します。」
「任せるよ。好きに動いて、合わせるから。」
「お願いします。“闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え”。」
学校内を包む大きめの帳を貼った。すぐに湧いて来た呪霊を十手で祓いながらセレクトをする。
【帳内に37体の呪霊がいます。選択してください。選択すると呪力を80消費します。(残り呪力:150)】
【1.全て祓う 2.なにもしない】
「1番。」
【1.全て祓う を選択しました。呪力を80消費しました。(残り呪力:70)】
帳内の呪霊の気配が全て消えた。上の方で一際大きい呪力を感じる。屋上かな?階段を駆け上がって屋上に向かうと、1人の男子生徒が気を失っていた。すぐ近くには宿儺の指が剝き出しになって落ちていた。指を回収すると呪符を巻き直して帳を解除する。木箱に指を仕舞ってふぅと溜め息。冥さんがぱちぱちと拍手してくれた。え、なに、ちょっと恥ずかしいけどあざーす!
「流石だね。私は何一つ手を貸していない。」
「そんな、冥さんのお手を煩わせるわけには!」
「フフフ、ますます興味が湧いたよ。今度一緒に食事でもどうかな。勿論私の奢りだよ。」
「冥さんに奢って貰えるなんて光栄です!けど、その前に聞いておきたいことがあります。」
「なにかな。」
「昨日、カラスを通じて私を視てましたか?」
「…バレていたとはね。」
「一体何故か、教えてもらえますか?」
「それは出来ないね。なんせ私は、」
「金の味方、だからですか?」
「…全く、本当に面白い子だね。」
「私の予想だと上層部の人間からの依頼かなと思ってるんですけど、どうでしょうか?」
「…ああ、そうだね。」
「あ、教えてくれるんですか。」
「奴らよりも君の方が価値があるからね。」
「冥さんを使ってまで、私の何を知りたいんでしょうか。」
「さあね、そこまでは知らないよ。上層部は廻神理玖、君に対して何かを危惧している様子だった。」
「成程、じゃあ直接聞きに行くっきゃないかぁ。あーあ、嫌なんですよねぇ、あの腐ったミカンの集まり。」
「仕方ないさ。」
「絶対思ってないですよね。」
「フフフ、」
無事に宿儺の指を回収した私達は神社に戻った。宮司が息子を問い質したらしい。掃除をしていた祠の中に木箱が見えて、気になっていたと。宮司がお風呂以外で常に身につけていた鍵が怪しいと踏んで、宮司の入浴中に鍵を勝手に使って、宿儺の指を抜き取ったそうだ。それから神社で不可解な出来事が起きるようになり、友達に自慢するために学校に持って来たところ、友達が興味を持って勝手に呪符を剥いだというのが一連の騒動の真相だった。神社で起きた不可解な現象も、指の呪力に集まった低級呪霊の仕業だったらしい。一件落着ってことで高専に戻る事に。新幹線の中で報告書を書き上げて、冥さんと連絡先を交換した。
「私からもひとつ聞いてもいいかな。」
「あ、はい、なんでしょうか?」
「理玖をどこに連れて行けば、100億貰えるのかな?」
「売る気満々じゃないですか!!」
「アッハッハッハ!」
なんだかんだで冥さん好感度も100%になった。高専に着くと冥さんと別れて報告書を提出した。後は特に任務もなかった。晩御飯作ろうかなぁ。一人でスーパーに向かっていると、通りがかった黒塗りの車。車が停まって誰かが降りてきた。
「理玖、」
「あれ、傑じゃん。任務終わり?」
「ああ、今戻って来たところだよ。どこか行くのかい?」
「ご飯作ろうと思って、材料買いに行くの。一緒に行く?」
「ああ、行こうかな。すみません、ここで降ります。報告書お願いしても?」
「いいですよ。どこか行くなら送りましょうか?」
「理玖、乗っていくかい?」
「じゃあ、お言葉に甘えまーす!」
乗っていたのは時田さんだった。近所のスーパーまで送ってもらい、帰りもそのまま乗せて貰えることになった。時田さんに何か差し入れ買って行こ。スーパーの中に入ると、傑がカゴを持ってくれた。
「傑、何食べたい?」
「そうだね、今日は魚の気分かな。」
「いいね、魚コーナーはあっちか。お、ブリ美味しそう。」
「いいね。ブリ大根とか好きだな。」
「ブリ大根美味しいよねぇ!私ブリの天ぷらも好き。大根おろしたっぷりで刻み大葉と天つゆで食べるの。」
「ああ、美味しそうだね。」
「照り焼きもいいよねぇ。うわぁ、ブリ食べたくなってきた…!」
「じゃあブリを買おう。天ぷらが気になるな。」
「オッケー、ブリの天ぷらね!あとは野菜も何か天ぷらにしよう!茄子とカボチャとレンコンは?」
「最高だ。」
「あ、アスパラも捨て難い。安定の大葉!これは忘れちゃダメだね。しし唐もいいなぁ…!あ、椎茸!」
「私と悟がよく食べるから、たくさん買おう。」
「じゃあ買っちゃえ!」
食材をカゴに入れてレジに進む。傑が全部払おうとするので、後で割り勘にしようと説得して支払いを済ませた。時田さんには差し入れにシュークリームをあげた。高専に戻ると、早速共有キッチンで天ぷらを作っていく。傑が悟と硝子に連絡してくれたので、2人とも任務を終えて共有スペースにやってきた。
「あ、お帰り2人とも!」
「ただいまー。」
「理玖〜会いたかった…。」
「わ、悟、揚げ物してる時は危ないから!」
「俺がいるから大丈夫。」
「確かに油跳ねも怖くないかも…。」
「無限の無駄遣いだよ。」
「理玖が火傷するよりマシだろ。つか天ぷら多くね?」
「悟と傑がたくさん食べると思って、奮発しちゃった…。食べきれる…?」
「余裕。」
「理玖の手料理を残すなんて事はしないよ。」