懐玉-1-


遂にこの日が来てしまった。

『続いて昨日、静岡県浜松市で起きた爆発事故。原因はガス管の経年劣化!?現場の節アナウンサー!?』

私が泊まりで行っていた神仏系の任務から帰ってきた頃、通り掛かった共有スペースのテレビで流れていたニュースに、私は目を丸くした。来てしまった。運命の時が。漫画で見たとおり、テレビの下には夜蛾さんと、床に正座するさしすがいた。

「先生!!犯人捜しはやめませんか!?」
「悟だな。」
「なんの犯人ですか?」

私が声を掛けたことで振り返った3人。夜蛾さんは私を見つけて目を輝かせていた悟の頭に、指導という名の鉄槌を下した。痛そう…。

「理玖、お帰りー。」
「ただいまー!」

私に飛び掛かってきた3人に押し潰されそうになる。ぐっ、苦しい…。てかさりげなく悟が胸を揉んでいる。傑は尻を。おい、盛るな。

「夜蛾先生、これ皆さんにお土産です。」
「わざわざすまんな。九州だったか。」
「はい、博多に。美味しいですよ、通れもん。」
「理玖、俺には!?」
「皆にもあるよー。」
「オマエ達は教室に戻っていろ。俺は一旦教員室に戻る。」
「はーい。」

夜蛾さんに教員や補助監督分の土産を渡して、悟達のお土産が入った紙袋を手に4人で教室に戻った。紙袋からお土産を取り出して広げていると、悟は帳の必要性について話し始めた。原作で見たまんまの内容と、硝子のサングラス姿。硝子が可愛いので写メっておいた。通れもんの箱を開けて皆に袋を配れば、悟は通れもんをはむはむ食べながら話を続ける。

「術師は非術師を守るためにある。」
「それ、正論?俺、正論嫌いなんだよね。」
「…何?」

硝子は通れもんを掴めるだけ掴んで教室から逃げていった。相変わらずの逃げ足だ。私は通れもんを2つ開ける。

「外で話そうか、悟。」
「寂しんぼか?一人でいけよ。」
「イライラするなら糖分取って!」
「むっ、」「んぐっ、」

2人の口に通れもんを突っ込んでやった。ふぅ、と溜め息。

「全く、もしかして私がいない時っていつもそうなの?最近よく喧嘩してるとか?」
「「喧嘩してない!」」
「そういう時だけ息ピッタリ…。夜蛾先生来るから、早く食べちゃって。」

3人で通れもんをはむはむしていると、夜蛾さんが教室に入ってきた。

「硝子はどうした?」
「さぁ?」
「便所でしょ。」
「お手洗いって言ってよ。」
「まぁいい、この任務はお前たち3人に行ってもらう。…なんだその面は、」
「「いや別に。」」
「正直荷が重いと思うが、天元様のご指名だ。依頼は2つ。“星漿体”、天元様との適合者。その少女の護衛と抹消だ。」

ついにボケたか、とヒソヒソ話す2人の隣で私は一人、息を呑んだ。とうとうこの時が来てしまった。あの日私の術式で両親には神の加護を与えたから、2人が危険にさらされるようなことはないはず。2人に連絡してみても、何も変わった様子はなかった。術式はいまだ効果を発揮している。パパ黒は恐らく盤星教からの依頼を受ける時に、私の事も聞くだろう。私と天元様を同化させたいという、盤星教のイカれた思想を。盤星教が相手ならまだしも、パパ黒が相手なら話は別だ。私の両親は警戒すらせずに簡単に人質にとられるだろう。私の術式でどの程度守られているかまではわからない。油断はできない。そして何としても、天内理子の同化を止めて、黒井さん、パパ黒の全員を助ける。そうと決まれば、しっかり保険はかけておかなければ。

「理玖?」
「行くよ、理玖。」
「あ、うん、行こう。」

3人で教室を出て車で天内理子が住んでいるマンションの近くまで向かった。今の所、原作と同じように会話や行動が続いている。

「さっきから理玖どした?」
「え?」
「大人しいね、体調でも悪いのかな?」
「あ、いや、元気だよ。ちょっと嫌な予感が、なんて…、」
「嫌な予感?」
「!」
「お?これでガキんちょ死んでたら俺らのせい?」
「「あ、」」

傑がマンタの様な呪霊に乗って飛び去ったのを見て、私は悟の腕に掴まる。

「いやぁ、セーフセーフ。」

悟が飛んできたナイフを無限で止めると、バイエルともう一人見たことのない男が近付いて来た。

「君、五条悟と廻神理玖だろ、有名人だ。強いんだってね。噂が本当か確かめさせてくれよ。」
「いいけど、ルールを決めよう。」
「ルール?」
「やりすぎて怒られたくないからね、泣いて謝れば殺さないでやるよ。これがルールね。」
「クソガキが。」
「悟、もう一人は私がやっていいよね?」
「いいけど、怪我しないでね。」
「誰に言ってんの?」

