モチモチ・ア・ラート


おっこちゅと朝帰りした結果、無事(?)におっこちゅの反転していた好感度は元に戻った。けどまだまだ好感度イベントに終わりが見えない…。何故なら、私がおっぱっぴー!したことで東京校メンツの殆どが好感度反転してるし、なんなら京都組はまだ東堂と桃ちゃん、強敵憂憂、Sレア高田ちゃんの好感度イベントも残っている。いやいやもう、どうしろと?東堂は高田ちゃんの個握に誘うしかねぇな。いやそもそもチケット取るところからスタートじゃん?そして高田ちゃんが私を覚えているかどうかも問題だ。そして任務の合間にイベントに行く事になりそうだから、そこんとこ調整しないとでしょ?!真依ちゃんも連れてくか!?おっこちゅと別れて着替えに自室に戻ると、反転術式でキスマークや噛み痕は治しておいた。何故なら三銃士や他のメンズに見つかったら面倒なことになるからだ。おっこちゅの前で治せばそれはそれでまたぬるっとして、好感度反転されたら困るからね。着替えを終えて向かったのは教員室。傑から真人を借りて、今日も医務室で改造された人間を元に戻さなくては。

「あ、悟、傑、おはよう。」
「理玖、おはよー。」
「おはよう、理玖。」
「「ところで、」」

今日の予定表を眺めていた私の肩を、後ろからガシッと掴んだ2人分の手。あ、嫌な予感…。

「朝帰りなんていい御身分じゃないか。昨日私と約束していたというのに、連絡もなしに…。」
「あ、いやその、昨日はちょっと、」
「憂太も帰って来なかったしさ、もしかしなくても一緒にいた?」
「え、えぇ?そんなことは「荒井さんに確認済みだよ。」いましたごめんなさい。いや違うの、これにはとっても大事な理由がありまして!!でもどんな理由かと聞かれたら私の術式に関わるので言えないといいますか!?」
「はー、出た出た。理玖の術式事情。」
「術式が関係していたら深く問い質されないとでも思ってるのかな?」
「酷いよねぇ、こんなに一途に思ってきた僕達を差し置いて、次から次へと男作ってさぁ。」
「いやだから、それは…、」

どうしよう、2人とも今日めっちゃ機嫌悪いじゃん…!?え、なんで?!

「最近さぁ、僕達と過ごす時間も作ってくれないじゃん。理玖がそんなんだと僕達にも考えあるから。」
「え…?え?なに、え、どういうこと?!」
「私達だって理玖みたいに遊んでもいいんだよ?」
「……は?」

いや、え、なに?どしたん?え、なんで?なんでそうなった?私はただ好感度の為に皆と親密度を上げているわけであって…!いやそもそも私ら付き合ってないじゃん…?付き合ってないけど、うん、ないけどさぁ…?ないけどもぉ…!!ヤキモチ妬いてくれる事だって嬉しいよ、嬉しいけど、仕方ないんじゃん…?!

「「え」」
「…な、んでそんなこと、言うの…っ、」

付き合ってないけど皆大好きだよ。皆大好きだから皆平等に愛したいよ。皆の幸せ願ってるし、私が幸せにしたいって思ってるよ。それが自己満足だって分かってるけど、でも、そうするしかないじゃん…。術式だって縛りあるせいで言えないんだもん。好きでそうなったわけじゃないもん。あ、ヤバい、なんかマジで涙とまんない…。私、めっちゃ悪い女みたいじゃん。いや、悪い女なんだけどさ…、

「あー、理玖…あの、ごめんごめん、嘘嘘!」
「い、今のはほら、冗談だよ、ごめんね理玖。」
「いい、もうなにも言わないでっ。任務いくからどいて。」
「待って理玖!」
「ごめん、私がこんな術式じゃなかったら良かったね…っ、」
「理玖…!」

