「順平の術式は“毒”だね。」
真人が順平の頭に両手を添えてそう言った。真人の無為転変で脳を弄って、順平はすぐに式神が使えるようになったらしい。ふよふよと順平の近くを漂っているのは、原作で見た通りのクラゲの式神…澱月だ。
「へ〜、可愛いクラゲ。」
「呪力から精製した毒を式神の触手から分泌する。毒の加減、式神のサイズや強度の可変はこれから覚えればいい。普通の術師が時間をかけてつかむ感覚は、俺が教えられるから、すぐ戦えるようになる。順平、才能あるよ。」
「良かったね、順平!」
「あの…、」
「ん?」
「理玖さんと真人さんは、一体どういう関係なんですか…?」
「うーん、詳しくは言えないけど……強いて言うならビジネスパートナー…的な?」
「えー、ビジネスなの?」
「強いて言うならだってば。順平君、式神が一通り使える様になったら、私が勤めてる学校に通わない?」
「え…、」
「ほら、前に名刺渡したでしょ?」
「理玖、順平を呪術師にしたいの?」
「うーん、まあ、順平君次第ではね?今の学校でイジメはなくなった?」
「…はい、理玖さんのおかげで。」
「それはよかった。」
あ、そういえば…真人は確か、順平にうずまきのボタンの話をしてたっけ…。それって羂索が入ってた偽夏油の指示だったのかな…?ま、いっか。私が教えちゃお。
「そうそう順平君、」
「はい、」
「うずまきのボタンをしている学生に会ったら仲良くするといいよ。彼らは呪術師って言って、私の生徒達だから。」
「え…、」
「きっと順平君と気が合うよ。」
「…は、はい。でも、真人さんは理玖さんの敵なんじゃ、」
「そこは気にしないで。あ、それと私と真人の関係は誰にも言わないでね?バレたら私、殺されちゃうから♡」
バチコーン☆とウインクをしておいた。順平はぽかんと口を開けている。真人にいたっては爆笑している。いや、なんで笑うの?
「俺との関係がバレたら殺されるのに、理玖はよっぽど叶えたい事があるんだね?」
「まあね!やりたいようにやってはいるけど、やりすぎて1回死んだ事あるからさ、」
「えっ!?死んだんですか!?」
「うん。ま、色々あって生き返ったけど、今度は自分に出来ないことを成し遂げる為に真人と手を組んでるの。」
ま、真人と花御は交流会までだけどね。九相図を薨星宮から盗み出してもらったあとは、重面春太と漏瑚、陀艮に九相図の受肉を任せようかな。組屋鞣造と重面春太、どこいるんだろう…。
「順平君はこのまま真人に色々教わりな。きっと君の役に立つし、護りたい人も護れるようになるよ。じゃ、私はこれで!」
「…はい。」
「えー!理玖もう帰るの?」
「うん、交流会の日に必要な協力者探しが残ってるからね。今日中に探してここに来るように伝えるけど、また何かあればカラス使って連絡するから。じゃあね!順平君も頑張って!何かあったらLIMEしてね!」
「は、はい。」
下水道を出て大通りまで歩いた。タクシーを拾って一先ず都内へ移動。残穢が残ると怪しまれるから、最近任務で訪れた神社に入った。神社の中で私がセレクトを使って残穢が残っても、ここに任務できたことがある記録が残ってるから怪しまれることはない。それに、あの周辺で術式を使ったら、真人の居場所を突き止めようと調査しているナナミン達に、私の残穢を見られてしまう。手順通り参拝を終えると、神社の裏手、人の気配がないところで早速セレクト!
