いのちだいじに


おっこちゅに抱き潰された次の日、痛む腰を反転術式で治した私は欠伸をしながら服を着替えた。おっこちゅは欠伸をする私を見ながら笑っている。いや、なにわろてんねんだからな!?おっ!?性の喜びを知りやがって!!!おっこちゅの反転していた好感度は30%まで回復していた。

「じゃあね、憂太君。ちゃんと皆に内緒にしてね…?」
「勿論です、理玖さん。」
「…じゃ、お邪魔しました。」

おっこちゅの部屋から人の気配を辿り、タイミングを見て自分の部屋に戻った。すぐにシャワーを浴びて着替えると、急いで支度を済ませる。部屋を出たところでパパ黒とばったり遭遇してしまった。

「理玖、」
「おはようございます、甚爾様。」
「……おい、なんでジャケット着てんだよ。脱げ。」
「えぇ!?やですよ、痴女じゃん!」
「あぁ?痴女だろうが。」
「酷いっ!誰のせいでこの服になったと…!」
「あー聞こえねぇな。」
「都合よく耳が遠くなるんだから!今日も1年生の鍛錬お願いしますね?」
「…おい、」
「はい?」

パパ黒が私の手を掴んで抱き締められた。ぬおぉ…急にこういう事やって来るパパ黒マジなんなの…殺す気かよぉ…。私を抱き締めながらしっかり尻を揉んでるパパ黒に、私は苦笑い。

「今日は抱かせろ。」
「ちょ、この前恵きゅんと、」
「今日は2人でだ。」
「…もう、勝手なんだから…、そう言うところも好きですけどね!!」
「ハッ、だろうな。」
「けど残念ながら今日から出張なので無理です。」
「あぁ?どこだよ。」
「ちょっくら北の方へ。」
「チッ、帰ってきたら覚えてろよ。」
「あんっ!」

パパ黒は私のお尻をペチンと叩いて去って行った。いや、ちょ、え、パパ黒ぉ?!目が覚めてから連日おせっせでめっちゃ身体しんどいんですけど…?!はぁ、と溜め息を吐いて、教員室に向かう。今日のスケジュールを確認して、悟と傑に軽く挨拶してお見送りのキスをしてもらって高専を出た。荒井さんの運転で東京駅まで送ってもらうと、新幹線と電車を乗り継いで向かった目的地。今日の出張はスカウトも兼ねている。そう、東北と言えば…野薔薇!いやぁ、もう1月半ばだし、本当はもっと早く来たかったんだけどね。確か高専への入学方法は祖母からの推薦って書いてあった。いずれ高専に通う事は分かってるけど、なるべく確実なものにしておきたい。私が色々動いてることで原作の未来と変わる出来事も増えるだろうし。長距離移動を終えて辿り着いた東北の地。駅から出てバスやタクシーを探す。んー…そもそも詳しい住所なんて知らないし、元々別の任務ついでだからなぁ。会えるかどうかは賭けに近い。バス停の時刻表を3時間に1本…マジか。タクシーだな、こりゃ。

「すみません、ちょっとここに行きたいんですけど。」
「ん、ああ、ここねぇ。ちょっとねぇ、メーター弾みますよぉ。」
「大丈夫です、お願いします。」

タクシーを拾って任務先の住所を見せると、運転手はタクシーを走らせた。山と田畑の大自然、うん、いいねぇ田舎の景色。土のにおいがする。任務先である神社に着くと、支払いを済ませてタクシーを降りた。作法通りに神社を参拝し、神主さんから話を聞く。近くの祠で宿儺の指を管理しているらしい。案内してもらっていると、見覚えのある家を見つけた。…あの家って…、

「沙織ちゃん家じゃん…。」

ってことは近くに野薔薇の家もあるかもしれないと…?!そりゃ戻って来ねば!!さっさと任務終わらせよ。宿儺の指を回収して、再び沙織ちゃん邸へ。念のために高専のパンフ持って来ててよかったぁ…!沙織ちゃん邸をじっと見上げる。いや、でかいなぁ…。田舎に豪邸って感じか。しばらく眺めていると、好感度イベントが発生した。お、来た来たぁ!迷わずイベントを選択。

「…誰、」
「ん?」

声のする方に視線を向ければ、中学校の制服を着た野薔薇がいた。うお…マジモン野薔薇かわよっ、

「初めまして、あなた釘崎野薔薇ちゃん?」
「…なんで私の名前…。ていうか、この家に何か用?ここ、空き家だけど。」
「…ちょっと気になってね。それより、これあげる。」

