呪いの子


厳重に施錠された重い扉を開けると、部屋の壁一面に貼られた札が目についた。おお、漫画で見た通りだ。そして2本の縄の間にある椅子に縮こまって座るおっこちゅ。悟がおっこちゅの前に歩み寄る。私は様子を見るべく、壁際で大人しく2人のやり取りを見守った。悟は伊地知から預かったものをおっこちゅに見せた。

「これは何かな?乙骨憂太君。」
「ナイフ…だったものです。死のうとしました。でも、里香ちゃんに邪魔されました。」
「暗いね、今日から新しい学校だよ?」
「行きません。もう誰も傷つけたくありません。だからもう外には出ません。」
「でも、1人は寂しいよ?君にかかった呪いは、使い方次第で人を助けることもできる。力の使い方を学びなさい。すべてを投げ出すのは、それからでも遅くはないだろう。」
「…でも…、」
「憂太君、」
「…理玖お姉…理玖さん、」
「前みたいに理玖お姉ちゃんって呼んでくれないの?」

私がおっこちゅの前に歩み寄る。この部屋の壁一面の札はあらゆる者の呪力を封じるらしい。故に里香ちゃんは出てこなかった。おっこちゅが少しだけ顔を上げて、私を見た。私はおっこちゅをぎゅっと抱きしめる。ぱいぱいが当たっておっこちゅがちょっとビクッとしていた。はえええ、童貞やん…かわゆいのう。

「今まで怖かったね…。」
「え…、」
「でも里香ちゃんは、きっと憂太君の事を護りたかったんだよ。だから里香ちゃんの為にも、力の使い方を学ぼう?私もいるから、大丈夫。憂太君が死んだら私はすっごく悲しい。死刑なんて許さない。」
「…でも、」

おっこちゅから少し体を離して、顔を覗き込む。

「憂太君は、私のこと好き?」
「え…、あ、う、は、はい…。」
「ふふ、顔真っ赤にして可愛い。」
「えっと、その…、」
「じゃあ憂太君、大好きな私に、憂太君の命を頂戴?私の為に、高専で力の使い方を学んで、沢山の人を救う手助けをして欲しい。それじゃあダメかな?」

私の言葉に、おっこちゅは視線を彷徨わせた。少しして、おっこちゅが小さく頷く。おっけぇい!おっこちゅから離れると、悟はまた口を尖らせて私を見ていた。

「さて、テンション上げてこ?」

私はおっこちゅと悟の背中を押して、部屋を出る。部屋を出た瞬間に強大な呪力の気配がして、悟が私の腕を掴んだ。里香ちゃんの手がおっこちゅの背後から現れた。

「里香ちゃん!」
<ゆゔだあああ、>
「悟、大丈夫だから、里香ちゃんと話させてくれる?」
「理玖、手の届く範囲にいて。」
「大丈夫。」

悟が私の腕を離した。おっこちゅがおろおろと私を見ている。

「里香ちゃん、久し振り。理玖だよ?覚えてる?」
<ゆゔだを゛ををを、>
「私の代わりに憂太君の事を守ってくれてありがとう。」
<……理玖お゛ねぇ゛ぢゃん?>
「そうだよ?覚えててくれて嬉しい。またジュース奢ってあげるね!」
<…、>

里香ちゃんは大人しく消えた。いやあ、リアル里香ちゃんの呪力量やべぇな。鳥肌立ったわ。ふぅ、と息を吐いて2人に笑顔でピースする。

「里香ちゃんもお友達でした☆」
「…理玖ってホント謎多すぎ。」
「謎多きミステリアスガール理玖とは私の事よ!」
「じゃ、行こうか乙骨憂太君。」
「え、あ、はい。」
「ちょっと2人して無視ってどういうこと!?」
「アラサーなんだからガールはないでしょガールは、」
「うるさいやいっ!」

私と悟のやり取りを見て、おっこちゅは小さく笑った。よかった、緊張少しは解けたかな?教室に着くと、おっこちゅは廊下で待機させて私と悟は中に入った。あぁ…!大天使トゲエル…!!大天使トゲエルと目が合うと、私は小さく手を振った。大天使トゲエルはネックウォーマーで口元が見えないけど、目元がちょっと優しくなったから多分笑ったんだろうな。かわよ…。

