長く短い祭


その後も湧き出る呪霊狩りを続けた私たちは、お昼になると海の家に向かった。今日私たちが来ることを事前に知らされていたらしい店主が、特別に店を開けて私たちにご馳走をしてくれるらしい。鉄板の上でジュージューと香ばしい匂いを放つ焼きそばを三人で目を輝かせて眺める。

「焼きそばってさ、鉄板で作ったやつがダントツで美味しいと思うのは私だけ?」
「分かるよ、私もそう思う。」
「俺焼きそば初めて食うからわかんね。」
「じゃあ初焼きそばの悟は大盛りにしてもらおう!おじちゃん、一つ大盛りにしてね!」
「おう、任せとけ!」

焼きそばが出来上がると、一緒に瓶ラムネも貰った。おじいちゃんは店主のおじちゃんと何やら話をしているので、私たちは焼きそばを食べる事に。

「…おお、うまっ。」
「よかった!」
「うん、美味しいね。」
「私も食べよー。…ん、やっぱ焼きそばサイコー!」

焼きそばを食べた後、おじちゃんはかき氷をくれた。かき氷を食べ終えて私は赤、悟は青、傑は緑になった舌を見せ合って爆笑。…いいな、なんかこういう何気ない日常って、すごくいい。海には入れなかったけど、防波堤を三人で歩いて、ぷかぷかと波に揺られて浮かぶクラゲを見ながら私は誓う。大丈夫、みんなみんな、私が守れるように頑張るからね。思い浮かんだ彼の顔。絶対に、死なせないよ、誰も。みんな、大好きだから。

「理玖?」
「どうしたんだい?」
「あ、ごめんね、なんでもない!」

海から家までまた軽トラの荷台に寝そべって帰った。悟と傑は少しは仲良くなれたかな…?

「帰ったら何する?肌べたべたするしお風呂入る?」
「そうだね、私は入りたいな。」
「俺も。」

家について三人でお風呂に入る。昨日みたいな私の取り合いもなくなって、でも昨日みたいに三人で交互に背中を流し合った。夜になるまで一緒に宿題をしたりテレビを見たりして時間を潰して、夕飯を食べた後はまた三人で蛍を見に行った。

「土曜日、お祭りって言ってたよね?三人で行こうか!」
「祭り?」
「この辺りではお盆の終わりに花火大会があるんだって!」
「へー。」
「…それが終わったら理玖は帰ってしまうんだよね…。」
「…うん。」
「俺も帰るけど。」
「ああ、そうだった。」
「もぉシュンってしちゃって…可愛いなあ傑は!大丈夫だよ、また遊びに来るし、来年も来るから!」
「…そうだね、それに高校は同じ学校に通うって決めたからね。それまでに理玖が悟と付き合ったり、他の男にとられたらどうしようかと思ってね。」
「あ、大丈夫、誰とも付き合ってないと思うから!」
「はは、それはいい。」
「いや、よくねぇよ。」

三人で家に帰って、歯を磨いて布団に入る。これまた昨日同様、私を真ん中にして手を繋いで、おやすみのキスをして眠った。お祭りの日まで三人で山の中を探検したり、呪霊狩りをしたりして過ごした。ついこの前までは時間が流れるのを長く感じていたのに、楽しい時間ってホントにあっという間に感じる。

「見て見てーどう!?」
「いいね、可愛いよ理玖。」
「ま、悪くねぇ。」

花火大会の土曜日。私はお母さんに着付けてもらって金魚柄の浴衣を着た。傑も悟も、浴衣は持って来ていなかったのでお母さんに頼んで甚平を買ってもらった。傑は龍、悟は虎の柄だ。…うん、イカつい柄だけどよく見つけたよね…。三人で手を繋いで神社まで向かう。人がたくさん神社まで流れている。

「ね、何食べる?」

並んだ屋台を見ながら、二人を見る。…え、なんで二人とも私の事ガン見してんの?…なんかこわいんですけど…。

「…理玖が食べたいものを買おう。私は何でもかまわないよ。」
「俺、また焼きそば食いたい。」
「あ、じゃあ焼きそば買おう!」

焼きそば屋の屋台に並んでいると、ドン、と背後から人がぶつかってきた。…おいおい、誰だ今の、わざとか?喧嘩売ってんのか?私が少し前のめったことで傑も悟も気付いたらしい。凄い怖い顔で振り返った。待て待て、お前ら2人は目力で人殺せるから。どうやら私たちの後ろに並んでいた人との間にヤンキーが割り込んで、私を押したらしい。

