ナナミンとのおせっせ中に私は仰天した。突然ナナミンの好感度が反転したのだ。
「あっ、なんで…っ、やっ、あぁ!」
「なにがなんで、です。」
「けんと、あっ、好きだからっ、」
「私は愛してます。」
「あいしてるっ、わたしもあいしてるっ、」
反転した高感度が青になっている。必死にナナミンに縋りつくと、それは5%まで回復した。なんで突然こんな事に…?頭が回らないままひたすら与えられる快感に酔いしれ互いに果てる。私を押し潰さないように抱きしめるナナミンの背中にきつく腕を回して、上がった息を整えた。
「けんと…、」
「理玖さん、愛してますよ。」
「ん…、愛してる…、」
お酒を飲んでいた事もあるのか、呼吸は落ち着いてきたけど意識は少しずつ私を眠りに引き込もうとする。ダメだ…まだ寝ちゃ、好感度戻さなきゃ…、そう思っている内に真っ暗になった視界。そしてまた夢を見た。私が手に持っていたのは17巻だ。うお、表紙チョロ哉じゃん!!!え、なにこのポーズイキってるぅ!かわいいっ!何舐めてんのこれ、ケチャップ?ねぇ、ケチャップ舐めてんの?何で頭からケチャップ被ってんの?なにやってんのこの子はもう、おっちょこちょいなんだから☆なんて1人でテンションが上がりつつも、17巻を読み進めて私は泣いた。そんな…嘘だろ…、夜蛾さん…。悟が獄門彊に封印されてからというもの原作ストーリーには絶望しかない。どうしたらいいんだろ。羂索はもう祓ってるけど、万が一羂索が誰かに指示をしていて悟を封印するなんてことがあったら、この原作のストーリーにも沿った未来が出来上がってしまうかもしれない…。それだけはダメだ。夜蛾さんも、真依ちゃんも、チョロ哉も、皆生きて幸せになって欲しい。やっぱり上層部潰すか?でも次上層部に歯向かったら私呪詛師になっちゃうし、呪詛師になったら私処刑対象になっちゃうし…。クソ、どうすればいいんだ…。んん…待って、私思ったんだけどさ、このままだと脹相、壊相、血塗はどうなる…?あれは偽夏油の指示で真人が九相図を盗み出したからできた訳であって、このまま原作を知っている私が何もしなければあの3人は生まれない可能性もあるってことじゃん…!え、そんな、どうする!?私あの3人結構好きだよ!?脹相なんてもう私もお兄ちゃんって呼びたいしお兄ちゃんになって欲しいくらい好きよ!?え!?脹相だけでも会いたいけど、そんなことしたら私完全に呪詛師じゃん…!?いやでも壊相と血塗も好きだよ…アニメ何度泣いたことか…りめんばーかっこ良すぎる…。はっ、そうだゆじたんと野薔薇はあそこで黒閃使えるようになるんじゃん!いやでも殺さないで欲しい…脹相が悲しむから…。やっぱ黒閃は私の術式使ってちょちょいと呪力の核心つかせるしかないか。とすれば私が出来ることは何だ…何から手を付ければいいんだ…。整理しよう。まず17巻の流れからして、悟が封印された場合夜蛾学長が特級認定されて無期限拘束…。まあまずこれは避けなきゃいけない。意図的に作ったのであれば呪骸の軍隊を所持できるからって話だったよな…。17巻を読み返しながら私は頭を捻った。なんでここでこんなことになったんだろ?あれか?パンダを1級術師に昇格推薦したのも関係あったりする?