呪術甲子園


「続いて、人的被害です。2級術師3名、準1級術師1名、補助監督5名、忌庫番2名。高専に待機していた術師で、五条さんや夜蛾学長と別行動だった方達ですね。」

真人と花御を傑が球体にした後、私と三銃士は地上に戻った。先に被害の確認と怪我人の治療を済ませ、数時間後に今回の襲撃事件の被害報告を聞いた。

「結構被害出ちゃったかぁ。」

報告を聞きながら、漏瑚と陀艮を取り込ませるためにはどうするべきかと考える。私の指示通りに重面春太が動いてくれるなら、九相図トリオが受肉するのも時間の問題だ。戻らない真人と花御に痺れを切らして、漏瑚と陀艮が九相図トリオを連れて高専に攻め入ってくる可能性もある。

「家入さんからの報告待ちですが、以前七海さんが遭遇した呪霊の仕業でほぼ間違いないかと。」
「チッ、」
「この件って、学生や他の術師と共有した方がいいですかね。」
「…いや、」
「上で留めておいてもらった方がいいだろう。呪詛師界隈に特級呪物流出の確信を与えたくない。捉えた呪詛師は何か吐いたか?」
「口が硬いわけではないのですが、まともじゃない、要領を得ない発言が多いです。ただ、件の襲撃に関して自分は取引の上、命令されてやったに過ぎないとのことで、」

ちらり、と伊地知が私に視線を寄こした。まあ、組屋が私に指示されたと素直に吐いたんだろう。伊地知も私が未来を知っていることも、別の世界から来たことも知っているわけだし、事情を知らない楽巌寺学長達のいる前では私の名前を出さないでくれるらしい。歌姫には今日話したけど、伊地知は歌姫に私の事情を話したことは知らない。まあ、ナイス判断、伊地知!今度めちゃくちゃ美味いうどん屋さんに連れってあげる!

「そもそもなんで呪霊や部外者が天元様の結界抜けられたのよ。」
「それは生徒達が相手にした、特急呪霊のせいだと思う。特殊な気配を持ってる呪霊は呪霊でも、限りなく聖霊に近いんじゃないかな。葵の話だと、植物に潜り込めたらしいし、天元様の結界も植物には機能しないでしょ。天元様の結界って“守る”より“隠す”に全振りしてるから、懐に入られるとちょっと弱いよね。」
「俺ですら入れたからな。」
「オッサンは特殊じゃん。」
「あ、そうだ、その特級呪霊の件だけど、私と傑から報告があります。」
「なんだ、理玖、傑。」
「襲撃の主犯…という言い方でいいのか分かりませんけど、件のつぎはぎ呪霊と植物呪霊は私の術式で取り押さえました。」
「「「「……は?」」」」
「それで、傑に取り込んでもらいました。なのであの2体が再度高専に攻め入ってくるような事はないと思います。」
「何故それをもっと早く言わんのだ、理玖!!」
「いやぁ、だって先に被害報告を聞いておこうと思って。」
「はぁ…全く、オマエというやつは…。それで、取り込んだのか、傑。」
「ええ、理玖のおかげで。」
「なので今用心するのは、特級呪物を持って逃げた呪詛師のみかと。と言っても、歌姫先輩の報告を聞くに、すぐにまた攻め入ってくるようなタイプではなさそうですね。」
「そうね。とりあえず今は、学生の無事を喜びましょう。」
「フム…。」
「だが交流会は言わずもがな中止ですね。」
「ちょっと、それは僕達が決める事じゃないでしょ。」
「「「「?」」」」

