【あなたは敵をとりたいと思っています。選択してください。選択すると呪力を270消費します。(残り呪力:100)】
【1.領域展開をする 2.なにもしない 3.腐ったミカンを踏みつぶす】
「ごめん…、」
「何する気、」
「…2人を殺したやつを殺す…。1番、」
「理玖!!」
【1.領域展開をする を選択しました。呪力を270消費しました。(残り呪力:-170)】
【あなたの残り呪力は-170です。呪力が回復するまでセレクトできません。これより呪力回復イベントに入ります。呪力が回復するまでイベントが続きます。また、残り呪力より多く呪力を消費したため、普段の回復よりも時間がかかります。】
【呪力回復まで残り504時間(残り呪力:-170)】
「理玖ーーー、」
【領域展開をしました。領域展開をすると最後にセレクトを使用した場面に戻ります。領域展開中にセレクトを使用すると、呪力を通常の倍消費します。(残り呪力:-170)】
私は白い空間にいた。前と同じだ。すぐに意識が覚醒する。
【あなたは獄門彊を探しています。選択してください。選択すると呪力を200消費します。(残り呪力:270)】
【1.回収する 2.破壊する 3.なにもしない】
領域展開をして今朝天元様の所でセレクトしたところまで戻ってきた。2人は…まだ生きてる?
「ごめん天元様、やっぱり今日は止めておく。」
「…ああ、その方がいいだろう。」
「……知ってたんだ。」
「…廻神理玖よ、後悔しないように生きなさい。私から言えるのはそれだけだ。」
そっか、天元様知ってたから、だからあの時、
『宿儺の指も君の術式で回収すればいいだろう。何故それをしない?』
「また来ます。」
「ああ。」
薨星宮を出てすぐに実家に向かいながら電話を掛けた。お願い、間に合って…!
『はい、廻神です。』
「っ、お母さん!?」
『理玖?あらどうしたの?』
「お父さんはそこにいる?!」
『テレビ見てるわよ。お母さんは今から買い物。』
「お願い何も聞かずに私の言う事に従って。」
『え?』
「2人共今すぐ五条家に向かって。悟がいるから!」
『ちょっと、どういう事なの?』
『どうした?』
『お父さん、理玖が、』
「お父さん?!」
『…もしもし?理玖?どうしたんだ一体、』
「お願いだから今すぐ2人で五条家に向かって!!早く!!」
『……理玖、』
「お願い…っ、お願いだから、何も聞かないで…っ、」
『…母さん、理玖の言うとおりにしよう。ほら、』
『あら、ちょっと、お父さん?』
『理玖、父さんは理玖を信じるよ。』
「…うん…っ、」
『すぐに家を出て五条家に向かえばいいんだね?』
「私ももうすぐ着くか『“ピーンポーン”』!」
『誰かしら?』
「出ちゃダメ!」
『母さんダメ!』
『え?』
「車もっと飛ばして!!」
「は、はい!」
『“ピーンポーン”』
『…理玖、』
「出ないで!もうすぐ着くから!絶対に出ないで!」
『母さん、傍に来て。』
「着いた!2人とも私の部屋にいて!」
『分かった、電話は?』
「そのままでいい!」
車を降りて玄関を見る。そこにいたのは、
「…荒井さん、」
見覚えのある背中。名前を呼べばゆっくりと振り返る彼に、私は十手を握りしめる。
「……いやぁ、バレちゃいましたか…。」
「…どういう事か説明してください。」
「それは…すみません、出来ません。」
「上層部からの命ですか。」
「それも…言えません。」
…どうして荒井さんが、
「荒井さん、こんなことやめませんか?どうせ得するのは上層部の連中だけで、荒井さんには何の得もないですよね?」
「…それでも、俺はやらなくてはいけないんです。」
「……もしかして、ご家族が人質にでも?」
「!」
「…そういう事ですか。」
「…っ…すみません…廻神さん…すみません…っ、俺はこうするしか…っ、」
そう言うと荒井さんは宿儺の指が入った木箱を開けた。
「やめて!」
荒井さん目掛けて走り出す。呪符を解かれる前に止めないと、荒井さんを呪詛師にしてしまう…!荒井さんの腕を掴んで背中に捻りあげると地面に押さえつけた。木箱から呪符の巻かれた指がポロリと落ちる。それに手を伸ばそうとする荒井さんの首に当て身をして、私は呪符の巻かれた指を拾い上げた。これで、防げた…の…?荒井さんは気を失っている。スマホで車に待機している補助監督に電話を掛けた。
「すぐに来て。」
『は、はい。』
それだけ伝えて電話を切ると、今度はお父さんのスマホに電話した。電話はすぐに繋がった。良かった…2人とも無事だ。
『理玖、大丈夫か?』
「ごめん、心配かけて。」
『母さんも無事だから安心して。そっちに行くよ。』
「…うん。」
「廻神術師!」
「荒井さんを拘束、事情を訊きたいから高専に着いたら拘束したまま牢に入れます。」
「荒井先輩…!」
「指示通りに。それとこれは上に報告しないで。私とあなた以外には知られないように。じゃないと荒井さんも、その家族も命はないと思って。」
「は、はい…、」
荒井さんを補助監督に任せて私は家の玄関を開ける。そこには私の両親が立っていた。ちゃんと、生きてる…。
「お父さん、お母さん…っ!」
「「理玖…、」」
「よかった…間に合ってよかった…っ、」
「理玖、一体何が、」
「…ごめんなさい…、私のせいで巻き込んでごめんなさい…っ、」
2人に抱き着いて泣きじゃくる私を見て、両親は優しく抱きしめ返してくれた。良かった…、救えた…。2人は私が落ち着くまで優しく背中を叩いて、大丈夫だと何度も声を掛けてくれた。
「悟が今、会合で五条家にいるから、このまま五条家に行って匿って貰って。」
「理玖はどうするの?」
「私はこれから高専に戻るから。色々やること放置してきちゃった。」
「…母さん、理玖の指示に従おう。」
「…そうね。準備しましょう。」
「…そうだ、お母さん、」
「なぁに?」
「…お母さんは、両面宿儺の指を封印した事ある?」
「それなら、うちにもあるわよ。」
「え?!」
「あら、言ってなかったかしら?」
「初耳なんスけど…、」
「持ってくるわね。集めてるんでしょ?」
「…うん、」
ぱたぱたとスリッパを鳴らしてお母さんが部屋に入っていく。え、どこにしまってたの?