ダメだ、私言っちゃいけないことまで言っちゃいそう。子供みたいだと分かってるけど、2人の顔が見れなくて教員室を足早に出た。涙を拭いながら駐車場に向かう途中で、パパ黒に会った。パパ黒は私の顔を見て目を見開いていて、すぐに眉間に皺を寄せるように目を細めた。

「アイツらか。」
「いや、あの、大丈夫です。」
「大丈夫じゃねぇだろ、来い。」
「いえ、任務が「いいから来い。」

パパ黒は私の手を掴んで校舎の外に出ると、私の体を抱き上げてその場で跳躍した。いやジャンプ力えっぐぅ!?脚力どうなってんの?!そりゃ水面余裕で走れるわな!?高専の建物の中でも一番大きな五重塔の上に降り立ったパパ黒。屋根の上に私を降ろしたかと思うと、その場にあぐらを掻いて座った。

「理玖、座れ。」
「え、あ、はい…。」
「違う、ここだ。」
「え?あ、はい。」

隣に座ろうとしたらグイッと腰を引かれて、よろけた体はパパ黒の胡坐の上にすとんと収まった。そのまま横向きの私を抱き締めるパパ黒に、なぜか緊張してしまう。え、どしたのパパ黒、らしくないじゃん…?

「あ、の、甚爾様…?」
「泣きたいなら泣いてろ。聞いて欲しいなら聞いてやる。話せねぇなら無理に聞かねぇし、見られたくねぇなら見ねぇ。」
「……はっ、なにそれ、甚爾様めちゃくちゃいい男じゃないですか…。」
「なんだ、今頃気付いたのかよ。」
「嘘です、最初から気付いてました…ありがとうございます…ッ。ははっ、ヤバい、めっちゃ惚れそう。」
「嘘だな、とっくの昔に惚れてんだろ。」
「バレてる、ウケるっ、ぐすっ、」

パパ黒は私の背中に回した腕に、少しだけ力を込めた。壊れ物を扱うように優しく触れる大きな手。自然と涙が零れてぽろぽろと落ちていく。パパ黒の服にも涙が滲んで色を変えていた。

「…皆の為にと思ってやってたんですけど、結局は自分の為でした。」
「……そうか。」
「でも、自己満足でも皆に幸せになって欲しいのは…っ、私の本心です。」
「…ああ。」
「皆が幸せなら私も幸せだし、――を捻じ曲げてでも…、あーもう!便利なのか不便なのかどっちなのよもう!」
「別に、理玖の好きにしたらいいと思うけどな。」
「…好きにしてますよ、十分すぎるくらい。でもまだまだ全然なんです…。」
「そうかよ。」

そう、全然なんだよね…。皆の好感度を100%にしないといけないし、100%にしたら誰か1人を選んでみたい気もするし…。

「あれ、そういえば…、」
「……。」

待って、私なんか勘違いしてない…?記憶を整理しよう…。好感度イベントってそんな必死にクリアしなきゃならないものなのかな…?なんか、1人を選んだらその人以外の好感度が反転するってだけだった気が…。

「理玖?」
「あ、いや、ちょっと待ってください、え、待って、」
「あ?なんだよ、どうした。」

過去の神の子達の記録を思い返してみる。確か1人を選ぶ時は慎重にって言ってたよね…。しかも選んでも好感度イベント自体は無くならないって書いてなかった…?

【試しに1人選択してみたけど、好感度イベント自体はなくならなかった。新しく出会った人にはイベント発生したし。】

そうだ、そうじゃん!え、別に皆の好感度パーフェクトにしなくてもいいってことじゃん!?うわ、私なんかバカじゃん…、なんでこんな大事なこと忘れてるわけ…?

