懐玉-4-


「神の子、廻神理玖。連れて来たぜ。」
「…また会いましたね、園田さん。」
「これはこれは理玖様…、…星漿体はどうした。」
「心配しなくてもあの子は同化を望んでいません。ですから、私が来ました。」
「…フム、そういう事でしたら、まあいいでしょう。金の受け渡しは手筈通りに。多少色もつけよう。」
「流石教祖様、太っ腹だね。」
「マジか?必要経費とは言え、かなり協力して貰ったのにか?」
「それよりも、時間がないので急いでやりたいことがあるんですけど。」
「なんでしょうか。」
「信者、幹部の皆さんにご挨拶を。」
「…既に皆集まっております。さ、どうぞこちらへ。」
「どうも。」

ひらりとパパ黒に手を振った。移動中の車内で今後の策は伝えてある。盤星教を潰すにはまずその活動資金を無くす。パパ黒と孔には施設内にあるであろう資金の隠し場所を探して、好きなだけ持って行っていいと伝えてある。そして私は、

「初めまして皆さん、廻神理玖です。」

セレクト。

【盤星教の信者があなたを信仰・崇拝しています。選択してください。選択すると呪力を100消費します。(残り呪力:100)】
【1.盤星教の信者を殺す 2.盤星教を解体する 3.なにもしない】

呪力丁度使い切るのか。出来ればぶっ倒れる事はしたくない。せめてあと1だけでも呪力が回復すれば、

「皆さんが天元様と私の同化を望んでいると聞きました。」

【呪力:101】

きた!

「そんなのクソ食らえ!ってことで、今日でこの盤星教は解体しまーす!」

2番。

【2.盤星教を解体する を選択しました。呪力を100消費しました。(残り呪力:1)】

ざわざわと騒がしくなっていた信者たちが、ピタリと静かになった。かと思えばまたざわざわと騒ぎだす。

「やだ、私こんなところで何してるのかしら?」
「ここはどこだ!?」
「なにここ?」

どうやら信者達から盤星教に関しての記憶が消えたらしい。素晴らしい。ホントに何でもありだな!?でも、これで平和が訪れるといいな。

「あーあー、皆さーん、本日はお集まりいただきありがとうございました。お出口は後方にあります、気を付けてお帰り下さーい。」

マイクの電源を切ってステージから裏手に戻ると、パパ黒と孔が立っていた。その手には複数のアタッシュケース。よかったー、施設内にお金保管してあって。

「じゃ、私は高専に戻るので、孔さんまた送ってくれますか?」
「お安い御用だ。」
「甚爾様も、話は車内で。」
「ああ。」
「いくらあったんですか?」
「さあな。」
「いーなー、私も1ケース欲しい…。」
「…やる。」
「え!?さ、流石にこのまま持って帰れないので、甚爾様が預かっててください。」

車に乗り込むと、パパ黒が私の頭を抱き寄せた。トン、と肩に頭を預ける形になって、私はきょとんとする。え、どうしたのいきなり。

「式はどこで挙げんだ。」
「え?なんの式ですか?」
「俺と理玖の結婚式。」
「え、」「ん?」
「お、おい、婿に入ったんだろ?」
「あ?んなの離婚だ離婚。」
「ちょ、甚爾様、話が飛躍しすぎて、」
「んだよ、俺と結婚したいって言ってただろ。」
「言いましたけど、ちょっといきなり過ぎて、」
「じゃあ俺と結婚しねぇのかよ。」
「えぇ!?急に拗ねちゃった!?」

どうしたのパパ黒!?!?

「えっと、私が話したかったのは、甚爾様をスカウトしようと思っていて、」
「スカウト?なんのだよ。」
「甚爾様、高専で教師しませんか?」
「は?」「プッ、」
「おい何笑ってんだよ。」
「いや、すまん。想像がつかなくてな。」
「なんで俺が教師なんか、」
「だって、そしたらいつでも私と会えますよ?」
「…。」
「私としては恵君も連れてきて欲しいです。あ、津美紀ちゃんでしたっけ?その子も連れて来てもらっていいですよ?私が話しをつけるので!お給料もいいですよ!」
「…。」
「それに、全寮制ですから部屋もあるし、時間が合えば私が手料理を振る舞う事も!」
「…。」
「甚爾様がいてくれたら、私も嬉しいんですけど…ダメですか?」

パパ黒の耳に囁くように問いかけた。どうだ、私のお誘い、乗ってくれ!!

