玉折-2-


灰原とナナミンが受ける筈だった産土神の討伐任務は、私が無理を言って代わったと伝えた。土地神だったそれを、呪霊ではなく元の土地神に戻した。村人たちの呪力も奪って、信仰心はそのままに。神は信仰が途絶えると、神ではなく祟り神…まあ、言い換えれば呪霊になってしまうらしい。今回の一件も、それが原因だった。村人たちには産土神を大事にするように説得した。でないとまた同じことが起こり、次はもっと悲惨な事になるだろう、と少し大げさに伝えておいた。すぐに年寄りたちが騒ぎ立てて産土神を祀り始めたので、これでこの村も落ち着くだろう。呪力を奪ったから、産土神への畏怖で呪霊が発生、なんてことも防いだし一件落着だ。次なる問題は…、

「夜蛾学長、ちょっとお話があるんですけど、」
「…どうした、」
「神仏系の任務、全部私に回してくださいってお話ししたと思うんですけど、」
「…ああ、その通りに任務を回しているはずだが、」
「これ、昨日私が行ってきた任務です。元は灰原、七海の2年生に振られていた任務です。」
「…産土神信仰…?」
「どうして私に回ってこなかったんでしょうか。説明できる人いますか?」
「…すまない、俺も把握していなかった。しかし、1人ですべて請け負うのは大変じゃないのか。」
「そんなの今更です。今後は全て、取りこぼしなく私に回してください。」
「うむ…。無理はするなよ。」
「それは勿論です。それと、八つ当たりみたいになってすみませんでした。」

気付けばもう9月になっていた。傑が美々子と菜々子と出会うのも9月だった。私は傑が単独で任務に行く度に、任務内容と場所を聞いた。けど、傑にその任務が回る事はなかった。私は持っていた任務概要の書かれたプリントを握りつぶしていた。そうだ、いくら傑を心配したところで、傑にこの任務が行くはずはないんだ。なぜなら、

『任務概要:村落内での神隠し、変死。その原因と思われる呪霊の祓除。』

村に着くなり、好感度イベントが発生した。

「これはなんですか?」

神隠し、つまり神仏関係と判断されてこの任務が私の所に回ってきた。■■県■■市(旧■■村)。原因の呪霊はすぐに祓った。村人が私を案内した部屋には、檻に入れられた小さな女の子が2人。漫画で見た通り虐待されてボロボロになった美々子と菜々子だった。

「■■…?■■■■!?」
「違います。」
「■■■■!!」
「事件の原因はもう私が取り除きました。」
「■■■!!」
「それはあっちが、」
「■■■!!■■!!■■■!!」

私も限界だった。

「皆さん、一旦外に出ましょうか。」

セレクト。

【旧■■村に112名が住んでいます。選択してください。選択すると呪力を130消費します。(残り呪力:140)】
【1.菜々子・美々子についての記憶を消す 2.112名を殺す 3.なにもしない】

「あなた達どうなろうと知ったこっちゃないんですけど、私も立場というかなんというか、やるべきことが山済みなんです。こんな所で呪詛師になんてなる気もない。」
「■■■!?」
「ああ、なに言ってるか分かりませんし、聞こえませんねー。というわけで、死にたくなければひっそり生きてください。後はもう知りません。」

1番。

【1.菜々子・美々子についての記憶を消す を選択しました。呪力を130消費しました。(残り呪力:10)】

部屋に戻って十手で檻の錠前を壊した。2人は私を見て震えていたので、檻を開けてその前で座った。

「びっくりさせてごめんね?私は廻神理玖です。お名前教えてくれる?」

美々子と菜々子が顔を見合わせて、口をもごもごとさせていた。

「あ、そうだいいもの持ってた。飴食べる?」

ポケットに入れていたイチゴミルクの飴を取り出して、2人に差し出す。ミミナナは恐る恐る檻の出口に近付いた。しゅばっ、と飴を掴んだ小さな手。檻の奥に逃げ戻った2人に、私は思わず笑ってしまった。野良猫に餌をあげてる気分だった。