私は高専のパンフレットを野薔薇に渡す。野薔薇の顔色が変わった。

「…アンタ、呪術師?」
「そ。廻神理玖です、よろしくね野薔薇ちゃん。」
「廻神…理玖…?って…神の子!!」
「おや、ご存じでしたか!じゃあ話が早いかも。野薔薇ちゃん東京に来ない?私と契約して、呪術師になってよ!」
「東京!?マジ?」
「マジでーす!いい返事を待ってるから、これ連絡してね!」

LIMEのQRコードと電話番号の書かれた私の名刺を渡した。私の名刺とパンフレットを持って飛び跳ねる野薔薇を見ながら、私はくすくす笑った。ハッ、と野薔薇が私の手を掴んだ。

「理玖さんからも言って欲しいんだけど!」
「ん?何を?」
「うちのおばあちゃん説得して欲しい!」
「あーそういう事ね、いいよ?」
「やっりぃ!それなら東京行きは確実ね!!」
「ここは嫌い?」
「嫌い!!」
「ま、田舎には田舎の嫌な部分があるよねぇ。皆口が軽くてすぐ噂とか広まっちゃうし、」
「そう!そうなの!!ほんとムカつく!近所に赤飯持ってくる奴なんて東京にいないでしょ!?」
「いないと思う。でもね、野薔薇ちゃん。東京にも東京の嫌な部分があるよ。私から声を掛けておいてなんだけど、田舎と東京じゃ呪いの強さも狡猾さも、全然違う。呪術師は死と隣り合わせの仕事だよ。それでもここを出て東京に行きたいって言うなら、私は好きなだけ協力してあげる。」
「……私は…私が私らしくあるために、こんなところ出て、東京に行きたい!」
「…そ?なら野薔薇ちゃんのおばあちゃん説得しないとね?ところでお手洗い借りてもいいかな、コンビニも近くになくて…、」
「神の子でもトイレ行くんですね。」
「いや、私も一応人間だから。」



...



野薔薇の実家で野薔薇のおばあちゃんを説得した後、私は再び東京へ戻るためにタクシーで駅へ、駅から電車と新幹線を乗り継いで移動していた。いやぁ、おばあちゃんの説得は結構大変だった。自分の手で育てたいというお婆ちゃんと、何が何でも東京に行きたい野薔薇との口喧嘩が勃発。家中の物を投げる投げる。ちゃぶ台飛んで来た時はマジでビビった。いや客人の前でようやるわって思った。次の任務があるから、って話を切り出して喧嘩を止めたけど、あの調子だと原作通り野薔薇は遅れての入学になりそうだなぁ…。はぁ…、もうすぐゆじたんに宿儺の指を拾わせなくちゃいけないと思うと、なんかちょっと憂鬱。今回回収した分で、宿儺の指は高専に保管されていた分を含めて4本。そして私が隠し持ってるものを含めれば5本集まった。…あと15本。確か偽夏油達も宿儺の指を集めて、高専から奪ったのを含めて10本近く持っていたはず…。そしてミミナナも、渋谷事変で虎杖悠仁に食わせた分と、もう1本場所を知ってると言っていた分がある。………術式使って一気に回収した方がいいのかなぁ…。いやでも、どんなリスクがあるか分からない。6月までに、高専で保管分が6本になった方がいいだろうか。

「あー…もう、楽しみなのに楽しめない…。ほんと呪術師ってクソ!ていうか上がクソ!」

駅弁をもぐもぐしながら、私は窓の外を見た。流れる景色を見ながらふと、違和感を覚える。…なにかいる。呪霊の気配が…。十手に手を伸ばす。気配はこの新幹線に突然現れた。何、どこ?セレクトするか。そう思っていた私に突如とてつもない衝撃が襲い掛かった。車両が揺れて乗客が悲鳴を上げる。あぁ!駅弁落ちた!!!まだ半分も食べてなかったの!!!

「クソが…、マジで殺す上層部…!セレクト!」

【1級呪霊7体があなたを狙っています。選択してください。選択すると呪力を210消費します。(残り呪力:270)】
【1.全て祓う 2.全て返す 3.なにもしない】

「返す?つまり私を狙った奴らに返るってことかな…。じゃ、お返しするしかないよね。2番。」

【2.全て返す を選択しました。呪力を210消費しました。(残り呪力:60)】

車内では原因不明の故障が発生したとのアナウンスが流れていた。にしても、1級7体、どこから忍ばせた…?いや、それより私を狙って単体でというよりかは、この新幹線ごと事故に扮して私を処理するつもりだった感じか。…他の乗客を巻き込むなんてどうかしてるわ、ホント腐ってる。

「………マジで潰すか、上層部。」

【あなたを呪った人物に呪詛返しをしました。あなたを呪った人物は死亡しました。(残り呪力:60)】



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