理玖さんの手を引いてホテルの中に入った。無人の受付には部屋のデザインが分かる値段の書かれた写真と、その下にランプの灯ったボタンがついている。僕はラブホテルなんて使うの初めてだけど、理玖さんの手前、格好悪い所は見せたくない。理玖さんに視線を向ければ、さっきまで僕とホテルに入ることを躊躇していたのに、今では部屋の写真が載ったパネルを黙って見ていた。
「理玖さんの好きな部屋でいいですよ。」
「そう?うーん、じゃあここ。」
理玖さんがボタンを押すと、カチャンと出て来た部屋の鍵。それを手にエレベーターに乗り込んで、鍵に書かれた番号からエレベーターのボタンを押した。理玖さんが選んだ部屋は南国テイストの部屋らしい。天井にはシーリングファンがクルクルと回っていて、観葉植物に背の低いヤシの木が置かれている。天窓付きの大きなベッドが置かれていて、薄型のテレビが壁に埋め込まれていた。
「理玖さん、」
部屋を見渡す理玖さんの後ろからその体に両腕を回すと、僕の腕に彼女の両腕が重なる。なんだかんだ、理玖さんはこうやって受け入れてくれるから嬉しい半面、僕以外の男も同じように簡単に受け入れているんだろうな、なんて思って嫉妬に胸がざわついた。ズルい人だな…。子供の頃から一緒だった五条先生や夏油先生、伏黒先生も、ずっとこんな感じだったんだのかなと思うと、僕はそうなりたくないと…理玖さんの特別になりたいと思ってしまう。どうやったら、理玖さんの特別になれるんだろう。僕だけを愛して、僕だけに身も心も許して、僕だけに微笑んで欲しい。
「理玖さん…、」
「なぁに、憂太君。」
今だけは、僕だけの理玖さんだ。僕を見上げて微笑む理玖さんにそっとキスを落とした。互いに唇を啄むようなキスをしながら、理玖さんは僕と向かい合うように腕の中で体の向きを変えた。次第に深く舌を絡め合うようなキスになって、互いの服に手を掛けた。興奮から漏れる息が荒くなっていく。理玖さんの手が僕のズボンの紐を解いて、チャックがジーッと下ろされると、布越しに熱を持ち始めたそれをするりと撫でられた。久し振りに理玖さんに触られただけで、小さく「あっ、」と情けない声が漏れる。恥ずかしくて咄嗟に口元を手の甲で隠すと、理玖さんは僕を上目に見つめながら楽しそうに口元を緩めた。
「私以外とシた?」
「シてないですよッ、」
「じゃあ1人でシた?おかずは誰?」
「そんなの…ッ、」
理玖さんに決まってる。そう言った僕を見て、意地悪く笑う理玖さんにムカついた。僕が理玖さん以外とするわけないのに、理玖さん以外に興奮するわけないのに…、そうやって僕を煽るってことは酷くされてもいいってことですよね…?理玖さんの手を掴んでベッドに押し倒すと、噛み付くようにキスで唇を塞いだ。両手首をベッドに押さえ付けて、唇から胸元まで舌を這わせていく。谷間に顔を押し付けて息を吸い込めば、理玖さんからいつもの甘い匂いがして、ジンジンと下腹部に更に熱が集まっていく。谷間に舌を這わせて吸い付き、ピンと勃った乳首を舌で転がしちゅうちゅうと吸い付く僕に、理玖さんは僕の頭を抱き寄せた。
「んッ、憂太君っ、あっ、」
「理玖さんは、僕が理玖さん以外とセックスしてたら嫌ですか…?」
「んぁっ、あっ、イヤ…っ、」
「僕も理玖さんが、僕以外の男とセックスしてたら嫌ですよ。」
「あぁっ、あっ、待ってダメっ、耳はっ、」
