目が覚めた私は腰の痛みに溜め息を吐いた。あぁ…そういえばそうだった…大天使トゲエルの後にマイエンジェルメグエルと堕天使トジエルに…。身体はダル重、腰は激重、喉はカラカラだ。ていうかここどこだろう…。首だけで見えていた天井を見渡した。もぞもぞとなにかがお腹に絡みついた。布団を捲ってゆっくり視線を向ける。
「…ひぇえ…きゅん…!」
「…ん…、」
きゅんが…!私のマイエンジェルメグエルが…!!私のお腹にしがみ付いて寝ていた。ヒェえ…きゃわいい…そして2人共マッパやん…。あれ、パパ黒どこ行った?もう帰った?
「…んん…理玖さん…?」
「あ、ごめん…起こしちゃった?」
「…いえ…、親父は…帰ったみたいっすね。」
「そうみたい。はぁ…身体しんどい…。今何時?」
メグエルは枕元のスマホに手を伸ばした。
「…21時です。」
「…半日くらい寝てた?」
「はい、多分。」
すぐに反転術式で腰の痛みを取ってゆっくりと起き上がる。
「大丈夫ですか?」
「あ、うん、体重たいけど動けなくはないよ。…それより何回ヤッたの…?」
「…数えてないです…。」
「…うん、まあ、そんな気はしてた。…ふぅ…、報告書書かないといけないから部屋に戻「理玖さん、」
ちゅ、っとメグエルがキスをしてきた。ぴぇ…?なんでそんなきゃわいいことしゅるの…?え、え、え?待って?え?
「…もう少し、一緒にいちゃダメですか…?」
「…ひゃい…いいでしゅ…。」
「…良かった。」
フッと笑うメグエルがきゃわいい。思わずぎゅうぎゅう抱き締めた。マッパとかもう関係ねぇ!メグエルが可愛い…それだけだ!!!
「理玖さん、そんなにくっ付くと…、」
「え、あ…、」
「…っ、」
ひゃだぁ…メグちんがもう元気じゃん…!!!もうっ!!!中学生って怖い!!!ささっと布団でメグちんを隠したメグエルに、私はくすくすと笑う。早く服を着たいところだけど体中ベッタベタだし、何なら布団もベッタベタだ。え、メグエル今日どこで寝るの?布団洗わないとヤバいでしょ?
「あー、お風呂借りてもいい?」
「はい。」
「ありがとう。すぐ戻るから!」
メグエルの部屋の浴室を借りてすぐに髪と体を洗い直した。浴室を出て視界に入ったそれ。どうやらメグエルが新しいバスタオルを置いてくれたらしい。ありがたくお借りして部屋に戻る。メグエルがベッドに座ってテレビを見ていた。メグエルまだ裸じゃん。
「お風呂ありがとう、恵きゅん。」
「あ、はい。俺も風呂行っていきます。ドライヤー使ってください。」
「あー助かる!ありがとう!」
ドライヤーを借りて髪を乾かしながらスマホを確認した。うわ、結構LIME来てる。げ、夜蛾さんに呼び出されてる…。すぐ行かないとダメかな…。くそぉ、めんどくせぇ!髪の毛を乾かしながらLIMEの返信をしていく。すぐに皆から返信が来るから追いつかない。皆返信速すぎだから!!私髪の毛乾かしてるから遅くてごめんね!!ていうか順番に返してるのにキリが無い!!そうこうしている内にメグエルが浴室から出てきた。
「きゅん、おかえり。」
「あ、はい、ただいま理玖さん。」
「ごめんね、髪長いから時間かかっちゃって。」
「いえ、俺はすぐ乾くんでそのままでも平気です。」
「だめだめ!ほら、ここおいで。」
ベッドに座っていた私は足元をトントンと叩いた。大人しく私の足元に座ったメグエル。首に掛かっていたタオルで優しく髪の毛の水分を吸い取って、ドライヤーを掛けた。うわぁ、さらさら…でもやっぱりウニちゃん。可愛い…。髪を乾かし終えると、メグエルが私にお礼を言った。はぁあああもう可愛い!!存在からして尊い!!しゅき!!私も髪の毛を乾かし終えると、ドライヤを返す。
「ありがとう、色々借りちゃって助かりました。」
「いえ、理玖さんにならいくらでも。」
「まったくぅ可愛い事を言ってくれるなぁもう!」
「可愛いのは理玖さんです。」
「ぐふっ!!」
「あ。」
メグエルが私の口から垂れた血をぺろりと舐めとった。ぴゃあああああもう!!!すぐ!!すぐそうやって私を悦ばせるんだからあああ!!!!!んもう!!!ちゅきっ!!!!ブブブ、と私のスマホが震える。げー、誰だよこんな時にぃ!!