交流会の時の映像とかって上層部まで見てたりすんのかな…。ていうか悟が夜蛾さんの事も守ってたってこと?悟ならパンダを一目見て意思ある呪骸だとか分かるだろうし。うーん、分からんぞこればっかりは…。そもそも悟が封印さえされなければいいんでしょ?…獄門彊壊すか?え、あれ壊せるかなぁ…。今どこでどうなってんだろ…。あ、でも万が一悟が封印されちゃったとしても、パパ黒が天逆鉾持ってるからなんとかなりはするのか…?いやそもそも封印自体をさせちゃいけないんだ…やっぱ獄門彊は回収して破壊するか天元様に2つとも封印してもらう?…そう言えば私天元様に会った事ないな…。会えるかな、会ってみる…?ダメだ脱線しすぎ。とりあえず次だ。禪院家ぶっ壊し問題…。真依ちゃん…。チョロ哉は…うん、チョロ哉だからそのままでもいいだろ。あ、でも一回様子見に行った方がいいかなぁ…?真希真依の昇格を邪魔してるのは禪院家っぽいし。なおやきゅんおねがぁい♡ってやったらなんとかなりそうな気もしなくはない。…え、それはそれでチョロ哉大丈夫?ていうか直毘人が現当主だから直毘人にたらふく酒を渡して飲ますか。そんで一筆書かせでもすればいけんじゃね!?まず真希真依を昇格させよう。そして禪院家ぶっ壊されると困るから仲良しこよししようねーって話を付ける。…そもそも次期当主問題が重要なんだよな。パパ黒生きてるし、マイエンジェルメグエルは禪院家相伝術式継いでるし。相伝継いでた方が当主になるでしょ?そしたら…え、やっぱメグエルは禪院家当主になれるよね?めんどくさいからなりたがらないだろうなぁ…。メグエルの意見を聞こう、こればっかりは。
「んーっとまずは、獄門彊を探して表と裏の封印、もしくは破壊する。あとは夜蛾学長は悟がいれば無問題ってことでいいのかな?そうであって欲しいな。九相図問題は…、真人探してみるか…?私が真人に指示して原作通りに九相図を…、いや、私サイコかよ。どこまでも自分の事ばっかりだな…!…はぁ…とにかく、ゆじたんと野薔薇の黒閃についても私が何とかする。禪院家は一度顔を出しに行く…。そんなところかな…。」
クソ…、ミシェルを殺したせいで私は自分の首を締め上げてしまったらしい。アイツが偽夏油の代わりに色々としてくれていたんだから、当然アイツがいなければ必要な事は私がしなくてはならなくなった。クソおおおお!!殺すのもうちょっと待てばよかったああああ!!そうこうしているうちに意識が浮上する感覚。ああ待って最後にもう一回脹相が泣いてるとこ…よし、見れた!
「理玖さん、起きてください。」
「…んぅ…、建人君…、」
「もう朝ですよ。高専に戻りましょう。」
ナナミンに起こされたらしい。もう朝か…あんまり休めた気がしないけど仕方ない…。
「体は平気ですか?」
「うん…疲れは残ってるけど動けなくなるほどヤったわけじゃないし、大丈夫。それより寝ちゃってごめんね…。今度また気の済むまでシよ?」
「…ええ。」
ナナミンの好感度が10%まで戻っている。…何でいきなり反転しちゃったんだろ…。ゆっくりと起き上がり、ナナミンから私の服を受け取った。寝ぼけ頭のままもぞもぞと着替えていると、胸元についた赤い痕を見つけてぱちくり。え、いつの間に付けたんだろ。私が寝てる間に?
