嵐の前の静けさ


テレビ収録が終わって撤退準備をするスタッフたち。私は高田ちゃんにお願いして写真を撮ってサインも貰った。いやったー!!東堂に自慢してやろう!そんでもって真依にも送ってあげよ♡って、そんな事してる場合じゃない。今度はお母さんの方の実家に顔を出すんだった。急いで巫女服から着替えて荷物を纏めると、おじいちゃんとおばあちゃんに挨拶をして両親と一緒に廻神家を出た。またしてもバスやら電車やら新幹線やらを乗り継いでお母さんの実家へ。

「お邪魔しマンボー!」
「ただいま〜。」
「ただいま戻りました。」
「あら、おかえり。理玖はまあ…大きくなって。」
「うぇい。」
「おぉ、理玖も来たか。まあ上がりなさい。」
「2人とも元気だった?」
「おぉ、元気元気。まだまだ現役じゃ。」
「ウケる。」

リビングで暫くまったりしながら私の最近の話だったり、この辺での呪霊の発生率や目撃情報なんかを聞いたりした。私の両親が帰国するまではじいちゃんとばあちゃんが祓っていたらしい。

「そうだ理玖、あの子達はどうなった。」
「え?誰?」
「あのあれだ、祭りに行った…そうそう、白い子と黒い子。」
「猫みたいに言ってるけど、悟と傑の事?」
「そうそう。どっちがどっちだ。」
「白いのが悟で黒いのが傑。ていうか、どうなったも何も、一緒に高専で教師してるよ。」
「おお、そうか。そりゃ凄い。」
「理玖、あの呪霊操術使えた子がいたでしょ、あの子呼んできなさいよ。いい呪霊仕入れたからねぇ。」
「なにその怪しいお店みたいな言い方…。ちなみにどんなの?仕入れたって事はまたあの祠に封印してる感じ?」
「じいちゃんがナマズ釣ったんよ。」
「おう、じいちゃんがひっかけた。大物だ。」
「ナマズ?」

え、ナマズって…あ、偽夏油が持ってたヤツ!?マジ!?勝手にずっこけるやつ!?そりゃ傑にあげなきゃだ。

「あ、でも私明日の昼には東京戻んないとだから、傑には来れる時にって伝えとくね。」
「そんなに早く戻るんか…。小遣いいるか?」
「いやいや、私もう働いてるから!むしろ私が小遣いあげなきゃでしょ!」

それからおばあちゃんとお母さんが夕飯を作ってる間に、お父さんと一緒におじいちゃんの畑仕事を手伝った。

「って、普通私もご飯作る方じゃない?」
「まあまあ、理玖。たまにはこうやって汗を掻くのもいいよ。父さんも畑仕事が楽しくてハマっちゃった。」
「織神君はよく働くからじいちゃんも助かっとる。」
「いえいえ、そんな、」
「あ、そうだじいちゃん、この辺に宿儺の指を封印してるところとか知らない?」
「宿儺の指かぁ…ばあさんなら知っちょるかもな。じいちゃんは知らんなぁ。」
「そっか、じゃあばあちゃんに聞いてみる。うぎゃあ!ミミズ!!」
「ミミズくらいおる。」

それから夕飯をご馳走になって、暗くなったころに私は1人で家を出た。向かうはあの場所。

「わ…、ホタルいる…!」

懐かしいなぁ…。傑と2人でホタルを見て、そのあと悟もこっちに来て、3人で夏祭りに行ってホタルも見たんだっけ。ああ、海も行ったな…。懐かしい…。ホタルの写真を撮ってグループトークに送るとすぐに既読と返信が届いた。そしてまたひとつピコンと通知。トークを開けば傑からだ。

『もしかして私の地元かい?』
『お、よく分かったね♡丁度顔出しに来たの!あ、ばあちゃんが傑にあげたい呪霊があるって!』
『そうだったんだね^^近いうち伺うと伝えてくれるかい?』
『りょ!(^^)/』
『そういえば結局理玖とデートできてないな。戻ってきたらデートしようね♡』
『そうだった!プリクラね!( *´艸`)』

