ゆじたんと野薔薇が廃ビルに入る背中を見届けて、私と悟とメグエルの3人は待機。まあ、原作通り進むだろうし、私が手伝いに行く必要もないだろう。
「やっぱ俺も行きますよ。」
「だぁめ、今日はあの2人の試験なんだから。」
「でも虎杖は要監視でしょ。」
「まぁね。でも、今回試されてるのは野薔薇の方だよ。」
「野薔薇ちゃんは地元にいる時に私が実力確認したけど、その時は問題なし。」
「理玖が言うなら間違いはないんだろうけど、一応ね。悠仁はさ、イカレてんだよね。異形とはいえ生き物の形をした呪いを、自分を殺そうとしてくる呪いを、一切の躊躇なく殺りに行く。君みたいに昔から呪いに触れてきたわけじゃない。普通の高校生活を送っていた男の子がだ。才能があってもこの嫌悪と恐怖に打ち勝てず挫折した呪術師を、恵も見た事あるでしょ。今日は彼女のイカレっぷりを確かめたいのさ。」
「悟今日はよく喋るね、先生みたい。」
「失礼な、ちゃんと先生してるでしょ。」
「野薔薇ちゃんには分かるかなぁ、田舎と都会のレベルの差。」
「どうかな。」
そうこうしている内にあの人質を取る呪霊がビルの壁をすり抜けて飛び出した。
「「お。」」
「祓います。」
「待って、」
突如呪霊の体内から棘のような物がザクザクと突き出て、呪霊は湯気を上げて消えた。うん、原作通りだ。
「いいね、ちゃんとイカれてた。」
廃ビルから出てきたゆじたんと野薔薇と小さな男の子。悟とメグエルに男の子を頼んで、私とゆじたんと野薔薇は待機。2人をぎゅうっと抱きしめてあげた。
「お疲れ様。2人なら無事に戻ってくると思ってたよ。」
「理玖姉、俺1体祓ったんだぜ!」
「私だって祓ったわよ!」
「よすよす〜!よくできたね!さ、この後ご飯に行こうって話してたんだけど、2人は何食べたい?」
「ビフテキ!!」
「シースー!!」
「それじゃあ悟がお高くて美味しい店知ってるから、戻って来たら「お疲れサマンサー!!」早っ、」
「子供は送り届けたよー。今度こそ飯行こうか。」
「ビフテキ!!」
「シースー!!」
「任せなさい!」
「きゅんは何が食べたい?」
「理玖さんが食べたいものがいいです。」
「きゅん…♡」
「はいそこ、僕の理玖とイチャイチャしない!」
「どったの伏黒。」
「別に。」
「出番がなくてスネてんの。」
「プップー、子供〜!」
「まあまあ、きゅんはこれでも2人のこと心配してたんだよ?」
「理玖さん、」
「なあなあ、きゅんってなに?伏黒のあだ名?」
「恵きゅんのきゅん!あと可愛くてきゅんきゅんするのきゅん!」
「えー!?こんな重油まみれのカモメに火つけてそうな奴のどこが可愛いの!?理玖さん騙されてません!?」
「誰が重油まみれのカモメに火つけてんだよ。」
「アンタよアンタ!」
「はいはい喧嘩しないの。野薔薇の荷物回収しに行くよー。」
歩き出した悟と、それに続く1年生。その背中を見ながら、ひとりスマホを構えて凸凹な背中を写真に収めた。…もうすぐ、英集少年院の任務だ。漏瑚が指をポイしてくれるって言ってたけど、大丈夫だろうか…。