「皆なんか久し振りだね?」
「理玖が任務多すぎるからだろ。」
「しゃけしゃけ。」
「土産くれよ土産。」
「あ、昨日京都行ったのにお土産買うの忘れてた!ごめぇん…!」
「チッ、また京都かよ。」
「理玖も大変だな。」
「ツナマヨ。」
「ねぇ皆、僕にも労いの言葉とかないの?僕も特級だよ?最強だよ?」
「悟は別に、」
「どうでもいいな。」
「しゃけ。」
「あ゛ぁん!?…ま、前置きはこの辺にして、転校生を紹介しやす!!テンション上げてみんな!!」
「いえーい!」
「上げてよ。理玖だけじゃ可愛そうじゃん。いや理玖は可愛いんだけどさ、」
「随分尖った奴らしいじゃん。そんな奴のために空気作りなんてごめんだね。」
「しゃけ。」
「…。」
「フー、ま、いっか。入っといでー!」

悟の呼びかけでおっこちゅは教室に入ってきた。私と悟は窓際に背中を預けて様子を見守る。やはり原作通りに真希、パンダ、大天使トゲエルはおっこちゅを囲んだ。そして、

<ゆゔだを゛ををを、>
「待って!!里香ちゃん!!」
<虐めるな!>
「里香ちゃんすとーっぷ!」

私は3人を庇うように里香ちゃんの前に出た。里香ちゃんの手は少し躊躇したようだ。

「憂太君はなるべく早く里香ちゃんをコントロールできるようになろうね?」
「は、はい、」
「それと3人とも、憂太君について説明するから呪具仕舞って、席に座って。はい、里香ちゃんも、大人しくしてね。」

大天使トゲエルと真希の背中を押して席に追いやると、未だにおっこちゅの背後にある里香ちゃんの手に触れてみた。

「わ、指輪してるじゃん!いいなぁ?結婚指輪?」
<あ゛…あ゛あ…、>
「里香ちゃん照れてるの?可愛い〜!」

「何で理玖は呪いに対してあのテンションなわけ?」
「すじこ。」
「頭のねじぶっ飛んでるからだろ。」

それから悟がおっこちゅについて皆に説明した。里香ちゃんは大人しく消えたので、私はおっこちゅの頭をぐりぐり撫でる。

「憂太君これから一緒に頑張ろうね?」
「は、はい、」
「さぁこれで一年生も6人になったね。午後の呪術実習は2−2のペアでやるよ。棘・パンダペア。真希・憂太ペア。」
「げっ、」
「よ…、よろしくお願いします。」

「悟、今回の引率憂太君の方お願いしてもいい?」
「ん?てっきり僕は理玖が憂太の方に行くと思ってたんだけど。」
「ちょっとね。あ、里香ちゃん使わせても大丈夫だから、なんかあったら連絡して?」
「りょーかい。」
「さてと、棘君とパンダは私と一緒に行くよー。真希ちゃん、憂太君、気を付けて行ってらっしゃい!頑張ってね?」
「理玖が引率じゃねぇのかよ。」
「が、頑張ります。」
「真希、僕が引率じゃ不満なわけ?」
「フン、」

さて、小学校の呪霊は原作だと、高専を離反した傑が呪霊を放っている。けど今は傑は高専を離反せずに教師として所属しているから、百鬼夜行は起こり得ないはず。これから先全く予想ができない。何も起こらなければいいんだけど…。教室を出て、荒井さんの運転で私と大天使トゲエル、パンダは任務に向かった。

「さて、今日の任務内容を確認しまーす!2級呪霊が2体。心霊スポットとして有名なトンネルです。そしてなんと行方不明者も出てまーす!はいここでクエスチョン!優先事項は何だろな?はいパンダ!」
「行方不明者の捜索と救助。あと回収。」
「正解!そして気を付けるべき点は何だろな?はい棘君!」
「すじこ、高菜、こんぶ。」
「正解!生存者がいた場合は、救助を優先。その後祓除ね。私も帳の外で待機してるから、何かあったらすぐ連絡して。」
「しゃけ。」

トンネルの前で車を止め、2人がトンネルに向けて歩いていくのを見送りながら帳を降ろした。車に背中を預けてスマホを操作する。悟にLIMEして、おっこちゅ達の様子を確認した。やはり原作同様小学校に発生した呪霊の祓除らしい。原作で傑が放った呪霊がいるかは分からない。どうやら向こうも帳を降ろしたばかりだそうだ。次は傑にLIMEしてみる。

『傑、今どこ?』
『山形で任務中だよ。どうしたんだい?』
『お土産宜しく♡』
『勿論、そのつもりだよ♡』
『傑が♡使うってなんか意外…。』
『そうかな?それより、例の乙骨君?どうだい?』
『なんとかなりそう!今悟が引率してるよー。私は棘君とパンダの引率!』
『気を付けてね。理玖、愛してるよ。』
『傑も気を付けてね!私も愛してるよ♡』


――――――
おっこちゅの声優さん公式発表しましたね。
緒方さん合いそうだなって思ってたので予想的中でビックリです。
百鬼夜行、なにがなんでも参列しなければ…。



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