何回イカされたか忘れた頃に、パパ黒の携帯が鳴った。パパ黒と繋がったままガクガク震える足で歩かされて、窓際からベッドに戻る。パパ黒が落ちていたズボンから携帯を取り出して、ボタンを押した。電話らしい。今の内に休もう、そう思って息を吸ったところで、パパ黒が勢い良く腰を打ちつけた。油断していた私は予想外の事に大きく啼いてしまい、ハッとして口を塞ぐ。顔だけ振り向けばパパ黒はにやりと笑って腰を打ちつける。
「あ?気にすんな。…沖縄だぁ?…そうかよ。」
「んっ、ふっ、ぁ、」
「理玖も連れて来い?あー無理無理。今抱いてんだよ、1年分。おい理玖、もっと声出せ。」
「や、だ、んぁっ、はっ、」
「ほら、孔にも聞かせてやれよ。」
「ぁっ、や、甚爾様、だけっ、」
「…あー、やっぱ理玖は沖縄無理。……電波が悪い。」
携帯を閉じてベッドに投げ捨てたパパ黒が、後ろから私の乳首をキュッと摘まんだ。
「あっ!」
「1年分っつーと、何回だ?」
「も、むりっ、こし、くだけちゃう…、」
「そしたら面倒見てやる。心配すんな。」
「ぅ、あっ、はっ、はぁ、と、じさま、聞いて、」
「んだよ、」
「星漿体、の、はぁ…、懸賞金、取り下げたら、私を高専に、連れてってください、」
「……、」
「やらなきゃ…いけない事が、あるんです、」
「同化は理玖の仕事じゃねぇだろ。」
「違くて、止めなきゃいけない事が、」
「…興味ねぇな。」
「お願いっ!」
シーツを握り締めてそう言うと、パパ黒が私の体をぐるりと回した。パパ黒が私を見下ろしていて、私はパパ黒に手を伸ばす。ぎゅっと抱き寄せて、
「お願いです、甚爾様っ、」
「…はぁ…、分かったから泣くな、」
「甚爾様、キスして…、」
「ん、」
キスをしながらパパ黒の腰に、力の入らない足を絡ませた。
それから天内理子の賞金取り下げまで、私はパパ黒にひたすら抱かれた。いや、マジで1年分ヤられたと思う。腰痛いし動けないし声もガラガラだ。パパ黒に介抱されて身支度を整えると、パパ黒に抱き抱えられてラブホを出た。いや、マジでヤバい。早く動けるように反転術式で体を治さないと…。
【あなたは負傷しています。選択してください。選択すると呪力を50消費します。(残り呪力:170)】
【1.反転術式を使う 2.なにもしない】
1番。
【1.反転術式を使う を選択しました。呪力を50消費しました。(残り呪力:120)】
保険もクソもなかったな…。今は11時過ぎ。賞金は取り下げられて、孔と合流して高専まで送って貰うことになった。悟達が戻ってくるのは確か15時。それまで少し仮眠をとらないと、疲労感は取れていない。携帯を返して貰って確認すると、着信とメールの嵐だった。2人にはメールで無事だという事と、先に高専に戻っていることを伝えて、携帯の電源を切った。
「すみません、高専に着いたら起こしてください。」
「ああ。」
「…甚爾様、おやすみなさい。愛してます。」
「…。」
パパ黒に膝枕をしてもらって、移動中の車内で眠る。パパ黒の手が私の頭を優しく撫でていて、私は静かに涙を流した。高専に着いてパパ黒と孔と別れると、時刻は13時半。一度着替えに部屋に戻って、1人部屋の中で静かに息を吐いた。呪力量を確認すれば、視界の隅には【呪力:142】と書かれていた。なんとかなるだろうか。14時半を過ぎた頃に、悟達が戻って来る筵山麓に向かう。十手が腰にある事も確認して、セレクト。
【あなたは隠れようとしています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:158)】
【1.隠れる 2.なにもしない】
1番。
【1.隠れる を選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:128)】
自分の体が少しずつ透けていくのがわかった。恐らく私の呪力も他から感知されないようになっているはず。宿儺の指と同じように。鳥居に背を預けて、15時になるまでじっと待った。悟と傑の気配が近付いてくると、私は十手を握り締めた。気を抜くな、その時はすぐだ。
