海は広いな大きいな


「なぁ、なんでずっと黙ってんの?(好き。…めっちゃ好き。…あ、目逸らしやがった。)」
「理玖、私たちが何かしたなら謝るよ。(顔が赤くなって可愛いね、好きだよ。)」
「…っ。」

うん、こりゃ耐えきれん…!!悟も傑もどんだけ私の事好きなわけ!?

(俺のこと見て。)
(私の目を見てくれないかな。)

…いや、目のやり場に困るよね。私これからどこ見て二人と話せばいい?

「…ご、ごめん、ちょっとパニクっただけだから、もう平気。」
「大丈夫かい?(好きだよ理玖。)」
「パニクる要素あったか?(大丈夫かよ。つか、パニクって顔赤くなるって可愛すぎだろ。)」

駄目だ、もう無理!!スピーカーOFF!!

【五条悟と夏油傑のスピーカーをOFFにしました。】

マジで、これただの拷問だわ…。この二人心の中でドストレートに好き好き言ってくるから、聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃうわ。…てか、好感度が100%になった人は全員スピーカーを使えるって出てたけど、…あれ、これもしや…あのツンツンツンデレのパパ黒相手にも使える可能性が…?!え、え!?マジ!?ちょ、早くパパ黒の好感度上げなきゃ!!け、携帯、携帯どこ!?

「ね、私の携帯しらない!?」
「これ?」
「あ、なんで勝手に見てんの!?」
「…このメール相手の甚爾様、って誰?」
「あああ!やめて返して!見ないでぇえ!」
「悟、私にも見せてくれるかい?」
「ん。」
「なになに…甚爾様、今日はありがとうございました、大好きです、ハート。…へぇ?」

【夏油傑の好感度が反転しました。今後は好感度の変動に注意してください。】

うっそおおおおん!!見れば、傑の頭上で青いハートマークが0%を示している。…なんてことだ…。携帯を取り返そうとすれば、悟は携帯を持ったまま無限を発動させた。ぐ、ぐぬぬ、触れられん…!寸前で止まる、これが無限…故に取り返せぬぅ…!

「酷い、なんでそんなことするのっ!?別に私が誰とメールしようと関係ないじゃん!」
「関係ある。」
「あるね。」
「なんで!?」
「理玖の事知りたいから。」
「もっと理玖の事教えて欲しいんだ。駄目かな?」
「…そ、それは駄目じゃないけど、人のメール勝手に見るのはやめてくんない!?次やったら二人とも嫌いになるからね!?」
「ちぇ。」
「残念、嫌われたくないからここまでにしておくよ。」
「今度この甚爾様とかいう奴と会わせろよ。」
「やだ、絶対やだ!死んでも会わせない!」

だって万が一会ったら殺し合いになりかねない…!絶対悟と傑がパパ黒にいちゃもん付けて喧嘩売って、パパ黒も絶対面白がって喧嘩買うっていう未来が予想できてしまう…!

「あんた達、早く朝飯食っちまいな!」
「あ、はーい!ほら、携帯返して。ご飯食べよ!?」
「ん。」
「詳しい話は後で聞かせてもらうからね。」
「絶対話さないもん!」

服を着替えて朝食を食べた後、おじいちゃんが私たちを呼んだ。三人でおじいちゃんの元へ向かうと、軽トラックの荷台に乗せられる。…え、これって違反じゃね?!アカンのでは!?

「茣蓙敷いてっから、寝っ転がって隠れとれ。顔出したらじいちゃん捕まっちまうから。ばあさんにもバレたらじいちゃんが怒られっから黙っとけよ。」
「じいちゃん、今からどこ行くの?」
「ええから、黙って隠れとけ。頭ぶつけねぇよう守っとれ。」

三人で軽トラの荷台に敷かれた茣蓙に寝そべると、ガタガタと音を立てながら軽トラが走り出した。どこ行くんだろ。

「ね、この辺何かあるの?」
「そうだね…、どこに向かっているか分からないけど、少し行けば海があるよ。」
「じゃあ海に向かってるのかな?!」
「どうだろうね?」
「海って、あの海?」
「悟海初めて?」
「…うん。」
「海に行った事がないんだ?」
「別に、いいだろなくても。」
「傑、悟の家は呪術師って言って、私達みたいに見たり祓ったりできる人の家系なんだけど、その中でも古いお家なんだよ。だから結構箱入りっていうか、他の家とは違って仕来りみたいなのでめんどくさいお家なの。だから蛍も海も初めてなんだ。笑わないであげてね?」
「笑うつもりはないよ、それぞれ事情があるからね。それよりも、その呪術師っていうものについて、もっと良く聞かせてくれるかい?」
「この前話してた高校が、呪術師を目指す人たちが通う高校なの。東京都立呪術高等専門学校。表向きには宗教系の学校ってことになってて、見える、祓える人達が勉強しながら成長するために通ってる。呪術師は、私たちが見てるような呪霊を祓って、非術師…つまり、呪霊が見えない、祓えない一般人を守るために戦うの。」

