話をしよう


お子ちゃまズのリクエストで晩御飯を作った後、ミミナナとの約束通りその日は私のベッドで一緒に眠った。次の日、朝からお子ちゃまズを送り出して任務に向かう。今日は久し振りに悟と傑と硝子の4人で任務だ。特級相当の呪霊討伐。移動中の車内で私は3人に、卒業後の進路についてを話した。と言っても、まだ私達は3年生で、高専はあと1年通うのだけれど。

「卒業したら皆どうするの?」
「どうするも何も、呪術師だろ。」
「それはそうなんだけど、他にやりたい事とか無いのかなって思って。ほら、私の勧めで皆高専に通い始めたけど、本当はやりたい事があったりするのかなーって。」
「別に、俺は呪術師以外やることねぇし。」
「私も、今更他の事を始めるつもりはないかな。」
「私もー。」
「そっか、ならよかった!実は、私夜蛾先生と甚爾様には話したんだけど、卒業後は高専で教師しようかなって思ってるの。」
「教師?なんで?」
「強く聡い仲間を育てるため…かな?」
「理玖が教師か…、似合いそうだね。」
「面倒見いいもんねー。」
「そう?なんか照れちゃう。」
「…じゃあ、俺も教師になる。」
「え?悟が?」
「なんだよ傑、」
「いや、教師なんて一番向いてなさそうだから。」
「はぁ?俺こそ教師に向いてるだろ!最強だし。」
「私は傑も教師に向いてると思う!硝子は医務室の先生とか!反転術式も使えるし!」
「医師免許取るのがめんどくさいけど、いいねー。」
「悟、教師になりたいなら、一人称は「私」最低でも「僕」にしないと!あとはその棘のある態度をもっと優しくまろやか〜な感じで!」
「私ってタイプじゃねぇだろ。」

硝子は車で待機させて3人で車を降りた。強く聡い仲間を育てる、そのためには私は心を鬼にしなくてはならない。来たるその日が来るまで、今出来ることは全てやっておかなくては。帳が下りると、早速呪霊の気配が近付いてくる。

「これは…!」

特級特定疾病呪霊「疱瘡婆」…!私はすぐに十手を構える。私たち3人の中で一番呪力の強い人、それは、

「悟!」
「!」
「領域展開!?」
「傑、ヤツを取り込むなら急がないと、悟が危ない!」
「ああ、どうやらあの手の動きとこの棺桶が関係ありそうだね。」

十手で棺桶に触れる。棺桶がバキッ、と音を立てて壊れた。カウントはまだだったから悟は無事そうだ。

「呪力が強い奴を狙ってるみてぇだな。仕方ねぇ、理玖、傑、俺から離れんなよ。」
「何をする気だい?」
「領域には、領域だろ。」
「まさか、」

え、リアル無量空処!?え、マジ!?見れるの!?ひやぁあうれぴよ!!

「領域展開…「無量空処」」

疱瘡婆が動きを止めた。うわあいつまでも情報が完結しないやつだああ!!すっげぇ!

「傑、領域解いたらすぐ取り込めよ。」
「ああ、任せて。」
「すっご、これが無量空処か…パないね。」
「だろ。俺最強だから。」

悟が領域を解くと、傑が疱瘡婆に手を翳して球体にした。悟は無限と反転術式を常にフル稼働させていたから、体も何ともないらしい。流石最強、ちゅよい。

「さて、今日は何の味かな。」
「ん?何の味って、クソ不味い味じゃねぇの?」
「味変してくれたんだよ、理玖が。」
「マジ?前から思ってたけど、人の術式にも色々できるってヤバくねぇ?」
「ヤバいね。けど、おかげで取り込むのが楽になった。悟だって、領域展開できるなんて知らなかったよ。」
「あー、俺も理玖が術式でなんかやった。」
「本当に謎だね、理玖の術式は。」
「ねー、私もびっくり。」

傑が球体を取り込んだ。喉仏がごくんと上下する。ひぇえ…えちちぃ!

「うん、今日も理玖の味。」
「怖い怖い。」
「なんだよ理玖の味って、説明しろ。」
「理玖のピーの時のピーの味だよ。」
「マジか、俺も舐めたい。」
「おいやめろ変態共!!」

帳を解いて車に向かう。車に乗って、私は重要な任務があったことを思い出した。

「そうそう、来週の土曜日、お子ちゃまズの授業参観あるらしいよ!皆で行かない?」
「授業参観?めんどくせぇ。」
「そう言うなよ。私はいいよ。」
「私もー。」
「悟は?」
「…じゃあ行く。」
「それじゃあ来週の土曜日は何としても休みを取ろうね!あ、荒井さん、そういう事なんでスケジュール調整お願いしてもいいですか?」
「あ、はい、あとで確認して調整しておきますね。授業参観か…懐かしいですね。」
「親が来てるかそわそわしちゃうやつですね。」
「俺は人の数が多くて気持ち悪かった。」
「私は特に何も思わなかったなぁ。」
「私も、だるいなーって思いながら授業受けてたわ。」
「ははは。」