耳元で低く囁くと、ビクッと肩を弾ませる理玖さん。そのままかぷりと耳朶に噛みついて、舌で擽るように舐めながら吐息を吐き掛ける。ふるふると小さく体を震わせながら身じろぐ理玖さんが、僕から逃げようと顔を逸らした。それをしつこく追いかけて、ぢゅるぢゅるとわざと音を立てて耳を舐めしゃぶれば、悲鳴にも似た声を上げる理玖さんに、ゾクゾクと背筋を快感が駆け巡り、加虐心に胸が躍った。もっと、もっと、僕を感じて欲しい。その一心で、シーツを蹴って暴れるように逃げようとする理玖さんを押さえ付け続けた。
「やあッ、あっ、耳やめてぇッ!いやあ〜〜ッ♡」
「あはっ、もしかして今イっちゃいました?」
「は、はあ…っ、はあ…ッ、ゲホッ、」
「可愛い…理玖さん、凄く可愛いです…、」
「ま、あっ、待って、」
「反対もやってあげます。」
「もっ、いいからあッ!やッああっ!」
反対の耳も同様に吸い付いて、水音を響かせるよう舐め回し続けた。僕の名前を呼びながらイヤイヤと逃げようとする理玖さんが可愛くて、もっと意地悪くしたくなってしまう。
「ゆぅたくっ、ああっ、ンぅ〜〜ッ♡」
「また耳だけでイっちゃうなんて、理玖さんって本当に敏感ですよね。今まで五条先生達にそう仕込まれたんだと思うと、なんか嫌だな…。」
「はあっ、はっ、ちがっ、も、ゆぅたくんっ、もお、はやくぅ、」
理玖さんは涙を流しながら懇願するように僕を見つめる。目尻から零れた涙をキスで拭って、彼女の唇にもキスを落とした。舌を絡めながら優しく包むように理玖さんの胸に手を添えると、その手を掴んだ理玖さん。僕の手は彼女の胸からもっと下に宛がわれた。
「はぁ、はやくっ、さわってぇ…、」
「…ッ、本当に煽るのが上手いですよね、理玖さんって。」
「もぉ、なか…、せつないの…っ、あ、あっ、」
僕の手を割れ目に押し付けて、敏感なそこを擦るように動かす理玖さんが厭らしくて、自然と口元がゆるりと持ち上がっていく。理玖さんが僕を求めてくれている。それだけで途轍もなく心が満たされる感覚。もっと僕を求めて欲しい。
「理玖さん、もう僕が欲しいんですか?」
「んっ、ぁ、ほしぃ、はやくぅ、」
「…可愛い。そんなに欲しいなら、理玖さんの好きにしていいですよ。」
僕がそう言って理玖さんの上から退くと、ベッドに仰向けに寝転がった。理玖さんが僕の体に跨って、解しもしてないのに自ら硬くそそり勃った僕を受け入れた。温かく柔らかい感触にゆっくりと包まれて、僕の上で淫らにも体をくねらせる理玖さんの姿に、下から激しく突き上げたい衝動に駆られる。それをグッと堪えて、動きに合わせて揺れる理玖さんの胸を揉みしだけば、理玖さんは僕の名前を呼びながらビクビクと体を震わせた。きゅうきゅうと僕を締め付ける理玖さんの中。久し振りの行為にすぐに吐精感を感じて、僕は体を起こして体位を対面座位に変えることにした。舌を絡め合いながら互いの背中に手を回して抱き合うと、今度は僕が下からばちゅばちゅと理玖さんを突き上げていく。
「あッ♡んぅっ、ふっ♡」
「はぁ…っ、理玖さんっ、好きですっ、」
「ゆぅたくっ、すきっ♡もっとしてッ♡もっとぉ♡」
「く…はぁっ、煽るの上手ですね…ッ♡」
両手を理玖さんの背中から腰に移して、背中を逸らせた理玖さんにばちゅばちゅと腰を打ち付けた。角度がついて当たる位置が変わったせいか、理玖さんの中はまた僕を締め付けた。
「ああっダメッ♡これだめぇっ♡イくッ♡」
「僕も…っ、イきそうですっ、理玖さんッ♡」
