「傑、オマエはなぜ理玖の部屋のドアを破壊した。」
「違います。勝手にドアが粉砕しただけです。」
「ドアは勝手に粉砕などしない。」
どうしてこうなった…。私は今、ドアの吹き飛んだ私の部屋で傑と共に床に正座をしている。私のベッドに座って腕を組んでいる夜蛾さんは、現在傑を尋問中だ。私と傑の頭にはたんこぶが積み上げられている。傑は5個、私は3個だ。どうしてこうなった…。
「はい学長、私は被害者です。」
「学長、理玖が真犯人です。」
「真犯人ってなに!?私なにも悪い事してないからね!?」
「いいや、しているさ。いつまで経っても私を選んでくれない挙句、私という存在がありながら真人を誘惑するなんて…。」
「理玖、またなのか。」
「いやいやいやいや!?誘惑なんてしてません!!そしてまたってなに!?」
「理玖はすぐ人を誑かすから…。」
「異議あり!!夜蛾学長、これは傑の罠です!私は誓って真人を誘惑なんてしてません!見てください、このココアのカップが証拠です!私はただ真人を呪霊としてではなく友人としてもてなしていただけで!」
「異議あり!!学長、私がこの部屋に来た時、理玖は真人とキスする3秒前みたいな雰囲気でした!!きっとやましい気持ちがあって私に真人を出すように頼んだに違いありません!!」
「異議あり!!そもそも私は真人が取り込んでいた改造人間を元に戻すために真人を出してもらっただけで、やましい気持ちはありません!!」
「異議あり!!理玖は真人を黒縄で調教すると言っていました!!私だって理玖を調教したいというのに!!」
「異議あり!!黒縄を使ったのは真人が悪さをしない為で、言う事を聞かなければ調教するつもりでしたが大人しかったので調教はしませんでした!ちょっと縛っただけです!」
「ズルいじゃないか、私だって理玖を縛りたいのに…!」
「傑に縛られたら絶対いやらしい事されるに決まってるじゃん!」
「当たり前じゃないか、その為に縛るんだからね!!」
「ぎゃあっ!」
「あー…オマエ達、ちょっと静かにしてくれ。頭が痛くなってきた…。」
夜蛾さんが頭を抱えている。傑は私をぎゅうぎゅうと抱き締めてくるわ擦り寄ってくるわで、大の大人がなにやってんだか…。
「まずは傑、」
「…はい、」
「ドアは傑が弁償しろ。理玖はドアが直るまでは硝子の部屋か、医務室、仮眠室を使うように。」
「はーい。」
「それから、理玖は引き続き真人が改造した人達を元に戻してもらう。その為にも傑、理玖が真人と2人きりになっても仕方がない。弁えろ。だが理玖も、真人と2人きりになる必要がなければ、極力2人きりになるな。また今日のようにドアだけじゃなく、高専のありとあらゆるものが破壊される可能性がある。オマエは面倒な奴等にそこまで好かれている事をもっと自覚しろ。」
「…はぁーい…。」
「……恋愛はオマエ達の自由ではあるが、いい加減ふらふらせずに誰か1人に絞ってくれ。それから生徒達の教育上よろしくない事はやめろ。」
やめろって言われてもなぁ…。1人に絞るにしても好感度の反転は間違いないわけだし…。
「理玖、返事をしろ。」
「はぁ〜い。」
「傑、オマエも特級呪術師でありながら、教員という立場でもあることを自覚しろ。物を壊すな。」
「…はい。」
「はぁ…、今回は傑だけでよかったが…悟も一緒だったらと考えると頭が痛くなるな…。」
「学長はどうして理玖の部屋に来たんですか?」
「…伏黒に、傑が猛スピードで授業を放棄して理玖の部屋に向かったと電話で報告を受けた。後を追ってみれば理玖の部屋のドアが吹き飛んでいたとも。そうして来てみればオマエ達は…はぁ…、全く、」
夜蛾さんが頭を抱えて溜息を吐いた。いや、うん、言いたい事は分かります。メンゴ!!でも私被害者じゃない!?確かに内心ノリノリだったけどさぁ!?子供達の前でえろい事してたのもまあ、私もごめんなさいだけどさぁ!?
「数日以内にドアは取り付けてもらえるだろう。理玖は任務に、傑は授業に戻れ。」
「あ、はい。」
「はい。」
夜蛾さんはそう言い残して私の部屋から出て行った。取り残された私と傑は静かにたんこぶを擦る。
「…傑、教室に戻る?」
「…ああ、そうしようかな。」
「うん、私も任務行かないと…。傑、続きはまた今度ね?」
2人で私の部屋を出て、校舎の方まで一緒に歩いて向かった。傑をちらりと見てみれば、夜蛾さんが途中で乱入したこともあって、顔には出さずとも少し不満気らしい。
「…できれば今夜がいいな。」
「うーん、何時に帰って来るか分からないけど。」
「待っているよ。」
うーん…これは…どうしようか…。好感度イベントをなんとかしないとだし、とりあえず皆100%にするしかないよね…。どうしたものか…かなり時間が掛かりそうだな。三銃士はともかく、子供達は頑張れば1日でなんとかならないかな…?もういっそのこと分身でもしてマンツーマンで好感度戻せればいいのに!
