そんなこんなで私の両親と荒井さんを呼び戻すことに皆賛成してくれたから、早速両親と荒井さんに連絡。3人にもう脅威は去った事を伝えると、日本に帰国すると言ってくれた。それから約1週間ほどで私の両親が、その3日後に荒井さん家族が帰国した。荒井さんは再び高専で補助監督として働き始め、私の両親は母の実家…つまり傑と初めて会った時に行った祖父母の家に住むことに。今度私も顔出さなきゃなぁ。そして月日が経ち、遂に
「仙台到着ぅ!」
昨日、宿儺の指を保管していた金庫を開けてみて分かった。私がセレクトして来たる日にゆじたんに宿儺の指を拾わせる選択をしたからか、金庫の中に術式で隠しておいた指の気配はなくなっていた。絶対、多分、間違いない、宿儺の指は“虎杖悠仁”に拾われるために姿を消したんだ。そして私は今日、マイエンジェルメグエルと共に新幹線で宮城県仙台市に向かった。
「イエーイ!メグエルと仙台デート♡」
「……任務です。」
「えー、メグエルだって内心喜んでるくせにぃ!」
「いい加減その呼び方やめてください。」
「じゃあちゃんメグ。」
「…はぁ…、改札あっちです。」
「んもうっ!どうして今日はそんなにスーパードラァイなの!?」
私は今からマイエンジェルメグエルと仙台デートをするのだあああ!!というのは建前で、ほんとは宿儺の指の回収任務という名目で来ている。勿論その指は私が以前回収して金庫に保管していたものなので、当然だが回収しようにもあの百葉箱は既にもぬけの殻だ。そしてここまでは原作通りの流れである。
「やっと2人きりになれたね…恵ちゅわん。」
「さっきからそのテンションなんなんですか。」
「恵きゅんが冷たい…。」
「いい加減呼び方統一してくださいよ…。」
仙台駅を出てすぐに向かったのは、
「やっぱり牛タンだよね♡」
「美味そう…、」
「ここは私の奢りだから、好きなだけ食べちゃってぇ!」
「…ありがとうございます、いただきます。」
メグエルがちょっと嬉しそうに笑った。はえええ…可愛い…。私は無言でスマホを構えてメグエルの写真を連写。
「勝手に人の写真撮らないでくださいよ。」
「メグエル可愛すぎてマジつらたん…メグエルしか勝たん、っとジュイート送信、」
「…なにしてるんですか。」
「メグエルの可愛さを世界に発信してる。」
「理玖さんJwitterやってるんですか。ていうか肖像権の侵害です。許可なく載せないでくださいよ。」
「メグエル怒った?」
「…別に、アカウント教えてくれたら許します。」
「えんだあああああ!!いあああああ!!」
「大声やめてください!!」
そんなこんなで私のJwitterをフォローしたマイエンジェルメグエル。いや、オマエも垢持っとるんかーい!って盛大に心の中で突っ込んでおいた。しかも全部名前伏せられてるけどこれ私の事だよね!?うわ、うわああ!!メグエル私の事めちゃくちゃ好きじゃん!?知ってたけど!?知ってたけどおお!?
『今日もあの人の手料理美味かった。結婚したい。』
「ゲホッ、」
「理玖さん!?」
「ごめ、メグエルのジュイート見てたらあまりにも可愛すぎて吐血した、」
「…勝手に見ないでください、」
「きゅんうう〜♡」
何この子可愛すぎんか!?知ってたけど!!可愛いの知ってたけど!?おっぱいに顔を押し付けるように抱き締めてあげると、流石に店内だからか抵抗された。チッ、部屋だったらむしろ顔埋めて来るくせにぃ!!!牛タンを食べ終えた私達はお店を出てとある民家を目指した。そう、仙台と言えば虎杖ファミリー!!にしても久し振りだし突然の訪問は迷惑になってしまうから、事前に今日仙台に訪れることは私から仁さんに伝えてあった。香織さんもゆじたんも、倭助さんも楽しみにしてくれているらしい。ただちょっと心配してる事がある。倭助さん、つまりゆじたんのおじいちゃんは、原作だと肺がんで亡くなっている。けど今は元気にピンピンしてるらしい。…うん、また原作を変えてしまった。大丈夫…だよね!?うん、きっと大丈夫なはず…。そもそもゆじたんの両親が生きてる時点で未来変わってるもんね!うん!きーっとだいじょうぶ!
「はっ!という事は…、大事な事に気付いてしまった…!」
「…さっきからブツブツ何言ってるんですか。」
「ごめんね、独り言。」
つまり、ゆじたんは倭助さんの代わりにパのつくあれを代打ちしていないのでは!?少年誌の主人公としてあるまじき行為をしていないのでは!?「18歳以上ですか?」にノータイムで「はい」を押したりしないのでは!?………………いや、押すな。元の性格はそのままだろうから絶対押すな…。
「理玖さん、」
「んー?」
「どこ行くつもりなんですか。こっち住宅街ですよね。」
「ああ、うん、私の知り合いのお家に顔出すの。メグエルと同級生の男の子もいるよー!」
「……、」
おっとぉ、ここでメグエルまさかの沈黙。しかもなんか不機嫌オーラ出てないか、これ…?!ま、まさか…!!
「ん恵きゅん♡」
「…なんですか。」
「もしかしてヤキモチ?ねぇヤキモチ?」
「………別に、」
「ゴフッ…!」
伏黒恵、恐ろしい子…!これは明らかヤキモチですよねぇ!?そうですよねぇ!?カァーッ!たまんねぇな!!そんな可愛いメグエルは後ろから抱きしめてやる!!
