道化師はいらない


「理玖、それ…、」

悟と傑とパパ黒がグラウンドに集合すると、悟は私の持っていた人形を見て顔色を変えた。

「悟と傑は一度会った事あるから覚えてると思うけど、甚爾様はまだだから一から説明するね。」

私はパパ黒にミシェル・ベルティオについて覚えている範囲で話した。パパ黒は小指で耳をほじほじしながら話を聞いている。いや、あの、一応真面目な話なんすけど……んもう、好きだから許しちゃう!!

「で、ソイツを呼び出してどうすんだよ。」
「今度こそ決着をつけます。」
「殺すってことでいいんだよね。」
「そうだね。出来れば殺しはしたくなかったけど、私だけじゃなくて高専の人達にも被害が出るようであればやむを得ない。作戦は特になくて、私の術式で呼び寄せる、あとは話をして用済みとなればさようなら。けど、奴に術式があるかどうかは不明です。」
「今回は奇襲じゃねぇってことか。」
「はい。なので油断はしないでください。」
「理玖は僕と一緒にいて。絶対守るから。」
「…ありがとう、悟。それじゃあ呼びます。セレクト。」

【ミシェル・ベルティオは生きています。選択してください。選択すると呪力を100消費します。(残り呪力:263)】
【1.行方を追う 2.呼び寄せる 3.なにもしない】

「2番。」

【2.呼び寄せる を選択しました。呪力を100消費しました。(残り呪力:163)】

暫くして私達の頭上に影が落ちた。この流れも前と同じ。影から飛び退くと、ミシェル・ベルティオは昔と同様黒いローブを身につけていた。

「久しぶりだな、理玖・廻神。」
「そうですね。それで、今回は何を企んでるんでしょうか。」
「…甚爾・伏黒、傑・夏油もここにいるのか。」
「それが何か?彼らは自分の意思でここにいる。」
「…かなり物語に影響が出ている。」
「だからどうしろと?」
「…ここらで死んでもらう。」
「お断り。セレクト。」

【ミシェル・ベルティオは生きています。選択してください。選択すると呪力を100消費します。(残り呪力:163)】
【1.殺す 2.祓う 3.なにもしない】

「君の知る未来とは異なるぞ。」
「羂索はもういないんだから、当たり前でしょ。さようなら、ミシェル。もう二度と邪魔をしないで。」
「…地獄の淵でまた会おう。」
「前も聞いたなそれ。」

1番。

【1.殺す を選択しました。呪力を100消費しました。(残り呪力:63)】

ブシュッと音を立ててミシェルの首が捩じ切れた。今度こそ死んだんだろう。辺り一面に真っ赤な血が飛び散っていた。

「…うん、相変わらず、良く分かんない奴だね。」
「これは掃除した方がいいね。私の手持ちの呪霊に食べさせるよ。血も吸い取らせよう。」
「ありがとう。」
「…で、物語って何だ。」

パパ黒の言葉に私は固まる。そうだった…、パパ黒は何も知らないんだ…。悟には私から話したから前世の記憶がある事も、この世界が漫画やアニメの世界?って疑われたこともあるし、傑もなんとなく私が普通の女じゃないって感付いてるみたいだし…。パパ黒だけ何も知らないのは不公平かな…?いっそのこと3人には話しちゃうか…?

「…悟、昔私が話した2人だけの秘密、今ここで傑と甚爾様にも話していい?」
「僕はいいよ。話さないと納得しなさそうのがいるからね。」

私は2人に前世の記憶があることを話した。傑は前回のミシェルとのやり取りで薄々勘付いていたらしい。パパ黒は特に何も言わなかった。けど…、

「前世の記憶と物語に何の関係があるんだよ。」
「…それが…私の口からは言えないんです…。」
「僕が昔理玖に質問したことは結局合ってるの?間違ってるの?」
「…それも私の口からは言えない。」
「何の質問だよ。」
「理玖、言ってもいい?」
「私の口からは言えないけど、悟の口からなら大丈夫だと思う。」
「じゃあ話すね。これは僕の憶測だけど、僕たちのいるこの世界は、理玖の前世にとっては漫画やアニメの世界。そして理玖はある程度のこの世界の未来を知ってる。理玖は神の子としてこの世界に生まれて、前世の時に見たこの世界の記憶を頼りに、最悪なシナリオを回避しようとしている。」
「もしかして、さっき私や伏黒さんがここにいるって言っていたのは、理玖の知る記憶では私達は高専にはいない、もしくは死んでいる可能性がある…ってことかな?」
「多分そう。そしてやたらと高専関係者と理玖が知り合いなのは、理玖が高専に関わる人物だと分かっているからコンタクトを取っていた、ってとこかな。ど?僕の推理。」
「うんん…言えないけど拍手。」
「やった。」
「理玖が未来を知っていたとして、未来を変えようとしても、結局シナリオ通りになることもあるんじゃないかな。」
「と言うと?」
「その物語にとって、ターニングポイントになる出来事が多々あったはずだよ。それにそのフラグを全部回収できるとは限らないだろう?」
「うーん…、」