暫くホタルを眺めた後、また家に戻った。お父さんとじいちゃんが晩酌をしている様子を微笑ましく眺める。

「理玖、帰ったならお風呂入ってちょうだい。理玖が最後よ。」
「ういー!あ、ばあちゃんアイスあるー?」
「さっきじいちゃんが食べたよ。」
「マジかよ。ま、いっか。お風呂入ってくんね。」

浴室に向かってそういえば悟と傑とも一緒にお風呂入ったなーって思い出して自然と頬が緩んだ。どっちが先に背中洗うかとかじゃんけんで決めたり、お湯をかけ合って遊んだのも懐かしい。全身を洗って湯船に浸かると、昔は1人だと広く感じた湯舟がなんだか窮屈に感じた。なんだか気分が良くて熱唱したいくらいだ。1人エアマイクを手にリサイタルしていると、ばあちゃんが凄い勢いで浴室のドアを開けた。

「うるさいよ!ばあちゃんもう寝るんだから静かにしな!」
「どぉあっふ!ビビったぁ…さーせん!」
「全くアンタは風鈴に似て落ち着きがない!」
「うっそぉん、私お母さん似?」
「そうよ。アンタの母ちゃんも結婚してから落ち着いたけどね。」
「ほーん、あ、もう上がるけどお湯どうすんの?」
「母ちゃんに声掛けな。じゃあね、ばあちゃん寝るから。おやすみ。」
「歯磨いたか?トイレ行ったか?」
「年寄り扱いすんじゃないよ!」
「メンゴ!ばあちゃんおやすみ〜。」

ばあちゃん元気だな…。お風呂を出て髪を乾かしリビングに戻ると、じいちゃんはもう寝たらしい。お父さんとお母さんだけ起きていた。

「理玖、随分ご機嫌だったね。こっちまで聴こえてたよ。」
「マジか。うるさかった?」
「変わらないわねって話してたところよ。お湯残してる?」
「あ、うん。蓋だけした。ふい〜、喉乾いたぁ。」
「ところで理玖、」
「ん?」

冷蔵庫から取り出した麦茶をグラスに注ぎながら耳を傾ける。視線を向ければお父さんとお母さんが真剣な眼差しで私を見ていた。

「…え、どしたの。」
「理玖、今いい人はいるのか?」
「…は?」
「今付き合ってる子はいるの?」
「…いや、誰とも付き合ってないけど、え、なに、」
「そろそろ結婚とか考えないのかしらって思って。」
「結婚!?えっ、なんで!?」
「なんでって、ほら、おじいちゃんとおばあちゃんが元気なうちにひ孫の顔を見せてあげたいじゃないか。」
「ひ孫ぉ!?いやいや、そんな暇ないから!ていうか私が動けなくなったら神仏系の任務誰が…、」

そこまで言って思い出した。そういえばもう神仏系の任務に拘る事はないんじゃない…?だって産土神とミミナナ対策のために神仏系の任務を全部請け負ってたわけだし…。あれ、じゃあもういいんじゃね…?いや、でも、うーん…、

「ほら、悟君とか傑君とか甚爾さんだっているでしょ?それにお隣だった建人君とか、」
「いや、まあ、いるけど…、」
「誰かと結婚する気は?」
「いや、うーん、そりゃ、まあ…結婚、したい気もする、けど…、」
「けど?」

私は皆の顔を思い出す。私がもし誰かと結婚したとして、え、ヤバくない?皆喧嘩しちゃいそうじゃん。え、下手したら殺し合いになりかねないのでは…?もしそれが嫌で私が高専の皆以外の人を選んでみ…?皆結託して殺しちゃうよ?!いやいやそんなのヤバいって!絶対ダメ!