【あなたは組屋鞣造と重面春太を探しています。選択してください。選択すると呪力を160消費します。(残り呪力:243)】
【1.組屋鞣造を呼び出す 2.重面春太を呼び出す 3.組屋鞣造と重面春太を呼び出す 4.なにもしない】
お、2人とも一緒に呼び出せるならラッキー。3番。
【3.組屋鞣造と重面春太を呼び出す を選択しました。呪力を160消費しました。(残り呪力:83)】
さて、どうやって来るかなぁ、ちょっと楽しみ。また上から来るかな?と頭上を見上げれば、何やら黒い影が2つ降ってきているのを見つけた。いや、これ毎回思うけど着地失敗したら死にそうじゃない!?怖っ!
「おわあああああ!」
「あははー!なにこれー!」
「ぶへっ!」
「よっと!」
組屋鞣造と重面春太が降ってきた。組屋鞣造は顔面から落ちたけどこれ…大丈夫…?死んでない?
「あ〜!女の子だぁ!」
「オイオイオイオイ!いってぇなぁ!なんだ一体!」
「やあやあお2人さん、はじめまして!」
「女の子に話しかけられた〜!ねえねえ名前なんていうの?」
「誰だテメェ…。どうやって俺をここに連れてきた!俺は自分のアトリエにいたはずだ!」
「まあまあ落ち着いてもろて。私の名前は廻神理玖。名前くらいは聞いたことあるでしょ?」
「廻神理玖…?」
「…オマエ、まさか神の子って奴か…!丁度いい、神の子で椅子作ったらよぉ、丈夫にできんじゃねぇか?」
「あぁ、神の子!聞いたことある!へぇ〜こんなに可愛い子が神の子なんだぁ〜!」
どうやら2人とも私の事を知っているらしい。ま、一時期呪詛師御用達の掲示板に載ってたくらいだからそりゃそうか。それなら話は早いかも。
「ねえねえ、歳いくつ?」
「女性に気安く歳を聞くなっての。早速本題に入りたいんだけど、いいかな?ちょっと協力して欲しいことがあるんだよね。」
「あ?協力?テメェは呪術師だろ。俺が呪詛師と知ってて言ってんのか?」
「知ってるから呼び出したんでしょ。まあ、順を追って説明するね。」
私は2人に、交流会が行われる日に真人と花御と協力して、高専に奇襲をかけて欲しいと伝えた。原作では裏梅がこの2人に声を掛けたのかと思っているけど、羂索がいない今、裏梅がどこにいるのかもわからない。ていうか裏梅ってどうやって現代に現れたんだろう。獄門彊の中にいた?とも昔考えたけど、もしかしたら裏梅も受肉体だったりするのかな…?ま、今はそれは置いといて。
「かくかくしかじかな理由で、嘱託式の帳を作れる人を探してるんだけど、知ってる?」
「…ああ、それなら心当たりがあるぜ。」
「そう、じゃあ交渉は組屋に任せる。五条悟、夏油傑、伏黒甚爾、そして私、廻神理玖の侵入を拒む帳を作りたい。その他の出入りは自由。いける?」
「多分な。でもよぉ、どうして呪術師のオマエが、俺ら呪詛師にそんなことを頼むんだ。」
「そこは言えないから教えらんない。」
「でもさぁ、俺たちが協力するメリットってなくない?」
「五条悟ってさ、190センチはあるんだよね。」
「190…そういやそんな話聞いたな。」
「他2人も180オーバーだったかなぁ?どう?いいモノ作れそうじゃない?」
「……五条悟のハンガーラック…、」
「ハンガーラック?それっている?趣味悪いね?」
「うるせぇ!」
「重面はさ、たくさんの女の子と話したくない?」
「えー!女の子と話せるの?!」
「勿論、協力してくれればの話ね。」
「やるやるー!たくさんの女の子かぁ、何人くらい?!」
「それはその時のお楽しみって事で。」
「わぁ〜、楽しみだなぁ〜!」
