花火が終わってしまった。お祭り終了のアナウンスが流れて人が流れていく様子を眺めながら、祭りのあと独特の寂しさを感じる。
「終わっちゃったね…。」
「うん。」
「ああ。」
「さ、帰ろう?」
「…俺まだ帰りたくない。」
「…私も。」
「…実を言うと私も。」
私の言葉を皮切りに、三人でプ、と噴き出した。悟と傑がだいぶ仲良くなってて私は嬉しい!二人と手を繋いだまま花火が上がっていた夜空を眺める。…寂しくなんてない、って言えば嘘になる。明日は私も帰るし、悟も私と一緒に帰るだろうし、傑はまたこっちで一人寂しく呪霊を取り込んで辛い思いをするのかと思うと…いやいや、そういう考えをしてるからダメなんだ、もっとポジティブに考えなきゃ!うん、傑とは毎日電話しよう!そうしよう!寂しい思いはさせないから!
「…理玖、」
「どうした悟?」
悟に呼ばれて振り向けば、ちゅ、っと唇が触れる。あ、油断してた。スピーカーをONにしたままだった!おまけで悟が心の中で私の事を好き好き連呼しているのも聞こえるし、悟とのキスを見た傑の心の中が一気に穏やかではなくなったのも聞こえる…。や、ヤバい、何とかせねば…!
「理玖、私ともキスをしよう。」
「あ、はい。」
ちゅぅ、と吸い付くように傑がキスをした。今度は悟の心の声が荒ぶっている。え、これ、え、どうしろと!?傑の舌が私の舌を絡めるように侵入してきた。ア、ヤメテ、悟ガコワイ…!
「傑ばっかずりぃ!俺にもそれしろよ!」
「悟にはまだ早いよ。」
「ちょ、私を挟んで喧嘩しないで。悟にも教えるから!」
「ん。早く。」
「…うぅ…、やっぱハズい…。」
「ハァ!?意味分かんねぇ!もういい自分でやる!」
荒ぶる心の声が聞こえて恥ずかしくなった私に、悟は噛みつくようにキスをした。いや、待って、ちょっと待って!?ぬるりと悟の舌が私の口の中に入って来て、でもどうすればいいのか分からないのか迷ったように動きを止めた。…おま、可愛すぎやろ!悟の舌を私の舌でなぞると、悟がピクリと反応する。はは、なにその反応、傑の時もそうだったけど可愛すぎでしょ…!…は!そうか、コイツら小1だし、童貞じゃん!!やだぁ…可愛すぎるぅ…!
「理玖、私の相手も忘れないで。」
「んっ!」
「ふふ、可愛い。」
耳元でわざと囁く傑、おぬし、やはりドSじゃな…!?傑が私のうなじにキスをした。くすぐったくて身を捩ると、悟が私の手の甲にキスをして軽く嚙みついた。だめだ、やっぱりスピーカーOFF!ムリ!ハズすぎる!!
【五条悟と夏油傑のスピーカーをOFFにしました。】
「理玖、好き。」
「私も理玖の事、好きだよ。」
「私も、二人の事好き。」
「…どっちか選べっての。」
「あはは、ごめんそれは、術式的に無理。」
「どういう術式なのか、聞いてもいいかな?」
「あー傑にはちゃんと説明してなかったね、ごめん。私の術式は人に話せない縛りがあるの。その代わり呪力の限り色々と……あー…うん、やっぱこれ以上言えないみたい。」
「そうなんだ、残念だね。どちらかを選ぶのは、術式と関係があるのかい?」
「それも今の所謎が多すぎて、選べないの。もっと自分の術式理解してからじゃないと、色々とあとで困ると思うし!」
「それまでは待てだとよ。」
「待ってる身にもなって欲しいね。」
「ホントそれな。」
「二人ともだいぶ気が合ってきたのでは?」
「「話をそらすな。」」
三人でゆっくりと家まで歩いて帰った。勿論蛍も見て帰った。お風呂に入る前に浴衣を脱ごうとしたところで、傑がポン、と手を打った。え、なに?