「…毎日抱いてもいいってんなら、考えてやってもいい。」
「いや、毎日は任務もあるし流石に死んじゃうので、せめて週1くらいで、」
「…。」
「私としては、甚爾様の格闘術を高専の生徒達に教えて欲しいんです。呪具の扱いもピカイチですし、甚爾様の強さの右に出る者はいないので。」
「…。」
「私、いずれ高専で教鞭をとろうと思ってるんです。だから卒業しても高専にいますし、甚爾様が皆に指導してくれたら皆もスキルアップして、死ぬ人も減るでしょ?」
「…。」
「お願い、甚爾様っ!甚爾様にしかお願いできる人いないんです!」

むぎゅううっと抱き着いてみた。そうだ、こういう時のスピーカー!

【伏黒甚爾のスピーカーをONにしました。】

(給料も出て、住む部屋もあって、理玖の手料理?…なんだ、つまり俺と結婚ってことか。)

あれ、あれれ!?パパ黒どうした?!

(俺が高専で教師、理玖もいずれ教師になる…つまりこれも俺と結婚っつーことだな。)

パパ黒!?!?!どうしてそうなった!?!?

(俺にしか頼める男がいねぇってことは、つまり結婚だろ。)

「と、甚爾様…?」
「結婚だ。」
「え?!」
「…じゃねぇ。良いぜ、乗ってやる、その話。」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
「マジか、コイツが教師…。」
「あとは私に任せてください!話がついたらまた連絡しますね!」

高専に着くと2人と別れて急いで悟と傑を探した。2人は教室にいた。天内理子はどうなった!?

「ごめんお待たせ!どうなった!?」
「…理玖…、」
「え、なに、どうしたの?同化は、」
「…ごめん、理玖…、理子ちゃんは…、」
「え、は?嘘、なに、同化したの…!?」

悟と傑が俯く。え、嘘、ガチで…?だって原作では同化拒んで、パパ黒に、でもパパ黒は私が連れて行ったから…、

「…っ、嘘だ、私…折角、」

その場に膝をついた私。悟と傑が私を抱き締めた。2人も泣いているのか小さく震えている。…ん?震えて…?

「っぷはぁあっ!!だめだ、俺もぉ無理っ!!」
「さ、悟、ダメじゃないかっ、くく、」
「…は?なんで笑ってんの?!」
「理玖、すまない、理子ちゃんは、ぶふっ、無事だよっ、」
「笑うか喋るかハッキリしろや!」
「理玖の予想通り、天内が同化を拒んだ。」
「今は夜蛾先生が天元様に掛け合っているよ。」
「…はぁ…よかったぁ…っ、」
「お疲れ、理玖。」
「理玖、無事でよかった。」
「…うん、2人とも護衛お疲れ…。ごめんね、途中で離脱しちゃって。」
「にしても理玖がやられる相手が思い浮かばなくて焦ったわ。」
「まさかあの人だったとはね。」
「あ、その件で私夜蛾先生に話があるんだった!」
「なんの?」
「盤星教は解体させたよ。信者から盤星教に関する記憶をなくしたの。これで理子ちゃんが狙われることも無くなるから、普段通りの生活に戻れる。」
「流石神の子様様だね。」
「よせやい!あ、それと、甚爾様を高専にスカウトしたよ。」
「「…はい?」」
「甚爾様はOKくれたから、後は高専側の許可をもらうだけ。甚爾様は格闘スキルも呪具の扱いもぶっ飛んでるし、高専としても強い術師を育てる為ならいい返事をくれると思うんだよね。」
「っつーことは、アイツの顔毎日見るってこと?オ゛ッエー、」
「困ったね。理玖とスる時、確実に乱入される。」
「いや、なんでヤる事しか考えてないの?!」

その後、戻って来た夜蛾さんに盤星教解体についてと、パパ黒のスカウトについて話しをした。天内理子は無事に天元様との同化を逃れ、天元様の結界も同化をせずとも無事に機能した。天内理子は元の生活に戻り、黒井さんも天内理子の世話係として2人で楽しく暮らしているらしい。そして甚爾様はというと、

「クソ、また外したか。」

無事に高専で実技の担当教師として働いている。はぁ…よかったぁ…。パパ黒はちゃんメグも津美紀も連れて来た。…あれ、そう言えば奥さんどうなった?!共有スペースで競馬中継を聞いていたパパ黒の隣に座る。

「甚爾様、奥さんはどうしたんですか?」
「あー、離婚した。」
「え。」
「つーわけで、理玖といつでも結婚できるわけだ。」

そう言ってニヤリと笑ったパパ黒に、私は真顔で血を吐いた。



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