悟と特訓続きの5連泊と、パパ黒との特訓を繰り返し、気付けば夏休みも折り返し地点。つまりはお盆休みだ。もう私はぐったりしていた。マジでハードな6日間を繰り返した。もうなにもしたくない。引きこもりたい。そんな私の事なんざ露知らず、お母さんに言われるがまま私は今車に乗っている。向かうはお母さんの実家だ。高速で2時間程走って辿り着いた静かな町。…うん、何県?標識よく見てなかったわ。つーか寝てたわ。そう言えば赤ん坊以来おばあちゃん家に来るの初めてかも?おじいちゃんとおばあちゃんに挨拶をして、他愛もない話をしながら昼ご飯をごちそうになった。お盆帰省だから、1週間ほどここで過ごすらしい。その間お父さんは任務で海外に出張中だ。お父さんかわいそ。
「理玖、遊びに行くなら帽子被っていきなさい!暑いからね?」
「はーい!」
ワンピースと麦わら帽子というシンプルな格好で家を出る。おばあちゃんが水筒を持たせてくれた。
「それとね、いいかい?絶対に裏山の祠には近づいちゃいかんよ?いいね?」
「うん、わかった!行ってきます!」
「暗くなる前に帰って来るんだよー?」
裏山の祠?なんだろ?そう言われたらさ、行ってみたくなるのが人間の悪いところだよねー。ま、行かないけど。はぁ…ほんと久し振りに一人だわ。学校も夏休みも、殆ど悟と一緒だし。なんか他にさ、ないの?出会いとか、出会いとか、出会いとかさぁ!?
【好感度イベント発生!選択してください。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:60)】
【1.イベントを選択する 2.イベントを無視する 3.なにもしない】
「わ、マジ!?早速イベント!?勿論1番でしょ!やったー!」
【1.イベントを選択する を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:60)】
<こっチ…、コっちキテ…、>
「…オイオイオイオイ、ゥオイ!好感度イベントとは!?呪霊とイベントしろってか!?」
いつの間にか目の前に現れた不気味な鬼みたいな呪霊。…なんだろこれ、初めて見たけど、鬼みたいだけど鬼じゃない…?変なの。とりあえず、セレクトしますか。
<こッち、ミテ…、>
【あなたは???に遭遇しました。選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:60)】
【1.祓う 2.逃げる 3.助けを呼ぶ 4.なにもしない】
んー、呪力結構消費しちゃうなぁ…。かといって助けを呼ぼうにも誰も…、いやちょっと待てよ?この呪霊、なぜか私の事を全く襲う気配がない。むしろ何か待ってる…?…え、ちょっと待って、これってもしかして…!
「3!」
【3.助けを呼ぶ を選択しました。呪力を40消費しました。(残り呪力:20)】
「君、大丈夫?」
「…だ、いじょうぶじゃない…!」
後ろから聞こえた声。幼いけど、男の子の声だ!…待って、待って待って!?つまり、やっぱり!?テンションが上がってきた私をよそに、背後にいた気配が近付いてきて、
<コっ―――>
「もう大丈夫だよ。怖かったね。」
「…うぅ…っ!」
予想していた人物が私の頭を撫でていた。私はもう感極まって勝手に涙が流れてきて、思わずその人に飛びつくように抱き着いた。だって、だって…!!!
「おっと、びっくりした…。もしかしてああいうの、初めて見た?」
「…違くて…っ、嬉しくて…っ!」
「なにが?」
「…会えたこと…!」
「…誰にかな?」
「…君に。」
「私に?」
「…私、廻神理玖っていうの。名前、教えてくれる?」
「私は夏油傑だよ。よろしくね、理玖。」
だって、夏油傑が目の前にいるんだもん!!まだまだ小1のちびっ子夏油とは言え、あの前髪は変わらないし、なんならあの細い目もまだすごく柔らかい目だし、なにより、全部、見てきたから…。ボロボロ流れる涙を止める方法が分からなくて、でも夏油は私の頭を優しく撫でてくれた。やっぱり優しいな、夏油。好きだ…。私、君のために頑張るから、ホント、マジで、死んでも護るからね。
「困ったな、涙が止まってくれないね。」
「嬉しい…好き…、もう…、マジで…、どうしよう…うぇ…、」
「…好きって、会ってまだ数分の私を?」
「うん。」
「…はは、面白いね、理玖は。」
「ねぇ、傑って呼んでいい?」
「勿論だよ。理玖はこの辺の子?」
「ううん、東京に住んでるの。おばあちゃんの家がこっちで、お盆の間だけこっちに泊まってる。傑は?」
「私の地元だよ。」
「…ね、こっちにいる間、一緒に遊んでもいい?」
「…いいけど、いつまでいるんだい?」
「1週間。」
夏油の頭上で好感度が5%になった。…もうマジで、オマエは本気で口説くからな、覚悟してろよマジで。容赦しねぇわ。そんでもって絶対に護るし、呪詛師なんてならせねぇかんな!夏油の手にはさっきの呪霊を取り込むために作った呪霊玉がある。私がそれを見ていると、夏油は指で頬をかいた。…そう言えば夏油はこの頃からもう呪霊操術使えたのか?知らんけど…。つかこの頃から夏油ってこんな口調なの?それも知らんけど!?
「…言っても分からないかもしれないけど、私は呪霊操術と言って、今みたいなのを取り込んで使役することができるんだ。」
「…知ってる。吐瀉物を処理した雑巾のような味がするんでしょ?」
「…詳しいね。」
「うん。色々あってね。」
夏油が呪霊玉を飲み込んだ。上下する喉の動き。成長したら喉仏がエロいんだろ、知ってんぞ!!夏油が顔を顰めているのを見て、私はお祖母ちゃんが持たせてくれた麦茶の入った水筒を開けた。蓋に麦茶を注いで、夏油に渡す。
「人の家の麦茶、苦手じゃなかったら。」
「…はは、ありがとう。」
麦茶を飲んだ夏油が、蓋を私に返す。私も少し麦茶を飲むと、夏油がこの辺りを案内すると言い出した。ありがたくお願いする。
「理玖は何歳?」
「6歳、小1だよ。」
「驚いた、同い年とは思えないくらい大人びてるね。」
「それは傑もだよ?…ねえ、さっきのさ…、傑は辛くないの?」
「…さぁ、まだ良く分からないよ。でも、あまり何度もやりたいとは思わないね。」
「…ね、口直しする?」
「口直し?なにか持ってるのかい?」
「ううん、もっといいこと。」
私は向かい合った夏油の手を握る。今はまだそんなに身長差がなくてよかった。ちゅ、っと短く触れるだけのキスをする。
「なっ…!」
「…ごめん、嫌だった?」
「そ、うじゃないけど…、」
「…じゃあ、もう一回する?」
夏油の頭上で12%になった好感度。帰るまでの1週間で、絶対に100%にしてやる!夏油は顔を赤くして口元を押さえながら私を見ていた。
「…初めてだった?」
「…まぁ…、」
「…ごめんね…、他に何もいいことが思いつかなくて。」
「…いや、その…、驚いただけだから、」
赤くなった顔で照れ笑うチビ夏油…。はああああかわいい…!!!もう、マジで襲っちゃダメ?!本気で落とすって言ったけど、割とマジで襲いそうなんだが!?
「…もう一度、してもいいかい?」
「何度でもしてあげる。」