猿、なんて言い方は絶対にしない。

「理玖はそこに通うんだよね?私も通えるかな…。」
「大丈夫、傑は呪霊操術使えるし!あ、勿論悟も一緒だよ!」
「理玖と一緒なら楽しそうだね。決めたよ、私もその呪術師とやらを目指して、その高校に通う。」
「来なくていいっつの。」
「悟、そう言うこと言わないの!傑もいるなら絶対楽しいって!」
「ふーん。」
「はは、私は今でも十分楽しいから、三人で一緒に高校に通うのが楽しみだよ。」

傑の好感度が2%に戻った。悟は…、6%か。やっぱり好感度反転すると戻り悪いなぁ…。暫くガタガタと揺れていた軽トラがゆっくりと速度を落とし始めた頃、どこからか潮の香りが漂ってきた。ということは、やっぱり…!?

「海に来たみたいだね。」
「うん、すごい潮の香りがするね!」
「これが海の匂い?へー…なんかべたべたすんね。」

軽トラが停まると、おじいちゃんが運転席から降りて私たちを覗き込んだ。

「着いたべ、起きれっか?」
「うん!」
「気を付けて降りろよ。」

三人で軽トラの荷台から飛び降りると、おじいちゃんの後をついて浜辺に向かう。波の音が心地よくて、潮の匂いが鼻腔を擽る。…あれ、そう言えばお盆休みって海入っちゃダメじゃなかったっけ?なんかそういう迷信ない?来ちゃったけど、大丈夫なのかな…?…この前傑と水遊びしちゃったけど、水辺は霊が集るからどうとかなんとか…。

「海に入っちゃダメだぞ、お前たちは見とれ。」

そう言っておじいちゃんは一本の釣り竿を荷台から降ろした。そんなの置いてたの気付かなかったんだけど…。釣り竿にはぐるぐると札の様なものが巻かれている。…え、マジで何するの?

「海はなぁ、ご先祖さんが帰ってくる時に通る道なんだぁ。それに紛れて他のもんが上がってくることがあっから、じいちゃんが毎年釣ってるんだべ。」
「理玖のおじいさんも呪術師なんですか?」
「だべ。この釣り竿でな、余計なもんを吊り上げんのよ。まあ見てなさい。」

おじいちゃんが釣り針を垂らし、帳を下した。おお、マジで夜になってく…!すっげ!おもしろ!

「これは”帳”。あとで教えてやっからな。」
「うん!…あ、二人とも見て、あっち!」

私が指をさした方に、人の形を真似た歪な魚人の様な呪霊が浜辺に上がろうと歩いていた。おじいちゃんが釣り竿を振り上げて呪霊に釣り針を引っかける。すっげ、コントロールえげつなっ。釣り針が引っ掛かった呪霊がギロリとこちらを向いて、耳障りな悲鳴を上げながらすごい勢いで近付いて来た。こっわ!?おじいちゃんが釣り竿に呪力を流しながら呪霊を釣りあげると、魚人呪霊が悲鳴を上げて煙になって消えた。

「すっごーい!じいちゃんかっこいい!」
「釣霊(ちょうれい)呪法、“引っ掛け”。じいちゃんが名付けた。」
「あ…うん、ごめん、それはダサい。」
「…そうか…。」

ごめん、おじいちゃんシュンってしちゃった…。

「私も手伝っていいですか?」
「俺も。」
「お前たち海には絶対入るなよ、引っ張り込まれるぞ。」
「はーい。」

おじいちゃんと一緒にご先祖様の霊に紛れて浜辺に上がろうとしている呪霊を狩り始めた。私もセレクトしてみるか。

【帳の中に仮想怨霊が???体います。選択してください。選択すると呪力を50消費します。(残り呪力:60)】
【1.全て祓う 2.半分祓う 3.なにもしない】

ま、呪力10残れば問題ないか。1番で!

【1.全て祓うを選択しました。呪力を50消費しました。(残り呪力:10)】

「あ…。」
「マジか…。」
「すごいね、理玖…。」
「ごめん、帳の中の奴ら全部祓っちゃった…てへっ☆」
「ハッハッハ、たまげたなぁ…。」



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