翌日、目を開けて私は死ぬかと思った。悟の寝間着がはだけている。もう一回言おう。悟の寝間着がはだけている。
「…え、なにこれ襲われたいの?」
「襲ってくれんの?」
「いや起きてたんかい!」
悟の寝間着がはだけている。ああああ、これ、今はショタだからそこまで致死率高くないけど、これ、ダメでしょ。あかんよ?あかんやつよ?もう少し成長してみな、飛ぶぞ?
「おはよ。」
「うん、おはよう。なにそれ、もしかして確信犯?」
「なにが?」
「いや、寝間着。」
「だったら、俺のこと襲うの?」
「いや、うん、ちょっと襲いかけた。」
「へー?」
悟がするすると寝間着の帯紐を解いていく。は!?おま、ちょ、生意気にも誘ってんな!?
「襲われてやってもいいけど?」
「いや、やめとく。既成事実とかなんとか言われて即結婚とか言い出すからやめとく。」
「ちぇ。」
「ほらね!言う気だったじゃん!」
枕を悟の顔面に投げるも、やはり無限で止められてしまう。くそぉ…。私は布団から起き上がった。
「今日は何するの?」
「ん、特に決めてないけど。」
「また特訓したい!」
「いーよ。じゃあ飯食って落ち着いたらな。」
「よし、準備しよ!」
身支度を整えて朝食も食べた後、少し休んでから悟と特訓をした。と言っても、私はまだ教わったばかりだからすぐに投げられてすってんころりん。今日は受け身の練習らしい。畳の上とは言え地味に痛いし、擦れたところはひりひりとするし、ホント、よく頑張ってたね恵は。悟から一本も取れないまま、あっという間にお昼になって、お昼を食べた後も少し休んだらまた特訓。今日は中々ハードな日だった。悟も私が本気で強くなりたいことを知っているからか、容赦がない。夕方になって運転手さんが私達を呼びに来るまで、ただひたすら投げられた。…絶対明日痣だらけになってそう。うまく受け身が取れた時もあったけど、最初は殆ど失敗ばっかりだったし…。帰る前にシャワーを浴びさせてもらい、私服に着替える。最後に悟の両親に挨拶をして、悟と一緒に車に乗り込んだ。家まで一緒に送ってくれるらしい。
「いやーなんだかんだ楽しかった!ハードな特訓だったけど、少しは身につけられたかも!」
「そうか?まだまだだろ。」
「…手厳しいな悟くんや、もっと褒めたりするとこだろそこは!」
「理玖ならもっと強くなれるだろ。」
「ホント!?っしゃ!俄然やる気出た!夏休みもこの調子でビシバシ鍛えてね!」
「うん。」
悟の好感度は73%に回復していた。家の前で降ろしてもらうと、今日は私が車が見えなくなるまで手を振って見送った。さてと、家に入ろ。そう思って門に手を掛けた時、ふと違和感を感じた。…なんだろ、なんか気持ち悪いな。そう思った時にはもう遅くて、いつの間にか背後から布で口を塞がれていた。え、なにこれ、誘拐?マジ?しかもなんか―――、
「って、どこ、ここ。」
目が覚めると視界が覆われてた。手足も縛られているらしくて身動きが取れない。…えっと、やっぱりこれ誘拐?誰が?何のために?きょろきょろと辺りを見回す。とりあえず状況把握しよう。家に送ってもらって、悟見送って、家に入ろうとしたら気持ち悪くなって、それで、
「目が覚めたか。」
「…誰ですか?」
「廻神理玖だな?」
「…そうですけど。」
男の声がした。そしてその男から強烈な匂いを感じる。…この匂い、そうだ、さっき家の前で気持ち悪くなった匂いだ。セレクト。
【???があなたを誘拐しました。選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:20)】
【1.正体を暴く 2.気絶させる 3.殺す 4.なにもしない】
