ワイルドとチャイルド


孔と車に戻ってパパ黒を待っている間、他愛も無い話をした。私の母の実家で過ごした1週間の話を、話せる範囲で、名前は伏せて。

「友達ができて良かったな。」
「はい!」
「学校は?楽しいか?」
「あー、それが、こっちで初めて出来た友達が凄くくっついてくるので、他のクラスメイトと全然話せなくて…。しかもなんか避けれられてるんですよ!私何もしてないんですけどね?!おかしくないですか?」
「小学生も大変だな。理玖ちゃんは賢いし、ずば抜けて可愛いから、周りも近寄り難いんだろ。無理に同世代と連む必要も無いと思うけどな。大人の友達だって作れるんだから。」
「孔さんとは、大人の友達になれますか?」
「ははは、俺はもうなってるつもりだけど、違ったか?」
「ふふふ、私もなってるつもりです!良かった、両思いですね?」

孔はまたくしゃっと笑って私の頭を撫でた。んー、いいね、他の3人と違って落ち着いた雰囲気で、なにより聞き上手だ。助手席から身を乗り出して、運転席に座っている孔の頬にちゅっとキスをする。

「おいおい、あんまり大人を揶揄うなよ?俺みたいな男が理玖ちゃんを襲わないとは言い切れねぇぜ。」
「ふふ、孔さんはそんな事しませーん。」
「わかんねーよ?」

孔が私に体を向けてフッと笑う。…うん、孔もなかなかにイケメンだよな…。正直ありよりのありだわ。今度は唇に短く触れるだけのキスをしてみる。…髭が当たってチクッとしたけど、ワイルドでええやん…!え、いや、普通にワイルドだろぉ?!

「はぁ…アイツが心配する理由がわかった…。」
「え、どんな理由ですか?」
「理玖ちゃん、大人をからかっちゃダメだぜ。悪い大人に襲われても文句言えねぇぞ。」
「孔さんは悪い大人ですか?」
「さぁ、どうだろうな?」
「孔さんになら襲われても文句言いませんよー?」
「…本当に?」

孔が助手席に身を乗り出してきた。好感度は93%、もう少しだ!

「俺がここで理玖ちゃんと金を持って逃げたとして、俺は悪い大人か?」

普段より低い声でそう言った孔。うん、悪い大人もたまらんなぁ!?!えぇ!?!悪い大人も好きですよ!?!

「それはつまり、愛の逃避行ってやつですか?」
「…プ、アッハッハッハッハッ!そう来たか!いいな、愛の逃避行、してみるか?俺と。」

【孔時雨との親密度が100%になりました。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:60)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】

お、きたきたー!孔もスピーカーONにしてみるか!

【孔時雨のスピーカーをONにしました。】

(理玖ちゃん連れて逃げたとして、アイツが黙ってねぇよなー。…下手すりゃ俺が殺されるな。)

うん、アイツってのは言わずともパパ黒だろうし、殺しまでは分からんが…追ってくるだろうね!?やだぁ、愛の逃避行してみる??パパ黒に追い掛けられて2人でドキドキ吊り橋効果しちゃう?!つーか、パパ黒から逃げられる気がしないから、愛の逃避行って言うよりも死の逃避行?あれ??

「させるかよ。(させるかよ。)」
「うおっ!?なんだ、もう終わったのか。(ビビった!)」
「甚爾様!お疲れ様でした!」
「おう。追加で金も持って来た。(大金入ったし、飯でも連れてってやるか。)」
「流石甚爾様!わたしたちにできない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれる!あこがれるゥ!」
「いや、憧れちゃダメだろ。(ホント面白いな理玖ちゃんは。)」
「…後ろ座れ。(アホかコイツ。)」
「はーい!」

助手席から降りて、パパ黒が開けてくれた後部座席に乗り込むと、パパ黒が追加で持って来たアタッシュケースをトランクに積んだ。いやぁ、返り血ひとつ浴びずに流石っす!パネェっす!マジでシビあこっす!後部座席に座ったパパ黒に飛び付くと、鬱陶しそうな顔をされた。その顔で実は喜んでいるのは知ってるぜ…!なんてったって、心の声が聞こえてんだからな!