「理玖?」
「理玖さーん!」
「理玖姉早く行こうぜ!」
「どうかしたんですか、理玖さん。」
「なんでもないよ!」
コインロッカーで野薔薇の荷物を回収した私達。駅前でさて何を食べに行くかという話になった。
「それで結局お寿司?お肉?」
「じゃんけんでもしたら?」
「虎杖、私はパーを出すぞ。」
「!」
「「ジャンケンポン!!」」
「しゃオラッ!」
「な゛ーーっ!!釘崎騙したな!」
「寿司かあ、銀座のいつもんところでいいか。」
「ザギン、フーーーッ!!」
「え、俺回転寿司がいい。」
「あ゛ぁん!?」
「回転寿司かぁ、そういや最近行ってないかも。」
「な、理玖姉も回転寿司が良いよな!」
「かーーーっ!!虎杖オマエ本当っ…、かーーーっ!!伏黒もなんか言ってやれ!」
「まぁ、俺も流石にどうせなら美味い方が。五条先生の金だし。」
「分かってねーなー。カップ焼きそばと焼きそばが別物のように、寿司と回転寿司も別物なんだよ。」
「いやだから私は食事がしてぇんだよ。」
ほんと微笑ましい。じゅじゅさんぽで見たまんまだ。
「寿司は“食事”だけど回転寿司は“レジャー”なんだよ!!遊園地なの!!TDLなの!!なっ、理玖姉もそう思うだろ!?」
「確かに、回転寿司ってお店によって楽しみ方あるよね。」
「私は寿司が食いてぇんだよ!!」
「っていうか釘崎ド田舎出身って言ってたけど、回転寿司行ったことあんの!?」
「うっ!!」
「僕のフェイバリットは「スシゴー」だが、はじめてなら「りっぱ寿司」だろうね。」
「あー、確かに。」
「先生、理玖姉…分かってんじゃん!」
「おいまだ行くとは、」
「釘崎よく聞け、りっぱ寿司はな…寿司が新幹線に乗ってくるんだ。」
「なっ!!」
「じゃあ今日は回転寿司で、次は銀座の高級寿司にする?」
「いよっしゃー!」
「どうやって行くんですか。5人だとタクシーまた2台使いますよね。」
「フッ、きゅんったら忘れたの?私達にはあの五条悟が一緒なのよ?悟!」
「はいはい、お任せくださいお姫様。あー、もしもし、僕だけど、リムジン1台原宿駅までよろしく。」
「リ、リムジン!?」
「そういえば昔乗りましたね。」
「ちょ、リムジンってどういうこと!?」
待つこと数十分。原宿駅の前に1台の白いリムジンが停まった。通行人が足を止めてリムジンを見ている。運転席から見覚えのある運転手さんが降りてきた。悟と私を小学校まで送り迎えしていたあの運転手さんだ。後部座席のドアを開けた運転手さんがぺこりと頭を下げた。
「お待たせいたしました、悟様。それと、お久し振りでございます、理玖様。」
「お久し振りです。」
「ん、ほら皆乗って乗って。」
「「すっげぇーーー!!」」
「めちゃくちゃ目立ってるんですけど…。」
リムジンに乗り込んだ私達5人。ゆじたんが窓を開けて体を乗り出した。マジか、リムジンでもやるんか…!