「あ、そうだった、夜蛾学長に呼ばれてたんだった…。」
「え、」
「多分今回のぶっ倒れの件についてがから、心配しなくて平気だよ。ごめんね恵きゅん、もう行くね。おやすみ。」
「ん、おやすみなさい、理玖さん。」
ちゅっとキスをして通話ボタンを押しながらメグエルの部屋を出た。
「しもしもー?」
『理玖、既読をつけておいて返事をしないとはどういうことだ。』
「すみません、今返そうとしたんですー!」
『グループの方に返信しておいてよくもそんなことを、』
「あーバレてた。ごめんなさい、今から伺います!」
『報告書は明日までに提出しろ。』
「ひぇええ…!全部で何件あると…。」
バタバタと学長室へ走った。私は今メロスだ。必ず、かの邪智暴虐の夜蛾学長の元にいち早く向かわなければならない。めちゃんこ走った。ヒールとかそんなんもう関係ねえ!ようやく学長室について、私は急いでノックしてもしもしする。
「お待たせしました!!!」
「遅いっ!!」
「ごめんなさーい!!」
「…まずは、今回の件について説明してもらおう。」
「あー…えっとぉ、憂太きゅんと里香ちゃんのラブラブランデブーをそっと見守り隊って言うのがあるんですけど、」
「…何?」
「あ、ごめんなさいおふざけが過ぎました。ゴホン、えー、今回の乙骨憂太、祈本里香の件で全責任は私が負うことになってたので、2人の状態が安定するまではと思って神仏系の任務をサボってましたごめんなさい。」
「…それで。」
「えーっと、溜まりに溜まった任務を1件ずつ消化するのは流石に時間がもったいないなぁーって思って、ぴゅーひょいっとできないかなって思って術式使いましたごめんなさい。」
「…それで呪力切れを起こして10日も意識を失うとは、特級術師として情けないと思わんのか。」
「ご尤もでございます…。」
「それと上層部から伝言だ。」
「ふい。」
「両面宿儺の回収の件、進展がないことについて説明責任を果たせとの事だ。」
「説明も何も、そう易々と宿儺の指に遭遇するわけないじゃないですかぁ!」
「それは俺も分かっている。が、上は早急に宿儺の指を回収しろと騒いでいる。なんでもありの理玖の術式を使えばたやすいだろうと。」
「ケッ!これだから頭の固い年寄り共は…ケッ!」
「おい、発言には気を付けろ。」
「がってむ…。」
「ひとまず報告書の制作に掛かれ。上層部への説明はその後でもかまわん。今日はもう遅いからな。」
「はいさ。」
学長室を出て自室へ戻る。くっそぉ…今から報告書の作成って何件あるんだまったく…30は優に超えてたぞ…。部屋に戻って部屋着に着替えると、早速パソコンをつけた。コーヒーも淹れていざ、尋常に勝負!
「えーっと…、あぁ、これは確か…、」
どうやら術式で消化した任務は私の頭の中に記憶されているらしい。これなら報告書まで全部やってくれればいいのに!もう!!
「理玖ー、いる?」
「いるよー?」
ガチャリとドアが開いて悟が入ってきた。お風呂上りらしい。サングラスにスウェットのラフな格好だ。はぇ〜…なんでスウェットで鎖骨パッカーン見えてんの?神なの?すこなんですけど。
「何やってんの?」
「報告書書いてる…。」
「え、もしかして寝てた分の?」
「おうよ。確認したら58件もあった。なんで皆神様仏様大事にできないの?あー!もうこれ何時までかかるかわかんない!!!」
「何か手伝う?」
「手伝うも何も、悟には分からないじゃん…。」
「うん、分かんない。それコーヒー?」
「悟も飲む?」
「いや、僕はいいかな。ココア置いてたよね?」
「あるよー、勝手に飲んで。」
悟がキッチンに向かった。暫くしてココアの入ったカップを持って戻ってきた悟は、テーブルにカップを置いて私の後ろに座った。カチャカチャとノートパソコンのキーボード音が部屋に響く中、悟は私の後ろからぎゅっと抱き着いてくる。なんじゃい。今真面目ちゃんモードじゃい。
「報告書が終わるまで僕が理玖のこと癒してあげる。」
「うんありがとう。集中してさっさと終わらせるから待っててね、カワイ子ちゃん。」
「はーい。」
大人しく私に抱き着いたまま悟は私の肩に顎を乗せた。うぃ、重たいぜ。悟も疲れてるのかな?暫く報告書に集中していると、すやすやと静かな寝息が聞こえた。え、マジ?寝たの?え、ココア全然飲んでないじゃん。
「悟?寝るならベッド使ってよ。」
「…ん、」
「…おーい?」
「………、」
「マジか。」
ガチ寝しちゃった…?私はお腹に回っていた悟の腕を掴んで、頑張って立ち上がる。いや、これじゃ無理だ。190オーバーの大男をどうやって運ぶか…。すっかり冷めたコーヒーを一口飲んで、私はひとり溜め息を吐いた。