いや、コイツらチョロっ!まあ、これで計画が上手くいけば原作通りに真人と花御、それから組屋と重面の4人で交流会で奇襲されるイベントが可能。悟はともかく、傑とパパ黒、そして私が帳に入れなければ、生徒達の危機!となって何が何でも帳は破ることになる。その間、真人には薨星宮に侵入して九相図と宿儺の指を回収してもらう。原作通りの流れになれば茈で悟が花御に深手を負わせ、呪霊・呪詛師側は撤退。その後私が真人と花御の元へ傑を連れて行く。回収した宿儺の指と九相図は重面に持たせて彼だけは漏瑚たちと合流させる。傑には真人と花御を取り込ませて、一先ず交流会の事件は一件落着!…上手くいくなぁ、ちょっと心配。問題は九相図を受肉させるタイミングと、漏瑚と陀艮を傑に取り込ませるタイミング、それから重面をどうするか。組屋は捕まった時に私のことを話されたら困るから、そこはセレクトでなんとかできるといいなぁ…。
「てな感じだから、今から行って欲しい場所があるんだけど。」
「あ?どこにだ。」
「来る日に一緒に行動する呪霊の隠れ家だよ。2人一緒に行ってくれた方が助かるね。私と一緒にいる所を見られたら困るし、私の事はその呪霊達以外には絶対に話さないと約束して。」
「おいおい、俺らがそんな簡単に呪術師を信用するわけねぇだろ。」
「そうだよぉ!俺らの事待ち伏せて、捕らえるつもりなんじゃないの?」
「その気があるなら今ここでそうしてるよ。」
「それもそっか!」
「っておい、オマエは簡単に信用し過ぎなんだよ!」
「ま、当日ヤバくなったら私がなんとか助けるから、そこは安心して〜。」
組屋鞣造には高専の為に呪具を作ることを縛りに死刑はなし、とかできそうだしね。重面は…ごめん、今のところ何も浮かんでないや。これは追々考えるとするか。真人がいる下水道の場所を2人に教えて、絶対に行くようにと念を押しておいた。近くに止まっていた冥さんのカラスに腕を出すと、バサバサと飛んで腕に止まってくれたのよすよす〜と頭を撫でておく。
「人型で顔にツギハギのある呪霊がいるんだけど、それがさっき話した真人。私の名前を出したら分かるはずだよ。ついでにカラスにも案内させるから、道には迷わないはず。」
「カァ〜。」
「神の子ってそんなこともできるんだぁ〜!」
「いや、このカラスは私のじゃないんだけど、まあそれは置いといて。とにかく今から絶対に行ってね。行ってないって分かったら術式と呪力取り上げちゃうから。」
「…マジかよ、そいつは困るぜ…。」
「俺も困るかも…。」
「じゃ、いってらっしゃ〜い!しつこいようだけど、私の名前を出すのは真人の前だけね!それもちゃんと見てるから!言った瞬間に呪力と術式奪うからよろしく〜!」
「チッ!」
神社を出て行く組屋鞣造と重面春太の後ろ姿を見届けて、冥さんのカラスには2人を真人の所に案内するようお願いした。カラスはひと鳴きしてバサバサと飛び立っていく。ふぃ〜、とりあえず今日はこのくらいで大丈夫かな。
「はぁ〜、つっかれた〜!さっさと帰ろ〜。」
原作の時間軸に入ってから、好感度が一番反転してる悟も、他の皆も少し落ち着いている状態だ。でもまだまだ、皆の好感度の回復には時間が掛かりそうだし、たまには機嫌取りにご飯でも作ってあげるかなぁ〜…。神社を出てタクシーを拾うと、高専の近くにあるスーパーに行くようお願いし、グループLIMEを開いた。子供達はここ最近、交流会に向けての鍛錬で頑張ってるし、スタミナがつくご飯を作ってあげますか!ゆじたんには後で地下室に持って行ってあげよーっと!
『今日は皆大好き理玖ちゃんが久し振りにご飯作ってあげるねー!手伝える人は高専から一番近いスーパーに集合!』
送信ボタンを押して様子を見ていれば、すぐに既読がついて一気に騒がしくなるグループLIMEに自然と笑みが零れる。早くゆじたんもこの輪に戻って来て欲しいなぁ。