「ちょっとやってみたいことがあるんだが、いいかな?」
「…え?いいけど、なにすんの?」
「理玖はただ両手を上げて立っていればいいよ。」
「え、」
「いくよ?」
傑が私の帯を掴んだ。私は言われた通りに両手を上げる。…あれ、…おい、これ、もしかして、
「あ〜れ〜!」
「あっはっは、よいではないかよいではないか〜。」
「ギャハハハハ!次俺もやる!」
「ちょ、これ意外と目が回るから!何回もやりたくないんだけど!」
「いいから手上げろ。オラ、脱げ脱げ!」
「それはなんか違う!」
二人に散々遊ばれてふら付いた私はその場に膝をつく。うえぇ…気持ち悪…、目回った…。
「すまない理玖、悟が調子に乗ってしまった。」
「は?俺のせい?」
「いや、二人のせいだから…うっぷ。」
そのあと三人でお風呂に入って、また背中を流し合った。歯を磨いて布団に入って、二人からおやすみのキスを貰って私もキスを返す。目を閉じて朝になれば、楽しかった傑との時間もまた来年までお預けだ…。…あれ、そう言えば好感度気にしてなかったな、今どんな感じだろう。悟は…43%か!まだまだだなぁ。傑は…38%か、こっちもまだまだだ…。くそぉ、今回は反転したまま傑とバイバイか…。やっぱり毎日電話しよ…。
「おはよ、二人とも。」
「はよ。」
「おはよう。」
うん、どうして君たちは毎朝私に抱き着いて寝てるのかな?多分私寝てる間に寝返り打ててないよね?頭痛いもん。ついでにちょっと背中とかも痛いもん。
「はぁ…。」
「傑、大丈夫だよ、毎日電話するから。」
「ああ、ありがとう理玖。」
朝食を食べた後、帰る支度をしながら溜め息を吐いた傑に、私はぎゅーっと抱き着いた。傑も私をぎゅーと抱き締め返した。悟がそれを見て駆け寄って来て、私と傑ごとぎゅーと抱き締めた。え、そんなことするの珍しくない!?え、かわよ!?!?!
「俺も理玖とも傑とも電話したい。」
「はは、私も悟と電話してみたいな。」
「じゃあ三人で電話しよ!って、どうやって電話…あ、そっか、できるできる!悟、学校終わったら家で一緒に傑に電話しよ!家の子機、確かスピーカーで話せる!」
「じゃあそうする。」
「いいね、是非三人で電話しよう。」
電話の約束をして、悟は傑と電話番号を教え合っていた。うんうん、良い傾向ですな。余は満足じゃ。
「理玖、悟くん、そろそろお暇するわよ。傑くんも、お家まで送るからね。」
お母さんが私たちにそう声を掛けたことで、私たちは離れた。荷物を持って車に乗り込む前に、おじいちゃんとおばあちゃんにもしっかりと抱き着いておいた。
「また来なさいよ、傑くんも、悟くんもね。」
「はい、お邪魔しました。」
「ありがとうございました。」
「おじいちゃんもおばあちゃんもまたね!」
「はいはい、気を付けて帰るんだよ。」
「理玖、小遣いいるか?」
「いる!」
「じいさん、甘やかしちゃダメ!」
「ばあさんに怒られたからまた今度な。」
三人で後部座席に乗ってお母さんの運転で傑の家まで向かった。傑の家に着くまで三人で手を繋いだまま沢山話をして、笑顔でまたねを言って手を振った。悟と二人になった後部座席。悟と繋いだままの手。
「お母さん、私、悟と傑と一緒に高専に通う!」
「あら、もうそこまで話が進んでるの?お父さんにも話しておかなきゃね。」
「あ、いいんだ。」
「いいに決まってるでしょ、悟くんと傑くんが一緒なら安心ね。理玖の事よろしくね、悟くん。」
「はい。絶対守ります。」
「あら、うふふ、いいわねぇ。」
悟を家まで送り届けたあと家に帰ると、私は自分のベッドに身を沈めた。いやぁ…楽しかったななんだかんだで。傑も一旦好感度100%に出来たし。残るはパパ黒と孔だな。この二人は毎週土曜日しか会えてないからなぁ…。明日からはまた悟の家でお泊り特訓予定だし、連絡取るなら今だな。携帯を取り出してパパ黒に電話をかけてみた。ワンコールで繋がったそれに私のテンションは爆上がり!
『なんだ。』
「甚爾様!好き!」
『…切るぞ。』
「え、待ってください!切らないで!」
『…なんだよ。』
「えへへ。昨日は会えなかったので、甚爾様に会いたくて…。」
『…家の前にいろ。』
「え!?会いに来てくれるんですか!?」
『金が入ったからな。ジュースくらいなら奢ってやる。』
「やだぁ…好き!」
『言ってろ。切るぞ。』
「おしゃれして待ってますね!」
『ハッ、マセガキ。』
プッ、と電話が切れて、私は急いでクローゼットを漁った。これは来たのでは!?パパ黒とデートじゃね!?ヤバ、なに着よう!?お気に入りのワンピース…あった!急いで着替えて髪を整えて鏡で全身をチェックした。
「お母さん、ちょっと出かけてくるね!帰る時に電話します!」
「ちょっと、洗濯ものくらい出していきなさい!」
「あとでやるー!」
階段を駆け下りながらそう言うと、ワンピースに合いそうなパンプスを引っ張り出して、もう一度自分の格好をチェックする。…うん、問題なし!いざ、パパ黒とデートへ!