静まり返った部屋に私と悟の呼吸音と、悟の部屋の前にあるししおどしの音だけが響く。さて、気まずくなってしまったな…。どうしよう…。
「理玖、今から何すんの…。」
「…何、しよっか…?」
えー…聞かれても…聞かれてもですよ悟くぅん…!私もそれ考えてましたから!なにする、マジで!?もっかい特訓しとく!?
「あ、待って、悟の家って結局東京ドーム何個分なわけ?」
「だから知らねぇって。親父に聞けよ。」
「…知りたかったら悟と結婚!とか言われそうだからやめとくわ…。」
「チッ、」
「なんで舌打ち!?そんなに私と結婚したいの!?」
「したい。」
「…思ったけど、悟って許嫁とかいないわけ?御三家ってお堅い古風なイメージだから、そう言う風習的なの残ってそうだなって思ってたんだけど。」
「…いたけど全部断った。」
「全部!?ちょっと待て、何人いたわけ!?」
「別に、言う程じゃねぇし、向こうから勝手に持って来た縁談だからこっちは了承してねえよ。」
「すっご、こっわ。」
「そんなに俺のこと気になる?」
「勘違いすんなし、ただの好奇心。」
寝転がっていた体を起こしてその場で伸びをすると、悟も体を起こした。私の目をじっと見つめる悟。私は悟の綺麗な六眼を眺めながら、ボーっと考える。五条家に縁談を持ち込めるくらい力のある術師の家系なんて、そんなにいるんか…?わっかんねー。
「なに?ちゅーする?」
「しねぇよマセガキ。」
「俺の初めて全部理玖にやるから。」
「…何の宣言よ、それ。」
「初キスとハグと手を繋ぐのはもうやった。後は俺の筆おろしね。」
「よく知ってんな、そんな言葉!?」
「まあ、俺だし。」
「…そうかい。」
全く容赦のない悟に私は頭を抱える。私、この体の貞操を守れるか…?悟が相手だと自信なくなってきた…。悟が立ちあがって、私に手を伸ばす。私はその手を掴んで立ち上がると、悟はそのまま私の手を引いて歩き出した。悟の部屋を出て、長い廊下を歩いて行く。…え、どこ行くの?
「どこ行くわけ?」
「東京ドーム何個分か気になるって言っただろ。」
「言ったけど…、」
「歩いてみりゃ分かんだろ。」
「…マジ?」
悟の部屋からぐるっと一番外側に面している廊下をひたすら歩いて行く。いやいや悟くん、お庭の広さは?お庭は東京ドーム何個分に含まれないの?含まないの?
「庭まで入れたら日が暮れるんじゃね?」
「それはねぇよ。」
「ちなみに悟は自分の家の部屋数とか全部把握してるの?」
「当たり前だろ。」
「ワーサスガ…。」
「片言じゃん。」
「いやいや、マジでデカいって。皇居といい勝負じゃない?!」
「それもねぇよ。」
「それよりもさ、もう特訓しないの?」
「するよ。」
「…一周するまで帰れまテンってか…。」
「じゃあ、外出る?」
「うん、出よう!探検しよう!ね、そうしよう!」
「…じゃ、実戦兼ねて、呪霊探しでもするか。」
今度は来た道を戻る事に。…あっれれ〜、玄関ってそんな遠かったっけ…?ようやく辿り着いた玄関で靴を履くと、私達はジャージ姿のまま五条家のお屋敷を出た。ていうか、五条家の近くに呪霊がいる気もしないけど、どうすんの…?
「じゃ、こっから競争な。先に呪霊見つけた方が勝ち。」
「いやいや、悟に分があり過ぎでしょ!?」
「…じゃあハンデ。俺が100数えるから、その間に先に行けよ。」
「…おっふ…、ちゃんとズルせず100まで数えてね!?そんでもってちゃんと私の事も探してよ!?絶対迷子になるから!自信もって宣言するから!お願いよ!?絶対だからね!?」
「必死かよ。」
「始めてきた場所ですからね!」
「わかったから、ほら、始めるぞ。よーい、ドン。」
うおおおお!私は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の悟より先に呪霊を見つけねばならぬと決意した。そんでもって死ぬ気で走った。私は今メロスだ!呪霊はセリヌンティウスだ畜生!走れ私!絶対先に見つけないと、何でも言うこと聞けよ的な事言われそうで怖い!!ふんぬううううう!せれくとおおおお!