というわけで、治療が済んだ子供達を呼び出してミーティングをすることに。

「っつーわけでさ、色々あったし人も死んでるけど、どうする?続ける?交流会。」
「うーん…、どうするって言われてもなぁ…、」
「当然、続けるに決まっているだろう。」
「東堂!!」
「その心は?」
「1つ、故人を偲ぶのは当人と縁のある者達の特権だ。俺達が立ち入る問題ではない。2つ、人死にが出たのならば尚更俺達に求められるのは、強くなることだ。後天的強さとは、“結果”の積み重ね。敗北を噛みしめ勝利を味わう、そうやって俺達は成長する。“結果”は“結果”として在ることが一番重要なんだ。」
「東堂先輩って意外としっかりしてるんですね。」
「しっかりイカれてんのよ。」
「3つ、学生時代の不完全燃焼感は死ぬまで尾を引くものだからな。」
「オマエいくつだよ。」
「まあ、葵君の言うことはご尤もだと思うよ。私は交流会継続をお勧めするね。」
「俺は構わないですよ。」
「どーせ勝つしね。」
「屁理屈だが一理ある。」
「加茂君は休んだら?」
「異議なーし。」
「しゃけ。」
「個人戦の組み合わせはくじ引きか?」
「え、今年は個人戦やんないよ。」
「私達はルーティンってものが嫌いでね。」
「青春時代の思い出って大事だしねぇ〜?ってことで、はい。この箱に勝負方法入れてるから、引いてみて?」
「お、応。」

ゆじたんに木箱の穴を向けると、手を入れてごそごそと中を漁るゆじたん。ちなみに中身は今朝、私と三銃士で勝手に書き換えた。悟が野球、傑がサッカー、パパ黒はデスマッチと書いていたのでデスマッチは破り捨てて、サバイバルゲームと書き換えておいた。そして私が書いたのはバレーボール。

「や…」
「野球ぅ〜〜〜〜??」
「どういうことだ、夜蛾。」
「いや、私は確かに個人戦と…待てオマエ達!!」

とりあえず三銃士と共にその場から逃げておいた。ユニフォームや野球道具は悟と傑が張り切って準備をしてくれるらしい。その日は一先ずお開きになって、1日休暇を挟んだ翌日、交流会2日目の野球が開催されたわけだけど…残念ながらその日私は任務へ。宿儺の指を回収する係が私だから、盗まれた指と共に呪胎九相図も捜索するように、楽巌寺学長直々に指示が下ったのだ。ま、どこにあるかは知ってるんだけどね。交流会の為に残ったのは、悟と傑。パパ黒はまた新台入れ替えとやらでパチンコにでも行ってるんだと思う。だって朝から見かけなかった。順平やミミナナはまたしても見学、おっこちゅ、金ちゃん、綺羅羅はまだ任務に駆り出されている。さっさと任務を終わらせて、高専に戻る前に立ち寄ったのは呪霊サイドのアジトであるマンション。元の住人はかなり前に真人が改造人間にしたらしい。ドアを開けて中に入ると、部屋の中は見覚えのあるビーチになっていた。うわぁ、初めて来た!漏瑚が生首の時に来れてたらなぁ、真人とブラジリアン体操してサッカーしたのに…。

「ヤッホー、調子どう?」
「…廻神理玖か…。真人と花御が戻らん、どうなっている…!」
「えぇ〜?おかしいなあ、ちゃんと見送ったのに。花御がかなり消耗していたから、山にでも籠って回復してから帰ってくるんじゃない?」
「ぷぅ…。」

ビーチに置かれたパラソルの中に入ると、ビーチテーブルの上には宿儺の指と呪胎九相図が置かれていた。という事は、重面春太はちゃんとここに来たという事。

「重面は?」
「奴ならこれを置いてすぐに逃げた。貴様から呪胎九相図を受肉させろと言われたとほざいておったぞ。」
「ああ、うん、事実。非術師でいいから九相図を飲み込ませてくれる?私はほら、直接手出しできないから、漏瑚お願いね!」
「期限はあるのか。」
「うーん、1週間以内、くらい?」