「理玖、」
「…お父さん、」
「神のお告げだね。」
「…うん、まあ、そんな感じ。」
「五条家に匿ってもらった後、どうしたらいいかな?」
「……海外で静かに暮らす、とか?」
「…そうか。じゃあそれで考えておこう。」
「…ごめん。」
「父さんと母さんを思ってのことだろ?理玖が謝ることはないさ。それよりも理玖、風の噂で聞いたけどまた上層部入れ替えたんだって?!」
「あー…うん…多分それの報復だと思う…。…ごめんなさい。」
私がそう言うと、お父さんは私の頭にポンと手を置いた。くしゃくしゃと子供の時みたいに頭を撫でられて、私はまた泣きそうになった。
「理玖、父さんも母さんも、理玖の事を愛しているよ。だから、理玖がやりたいようにやりなさい。それでたとえ父さん達が危険な目に合っても、愛する娘を呪うようなことはしない。それもすべて神様の思召しだ。廻神家は代々神様に仕え、神様と共に生きてきた。何があっても、神様は廻神の血を引く者を見捨てはしない。」
「……絶対に、巻き込まないから。だから、「お待たせ、理玖。」お母さん、」
「両面宿儺の指、これは…副右腕薬指だったかしら…。」
「どうして家にあったの?」
「あら、お母さんが封印術使えるの知ってるでしょ?」
「父さんも知らなかったんですけど…。」
「言ってなかったかしら?」
「「聞いてません!」」
「理玖、」
お母さんが私に宿儺の指が入った木箱を差し出した。私はそれを受け取ってポケットにしまう。
「…高専に戻るね。私から悟に連絡しておくから、2人はすぐに支度して、五条家に匿って貰って。」
「理玖、無茶だけはしないでね。」
「うん。」
くるりと2人に背を向けて玄関のドアノブを握った。
「理玖、」
「ん?」
「いってらっしゃい、理玖。」
「いってらっしゃい。」
「…いってきます、2人共、本当に気を付けて。」
「ああ。」
「頑張りなさいよ、理玖。」
「うん、絶対にもう巻き込まないから。」
2人に見送られて家を出る。待たせていた車に乗り込んで、気を失ってる荒井さんの顔を覗き込んだ。両手を呪符で巻いてあるから、動きは制限されているし、しばらくは大人しくしてるだろう。
「あの…荒井先輩はどうなるんでしょうか…。」
「私が取り調べするから、とりあえず暫くは内密に。」
「…はい、」
「巻き込んでごめんね。絶対守るから。」
「…はい、廻神術師を信じてます!」
「ありがとう、鈴木さん。」
高専に戻ると裏口に車を停めて荒井さんを地下牢に入れた。補助監督の鈴木さんには元の業務に戻ってもらうついでに、1年生に授業を放棄してしまった事を後で謝りに行くからと伝言を頼んだ。
「…荒井さん、起きてください。」
「………ぅ、」
荒井さんを起こすと、彼は私を見て目を見開いた。そしてすぐに泣きながら謝罪をされて、私も胸を締め付けられる。荒井さんは私が高専に在学中からの仲だし、今だって時折任務に同行することも多い。そんな荒井さんがどうして私の両親を殺すようなことになったのか、全部聞きださないといけない。恐らく何らかの縛りを結ばれたに違いないから、これは慎重に話を聞かなくては…。
「荒井さん、質問に答えられる範囲で答えてください。」
「…すみませんでした…っ、すみません…っ、」
「…荒井さん、私はあなたを殺したくない。そしてあなたが人質にされている人たちも救いたいです。だから、応えられる範囲で答えてください。あなたは宿儺の指で何をするつもりだったのか。」
「………廻神さんの家で封印を解け、と、言われました…。そうすれば、家内も子供も返す、と、」
「…やっぱりご家族が人質だったんですね。」
「…申し訳ありませんでした…っ、」
「呪術連総監部からの指示ですか?」
「……お答えできません。」
「あの指は誰から受け取ったんです。」
「……それも、すみません、」
「……先日私が受けた襲撃、あれも荒井さんが手引きを?」
「……はい。」
「それも同じ人たちからの指示?」
「……はい。」
「呪詛師を雇いましたね?」
「……はい。」
「全部同じ人たちからの指示ですか?」
「……はい。」
「……分かりました。」
「本当に、なんとお詫びをすれば…、」
「荒井さんは脅されてやっただけですから、私はあなたを責めません。人質になったご家族も含めて、荒井さんも守りますから。」
「廻神さん…、」
「まずは荒井さんのご家族を助けます。それから、荒井さんは…ご家族と一緒に日本から出てもらった方が安全かと。寂しくなるけどね。」
「…はい、」
「さてと、その為に最後の一仕事お願いします。私の両親を始末して、ついでに私も死んだって報告してください。」
「え…何故廻神さんまで、」
「その方がびっくりするでしょ?頭の固い年寄り共は。」
「…分かりました。」