「そんなに警戒しなくても、私はあなた達に酷いことはしないよ。この村にはもうあなた達を悪く言ったり、痛いことをする人はいない。皆私が懲らしめたから!」
「…ど、どうやって、」
「知りたい?」
「…うん、」
「私も2人と一緒で、不思議な力があるから。」
「「…。」」
「ねぇ、私と家族にならない?こんな檻の中より、もっと広い世界を見せてあげる。」
「……どうする、美々子。」
「……どうしよう、菜々子。」
「悪い人じゃなさそう…。」
「うん…。」
「…行く?」
「…行こ。」

2人はもぞもぞと檻から出てきた。見れば見る程痛々しい傷に、私は優しく2人を抱き締めた。泣き出したミミナナを優しく宥めて、2人の手を取って村を出た。これで、全部やるべきことは終わったはずだ。

「理玖様、」
「…うん?美々子ちゃん、私に様はつけなくていいよ?」
「理玖様!」
「…菜々子ちゃーん、話聞いてた?」

高専に連れて帰って治療を受けた2人はすぐに私になついたらしい。好感度もすぐに100%になった。つみっきーとも同じくらいの年だし、3人仲良くしてくれればいいな。2人をお風呂に入れてあげて、ご飯も食べさせて、ぐっすり私のベッドで眠るミミナナに、ふぅと息を吐いた。さてと、この2人の事も報告書を書かないと。とりあえず、あの村で起きていた事は全て正直に書いた。そして村人から2人についての記憶を消した事も。それ故に行く当てのなくなったミミナナを高専で保護、いずれ呪術師として育てるために必要な教育の援助をするように申請。今は夜蛾さんが学長だし、事情もちゃんと書いてるから大丈夫だろう。上層部は私の事をさらに危険と判断するだろうけど、今の所上層部に都合の悪いことはしていない。また泳がされて監視が続くくらいで終わるだろう。報告書を提出した際に、夜蛾さんが頭を抱えていたけどまあ、ごめんなちゃいって謝っておいた。私の知ってる未来に比べたら、この2人の面倒を見るくらい安いもんだろう。暫くミミナナは私の部屋で暮らすことになった。翌日、早速つみっきーにミミナナを紹介して、3人は無事にお友達になった。つみっきーと同じ小学校に通う手配もして、来週から転入することになった。

「…誰の子だよ。」
「やだなぁ、甚爾様との子に決まってるじゃないですか。」
「嘘吐け。」
「はい、嘘です。任務先で保護したんです。津美紀ちゃんのお友達になれると思って。」

私はミミナナを連れて高専内を歩き回った。皆に2人を紹介するためだ。

「理玖!!俺との子供!?」
「違うよー。」
「んだよ、それ。誰の子だよ。」
「保護したの。」
「おいガキども、理玖は俺のだから。」
「悟、子供相手に喧嘩売らないの。」

「理玖…いつの間に子供なんて…、」
「傑くーん?」
「いや、皆まで言わずとも、私はその子たちも受け入れるよ。理玖の子供なんだから、」
「任務先で保護したの。私まだ子供産んだことないからね?」
「それじゃあ私との子供を産んでくれるかい?」
「はい、次行くよー。」

「…マジ?」
「マジだけど、私の子じゃないよ。」
「よかった…。私の知らないところであのクズ共と子供作ってたのかと思って焦ったわ。」
「硝子、私まだ学生だから。計算して、計算!」
「学生でも産んでる人いるでしょ。」
「そうだけど、そしたら私中学生で産んでることになるよ…。」

「理玖さん、いくらあなたがモテるとは言え、これは私も納得がいきません。説明してください。誰の子供ですか。」
「建人君、私の子供じゃないから落ち着いて?」
「…そうですか、それは安心しました。」
「色々あって私が保護したの。」
「私にできることがあったらすぐに言ってください。」
「ありがと。」

「理玖さん、妹がいたんですか?」
「灰原きゅん…君だけだよそんな反応してくれるのは…!!」
「?」
「灰原きゅんも妹だと思って仲良くしてね?」
「はい!!」

「理玖姉ちゃん…。(ぎゅうう)」
「恵きゅんどうしたの…?」
「…おい、俺の理玖姉ちゃんだからな。」
「大天使メグエル…!!」
「理玖様、コイツ生意気!」
「理玖様は私達の。」
「ごふっ、」



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