特に時期は決めてなかったけど、まあ大丈夫でしょう。

「1週間後、またここに顔を出すよ。真人と花御もそれくらいには戻って来るんじゃないかな?」
「そこまで身動きが取れんほど、真人と花御は重症なのか?!」
「まあ、あの場に特級呪術師が4人も居ればね…。ほら、私も向こうには漏瑚たちと繋がってる事知られちゃいけないし、敵として振舞わないといけなかったから、止められなかったって言うのもあるよ。それはごめんね。」
「…祓われてはおらんのか。」
「うん、祓われてはない。」
「……、」
「警告しておくけど、私が良しと言うまで呪術師に接触するのはやめてね。」
「何故だ。」
「例え相手が学生でも、漏瑚と陀艮が無事とは限らないから。学生にだって特級呪術師がいるの。それに、皆1級を名乗ってもいいくらいの実力はあるし、もっと伸びしろがあるから。」
「…フン、儂が負けるとでも?」
「だから戦力を集める為にも九相図を受肉させた方がいいと思わない?」
「…確かにな。しかし廻神理玖、呪術師の貴様が何故ここまで儂らに加担する。」
「あれ?前にも言わなかった?会いたい人がいるから、って。」

でも正直言うと、今のゆじたんは原作みたいに羂索から生まれてないんだよなぁ…。それでも脹相がゆじたんを弟として振舞うんだろうか…。まあ、なんとかなるか?とりあえず八十八橋で1年トリオには宿儺の指を回収して貰わないとだし、壊相と血塗が死なないように黒閃の後に私が乱入するしかないよなぁ…。壊相と血塗が死んだら脹相兄貴怒りそうだし…。

「そういうことだから、また1週間後に来るよ。呪胎九相図の受肉は頼んだよー。」

部屋を出てから高専に戻るまでに、もう1つやらなければならないことを思い出した。メカ丸こと、与幸吉だ。元は真人の無為転変であの体を治してもらおうとしていたわけだけど、真人はもう傑が取り込んだから傑に頼めば真人を出してもらえるだろう。でももし真人が与幸吉の今までの悪事…というかスパイ行為についてを喋ったら、彼の立場が危ういことになるのは間違いない。真人が与幸吉の体を治すことを条件に、高専の情報を流していた縛りは継続してるんだろうか…?……いや、違うな、情報を流すけど京都校の面々には手を出すなって条件だったか。それなら花御が戦った時点で縛りを破っているから、もう気にしなくていいのか。

「ん〜、じゃ、まあ行くか。」

とりあえず今から行くって連絡しておこう。どうせメカ丸は破損してるから野球にはピッチングマシーンが出場してるわけだし。ていうかメカ丸ってどこに住んでるんだ…?

『ヘイ、Kichi!君の住処はどこ?』
『S〇riみたいに言うな。』
『話があるから住所教えて。』

送られて来た住所は、メカ丸が拠点にしているあの浴槽がある場所だろう。うーん、とりあえずタクシーで行く?交流会の時みたいに飛ぶってやつ、できるならまたやってみたいんだけど…呪力は残しておいた方がいいよね…。仕方ない、タクる!

「すみません、ここまでお願いします。」.

タクシーを捕まえて乗り込むと、メカ丸が送ってくれた住所を運転手に見せた。今から行く、とメカ丸には送っておく。他にやり残したことがないか、よくよく思い出さないとなぁ……。そういえば結局裏梅はどこにいるんだろう…。裏梅も受肉体とかだったりするのかなぁ?ていうか、私が読めたのは結局何巻までだっけ…えっと…夜蛾さんと真依ちゃんが亡くなる所までだっけ…?ああ、あと直哉。17巻だっけ…最後に読んでから結構時間が経ったけど、今は何巻くらい出てるんだろう…。死滅回游とかいうゲームはどうなったかな…。ていうか、新キャラが出てくるのは間違いないだろうけど、羂索はいないから死滅回游も起きないし、新キャラに会う事なかったりするのかなぁ…?

「う〜〜〜〜ん、困った。」
「お客様?」
「あ、ごめんなさい、独り言です。」

私は17巻以降読めてないからどんなキャラが出て来るのかもわからない。もし新キャラに出会えたとしても敵だの味方だの区別できないしなぁ…どうしたものか。



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