「ジョジョ苑でも行くか。(今は気分がいいからな。)」
「お、焼肉か、いいな!(俺にも奢ってくんねぇかなー。)」
「あ、私お母さんに聞いてみます!」

よっしゃあああ焼肉だあああ!って言いたいところだけど、人死んでるんだよなぁ!?!喜んでいいのかこれ?!ポケットから携帯を取り出してお母さんに電話を掛けると、2コール目で繋がった。

「もしもしお母さん?今から甚爾様とご飯食べに行ってきます!」
『ちょっと、いきなり何言ってるの!』
「また帰る時に連絡するね!」
『待ちなさい、甚爾様って誰なの?!』
「土曜日にいつも稽古してくれる人!」
『ちゃんと紹介しなさい!近くにいるの?代わってくれる?』
「えー、聞いてみるー。…甚爾様、お母さんが代わってくれと言っています。」
「…。(めんどくせ。)」
「もしもしお母さん?甚爾様はとってもシャイボーイだから、代わるのは無理そう!また連絡するね!」
『あ、ちょっと理玖ーーー』
「はい、OKです!行きましょう!」
「理玖ちゃん、後で怒られないか?(お母さんも大変だな。)」
「大丈夫です!なんとかなります!」
「俺がシャイボーイってなんだよ。(アホらし。)」
「てへっ!」

孔の運転でジョジョ苑に向かう間、パパ黒にずっと引っ付いていたけど、鬱陶しがる事も剥がされる事もなかった。んもう!かんわいい!ちゃんと心の中で喜んでいるのも知ってるんだからねっ!かんわいい!ジョジョ苑に着くと、パパ黒は孔を帰らせた。…マジか、孔かわいそすぎワロタ。運転席で寂しそうに口を窄める孔と、去っていく車。…マジかぁ…孔には今度コーヒーでも奢ってやろう…。パパ黒に手を引かれて店内に入る。なんか普通に手を繋いでくれるようになったんですけど?!え、可愛くない?!しゅきいいいい!!!

「特上がつくもん全部。」
「かしこまりました。」
「甚爾様太っ腹ですね!素敵っ!」
「ハッ。(そりゃあんだけ大金入ればな。)」

テーブルの上に並べられた肉皿。やっべぇ、これ総額幾らよ!?パパ黒がお肉を焼いて私のお皿にのせてくれた。…パパ黒に焼肉奢って貰えて、おまけにお肉まで焼いてもらえるなんて…夢のようだわ…。思わず頬をつねって見たけど、うん、痛い。普通に痛い。

(何やってんだコイツ。)

「甚爾様、頂きます。」
「おー、食え食え。」

パパ黒がお皿にのせてくれた特上カルビに齧り付いた。アッツ!?うまっ!?!アッツ!?!?1人ではふはふしていると、パパ黒が私を見て鼻で笑う。

(可愛いやつ。)

アンタの方が可愛いよ!!!!肉を噛み締めながら、私は額に手を置いて天を仰いだ。パパ黒は肉を頬張って山盛りの白米を口いっぱいにかき込んでいた。やだぁ、ハムスターみたいで可愛いんですけど!?!パパ黒が頬っぺた膨らませてもきゅもきゅしてるううう!写メりてぇえええ!!くそ、私の携帯カメラ着いてねぇ!!使えねぇな!!クソっ!!カメラああ!!誰かカメラ持ってきてえぇぇ!!!

「うめぇな。」
「はい!とっても美味しいです!甚爾様、ありがとうございます!」
「ん。」

ひゃだああああ!ん。だって!!頬っぺた膨らませて、ん。だって!?!?!こんな可愛いパパ黒見てたら逆上せて鼻血でるわ!!!

(なにニヤけてんだ?)

アンタの可愛さにニヤけてんだよ!?!可愛すぎてブチ切れんぞ?!お?!?!

「はァー食った食った。」
「ご馳走様でした!甚爾様、今日は会えて嬉しかったです!次の土曜日まで会えないのは寂しいですけど、またメールしてもいいですか?」
「好きにしろ。(メールじゃなくて電話しろよ。)」
「電話もしたいです!」
「あーはいはい。」
「んもう、冷たい甚爾様も素敵!抱いてください!」
「ガキに興味ねぇ。(理玖が女になったらな。)」

ジョジョ苑を出てパパ黒と歩いて帰る道程。パパ黒の大きな手は私の手を優しく握っていた。はぁああ…たまらん!!!!すこ!!!!!

「送ってくれてありがとうございました!おやすみなさい!」
「ん。」

家の前でパパ黒にお辞儀をして、最上級にかんわいい笑顔を向ける。あー、待って、家に入る前にちゅーしたい。今日のパパ黒の可愛さに感謝のちゅーしたい。

「…理玖。」
「はい?」
「こっち来い。」

パパ黒が私に小さく手招きをした。え、なに?ちゅーでっか?!ちゅーしてくれまっか!?!

「甚爾様?」

パパ黒が身をかがめて私の唇に優しく触れるだけのキスをした。……は!?!?何今の!?!!?!もっかいして?!?!

「じゃあな、マセガキ。(早く大人になれよバーカ。)」

後ろ手に手を振る背中を見ながら、私は本日2度目の吐血をした。あかん、そらあかんでパパ黒の兄貴ィ!?!完全に私を殺しに来てますやん!?!?心臓が…!!!!心臓が破裂するぅうう!!

「理玖っ!」
「はぁい、ごめんなさぁい!」

家に入ると案の定、お母さんにしこたま怒られた。



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