「甚爾様は子供達に体術の授業お願いします。順平君は私と座学ね。」
「おい理玖、ガキ共はまとめて俺がシバ「じゃ、順平君はこっちね。」
「は、はい、」
パパ黒には植物トリオを任せて、私は順平を連れて例の地下室へ。順平にはゆじたんがやったような基礎中の基礎をしっかり身につけながら、体術も少しずつ鍛えてもらわなくてはならない。そして好感度イベントも終わらせてしまわないと…。地下室に入ると、ゆじたんが使っていたツカモトもDVDもそのままになっていた。順平にソファに座ってもらって、私はテーブルに散らばっていたDVDのパッケージを綺麗に重ねていく。
「この中から好きなDVD選んで。」
「えっと…、結構B級C級映画ばっかりですね?虎杖君と一緒に何作か見たんですけど、」
「全部見たことある感じ?それなら見たこと無さそうなの探しておこうか?」
「いえ、久し振りに見るのも悪くないですよ。」
「そ?ならよかった。それでこのツカモトってぬいぐるみ、呪骸って言うんだけど…それも悠仁君から話を聞いた?」
「えっと…呪力を流していないと殴られるって言うのは…。」
「そうそう、それを順平君にもやってもらいたいの。映画を見ながらハラハラドキドキわっくわく!泣いて笑って胸糞悪くなりながらも、呪力は一定の量を流し続けるの。とりあえず1本見終わるまでやってみようか。」
「はい…!よろしくお願いします!」
順平が選んだ映画のDVDをセットして、私も順平の隣に座って再生ボタンを押した。暗い地下室の中には、順平と私とツカモトしかいない。順平にはすぐにでも好感度を100%にして、まだ100%にしてないメンバーも早いとこ100%にして…あとは、好感度反転してる東京校の殆どのメンバーをなんとかしないと…。予告映像が終わっていよいよ本編が始まるという時に、ツカモトが順平に殴りかかった。
「ぶへっ!?」
「あはははっ!大丈夫?」
「は、はい…、結構痛い…、」
「初めは難しいだろうけど、常に呪力を一定に流すのを忘れないでね。」
暴れるツカモトの頭を鷲掴みにして順平に手渡すと、順平は深呼吸をしてからツカモトを受け取った。ツカモトはすぐに大人しくなって鼻提灯を作りながら眠り始める。映画は元の世界で見覚えのあるタイトルだった。ム○デ人間がミミズ人間になってたみたいに、進○の巨人が衝撃の巨人というよく分からない映画になっている。なにが衝撃なんだろうか。しかも巨人を駆逐する映画じゃなくて野球の方の巨人かよ!!ハッ!もしかして衝撃ってそういう事!?巨人違いってコト!?野球が全く分からない私にとっては、なんじゃこりゃな内容で全く内容が頭に入って来ない上に、つまらなすぎて眠くなってきてしまう。順平の好感度を上げる為には眠らず最後まで見届けて褒め倒すなりしたいけど、眠気が凄い…。でも映画好きの順平からしたら、映画見てるのに寝るなよって、逆に印象が悪くなる気がする…!なんかいい方法はないか…?!さりげなくボディタッチしてみる…?
「…え…!?理玖さん?!」
「ドキドキしても呪力は一定。」
「は、はい…!」
トン、と順平の肩に頭を預ければ、びくりと肩を弾ませた順平。ツカモトの鼻提灯がパァン!と割れた音がして、ブォンとスイング音にサッと体を順平から離した。
「へぶっ!?」
「あはははっ!もう、ほら、ちゃんと集中して。」
「す、すみません…、」
「そうだ、順平君そのまま横になって。」
「え…?」
「特別に膝枕貸してあげる。でも引き続き呪力は一定ね?」
「そ、そんな、ひ、ひざ、いやあの、」
「ほらぁ、早く!」
「うわっ!?」
グイッと順平の体を引き寄せて、私の膝に順平の頭を乗せた。そのまま頭を優しくなでなでしてあげれば、太ももに触れた順平の頭がじわじわと熱をもっていく。心なしか横たわった体は前屈み気味に見える。童貞か…かわゆい反応じゃん。ツカモトは順平の腹を殴っていてツカモト容赦ないなって思った。もう少し下だったらほら、順平の順平がいるじゃん…。
「あ、あの…理玖さん…、」
「ん〜?」
「こ、これは、流石に集中できないです…、」
「知ってる。それでも集中しないと殴られっ放しは嫌でしょ?それに、順平は他の1年生とも実力に差があるから、少しでも早く呪力コントロールをマスターして、体も鍛えていかないと。」
「…はい、」
「お母さんを守れるように、早く強くなろうね?」
「はい…!」
そういえば、真人を傑が取り込んだことは生徒達には言ってないんだっけ…?どのタイミングで言ったがいいかなぁ…。内緒にするのはちょっと、これ以上順平を騙すようなことはしたくないし…。
「あの…理玖さん、」
「ん?どしたの?」
「……真人さんは、まだ見つからないんですか?」
「気になる?」
「……はい…、」
本人が気にしてるなら言っちゃうか…?もう襲われる危険性がないことくらいは知る権利あるよね。
「真人はね、交流会の日に私が取り押さえて、傑に取り込ませたからもう悪いことはしないよ。」
「え…?」
「傑は呪霊操術って言って、取り込んだ呪霊を自分の思うように操れるの。だから傑が真人に命令しない限り、真人が自分の意志で動いたり悪いことも順平や凪さんを襲うこともないから。」
「…じゃあ、」
「凪さんがもう襲われるようなことはないと思う。でも順平が高専にいる限り凪さんは順平が心配だろうし、凪さんは家を売りに出したって言ってたからこのまま高専にいた方が安心だと思うよ。」
