声がして数秒も経たずして、直哉はグラウンドに現れた。え、ごめん、なにしに来たの…?
「げ、直哉君…。」
「理玖たん!!会いたかったで!!」
「あーうん、久し振り〜。」
「なんで直哉が来てんの?」
「こちらは今取り込み中なんだ。急ぎでなければ後にしてくれないか。」
「なにしに来た。」
直哉と会うのっていつ振りだろう…。私が死んだって騒ぎになった時に東京校に来たって話は聞いたけど、久し振り過ぎて…。私を庇うように立つ三銃士に直哉は少し目を見開いて、グラウンドにいる面々に視線を巡らせた。あ、そういえば17巻で脹相と直哉戦ったんだった…。パイタッチ直哉…。脹相に突っ掛かったりするかな…?!
「君、乙骨君やろ?」
「アナタは?」
「禪院直哉。真希ちゃんのいとこや。」
私の予想に反して、直哉は何故かおっこちゅの元へ。ていうか本当になにしに来たの?YOUはなにしに高専へ?!
「乙骨君と理玖たんの同人誌がビックリするほど売れてん。いやぁ、ほんまおおきに。」
「どうじんし…?え?売れた?なんの話ですか?」
「直哉君、まだ私で変なの描いてるんだ…?」
同人誌描いてる直哉ってなんなのマジで…まだ描いてたの…?ていうか私の同人誌ってつまりジャンルはなに?!おっこちゅを庇うように割り込んだ私を見て、直哉はキラキラと目を輝かせて私とおっこちゅを交互に見た。え、なに、ほんと怖いんだけど!?
「変なのちゃうよ、理玖たん!俺はな理玖たん、自カプの素晴らしさを世に広めたいねん!!」
「直哉君…どうしてそんなオタクになってしまったの?」
「理玖たんがそうしたんやないか…!」
「覚えないんですけど…!ていうか自カプってなによ、誰と誰!?」
「そらここにおる全員が攻め!!理玖たんが総受けに決まってるやろ!!」
私が総受け…?!いやいやいやいや、こんな会話子供達に聞かれたら悪影響すぎる…!私もほら、元はオタクだから!!意味分かっちゃうから!!やめて!?私今非オタを装うオタクだから!!ヤバい、冷や汗止まんないんだけど!?
「アイツらなんの話してんだ?」
「さあな。」
「明太子…。」
「自カプってなん?」
「俺に聞くな。」
よかったあああああああああああ…!!!子供たち皆純粋!!この様子だとオタクのオの字もないよね!?ないよね!?!?!
「それってもしかして、直哉君と私のカップリングもあるってこと…?」
「は?なに言うてんの、俺と理玖たんのカップリングなんて解釈違いやろ。」
「は?」
「え?」
コ、コイツ…!not自己投影型直哉か?!オマ、オマエ…!それでいいんか?!ちっこい頃は私を嫁にするとかなんとか言ってなかった?!あの頃の純粋(?)な直哉はどこにいってしまったの!?
「直哉君…昔は私をお嫁さんにしてくれるって言ってたのに…、」
そう言ってシクシクと噓泣きをしてみれば、直哉はギョッとした顔をしてアタフタと慌て始めた。
「ちゃ、ちゃうねん理玖たん…!お、俺はその、あくまでも理玖たんのオタクやから、ほら、オタクは推しに夢見てたいねん!」
「現実も見てよ!!」
「ぐ…ッ!オタクに一番言うたらあかんことを…ッ!」
ん゛ッ!自分で言った言葉とはいえ、これは私にも特大ブーメランッッッ!!でも直哉の好感度イベントはクリアしてるから、これはこれで問題ないんだけど…。あれ、待ってよ?この状態で直哉を選んだら直哉はどうするんだろう…。それか直哉以外を選んだら確実に好感度反転するんだろうけど…どういう直哉が生まれるの!?ヤバい、どっちもめちゃくちゃ気になるじゃん…!
「ていうか直哉君…、今日はどうしたの?」
「そ、そや、本題はここからや…!実はな、俺、商業作家になったんよ。」
「…は?商業作家?え?マジ?」
「マジや、大マジ。それを理玖たんに報告したかったねんけど、それと一緒に理玖たんを題材に漫画描かせてもらお思て。」
「え、え?待って、マジで言ってる?」
直哉…いつの間に商業作家になったの…?!ていうか待って、私を題材に漫画描くってなに?!既に同人誌として描いてたじゃん!?ていうかそれって生モノにならない!?大丈夫!?いや別に私は芸能人とかじゃないけどさぁ!?ていうか今の直哉どんな同人誌描いてんの…?確か昔見たのは多目的がどうたらこうたらってやつだった気がするけど…。
「理玖たんが許可してくれたら俺はもっと自分の可能性を広げられる気がすんねん、頼む!この通りや…!」
「え、えぇ…?待ってよ、そもそも私、同人誌で私を描くこと自体許可してないんだけど…。」
「そこをなんとか!!この通りや理玖たん!」
ガシリと私の両手を掴んで拝む直哉。いや、どの通りや!?頭微塵も下げてなくて草。
「そこまでにしたらどうだ。」
「あ゛?誰やオマエ。」
直哉の手を私から引き剥がしたのは脹相だった。ていうかあれ、子供たちいなくなってる。三銃士は夜蛾さんと話し込んでるみたいだし、え、なにがあったの?