「キてっ♡ゆぅたくんっ♡キてぇ♡ああぁッ♡」
「理玖さんっ、…あッ♡」
理玖さんの中に欲を吐き出して、自身をぐりぐりと奥まで押し付けた。互いに上がった息を整えることもせず、貪るように舌を絡め合うキスをして、すぐに元気を取り戻した僕はそのまま理玖さんをベッドに押し倒して、乱れる理玖さんを目に焼き付けながらむしゃらに腰を振っていた気がする。退室時間のことなんて忘れて、ただただ理玖さんを何時間も掻き抱いていた。上気した顔で涙を流してシーツに縋る理玖さんを、僕の愛で満たして染めて、他の誰にも盗られたくない一心で理玖さんを僕色に染め続けた。首にも鎖骨にも、肩口にも胸元にも、見える所には全部赤い花を咲かせて歯型を付けた。気を失った理玖さんを見下ろしたまま、僕はなにがおかしいのか1人笑っていて、その体に刻まれた僕の証を指先で撫でる。
「僕の理玖さんだ…♡ずっと僕の理玖さんでいてくださいね、もう誰にも触れさせないでください。僕だけを受け入れてください。」
ごぷりと溢れ出た白濁は指で中に押し戻した。汗で濡れた髪を掻き上げて理玖さんの左手をそっと手に取ると、傷ひとつないその左の薬指を口に含んで、思い切り歯を立てた。
「ん゛っ、」
「理玖さん、愛してます。僕の愛しい人…。」
「…すぅ…、すぅ…、」
血の滲んだその歯形にキスを落として、いっそのこと僕以外の男との契りを結べないように、薬指を噛み千切ればいいんじゃないかという考えが浮かんでしまう。でも無理矢理にでもそれをすれば、理玖さんは僕を選ばないだろう。
「…理玖さん…早く僕を選んで…。」
綺麗なその寝顔にキスを落として、僕よりも細くて折れそうなその体をしっかりと抱き締め、目を閉じた。
「…太君、憂太君…!起きて!」
「…ン…、」
理玖さんの声で目を覚ました。ぼやける視界に映る理玖さんはまだ裸で、その体には僕が刻んだ痕が残ったままだ。
「…おはようございます、理玖さん。」
「おはよう!起きたなら早くシャワー浴びて高専戻らないと!」
「え?」
「ヤバいヤバいヤバいヤバい!朝帰りなんてマジでヤバい!今度こそ学長に殺される!」
ドタバタと慌てた様子でベッドから下りた理玖さんが、浴室らしき部屋に消える。僕は寝起きの働かない頭でその背中を眺めていた。
「ちょっと憂太君!早く来てってば!」
「…プッ、あははっ、」
「なに笑ってるの!?マジで私殺されちゃうから!!」
昨日はあんなに厭らしく乱れて女だった理玖さんは、すっかり教師としての理玖さんに戻ってしまったらしい。浴室からこちらを覗いて、焦った様子で僕を手招くその姿に笑った僕を、理玖さんは「ほんとに早くして!!」と必死な様子で急かした。
「あはっ、あははっ、大丈夫ですよ理玖さん、僕も口裏合わせますから。」
「当たり前でしょ!!ただでさえ里香ちゃん顕現させたままデートしちゃったんだから、窓から絶対報告受けてる!いやあ!スマホ見たくないよおお!」
一緒にシャワーを浴びながら朝帰りの言い訳を考えている内に、僕の理玖さんへの気持ちはいつの間にか落ち着いていた。ちょっとスッキリしたかも、色んな意味で。
「理玖!!!」
「はぁい、すみませえん!!あだぁっ!」
高専に戻ってすぐ、理玖さんは夜蛾学長に拳骨を落とされて泣いていて、それもまたなんだかおかしくなって笑った僕に、理玖さんは恨めしそうに僕を睨んでまた拳骨を食らっていた。
「乙骨、オマエにも教育的指導だ!」
「嘘ぉん!いだぁっ!」