「建人君痕付けた?」
「つけました。」
「わーお。」
まあ腰痛くなる程してないし反転術式も使わないでいっか。痕残ったままになるけど。
「あ、シャワー浴びてない。」
「一度高専に戻ってからにしましょう。チェックアウトの時間も近いですし。」
「…じゃ、仕方ないか。そうしよう。」
ナナミンがフッと笑った。私に伸びてきた手がするりと胸元の痕を撫でる。こ、こやつ…わざと見える位置につけたな…。
「消さなくていいんですか、反転術式で。」
「あーうん、腰痛くなるほどヤってないからいいかなって思って。消して欲しいの?」
「いえ、残しておいてください。」
「なぁに建人君、独占欲丸出しじゃ〜ん。かんわいっ!」
「可愛いのはあなたでしょう。」
「お母さん、そんな子に育てた覚えはありません!」
「いえ、育てられた覚えはありません。母でもないですし。」
「マジレスかよ。」
身支度を整えて部屋を出る。ナナミンがホテル代を払ってくれた。私が誘ったので、だって!!んもうこのエロ紳士め!好き!!ホテルの前でタクシーを拾って高専まで戻る。誰にも会いませんように…そう願いながら自室まで向かった。部屋についてすぐにシャワーを浴びて新しい下着と仕事着に身を包むと、いざ教員室へ。お、傑見っけ!
「傑おはよー。」
「や、おはよう理玖。…それ、誰が付けたんだい?」
「ん?」
傑が私の元へ歩み寄り、胸元をツンと指さした。ついでに感触を確かめるようにつんつくされている。やめろ変態紳士。
「いけない子だね。私という男がいながら、誰に抱かれて来たんだい?」
「ナイショ。絶対喧嘩吹っ掛けるでしょ?」
「そんなことしないよ。じゃあ今夜は私の相手をして貰おうかな。」
「あれ、傑出張じゃなかったっけ?」
「悟に代わって貰ったよ。理玖からのお土産を全部食べた罰にね。」
「あ、そう言えばそんな話してたわ。」
「理玖…、」
「ぁ、ちょっと、こんな所で、」
傑はナナミンがつけた痕の上に吸い付いた。上書きするように痕を残した傑に私は苦笑い。全く…皆嫉妬深くて困りものだ。傑の手は私の体を撫で回している。この男、いちいち触り方がいやらしい。
「そう言えば傑、天元様に会った事ある?」
「いや、ないよ。星漿体任務の時も、薨星宮の最下層までは行ったけど、そこで理子ちゃんが同化を拒んだからね。そのまま戻ってきた。」
「だよね。…学長に相談するか…。」
「何かあったのかい?」
「いや、ちょっと天元様に聞いておきたい事があってね。あ、心配しないで大丈夫、危険な事するわけじゃないから。」
「…何か私にも手伝えることがあったら、遠慮なく言うんだよ。」
「傑ママ…!」
「子供を生んだ覚えはありません。」
「あははっ!」
今日の私のスケジュールはまた宿儺の指の回収だ。高専を出る前に天元様に会いに行ってみるか?うーん…、
「どうかしたかい?」
「…あ、いやぁ、どうやったら皆が幸せな未来を描けるんだろうと思って。」
「…私は理玖が傍にいてくれればそれだけで十分幸せだよ。」
「嬉しい事言ってくれるじゃん?」
「それじゃあ今夜は「あ、私また出張だから、早く帰って来れたらね!」
「…分かったよ、」
やれやれとでも言うように肩をすくめた傑にくすくす笑いながら、行ってきますのキスをして教員室を後にした。正直めちゃくちゃ迷ってる。どうしよう。何から手を付けるか…。セレクトしちゃうかぁ…?術式頼りすぎかぁ?…ま、やるだけやってみるか。セレクト。
【あなたは迷っています。選択してください。選択すると呪力を200消費します。(残り呪力:270)】
【1.獄門彊を破壊する 2.獄門彊を破壊し九相図を盗み出す 3.獄門彊を破壊せず九相図を盗み出す 4.獄門彊を封印し九相図を盗み出す 5.獄門彊を封印せず九相図を盗み出す 6.なにもしない】
いやいやいやいやいやいや!まじか!?え、ちょ、九相図を盗むって私が!?
「それは流石にヤバいでしょ…。」
獄門彊は破壊するにも封印するにもまず回収が必要でしょ…。まず回収しよう、うん。そうしよう!あと九相図は…、九相図…んぎぎぎぃ…、もっかいセレクト!