「運転手さん!!この子回転寿司初めてなんだ!国道沿いの駐車場がバカでかいりっぱ寿司まで!!」
「悠仁君、捕まっちゃうからちゃんと座りなさい!」
「落ち着きないねぇ。」
「リムジン…なんでリムジンなんて持ってるわけ!?」
「ま、僕くらいになるとリムジンの1台2台は持ってるよね。」
「はぁああ!?」
「きゅんが小学生の頃はこれで皆で焼き肉行ったよね、懐かしい。」
「そう言えばそんな事ありましたね。」
「今度はちゃんとした寿司と焼き肉に連れて行かなきゃね。あ、そうだ、悠仁君と野薔薇ちゃんには高専に帰ったら紹介したい人がいるから、」
「紹介したい人?」
「僕と理玖と、もう1人、1年生を担任してる術師がいるんだよ。そいつの名前は夏油傑。」
「私と悟と傑、3人とも特級術師だから忙しくて、日替わりで皆の授業を担当してるの。私達より断然教師向きの性格してるし、教えるのも上手いから仲良くね。」
「理玖、それって僕が教師に向いてないって言ってんの?」
「えー?そんなつもりないけどー?」
そうこうしている内に国道沿いのバカでかいりっぱ寿司についた。リムジンを降りてりっぱ寿司に入れば、ゆじたんと野薔薇は目をキラキラさせた。
「こ、ここが回転寿司…!」
「さ、座るよ子供達。」
「何から食べようかなー。」
大きめの席に案内されて、子供達と向き合うように悟と隣り合って座った。悟がテーブルの下で私の太ももをすりすりと撫で回すのでその手をペチンっと叩いておく。タッチパネルでそれぞれお寿司を注文して数分後、いよいよあの新幹線の登場だ。シャーッとレールの上を滑るように移動する新幹線に、野薔薇は目を見開いた。
「し、新幹線ってこれかよぉ!」
「応!新幹線だろ!」
「こんなのでテンション上がるの子供くらいだぞ。」
「伏黒、それって俺が子供だって言ってる!?」
「僕らからしたら恵も十分子供だけどね。」
「まあまあ、早くお皿取ってそこのボタン押して。」
お皿を取って赤く点滅しているボタンを押すと、新幹線はシャーッと来た道を戻っていく。7月まで残りわずか。今はただ、少しでも楽しい思い出を。そう思いながらわいわい騒ぐ子供達を眺めた。お腹いっぱいになるまでお寿司やデザートを食べた私達は、再びリムジンに乗り込んで高専に戻った。傑はもう戻って来ているらしい。LIMEで1年生が揃ったことを伝えて、子供たちの寮の前に向かう。
「や、初めまして。私は夏油傑。君達の担任の1人だよ。」
「虎杖悠仁です!好きなタイプはジェニファー・ローレンス!よろしくおねしゃす!」
「釘崎野薔薇よ。」
「これで無事1年生とその担任が揃ったね。」
「これから皆で頑張っていこうね!」
「明日は早速私の授業だから、皆遅れないようにね。」
「じゃ、今日はこれで解散!」
寮の前で子供達に手を振って解散すると、傑は私にぎゅっと抱き着いてきた。悟がムッとした顔をして反対から抱きしめられる。おっふ、最強サンド…。
「おかえり、理玖。」
「ただいま傑。ばあちゃん家寄って来た?」
「ああ、ナマズ呪霊貰ったよ。またいい呪霊を捕まえたら連絡すると言われてね。」
「傑も理玖のばあちゃん家行ってたわけ?!ズルいんですけど!」
「悟にも会いたがってたから、今度顔出してあげてよ。」
「勿論理玖も一緒なんだよね?」
「予定が合ったらね。さ、私達も早く休もっか。」
3人で手を繋いで教員寮に向かう。なんか3人揃うの久し振りな気がするなぁ、なんて思っていると、何故か悟と傑は私の部屋にドカドカと上がり込んだ。ま、まさか…、
「久し振りにどうかな、理玖。」
「え、」
「傑はダメ。僕が理玖とイチャイチャするの!」
「悟は私より理玖と会ってるだろう?たまには私に譲ってくれよ。」
「いや、2人とも早く部屋に戻りなよ、疲れてるでしょ?」
「疲れマラって言ってね、ほら、」
「いや、ほら、じゃないから!ってちょ、なんで2人とも脱いでんの!」
これは眠れないやつ…!バサバサと仕事着を脱ぎ捨てた2人。それはもうご立派に勃ち上がっているさとちんとすぐちんに、私は小さく溜息を吐いて身を任せることにした。こりゃ明日は動けなくなること間違いなし…。
「理玖、愛してるよ。」
「愛してる、理玖。」
「私も、2人とも愛してるよ。」
もうどうにでもなれ、そう思いながら2人の口付けを受け入れた。