「俺は、お兄ちゃんだ。」
「「!?」」
俺はお兄ちゃんだってなに!?私のお兄ちゃんではないのは確かだよね!?脹相はそのまま私と直哉の間に割り込んだ。
「嫌がってるだろう。」
「……オマエ、名前は。」
「…脹相だ。」
脹相と直哉が睨み合っている。直哉はジロジロと脹相を上から下に下から上にと品定めするように見ている。なんか、嫌な予感が…。直哉はカッと目を見開くと、脹相の両肩をガシリと掴んだ。
「決めた!次はオマエで描く!」
「…なにをだ。」
「湧いてきたで、ネタが…!」
「ねた…?」
「脹相、気にしないで…。ていうか直哉君、ちょっとこっちに来て。」
ちょいちょいと直哉を手招いて脹相から引き離すと、直哉にそっと耳打ちをした。いやね、まあ、一応気になるじゃないですか?
「私の同人誌って今まで何冊出したの…?」
「ちゃんと数えてへんけど200は超えてるなぁ。」
「に、にひゃ、にひゃく?!」
そんなに描いてきたの…?そもそも直哉はなんでそんなオタクになってしまったの?!?!?いや、論外な男になるよりはましだけどさぁ!?
「理玖たんの分も取り置きしてんねん。あ、これは俺のサークルの新刊や。萌舞男氏との合同誌やねんけど、どっちもええ話やから読んだって。」
「萌舞男氏って誰…。」
直哉が懐から出した1冊の薄い本。ペラペラと捲って見れば…なにこれ、ちょっと待ってなにこれ!?
「世紀末リカンゲリオン…って、」
パクリじゃん!!もう1個のハンマー×カンマーもパクリじゃん!!直哉ぁあ!?
「あとその前に出した本がこれやねんけど、理玖たん触手プレイいける?」
「は?」
「傑君がタコの呪霊持ってるっちゅう情報聞いて即行思いついた話やねん。」
「え、待って、え、」
懐からもう1冊薄い本を取り出した直哉。え、なにこれ、待って?イヤな予感しかしないですが?表紙からしてもうダメじゃん!!絶対18禁じゃん!!待って、直哉私でエロ同人描いてるの!?やめて!?
「うわぁ、なにこれえっぐ〜い。」
「ちょ、待って悟!」
後ろからひょいっと取り上げられた薄い本。悟はそれを高く掲げて広げると、傑とパパ黒も広げた薄い本を覗き込んだ。ちょ、待って、ヤバい、私の貞操がマジでヤバい…!!!リアル触手プレイされちゃうから!!
「これは…私と理玖かい?」
「傑のタコ呪霊に理玖がヒイヒイ言わされてるじゃん、ウケるんだけど。」
「ウケてる場合じゃないから!やめて!返して!むしろ破り捨てて!?」
「そういう趣味があったとはな。」
「違いますから!私の趣味じゃないんで甚爾様信じちゃダメですからね!?」
「他にもあるで!こっちは悟君と理玖たんの○○しないと出られない部屋シリーズや!」
「ちょ、もうやめて直哉君!この3人は薄い本とか絶対見せちゃいけないタイプの人間だから!!」
「薄い本ってなに?こういうエロ漫画のこと?」
「へえ、セックスしないと出られない部屋か。確か私と理玖が過去に任務で当たった呪霊にもそんなのがいたね。取り込んでいたことをすっかり忘れていたよ。」
「面白そうじゃねぇか、俺にも使わせろ。」
なにやら直哉の薄い本を囲んでマジマジと読み始めた三銃士。直哉はそれを見て嬉しそうに懐から薄い本を取り出していく。いや、懐に何冊入れてんのよ。ていうか見せるなよ!公式に隠れて楽しむのが二次創作でしょうが!!
「な、なんだ…この破廉恥な本は…!」
「脹相!?」
「兄さん!?」「兄者ぁ!?」
脹相も薄い本を読んでしまったらしい。鼻血を吹き出してぶっ倒れる脹相に、壊相と血塗が駆け寄る。いやもう、どういう状況なの!?カオスじゃん!!子供達いなくて本当に良かった!!18禁だもんね!!
「直哉こういう本描いてんの?僕と理玖の話もっとある?」
「私と理玖の本もまだあるのかな?」
「俺と理玖の本もあるんだろ。」
「とりあえず今日持ってきたんはこれだけや。禪院家帰ったら俺の部屋にまだ置いてある。」
「それ、全部送って。」
「私も。」
「俺も。」
「ええで、それぞれのカプ本送るわ。」
「カプボン?」
待て待て待て待て!!!!!
「その本は俺の分もあるのか。」
「が、学長!?アンタまでなに言ってんの!?」
「勿論ある。」
「あるんかい!」
「東京校のメンバーは殆ど描いとる。あとは百合本もあるで。」
「ユリボン?」
「なんだいそれは?」
「俺のオススメはこれや!家入硝子×理玖たん!」
「「硝子と理玖?!」」
「簡単に言えば女子同士のイチャコラ本ってところやな。勿論、ちゃんとえろもある。」
「へー…これは…、」
「なかなか…、」
リア充陽キャ三銃士を怖れない直哉、恐ろしい子…!
「な、直哉君、もうその辺にしようか…!!」
「ていうか理玖もこういう本に詳しいの?」
「薄い本って言っていたけど、理玖も持っているのかい?」
「カップリングがどうのこうの言ってたな。」
「い、いやぁ?私は全然詳しくないですけどね?!なんかぁ?聞いた話?みたいな?」
ク、クソッ、クラスのリア充にオタバレした時みたいな反応になってしまう…!
「理玖たんもこっち側や思うてたんやけど、」
ええい直哉!余計な事を言うんじゃあないぜッ!
「直哉君ちょっとお姉さんと2人きりで話しようか…(暗黒微笑)」
「理玖たん…!やっぱりこっち側やっ「だまらっしゃい!」