「甚爾様、私がバカでした。」
「今更だな。」
「酷い!あー、ていうかもう、ほんとバカ過ぎた…。ちょっと悟と傑に謝ってきます。甚爾様のダイナマイトボディを貸して頂きありがとうございました…!!胸筋の柔らかさは忘れません!」
「おい、理玖「いっだぁ!?」

立ち上がった私はパパ黒に敬礼。ところがここ、屋根の上だったわ。ヒールだったせいで瓦屋根の上でぐきりと右足を捻った私。いやあああああめちゃくちゃ痛い!!!

「わっわああああっ!?!?」
「あー…、」

そしてそのまま屋根の上から真っ逆さま。あ、これやらかしましたねぇ??セレクトするか?!それとも着地してからセレクト!?でも足首イカレてるよね?!これ着地したら足死んじゃうのでは?!パパ黒が助けてくれるかと思いきや、その前にふわりとなにかに包まれた感触。…あ、

「…悟、」
「ビックリした…、」
「悟!理玖は!?」

私を受け止めたのは悟だった。マンタ呪霊に乗った傑もいる。悟の視線が私に右足に移った。うわ、もう腫れてる!?

「…右足、大丈夫?」
「あ…う、ん、ちょっと捻っただけ。」
「…そ、」
「理玖、大丈夫かい?」
「うん、あ、うんごめん、大丈夫。」

さっきのこともあってちょっと気まずさを感じるけど、でもあれだ、解決策を見つけたから!なんかいつまでもめそめそするのもあれだし!

「理玖、探したよ。さっきはごめんね、遊ぶなんてのは嘘だよ。」
「うん、私もごめん…。調子に乗り過ぎてました…反省してます…。」
「…理玖、僕もごめん。」
「いや、ていうか2人は全然悪くないから!これもあれ!私のせい!術式とか複雑だし縛りとかのせいでほら、言えないこと多いし!」

ゆっくりと地面に着地した悟がそのままどこかに歩き出した。傑もマンタ呪霊から降りて隣に並ぶ。後ろでドンッと音がしたかと思えば、パパ黒も下りてきたらしい。いや、よく無事やな…?流石フィジカルギフテッド…。

「大丈夫か理玖。」
「は、はい!ちょっと捻挫しただけです!すぐ治ります!」
「硝子んとこ行くから。」
「え、いいよ自分で治すし「硝子に診せる!」あ、はい…。」

悟に医務室に連れていかれる間も、傑もパパ黒も黙ってついてきた。え、なんで誰もなにも話さないの?逆になんか怖くない…?

「硝子、ちょっといいかい?」
「どうし…理玖…、なにがあったの。」
「あ、いやこれはただちょっと捻挫しただけで、」
「なにがどうして…。」
「屋根から落ちた。」
「は?」
「いやあの、たまたまね?!足を踏み外した拍子に真っ逆さまで!?でもほら、自分でも治せるって言ったのよ?!」
「いいから座って。」
「ハイゴメンナサイ。」

悟に椅子に下ろされて、硝子は私の右足に手を翳して反転術式を施した。ジンジンと痛んでいた足首から少しずつ痛みが引いていくのを感じる。硝子はジッと私の顔を見ていて、目が合うと少し不機嫌そうに目を細められた。

「泣いたでしょ。」
「な、なぜ、」
「化粧崩れてる。」
「嘘でしょ、ごめんお見苦しい顔で…!!」
「で、なにがあったわけ?また理玖の取り合い?」
「いや、取り合いってわけじゃなくて、私がフラフラしてたせいなので3人はなにも悪くないって言うか?悟も傑も寂しかっただけで、甚爾様も慰めてくれたし、」
「また拗れてるのかと思った。」

まあある意味拗れてますけども…。でももういっかなぁ…。どうせ誰か1人を選んだら、他全員の好感度が反転するのは変わらないし。いい加減誰か1人に決め【ビーーッビーーッビーーッ】

「え…。」
「アラートか、珍しいな。」
「はい、治ったよ理玖。でも無茶しないでね。」
「あ、うん!ありがとう硝子!」

アラートって、まさか、今!?来ちゃうのか、遂に…!お兄ちゃんが…!!



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