確かに、恵ママを救えなかったし、里香ちゃんも…、

「理玖1人で色々抱えすぎだろ。」
「あはは…。でも、私にしかできないから私はこの世界にいると思ってます。ミシェルがなんで私を選んだのかとか、どうやって私をこの世界に召喚したのかとか、謎な部分はまだあるけど、私は分からなくていいと思ってる。この世界の事気に入ってるし、この世界に私が生まれたから、今皆とこうやって生きているわけだし。」
「1人で抱え込まないで、何かあったらすぐ相談するんだよ。」
「ありがとう、傑。」
「やっぱり僕はその物語でも最強?」
「ふふ、内緒。そろそろ戻ろっか。」

教室に向けて歩き出そうとした時、パパ黒が私の名前を呼んだ。

「…どうして助けた。」
「甚爾様…?」
「理玖にとって俺は作中のキャラってことだろ。」
「…命の恩人を助けないような、薄情な女に見えました?」
「ハッ、見えねえな。」
「…私はただ、私の大好きな人達が幸せでいてくれればそれでいいんです。だから、皆には長生きして幸せになってほしい。」

私の言葉に、悟と傑はガバリと私を抱きしめた。

「理玖〜愛してるよぉっ!!!」
「理玖…私は理玖にも幸せになって欲しいよ。」
「ぐへえ苦しい…、」

パパ黒は私の頭にポンと手を置いた。そして私の好きなあの顔で、ニヤリと笑う。

「いい女になったじゃねぇか。」
「甚爾っ様!!(キュンキュンキュン)」
「パチ屋に戻る。」
「もうっ、勝手な人!」

私は悟と傑と共に教室へ、パパ黒はパチ屋に戻っていった。パパ黒ホント仕事しねぇなぁ…?!その後私は夜蛾さんに問題が解決したことを報告した。教室へ戻れば、ミミナナが私にぎゅうぎゅう抱き着いてきた。

「「理玖様!」」
「どうどう、落ち着いて。お待たせ天使たち!さて、授業しようか!」

結果的に言おう。12月24日に、百鬼夜行は起こらなかった。呪詛師である夏油傑は存在しない上に、呪詛師夏油傑に代わってシナリオ通りに事が運ぶように動いていたミシェルが死んだからだろう。ナナミンの黒閃は、私がちょちょいとセレクトして彼の呪力に確信を持たせた。これで黒閃最高記録保持者の座はナナミンに間違いなしだろう。

「憂太君はだいぶ里香ちゃんの扱い方が分かって来たみたいだね。」
「理玖に言われた通り憂太について調べたよ。」
「お、どうだった?」
「菅原道真の子孫で、僕の超遠縁の親戚だった!いやぁ、びっくり!」
「藤原道真って、あの日本三大怨霊の?」
「そ。」
「憂太君がね、里香ちゃんを呪っちゃったの。私としては2人はそのままにしてても問題ないと思ってる。だって、2人はただ純粋に互いを愛し合ってるだけなんだもん。そんな純愛、邪魔できないでしょ?」
「それでもいつか解呪が必要な時が来るかもしれないよ。」
「その時はまた方法を考えるよ。それよりも、来年の1年生について準備進めないとね。」
「恵もいよいよ高専生かぁ。」
「小さい頃から知っているから、なんだか親戚気分だね。子供の成長は早いな。」
「マイエンジェルメグエルの制服を考えないとね…ふふふ…、」
「理玖の目こわっ。」
「そう言えば、理玖が宿儺の回収を全然してないけどどういう事だ、って上が騒いでるらしいよ。夜蛾学長が頭を抱えていたけど、」
「そんなのあとでいいの。お、カウントダウン始まった!」

いよいよ運命の2018年が来た。



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