「これで一安心じゃな!!」
「…ですね、」
「…。」
「悟、本当にお疲れ。」
来る。悟が術式を解こうとした時、私は悟の背後に飛び出した。指を鳴らして術式を解く。十手で軌道を逸らしたとはいえ、それは私の左胸に深く刺さった。
「っ、」
「…え、」
「何してんだ、理玖。」
「理玖!!」
「言った、でしょ、止めなきゃ、って…。セレクト、」
【あなたは負傷しています。選択してください。選択すると呪力を50消費します。(残り呪力:130)】
【1.反転術式を使う 2.なにもしない】
「甚爾様、捕まえた、」
「…、」
「理玖!」
悟がパパ黒を吹き飛ばした。その勢いで私に刺さっていた刀も抜けて、血が噴き出る。傑がパパ黒に手持ちの呪霊をぶつけた。くそ痛い…、1番、
【1.反転術式を使う を選択しました。呪力を50消費しました。(残り呪力:80)】
「理玖!!」
「はぁ…大、丈夫、反転術式使えるから。悟は、怪我は?」
「理玖に比べたらかすり傷!それよか何してんだよ!」
「傑、理子ちゃん連れて、天元様の元に向かって。悟はここに残って、私は甚爾様と話があるから。」
「理玖、」
「傑、お願い。今は私の指示に従って。」
「…2人とも、油断するなよ。」
「ありがとう、傑。」
傑が天内理子と黒井さんを連れて走り出したのを見届けて、私は悟の手を握った。悟が私を見て顔を顰める。
「何やってんだよ、理玖、」
「ごめん。けどこれしか方法思いつかなくて…。今から甚爾様と話をするから、悟はただ立ち会ってくれればいい。」
正直怖い。さっきパパ黒と悟の間に飛び出した時、本当に死ぬかと思った。手足が震える。私が震えてることに気付いた悟が、きつく私を抱き締めた。あぁ、ダメだ、泣きそう。だけど今ここで泣くわけにはいかない。パパ黒が傑の呪霊を切り裂いて出てきた。悟から体を離して、パパ黒に向き合う。
「理玖、どういうつもりだ。」
「…甚爾様、私を盤星教に連れて行ってください。」
「はぁ?」「は?!」
「私を連れて行けば1億貰えるんですよね?その1億で手を引いてくれませんか?」
「理玖、どういうことだよ。」
「…悟、傑には絶対内緒にしてくれる?」
「何を、」
「盤星教「時の器の会」またの名を「神の子の会」。天元様と私を祀ってる組織だよ。私に懸賞金を賭けたのも盤星教。奴らは星漿体と天元様の同化をよく思ってない。けど、私と天元様の同化を望んでいる。」
「は…?…マジで言ってんのかよ、」
「マジだよ。私は家族まで人質にされたの。だから、私は盤星教を潰したい。協力してくれませんか、甚爾様。」
「…。」
「盤星教潰すってどうやって、」
「まずは甚爾様に、私を盤星教に連れて行ってもらいます。甚爾様は懸賞金を貰う。私は盤星教信者とその幹部にちょっとお話をします。…私の予想だと、理子ちゃんは同化を望んでないはず。悟は傑が戻ってくるまで待機して、同化がなしなら夜蛾先生に話しを付けて欲しい。同化まで時間がないから、盤星教も焦ってる筈です。甚爾様、お願いします。」
黙って私の話を聞いていたパパ黒が、ガシガシと頭を掻いて持っていた呪具を芋虫呪霊の中に仕舞った。
「…悪かったな、」
「…甚爾様…!」
「おい、理玖、」
「悟、さっき言った事は傑には言わないで。絶対に約束だからね!!じゃ、盤星教潰してきます!」
悟に手を振って、パパ黒と共に階段を降りていく。パパ黒が私を抱き寄せた。
「…飛び出てくる奴があるか。」
「ごめんなさい…、ああするしかなくて。だって甚爾様強いから、私も全然敵わないですし!」
「…理玖、」
「…甚爾様、盤星教潰したら、私のお願い聞いてくれませんか?私を傷物にした責任、取って欲しいんですけど?」
「結婚か?」
「え、いやそれもしたいですけど、詳しくは盤星教をぶっ潰してからお話ししますね!」
「…さっさと終わらせるか。」
「え、わっ、」
パパ黒が私を抱き抱えて孔の待つ車に向かった。