悟から離れてもう一人の男に笑いかける。保険は多い方がいいし、セレクトしとくか。

【???があなたを殺そうとしています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:170)】
【1.屈服させる 2.術式・呪力を剝奪する 3.なにもしない】

「あなた、名前は?」
「…エッセン、」

こいつシャ〇エッセンか!!!っと、男が動き出す前に2番。

【2.術式・呪力を剝奪する を選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:140)】

「…ん?あれ…?え?あれ?!」
「ふふふ、どうしたのエッセン〜、早くかかっておいでよ〜。」
「呪、呪力が練れない…!何故だ!」
「ああ、いらないかなって思って、剥奪しちゃった!ほらほら〜、かかっておいで〜。」
「くっ…、クソアマァ!!」

殴りかかってきたエッセンに金的をお見舞いすると、エッセンはその場に崩れ落ちてピクピクしていた。うへぇ、ぶにょってして気持ち悪っ、

「悟終わったー?」
「終わったー。」

悟と一緒にバイエルとエッセンを木の下に並べて、2人で一緒に写真を撮った。勿論二人ともニッコリピースだ。悟が傑に写メを送り、2人で傑の待つ天内理子の部屋に向かった。エレベーターの中で悟が私を後ろからぎゅうっと抱き締めて、髪に鼻を埋めて来たので、その頭をポンポンと撫でておいた。天内理子の部屋に着くと、黒井さんが目を覚ましていた。傑が事情を説明していたらしくすぐに移動しようという話になり、傑の出した呪霊に黒井さんを乗せた。天内理子は悟が抱えている。私は黒井さんの隣を歩いていた。

「お、起きた。」

べちぃ、と悟にビンタをかました天内理子を見て、私と傑はプッ、と噴き出した。傑が天内理子に優しく声を掛ける。

「嘘じゃ!!嘘つきの顔じゃ!!前髪も変じゃ!!」
「プッ、」
「ぃいやーーー!!」

原作通りの展開に一人くすくすと笑っていると、悟と傑に睨まれた。

「おっ、おやめ下さい!!」
「黒井!!」
「お嬢様、そのお方達は味方です。」
「私達は呪術高専から来ました。理子ちゃんの護衛を担当します。よろしくね?」
「おぉ!女子じゃ!女子がおる!」
「ごめんね、あの2人見た目厳ついからびっくりしちゃったよね?」
「「理玖!?」」
「あ、私廻神理玖です。先に名乗るの忘れてた。」
「よ、よろしくなのじゃ…!」

天内理子と握手を交わすと、黒井さんが乗っている呪霊の話になった。無事に原作通りの流れになって、私は特に口を挟む事はしなかった。悟と傑が待ち受けを見せ合っている姿は忘れずに写メっておいた。ていうか2人とも待ち受け私の盗撮って聞こえたんですけどどういうこと!?

「あの喋り方だと友達もいないじゃろ。」
「快く送り出せるのじゃ。」
「学校じゃ普通に喋ってるもん!!…学校!!黒井!!今何時じゃ!!」
「まだ昼前…ですがやはり学校は、」
「うるさい!!行くったら行くのじゃ!!」

天内理子を学校まで送ると、悟が夜蛾先生に連絡をした。天内理子の要望には全て応えよ、と。ここまでは順調だ。監視に出していた傑の呪霊が2体祓われ、屋上を飛び出した。悟と共に礼拝堂に向かう。

「理子ちゃん!!」「天内!!」
「なっ…なな…、」
「え〜〜〜〜〜!?」
「ん?」「あ、」
「何、理子彼氏!?」
「違っ、いとこ!!いとこだよ!!」

「悟モテモテじゃん。」
「ヤキモチ?」
「べっつに〜。」

「おにーさんグラサン取ってよ!!」
「イケメンじゃん!!」
「おい、調子乗んなよ!!」

「悟ノリノリじゃん。」
「ヤキモチ?」
「べっつに〜。」
「困りますよ、身内とはいえ勝手に入られては。」
「あーいや、緊急なもんで。スンマセンね。」
「あとコレ私のTEL番。」
「はぁ…。」
「いや、悪いけど、俺理玖以外の女興味ないから。」

そう言って悟が私の腰を抱き寄せてキスをした。目を見開く私と、きゃあああ!!と騒がしくなった礼拝堂。悟をなんとか引き剥がして理子ちゃんを見れば、真っ青を通り越して真っ白な顔になっていた。うん…なんかごめん。



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