「なに見てんだよ。」
「ハ?こっちの台詞なんだけど。」
「理玖を押しただろう。よくないね、マナーは守らなきゃ。」
「お前ら生意気じゃん。つか、子供だけで来てんじゃねぇよ邪魔くせぇな。」

うん、こういう頭悪いのよくいるよねー。

「悟、傑、やめなよ。マナーも守れないあんな子供相手に、何を言っても無駄だよ。」
「は?オマエ一番ムカつく。」

セレクトしーちゃおっ。

【不良Aがあなたに喧嘩を売っています。選択してください。選択すると呪力を10消費します。(残り呪力:60)】
【1.制裁を与える 2.制裁を与える 3.制裁を与える】

ウケる、全部制裁じゃん。じゃ、1番で。

【1.制裁を与える を選択しました。呪力を10消費します。(残り呪力:50)】

突如、ヤンキーに向けて一筋の雷が落ちた。…ビ、ビビった…!けど、雷はヤンキーにだけ落ちて、他の人には何も危害を与えなかったらしい。ヤンキーは髪の毛が縮れて口から煙を吐いて倒れた。ざわざわと周りが騒がしくなる。悟と傑が私を見て目を見開いていた。

「驚いた、今のも理玖がやったのかい?」
「うん。」
「なんかすげぇピンポイントだったな。つか、騒ぎになってね?」
「この神社は雷神様を祀っているんだ。きっと、雷神様の罰が当たったと思っているんだろう。」
「へー。」
「じゃあ尚更、私が制裁を与えてよかったね!」
「「?」」
「神様はちゃんと見てる、ってこと。」

誰かが救急車を呼んでいる声がするけど、私たちは構わず焼きそばを買った。座れるところを探して三人で焼きそばを摘まみながら、一緒に買ったラムネを飲む。食べ終わればまた屋台を見ながら、金魚すくいをした。悟が無限を使って金魚をすくおうとしたので私と傑は慌てて止めた。傑は射的で一等の景品であるプラモデルを撃ち落とした。わたあめを買って三人で齧りついたし、お面屋さんでお面を買った。傑は黒狐、悟は白狐、私は赤狐の面。花火の時間が近付いて、私はもう一度セレクトする。

【花火が見える場所があります。選択してください。選択すると呪力を5消費します。(残り呪力:58)】
【1.向かう 2.向かわない 3.なにもしない】

1番!

【1.向かう を選択しました。呪力を5消費しました。(残り呪力:53)】

私の足は勝手に歩きだす。私と手を繋いでいた二人を引っ張る形で足が動いた。

「どこ行くの?」
「花火が見える所!」
「よく知ってるね?」
「教えてもらったの!」

神社の裏手に回って山に入る。暗くて見えにくかったけど、足は勝手に動いていくから、多分安全な道なんだろう。少し上ったところで開けたところに出た。大木が倒れていて、三人でそれに腰を下ろしたところで花火の打ち上げを告げるアナウンスが流れた。うおっ、タイミングバッチリじゃん。ヒューっと小さな火玉が上がり、空に大きな花を開く。

「…すげぇ、綺麗。」
「ああ、綺麗だね。」
「うん、流石、夏の風物詩だね!」
「…理玖、好きだよ。」
「ありがとう、傑。私も傑の事好きだよ。」
「俺だって理玖の事好きだし。」
「ありがとう、悟の事も好きだから。」

二人の頬にキスをする。お返しとばかりに私の頬に触れた二人分の唇。

「忘れられない夏休みになったね!また来年も三人で一緒に見たいな、蛍と花火。」
「ああ。」
「うん。」

ドンドンと心臓にまで響く花火の音と、煌めく光が辺りを照らす。なんとなく、スピーカーをONにしてみた。

【五条悟と夏油傑のスピーカーをONにしました。】

(花火すげぇ。…てか、浴衣着た理玖ちょー可愛い…好き。ああ…マジでちゅーしてぇ。)
(花火も綺麗だけど、やっぱり理玖の方が綺麗だな。好きだ。キスしたいな。)

…うん、君たち花火に集中しようか!?私は熱くなった顔を誤魔化そうと赤狐の面を被った。



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