キネマシネマを発見した私は真人と吉野順平がエンカウントした路地裏まで来た。さてここからが問題だ。とりあえず路地裏を進んでマンホールを開けてみる。…いや入りたくねぇ…。
「…女は度胸!」
意を決してマンホールから中へ入ってみる。いやヒールで梯子は辛い…。何とか下水道まで降り切ると、呪力の気配を感じた。真人…だよな、多分。気配を辿って下水道の奥へ進んでいく。ひらけた場所に出ると、ハンモックに寝転がって本を読む真人がいた。そしてまさかの、真人相手にも好感度イベントが発生。マジか!?!?…とりあえずイベントを選択。
「…君、誰?」
「真人、だね。」
「…俺のこと知ってるんだ。それに君、…面白い魂の形してるね。」
「私は廻神理玖。呪術師だよ。」
「…呪術師、…ハハッ!」
真人は体を起こして私にあの無邪気な…いや、邪悪な笑みを浮かべた。
「俺を祓いに来た?」
「…どこまで呪術師について知ってるのか知らないけど、ちょっと協力して欲しい事があるんだよね。」
「俺のこと知ってて協力して欲しいって、どういう事?」
「来たる日、君には呪術高専東京校であるものを盗み出して欲しいの。」
「盗み出す?自分でやれよ〜。」
「それが出来ないから頼みに来たの。やってくれるよね?やってくれないならここで祓うよ。君も、君の仲間も。」
「ねえ、それって一方的すぎない?俺に拒否権はないってことでしょ?」
「残念ながら拒否権はないね。でも協力してくれたら君も君の仲間の事も祓わないであげる。」
私はね。万が一真人達が私の大事な人達に危害を加えるようなことがあれば、悟や傑、パパ黒に祓ってもらう。あの3人ならまず間違いなく祓えるでしょ。
「ふーん?丁度暇してたし、面白そうだから協力してやってもいいよー。その代わり、」
「その代わり?」
「俺のお願い1つ聞いてよ。」
「…内容によっては許可できないかもしれないけど、それでもいいなら。言っておくけど、縛りとかなしね。めんどいし、互いにペナルティなんて受けたくないでしょ。」
「いいよ、それで。で?俺は具体的に何をすればいいの?」
とりあえず真人が私に協力してくれることになった。好感度イベントとも関係あるのか分からないけど、今のところ真人は私に敵意を向けている様子はない。私はまず真人に、吉野順平の事を頼んだ。映画館での事も、里桜高校の事も。けど、吉野凪は殺させない。宿儺の指に残った呪力を辿って忌庫まで行けるように、そこは考えてある。真人には吉野順平に式神「澱月」を使えるようにしてもらう。宿儺の指は私が回収したものに、偽夏油というか羂索がやっていたように真人の呪力で作った札を貼る。私はその上から呪符を巻き直して高専に持ち帰る。宿儺の指は毎回忌庫へ私が直接持って行っているし、忌庫には九相図もある。原作同様に真人には自分の呪力を辿って、九相図1〜3番までを回収。宿儺の指は…うーん、これに関してはもう少し判断に時間を貰おう。
「それで、その九相図?ってのは何のために回収するわけ?」
「九相図を3人の人間に受肉させる。」
「なんで?」
「…会いたいから。」
「…プハッ!会いたいからってそこまでするぅ!?」
「私がやっちゃいけないことだから、真人に頼んでるの。」
「自分でやったら呪詛師になっちゃうからってこと?」
「…ま、そんなとこ。ああそれと、私と関りがあることは誰にも漏らしちゃだめだから。こうやって2人で会う時以外は、私を敵だと認識して。」
「なんかスパイって奴みたい。面白そうだね。」
「とにかく、来たる日が来るまでは好きに過ごしてよ。人間使ってストックしたり実験したりしてるんでしょ?」
「よく知ってるね、理玖って何者?」
「神の子。」
「…頭大丈夫?」
「うるっさい!ホントの事なの!それと聞いておきたい事があるんだけど、」
「なに?」
「…与幸吉、知ってるよね。」
「……。」
「多分聞いてるよね、メカ丸君。私は君が真人と通じてること、既に知ってるから。互いに自分の首を絞めないように協力し合おうか。」
「…なーんだ、全部知ってんの?」
『…廻神理玖、』
「やっぱり聞いてた。」
超小型の傀儡が下水道内を飛んでいたらしい。メカ丸のというか、与幸吉の声が聞こえた。
「私は君の未来も知ってる。真人の未来も知ってる。でも2人が未来でどうなるかまでは話せない。」
『……俺ハ何をすればいイ。』
「元の体に戻してもらう事を条件に協力してるんだっけ?メカ丸君はそのままでいいよ。けど真人、京都校の人には絶対に手を出しちゃだめだからね。」
「分かってるって、そういう縛り?とか言うのも結んだし。」
「なら良し。私が助けて欲しい時にメカ丸君に助けを求めると思う。何かあったら手伝ってくれる?」
『…アア、』
「ねえねえ、理玖、」
真人がニヤニヤしながら私を見た。
「なに?」
「何でそこまでするわけ?」
「…馬鹿馬鹿しいって思うかもしれないけど…、私の大事な人達が幸せになれるように…。」
「幸せ?なにそれ。」
「…呪霊には分からないよ、きっと。」
「ま、いいや。俺が聞くのもなんだけどさ、ほんとに縛りなしでいいの?俺が裏切るかもしれないよ?」
「その瞬間に真人を祓う。」
「こっわ〜。」
「真人、」
私は真人に歩み寄る。正直無為転変されたら終わりだと思ってるけど、真人に手を伸ばしてみた。真人は不思議そうに私を見ている。頬に手を添えて、反対の頬にちゅっとキスをしてみた。真人がぱちくりと瞬き。
「え、なに?今の。」
「協力してくれるお礼。」
「…今のが?」
「私からお高いキスよ!光栄に思うがいい!」
「…変なの〜。」
そう言いつつも真人の好感度は5%になった。真人にも色気作戦有効なの?!マジ?ていうか私真人が里桜高校のグラウンドでショタになったシーン、あれは可愛くてめっちゃ好きなんだけど!けど真人!!!オマエはナナミンと野薔薇をパァーンしたからな!?!?!?そこだけはマジで許せねぇから!!!!!!覚えてろよ!!!!