「とにかく今すぐ結婚しろとは言わないけど、いずれね、」
「そうよ。お父さんもお母さんも孫の顔が見たいし。」
「孫って…、いやでも、ほんとにすぐ結婚とか子供とか無理だって!そもそも私の周り、ヤバい人しかいないから!私が結婚なんてしたらもうあれよ?日本終わるよ?」
「何で日本が終わるの?」
「いやだって、皆私のこと大好きすぎるんだもん!」
「「…はい?」」
「いや、マジで、ほんとに。私が誰か1人選んで結婚してみ?血が流れるよ?」
「そんな大げさなぁ。」
「いやいやいやいや、マジだから!悟なんて絶対相手殺しちゃうし、傑なんて絶対相手殺しちゃうし、甚爾様だって絶対相手殺しちゃうし、とにかく皆相手殺しちゃうから…!」
「そんなに理玖の事が好きなら、理玖の幸せを願うんじゃないの?」
「そんな可愛い奴らじゃないよ…。」

間違いなく血祭りにあげるに決まってる…。そんなの絶対ダメ…!それにこれから原作軸に入るわけだし、私なんかますます忙しくなっちゃう!結婚はまあ、皆大好きだから皆としたいくらいだけど、とにかく今すぐには出来ない。

「まあ、その内落ち着いたら考えておいて。」
「いや、うん、まあ。…ていうか、今までの神の子って結婚とか子供とか生んだりしてるの?」
「いや、記録上結婚したのは確か、宿儺に気に入られた神の子だけだった気がするよ。と言っても半分攫われたようなものだったらしいし、子供が生まれたかどうかまでは記録にないから父さんも知らないけど。」
「マジ?」

それってもしかしたら宿儺Pとも理玖ちゃん取り合い合戦が発生してしまうのでは…?契闊なんて唱えられてみ?死ぬぞ?

「あ、そういえばばあちゃんに宿儺の指あるか聞くの忘れてた。」
「ああ、それならさっき父さんが聞いておいたよ。この辺りにはないらしい。」
「そっか。お父さんありがとう。」
「さて、父さんはもう寝るから、理玖も夜更かしせずに寝るんだよ。おやすみ。」
「ん、おやすみ。お母さんは?」
「お母さんも寝ようかな。お布団干しておいたからね。」
「ん、ありがと。おやすみー。」
「おやすみ。」

寝室に向かう両親の背中を見ながら小さく溜息。結婚ねぇ…。いや、前世?ではまだまだ若かったし結婚とか全く考えてなかったな…。ていうかこの世界で結婚かぁ…。

「…どう考えても血祭りじゃん…。」

それに子供たちが小っちゃい頃に結婚云々の約束もしちゃったし、するとしたら子供たちが結婚できる年齢になってからだよなぁ…。まあノリピーには結婚を考える、だったり、トゲエルやメグエルには結婚する!って言っちゃったし…。…つまり原作の時間軸じゃ無理じゃん。

「ま、渋谷事変は防げたと思うし、交流会終わったら平和になるっしょ。さて、歯磨きして私も寝よーっと。」

明日は真人と漏瑚に会わなくちゃ。翌日、昼には東京に戻る為起きてすぐに身支度をした私。ばあちゃんには傑が近々呪霊を貰いに来ることを伝えた。見た目も小学生の頃に比べてめちゃくちゃ変わってるから一応皆に傑の写真を見せておいた。朝食を食べて電車やバスの時間を調べていると、じいちゃんが私を呼んだ。

「理玖、もう出るか。」
「あーうん、そうだね、電車の時間もあるからそろそろ。」
「駅まで送っちゃるから、乗りなさい。」
「マジ!?じいちゃん大好き!」
「ふん、じいちゃんにはばあさんがおるぞ。」
「じいさん余計な事言わなくていいんだよ!」
「ハハハ、ばあさん照れとるな。」
「いくつになってもお熱いこって。」

両親とばあちゃんにぎゅうっと抱き着いて、また落ち着いたら顔を出すことを伝えると、じいちゃんと家を出た。

「わ、懐かしの軽トラ!」
「もうトランクは無理だな。」
「あはは、流石に無理!」

軽トラの助手席に乗ってじいちゃんの運転で駅まで送ってもらった。じいちゃんは電車が来るまで一緒に待ってくれた。電車が来ると爺ちゃんにもぎゅうっと抱き着いて送ってくれたお礼を言って別れた。電車に揺られながら、久し振りに家族団欒ができた事が凄く嬉しかった。

「さて、気を引き締めていかなきゃね…。」

東京に戻ったら真人と漏瑚に会って、漏瑚から宿儺の指を貰わないと。うまくいきますように…!



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