「っ、いきなり何なんですか、外でやめてくださいよ。」
「今日のメグエル冷たすぎじゃなあい?私と2人っきりでデートだよ?もっとテンション上げて!!」
「…デートじゃなくて任務ですよね。そもそも宿儺の指を回収するのは理玖さんの仕事で、俺が来ることないでしょ。」
「まあ、そうなんだけどさぁ。」
「つまり、理玖さんが知ってる未来と関係するって事ですよね。そんな状態でデートだって浮かれてられないですよ。」
「うわ真面目…。」
「…今から行く家にも何かしら関係があるんですよね。」
「それは言えないなぁ。」
「……、」
お、虎杖家ついた。ピンポーンとインターホンを押してスピーカーから聞こえた香織さんの声。そして感じた気配にメグエルもピクリと固まる。
「お久し振りです、理玖です!」
『あらぁ理玖ちゃんいらっしゃい!今開けまーす!』
「…理玖さん、」
「まあまあ、落ち着きたまえ恵きゅん。」
ガチャリと玄関が開く音。ドアを開けたのは、
「おおー!!マジで理玖姉だ!!」
「悠仁君おひさー!」
ゾッとするほど濃くなった気配にメグエルが眉を顰めた。間違いない、もうゆじたんはあの木箱を拾っている。ゆじたんがにぱっと笑って私に掛け寄った。両手を広げてぎゅうっとゆじたんを抱き締めると、ぎゅうっと抱きしめ返される。ほほう、ケツに手を回すとは貴様、やりおるなぁ?!
「うわぁ、理玖姉超久し振りじゃん!1年振りとか?」
「そのくらいだねぇ!悠仁君おっきくなったね!」
「そ?身長あんま変わらんよ?」
「え、そう?だって前おっぱいに顔埋めてたじゃん。」
「理玖さん、」
おっとぉ、ここでメグエル選手の先制攻撃、ヤキモチです!!ゆじたん選手今気付いたああ!!
「お?誰?」
「伏黒恵君。私が先生してるって話したでしょ?その生徒だよ。2人共歳同じだから仲良くねー。あ、あとこれお土産。」
「おぉ!あんがと!えっと、伏黒?俺虎杖悠仁、よろしく!」
「…伏黒恵。」
「悠仁ー?」
「あ、そうだった!2人ともどうぞ上がって!」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します。」
どうやら虎杖家は今家族4人で暮らしているらしい。案内されたリビングには香織さんと倭助さんがいた。
「いらっしゃい、理玖ちゃん。ごめんなさいね、仁さんお仕事で、」
「いえいえ、急に訪ねちゃってすみません!お久し振りです。」
「なんだ理玖、その格好は…!」
「いやぁ、一応仕事着でして…。」
「目に毒だ!服を着ろ服を!!」
「そ?俺めちゃくちゃエロくて好き!」
「悠仁!コイツは!」
「あいっで!じいちゃん拳骨止めろよ、いてぇなぁ…。」
いやぁ、平和な虎杖家だ…。泣きそうだぜ…。
「なぁなぁ伏黒!東京ってどんなん?」
「はぁ?」
「はーい、子供は子供でお部屋で話しててねー、私は大人とお話があるから。」
ぐいぐいと2人の背中を押してリビングを追い出すと、香織さんが2人の後を追いかけた。飲み物を持って行ったらしい。お盆を手に戻って来た香織さんと、ソファで新聞を読んでいた倭助さんが私を見る。
「それで、なんだ、悠仁について話があるというのは、」
新聞を折り畳んでテーブルに置いた倭助さん。私はその正面に正座をする。
「理玖ちゃん、床じゃなくてソファに座ってちょうだい、」
「香織さん、倭助さん、お願いします。悠仁君を私の学校に通わせたいんです。どうかお許しいただけないでしょうか。」
「え…?」
「……確か宗教系の学校とか言っておったな。」
「東京都立呪術高等専門学校です。私は悠仁君にとある素質があると思っています。その素質を生かして欲しいんです。それから、」
「断る。」
「お義父さん、」
「そもそも、それを決めるのは悠仁だ。儂らがどうこう口出しする事じゃないだろう。」
「…それじゃあ、悠仁君が通いたいと言えば許してもらえるって事でいいんでしょうか?」
「…うむ。」
「理玖ちゃんの学校はどういう事をしてるの?」
私は表向きの宗教学校としての高専の説明をした。流石に呪術師してまーすなんて話したことはないし、今後も話すつもりはない。そもそも呪術規定によって非術師へ話せる範囲は制限されているし。それに何より、「今日から悠仁君は宿儺の器になります。」だなんて言えない。
「悠仁君はとっても優しくていい子です。そして人の為に頑張れる子だと思ってます。私は彼にたくさんの人を助けて欲しい。」
「…確かに悠仁は優しいから、ボランティアとか向いてそうね。」
「人を助けろ…か…。」
「はい。」
「…フン、オマエさんが誘えばホイホイついてくだろうな。」
「でしょうね!」
「お義父さんは寂しいのよ!」
「余計な事を言うな香織!」
「はいはい、ごめんなさいお義父さん。」
「全く、」
「では、悠仁君に聞いてみますね。悠仁君が通うと言ったその時は、」
その時はもうすぐだ。
「虎杖悠仁君は呪術高専で預かります。」