そんなこんなで私達は、来たるお子ちゃまズの授業参観に向けて任務を前倒しにして受け続けた。無事に授業参観の日は全員休みが取れるように調整してもらえた。そしてもう一人、この日の為に休みを取らせなくてはいけない人物がいる。

「と、う、じ、さ、ま!」

パパ黒の部屋のドアをノックすると、パパ黒は欠伸をしながらドアを開けた。

「お疲れサマンサー!ってことで、ちょっといいですか?」
「んだよ、ヤりに来たのか?いいぜ。」
「いえ、そうではなくて、次の土曜日、恵きゅんと津美紀ちゃんの授業参観があるんです。私達は見に行きますけど、勿論甚爾様も一緒に来てくれますよね?」
「授業参観?…あー、津美紀がそんなこと言ってたな。恵もか。」
「そうですよ。2人共甚爾様も来てくれると思って楽しみにしてましたから、一緒に行きましょう?」

そう言うと、パパ黒はぼりぼりとお腹を掻きながら、私をじっと見た。…なんだ?!

「理玖がアイツらの親みてぇだな。」
「あら、じゃあ私と甚爾様の子供たちの為に、お父さんとして一肌脱ぎませんか?」
「ああ、今脱いでやる。」
「いや今じゃなくて!!」

がしりと腕を掴まれて部屋に引きずり込まれた。って、この前片付けたばっかりなのに、また新聞散らかしてるし!!

「ちょっと甚爾様、またお部屋散らかしましたね!?」
「あー、知らねぇうちに溜まってんだよ。こっちも溜まってる。」
「そういう下ネタはいいです!わ、今日は服まで散らかして…。もう、洗濯くらい自分でしてくださいよぉ…。」
「あー…散らかせば理玖がやってくれんだろ。」
「私は家政婦じゃありません!」

そう言いつつも私は散らかったパパ黒の服や下着を拾い集める。分別して洗濯機に入れて、洗剤と柔軟剤も入れてスイッチを押すと、ごうんごうんと洗濯機が仕事を始めた。これだからプロのヒモは…まったく…好きっ!!散らかった競馬新聞を束ねて、台所に溜まったペットボトルとジュースの缶も全部濯いで分別した。パパ黒はまたテレビを見ているらしい。絶対確信犯だ。こうやって私が部屋を片付けて、そしてまたパパ黒が散らかして、私が片付けて…このループだ。手を洗っていると、視界の隅に何かが入り込んだ。目がそれを捉えると同時に、私は悲鳴を上げる。

「いやあああああ!!」
「どうした。」
「甚爾様ああ!!」

のそのそと歩いて来たパパ黒に私は飛びついた。無理…出た…奴が出た…!!!

「奴が…!!!」
「あ?…ああ、そういう意味ね。」
「もういやあああ!甚爾様がお部屋を片付けないから奴が出たんです!!」
「分かったから向こう行ってろ。」

走ってパパ黒のベッドの上に飛び乗った。布団を被って見守る私。パパ黒がさっき私が束ねた競馬新聞の束から一部手に取ってぐるりと丸めた。スパァンッ、と気持ちのいい音が聞こえて、私はびくびくしながら様子を窺う。

「ん、殺った。」
「…はぁ〜…、」
「ティッシュ。」
「あ、はい、」

箱ティッシュを掴んで、出来るだけ奴の方を見ないようにパパ黒に箱ティッシュを手渡した。流石フィジカルギフテッド…奴の素早さはパパ黒の足元にも及ばないらしい。そりゃそうか。パパ黒がティッシュを何枚か抜き取って、奴の亡骸を包んでごみ箱に捨てた。

「ちゃんと手洗ってくださいよ!?石鹸で!!」
「分かった分かった。」
「あとちゃんと床も綺麗に拭いて下さい!!アルコールスプレー置いてありますから!」
「分かった分かった。」
「あとちゃんとゴミは分別して、容器は水で濯ぐなりして片付けてください!!じゃないともう甚爾様の部屋に来ませんから!!」
「分かった分かった。」
「もうっ、本当に分かってるんですか!?ひっ、鳥肌がまだ…、」

パパ黒は私の指示通りに床を綺麗に拭きとって、しっかり石鹼で手を洗った。

「ハッ、いいこと知ったな。」
「もう絶対イヤ!」

パパ黒はニヤニヤしながら私にキスをした。



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