「じゃ、今日の所は帰るわ。また来たる日が近付いたら作戦のおさらいしに来てあげるから。」
「分かったよ。またね、理玖。」
「メカ丸君もまたね。」
『アア。』
下水道の出口を教えてもらって外に出た。いや、下水道くっさ。水くっさ。セレクトして匂いを取って、タクシーで高専まで帰った。いや、マジでセレクト万能で良かったぁ。
「はぁ…、ほんとにこれでよかったのかなぁ…、分からん。」
そもそも吉野順平を高専に通わせるという未来でよかったのだろうか…。いやでも、正直アニメのOPのあの笑顔は見たい。ゆじたんと順平の笑顔眩しかったもん。迷走しちゃう気がして怖い…。ダメだ、ブレるな私!高専に戻った私は今日は早く寝ようと寝支度を開始した。獄門彊の回収はどうしようか。術式でちょちょいと回収できるんだろうか?それとも海外まで行かないといけないのか?いやそれはめんどくせぇ。セレクトしてみるか…、セレクト。
【あなたは獄門彊を探しています。選択してください。選択すると呪力を200消費します。(残り呪力:179)】
【1.回収する 2.破壊する 3.なにもしない】
うわマジか、呪力足りないじゃん…。しかも結構呪力消費するなぁ…。まいっか、これは明日朝からやろう。寝支度を終わらせた私はベッドに潜り込む。と言ってもまだ21時。眠れるかわかんないけど寝とかなきゃ。いや、マジで今日は嫌な緊張しまくったから、ホント疲れた…。おやすむ…。私は静かに瞼を閉じた。……………………いや眠れん…。なんでだ…。
「…どうしよう…ほんとにこれで良かったのかなぁ…。怖いよ…っ、」
鼻の奥がツンとする。目頭が熱くなって涙が込み上げた。どうしよう、ほんとにこれで大丈夫かな…。私選択ミスしてないかな…。取り返しのつかないことになってないかな…。
「う…っ、ヤバい、原作思い出して泣ける…ぅ…、」
1人ぐすぐすと泣いていると、誰かが私の部屋のドアをノックした。
「理玖、いるかい?」
「…傑…、」
なんで今来ちゃうのぉ…、余計に泣いちゃうじゃんかバカぁ…。もぞもぞと起き上がって暗がりの中ドアまで向かう。ドアを開ければスウェット姿で髪を下した傑がいた。傑は私の顔を見て目を見開くと、優しく抱きしめてくれた。ダメだよ…そんな事されたらもう余計涙が…だばだーしてる…。
「何かあったんだね…。」
「なにも無い…、」
「なにも無いなら泣かないだろ。お邪魔してもいいかな?」
「うん…っ、」
鼻を啜って傑を部屋に案内した。電気を付ければ眩しくて目が眩む。傑は私の手を引いてベッドに座ると、また優しく抱きしめてくれた。大きくて温かい手が私の背中を静かに優しくとんとんと叩く。
「大丈夫だよ、理玖。」
「…っ、傑…、」
「なにがあったのか聞いてもいいかい?」
「…言えない…っ、」
「…そう、なら…私にはこうするしかできないな。何もできなくてごめんね、理玖。」
「うぅ…っ、なんでそんな事言うのぉ…っ、」
「理玖、1人で背負い込むのはよくないよ。たまには息抜きをしよう。」
「…息抜き…、」
「久し振りに私とデートでもしないかい?勿論、2人っきりで。」
「…デートって、」
「懐かしいものを見つけてね。…これ、覚えてるかい?」
傑がスマホカバーのポケットから取り出したのは、私と傑が2人で取ったプリクラだ。これ…確か、羂索を祓う時に協力してくれたお礼って、デートした時に撮った奴だ…。
「また理玖とプリクラでも撮りたいな。ダメかな?」
「…撮る…っ、デートもするぅ…、」
「よしよし、今日は理玖が眠るまで傍にいてあげるよ。」
「…一緒に寝る?」
「それだと私が我慢できなくなってしまうよ。」
「…添い寝して。」
「添い寝ですまなくなっても怒らないかい?」
「…多分。あ、でも腰が砕ける程するのは困るから、程々にしてね…?」
「難しい注文だ。」
傑が私にキスをした。私もそのキスに応えて見つめ合いながら舌を絡める。傑の手が私の頬を撫でて、髪を耳に掛けてくれた。傑のこの仕草は凄く好き。
「理玖、愛してるよ。」
「私も、傑を愛してる。」
「早く私だけの理玖になって欲しいね。」
「…うーん、それはいつになったらできるかな…。」
「ハハハッ、今すぐになったらいいな。」