「…よかった…、理玖さん…本当に色々とありがとうございまぶっ!?」
「あはははっ!」
【吉野順平との親密度が100%になりました。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:245)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】
映画が終わって私は任務へ、順平はそのまま呪力コントロールを続ける為に地下室に残った。任務はさっさと終わらせて帰り際に喉が渇いたのでコンビニに寄ってもらった。荒井さんの分のコーヒーと、自分のお茶を手にレジに並ぼうと振り返ったところで、見覚えのある人物がお菓子の陳列棚をジッと見つめていた。
「あれ、日下部っち。」
「ん?…なんだ、廻神か。」
「日下部っちも任務終わりですか?」
「いや、飴が無くなりそうだったんでな、丁度任務に出るって車にここまで乗せてもらった。」
「なるほど。」
飲み物を持ったまま日下部っちの隣に並ぶ。日下部先生っていつも棒付きキャンディ舐めてるよね。
「いつもどれ買ってるんですか?」
「…ジュッパチャップス。」
「……ないですね、」
「まさか売り切れとはな…。俺以外にこの店でジュッパチャップス食ってるやつがいるとは驚いた。」
「どうします?在庫あるか聞いてみますか?」
「いや、近くのスーパーに行ってみるわ。」
「あ、それじゃあそのまま飲みにでも行きません?」
「あ?なんでだよ。」
「ん〜、いや、なんとなく。」
日下部っちの好感度上げたいから、とは言えない。
「そうと決まれば、荒井さんに送ってもらお。」
「あ、おい、廻神!まだ行くとは言ってねぇぞ。」
持っていた飲み物をドリンクコーナーに戻して、日下部っちの手を引いてコンビニを出た。後部座席のドアを開けて荒井さんに近くのスーパーに寄って欲しいと伝えると、日下部っちの背中を押して車に詰め込む。私も車に乗り込むといざスーパーへ。荒井さんにも飲もうと誘ったけど、仕事が残ってるからと断られてしまった。まあ、その方が日下部っちの好感度アップに集中できるからいっか!スーパーで見つけたジュッパチャップスを爆買いして、何個かポケットに突っ込んだ日下部っち。荒井さんに近くの居酒屋に送ってもらうと、爆買いしたジュッパチャップスは教員室に置いてくれるとのことでビニール袋パンパンのそれを預けた。
「カンパーイ!」
「ん、乾杯。」
「……ぷは〜っ!めちゃくちゃ久し振りにお酒飲んだぁ〜!」
「…そういや、オマエと飲むのは初めてかもな。」
ピコンと好感度が上がる音を聞きながら、お通しのきんぴらごぼうをつまむ。うま、きんぴらごぼううま!
「言われてみたらそうですね?ていうか日下部先生が普段めんどくさがって飲みに参加しないじゃないですか。」
「俺は静かに飲みたいタイプなんだよ。廻神がいるとうるせぇやつらがいるだろ。」
「ああ、いますね三銃士が。」
「甘やかしすぎなんだよ、あいつ等のこと。」
「ん〜、そうですかねぇ…。そんなつもりないけどそう見えるってこと?」
「そう見える。」
「マジかぁ〜。ていうか日下部っち〜、」
「その日下部っちってのやめろ。パンダと枷場姉妹が真似するんだよ。」
「え〜、じゃあ日下部っちもいい加減名字呼びやめてくださいよ、理玖って呼んで理玖って!」
「…もう酔ってんのか。」
「まだ酔ってない!」
この際だから日下部っちを名前呼びして距離感縮めちゃうか!日下部っちの名前って篤也だっけ…。日下部篤也…篤也…やっぱりあっちゃん?
「…飲み過ぎるなよ。」
「分かってまーす!ていうかあっちゃんは〜、」
「おい、なんだあっちゃんって、俺のことか?」
「うん。」
うわ、すっごい嫌そうな顔された、ウケる!でも好感度が上がる音がするから素直じゃないんだなぁ!
「あ、私の事名前で呼ぶまであっちゃん呼びしますから。」
「おいやめろ。」
「あっちゃん♡」
「…はぁ…、」
「それでねあっちゃん、2年生の様子はどうです?交流会も終わったし、そろそろ皆の昇格も考えていいかなって思ってるんですけど。」
生徒達の話題を振りながらちびちびと酒を飲んでいく。交流会の時の映像は日下部っちも後で見たらしい。皆の実力も普段から見ている分、日下部っちも昇格推薦を考えていると。
「だが、受け持ちの生徒を推薦できねぇだろ。」
「そうですね。だから冥さんあたりに頼むのがいいかなって思ってます。多分悟と傑もそう思ってると思いますし、2年生の昇格もお願いしてみますか。」
「そうだな。」
「あっちゃんおかわりいります?」
「ん、ああ…頼む。ていうかいつまでその呼び方なんだよ。」
「だからぁ、私の事名前で呼んでくれたらやめますって。多分。」
「多分かよ。ったく…オマエも学生時代から変わんねぇな、理玖。」
「あ!呼んだ!」
「オマエが呼べって言ったんだろうが。」
プイっと顔を逸らしながら不満げにそう言った日下部っち。その顔はお酒のせいか照れているのか、ほんのり赤く色付いていた。ピコン、と音がして頭上で100%になった赤いハート。
「あっちゃんって意外とツンデレ?」
「名前で呼んだらやめるんじゃなかったのかよ、ったく…。」
そう言いつつも、小さく口元を緩めて笑った日下部っちに、私も笑みを返して残ったビールを飲み干した。