「今日が無理そうだったら明日でもいい?」
「あ、廻神さん…!」
「あれ、荒井さん。」
「お疲れ様です、荒井さん。」
「夏油さんもお疲れ様です。廻神さん、そろそろ出発の時間なのに来ないので探しましたよ…。」
「あー…そうでした、すみません。傑、またね。」
「ああ、またね理玖。」
傑と別れて任務の為に駐車場へ。さて、任務は最悪セレクトでなんとかなるわけだけど、好感度イベントはなんともならないのでそっちを真面目に考えないといけない。誰から行くか…大人組か子供組か…。やっぱり大人は後回しの方がいいかなぁ…?
「荒井さん、今日って子供達の任務はどこですか?」
「えーっと…1年生は3級呪霊4体、2年生は3班に分かれてそれぞれ1級呪霊4体の任務と、2級呪霊2体の任務、3級呪霊4体の任務ですね。すでに乙骨君が1級呪霊祓除の為、単独で任務に当たっています。他の任務は皆、午後からですね。」
「了解です、それじゃあ…私の任務はすぐ終わるので…とりあえず憂太君の任務先に連れて行ってもらえますか?」
「え?」
「私の分はあとで祓うんで、お願いします。」
「あ…は、はい、」
そういえば3年の秤金次と星綺羅羅にはまだ会った事ないよね…。無理矢理にでも会いに行ったがいいのかな…?
「…ま、今はいっか。セレクト。」
「出発しても大丈夫ですか…?」
「はい。」
【あなたは遠隔で呪霊を祓除しようとしています。選択してください。選択すると呪力を200消費します。(残り呪力:190)】
【1.呪霊をこの場で祓う 2.呪霊の元に移動して祓う 3.なにもしない】
「…なるほど…、」
呪力が10足りないか…。んじゃまあ、おっこちゅと合流してから祓えばいっか。最低でも201は呪力を回復させないと、200丁度でセレクトすれば回復イベントに入っちゃうし…。
「1時間程で到着予定です。」
「はーい。」
1時間あれば十分だろう。子供達は任務の後にご飯にでも連れて行って機嫌を取れば、好感度反転もちょちょいと回復するに違いない。子供達は好感度青だし、あとは…ナナミンと夜蛾さん、伊地知、灰原が青で…1年生はメグエルだけ青だったかな…?あーあと京都校のメンバーも西宮、東堂がまだ100%じゃないよね…。
「あれ、待って、私ヤバいことに気付いてしまった…。」
「どうかされました?」
「あ、いや、独り言です。」
待って、ねえ、私高田ちゃんとも好感度イベント発生してたよね!?高田ちゃんの好感度は100%になってなかったし、これももしかしたら100%にしないといけない…ってコト!?これはもう個握に行くしかないか…。よし、東堂の好感度上げと一緒に高田ちゃんの個握に行って、高田ちゃんの好感度も上げるしかない…!!あとは…宿儺と憂憂かぁ…。宿儺はゆじたんがいる限りすぐ会えるからいいとして、憂憂が問題だ…。憂憂は冥さんが大好きなわけで、好感度イベントは恋愛的な意味の好感度ではなく、親密度的な意味での好感度だと捉えていいはず。そうすると、憂憂と親密度を上げるには…やっぱり冥さんの話題に限る。冥さんには交流会まで烏を借りてたわけだから、お礼に冥さんが喜びそうなものを渡したいので憂憂の意見を聞きたい…とでも言って呼び出す?でも憂憂に聞いたところで「姉様が喜ぶのはお金です。(キリッ)廻神理玖はそんな事も分からないんですか?(煽り顔)」って言われるのがオチかな…?うーん、難しい…。いっそのこと、憂憂に冥さんのどこが好きなのか聞いてみるか?憂憂からは同担拒否臭がするし、もしかしたら冥さんの強化担かもしれないし、下手なことはできない…ていうよりしない方がいいのか?冥さんが私を(金のなる木として)気に入ってる事が気に食わないような雰囲気あったしなぁ…。まあとにかく、憂憂は冥さんにお礼がしたい、みたいな話題で接触して地道に親密度を上げていくしかないな。
「到着です。」
「あ、はーい。」
そんなこんなで、おっこちゅがいるであろう任務地に着いた。帳が下りていて、その傍には車の外で待機している新田ちゃんの姿が。
「え、あれ、廻神さん!?どうしたっスか!?」
「ん〜?ちょっと憂太君の様子が気になってね。交流会も終わって落ち着いたし、子供達は皆昇級についても考えなきゃでしょ?任務ついでに様子見に来たの。中入るね。」
「は、はいっス!お気を付けてくださいっス!」
ま、おっこちゅは特級のままだから昇級は関係ないんだけどさ。帳の中に入って念の為に十手はホルダーから抜いておいた。ぶっちゃけ私が手を出す必要もないだろう。呪霊の気配を辿って、禍々しい雰囲気を醸し出している廃墟に入り、おっこちゅの気配を辿って奥に進む。
「あれ?なんで理玖さんがここに?」
「あ、ヤッホー、憂太君。」
ザシュッと呪霊を刀でぶった切ったおっこちゅにひらひらと手を振った。1級呪霊相手に1人で余裕そうだ。
「なにかあったんですか?」
「ちょっとね。呪霊はあと何体?」
「残り1体です。」
「そっか、じゃあ私はなにも手を出さないから、憂太君のお手並み拝見といきましょう。」
「え?」
「終わったら2人でご飯行かない?」
「秒で終わらせます。」
おっこちゅは一気にぬるっとなって、私の目の前から姿を消した。……え、早くね?ガチで秒で終わらせる気じゃん。