【選択してください。選択すると呪力を15消費します。(残り呪力:46)】
【1.ジャンプする 2.スキップする 3.なにもしない】
ふんがああああ!使えない選択肢来たああああ!ていうか、何もない時のセレクトってホント選ぶの困るんですけど!何だよジャンプって!そんなん今ジャンプしたろか?!あ゛ぁ゛ん!?スキップってどのスキップよ!?ルンルン気分でご機嫌スキップてか!?くそがああ!誰かあああ!どうしろっての!?どうする!?とりあえず迷ったら1番!?ええい、どうにでもなれえええ!1番ティウスじゃあああ!1番ティウスって何だよちくしょおお!!
【1.ジャンプする を選択しました。呪力を15消費しました。(残り呪力:31)】
「ふおっ!?なに!?」
突然体に浮遊感を感じて、私は体勢を崩した。なにごと!?急にこういう意味分かんないこと起きる系!?心臓に悪すぎじゃない!?天高く浮いた体は勝手に下降を始める。落ちてね!?これ落ちてるよね!?いやあああ!無理無理無理無理!浮遊感が気持ち悪っ!Gが掛かってるから!虫じゃない方のGが掛かってるから!ひぃぃいいい死ぬぅううう!恐怖で目を瞑る私の耳に、あの音が聞こえた。
【好感度イベント発生!選択してください。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:31)】
【1.イベントを選択する 2.イベントを無視する 3.なにもしない】
いやいやいやいや、今なにもしないってアホか!?それともバカか!?良く分かんないけど好感度ってことは悟か!?それとも別の誰か!?別の誰かって誰!?誰でもいいからなんかとりあえず助けて!!1番っぬぅ!!!
【1.イベントを選択する を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:31)】
私の体は真っ逆さまに地上へ落ちていく。いやいやいやいや、結局落ちていくんかいっ!
「…なんでガキが降ってくんだ…。」
「…私にもわかりません…。」
地面とこんにちは予定だった私をキャッチしたのは、着流し姿のナイスガイ…もとい、伏黒甚爾だった。マジか…、こんな出会いって有り!?しかも結構Gが掛かってたよね!?なんでこの人何ともない顔してんの!?恐るべし天与呪縛!ふぃひじかるぎふてっど!!!つかやっべ、若かりしパパ黒イケメンすぎね!?え、鼻血出そうなんですが…!
「あ、あの、ナイスキャッチありがとうございました…!廻神理玖です、是非今度お礼をさせてください!」
「…ガキからの礼なんて期待できねぇからいらね。」
「そこをなんとかああ!せめてお名前だけでも!お名前!!!ね!?名前だけでも覚えて帰りましょ!?」
「んだ、このガキ。」
「ガキじゃないです、理玖って呼んでください!」
パパ黒の頭上には0%の文字。つか、パパ黒も好感度の対称なわけ!?…え、これもしかしたら、私が頑張ったらパパ黒も天内理子も死なない未来を選択できたりしない?!え、絶対100%にしよ!!恵ママにも恵にも、なんなら津美紀ちゃんにも悪いけど、私は全力でパパ黒口説くわ!!年齢差なんて関係ねぇ!ハッ、待ってろよカワイコチャン!
「…禪院甚爾。」
「禪院甚爾様…!」
「…様はいらねぇ。ガキのくせに生意気だな。」
「ガキじゃないですってば、理玖って呼んでください!甚爾様!きゃ、素敵!」
「…ハァ…。」
パパ黒が溜め息を吐いた。待って、パパ黒、今ね、私あなたにキャッチされたままでお姫様抱っこ状態なわけ!そんでもってイケッメンのパパ黒の溜め息が私に掛かるわけ…!何ソレどんなマイナスイオン!?吸っとくか!?吸っとこ!!
「スーハースーハー…何この幸せ…甚爾様の腕の中で死にたい人生だった…。」
「…オマエ、歳いくつだよ。」
「ピカピカの小学1年生です!」