男が私の近くに来た気配がする。くそ、目隠し邪魔だな。この前も思ったけど、こういう時に正体を暴いたところで、残った呪力でどうこうできるか分からない。気絶させても私がこの拘束を一人で解けるわけない。多分これ、結束バンド使ってるし。めっちゃ手首と足首痛いもん。殺すもなしだな。相手の目的もここがどこかも分かんないし、結果的に動けない。てか、視界が塞がれててもセレクト見れるんだね、助かった。今は選択しないで様子を見てみるか。
「オマエをどうしても欲しいってやつがいてな。」
「…私どうなっちゃうんですか?」
「心配するなァ、オマエの事を可愛がってくれるそうだ。…まあ、これほど上玉だ。飼い馴らせばせばいい女になるだろ。」
男が私の顎を掴んで持ち上げた。うわきっしょ。触んなよ。てか誰が私の事欲しいって?私そんな狙われる要素あったっけ?…………あ、あったわ。まず悟と友達な時点で狙われるでしょ?あと私の天使的な可愛さでしょ?…って、自分で言っててはっず。とりあえず、相手に色々聞き出すしかないし、ここは大人しく6歳児らしい反応しておこう。
「ん〜?怖いかァ?怖いよなァ?震えてるぜ…?…へへ、ちっと味見でもしてみるか…。」
「…あ、あの、」
「あー大人しくしてろよ、その綺麗な肌に傷がつくぞ。」
びりびりと音がする。…おい、これもしかしなくても服破かれてね?破いたよね!?え、なんでそういうことすんの!?コイツぜってぇモテないやつだ!
「や、やだっ…!」
「大丈夫だって、大人しくしてりゃすぐおわっから。」
「誰か…!」
「誰も来ねぇよ。」
男の手が私のつるぺったんな体をまさぐる。やめろきもい!ちょ、マジ、どうしよ、もっかいセレクト!
【???があなたを襲っています。選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:20)】
【1.大人しくする 2.抵抗する 3.なにもしない】
こんなの自分でも行動できるわ!これもスルー!とりあえず、私の貞操の危機!身を捩って抵抗すると、男が笑った。なにわろてんねんマジで!
「いや、やめてくださいっ!」
「だいじょぶだいじょぶ、すぐ気持ちよくなっから。」
「う…っ、」
気持ち悪い匂いが強くなった。…もしかしてコイツの術式?違和感の正体ってこれ…?しかもこの匂い、なんか…ちょっと、媚薬効果みたいな感じ…?体が少しずつ熱くなって、意図せず息も荒くなってきた。ヤバ、くらくらする…。
「効いてきたか?俺はな、自分の呪力で匂いを操るんだよ。今オマエに嗅がせた匂いはどんどんオマエが気持ち良ぉくなりたいと思う匂いだァ。イイ匂いだろォ?」
「はぁ…はっ、やめて…っ、」
「そんじゃまずは可愛いちく「ハイ、お疲れ。」び…?」
どこかで聞いた声がして、どさりと音がした。男が倒れた…?目隠しが外されると、そこにいたのは…、
「甚爾様…?」
「よぉ。愉しそうだな理玖。」
男は死んでいた。パパ黒が私の手足に巻かれた結束バンドを持っていた刀で切る。手足が自由になって、体を起こそうとするけど思ったように力が入らない。術師が死んでも術式は反映されたままなんだ…うわ最悪…。ちょっと、どうしよう、体が疼いて、息も上がったままだ。
「…ああ、そういうこと。」
「と、甚爾、様…、助けて…、」
「ガキに興味ねぇ。」
「ぅ…、おね、がい…、はぁ…はぁ…、」
「…。」
パパ黒が私の顎を掴む。それだけでも体がピクリと反応してしまう。…あ、パパ黒の好感度、7%になった…けど、今の私ははしゃぐ余裕がない。刀をしまったパパ黒が私の口に人差し指を入れた。え、舐めていいの?ホント?ちょっと元気出てきた…!ちろちろと舌でパパ黒の指を舐める。
「…。」
「ん…はっ、」
「…ま、どうしてもってんなら、楽にしてやってもいい。」
「…らふに、ひて、くらはい…、」
「ハッ。」
パパ黒が私を見下ろしながら鼻で笑った。…なにその顔…好き…。