つづら折り


ショタミンが帰ったのは夕方頃。また明日も遊ぼうね、とめちゃんこかわいい笑顔で手を振られた。かぁわよぉ…。そしてその日の夜、夢を見た。夢の中で私は呪術廻戦の単行本を読んでいた。しかも私が最後に見たのは15巻、手に持っていたのは16巻で最新巻だ。頭の中に刷り込むようにひたすら読み込んだ。何回も何回もページを捲っては読み返し、1巻から16巻まで続けて読み返して、時には泣きながら読み漁った。そんな夢。

「…夢見がいいのか悪いのか分からん…。」

起きた私の頭はガンガン痛くて、目は真っ赤に腫れていた。…マジか、16巻マジか…。うわぁ…。うわああああ!!!とりあえず一言。

「乙骨憂太かっこよすぎワロタ…。あと脹相がゲロかっこかわいい…。何あれ、私もお兄ちゃんって呼びたい…。」

はぁ…。辛い。ただただ辛い…。呪術廻戦これからどうなるの…?続きを知ってどうすればいい…?だめだ、弱気になるな私!皆が死なずに幸せな世界を作るんだろ!?がんばれ私、他に誰ができるんだ!私がやらなきゃ誰がやる!

「理玖ー、ご飯できてるわよー?」
「はーい!」

頭を切り替えろ。まだまだかなり時間はある。私がやる事は、もう決まってるんだから、ブレるな。重たい足取りで洗面所に向かって顔を洗う。うわあ、顔浮腫んでる…。目も腫れてるわ…。とりあえず浮腫みケアのマッサージしとこ。朝食を食べようと食卓に向かうと、私の顔を見たお母さんが心配そうに尋ねてきた。

「大丈夫、ちょっと変な夢見ただけ。」
「…何かあったなら、いつでも話を聞くからね?」
「うん、ありがとうお母さん。」

朝食を食べて身支度も整えると、ショタミンが遊びに来るまで傑に電話をかけた。最初は傑のお母さんが出たからちょっと緊張したけど、私の事を覚えていたらしい。すぐに傑と代わってくれた。

『もしもし、理玖かい?』
「傑…元気?」
『ああ、私は元気だよ。理玖は?』
「私はー…うん、まあ、元気っちゃ元気。傑に会えなくて寂しいかな…。」
『…私も理玖に会いたいよ。次はいつ会えるかな。』
「…わかんない。お正月にはそっちに行くと思うけど…そしたら会えるかな?」
『ああ、勿論。初詣一緒に行こうか。』
「…うん。」
『……理玖、何かあったのかい?』
「あ、いや、ごめん何でもない。…ちょっと傑の声が聞きたくなって。」
『嬉しい事を言ってくれるね。私も理玖の声を聞きたかったんだ。悟に聞いたよ、外出禁止を食らったんだってね?』
「あれ、いつの間に電話したの?」
『昨日の夜少しね、向こうから掛けてきたんだ。』
「そうなんだ。実は、お母さんに心配かけすぎちゃって、めちゃくちゃ説教された挙句外出禁止だよ。笑っちゃうよね!」
『あまり心配を掛けてはいけないよ。私も理玖に何かあっては気が気じゃなくなってしまう。』
「はは、ありがとう、傑。…傑、大好きだよ。」
『突然どうしたんだい?私も大好きだよ、理玖。』
「…うん、ありがとう、傑。なにがあっても傑の事守るからね。」
『私だって理玖を守るよ。』

傑と電話を終えると、ベッドに寝転がった。あー…この沈んだ心をどうしてくれよう…。早く、ショタミン早く来てくれ…。私このままじゃ泣いちゃうから、早く来てくれショタミン…。

「理玖ー、建人くん来たわよー?」
「…はーい!」

階段を下りて玄関を見れば、靴を脱いでいるショタミンの背中。飛びついてぎゅうぎゅう抱き締めると、ショタミンが嬉しそうに私を呼んだ。

「理玖お姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう建人くん、今日も来てくれてありがとう!何して遊ぶ?」
「探検したい!」
「いいよ、どこ探検する?」
「お外!」
「今靴脱いだばっかりだね!いいよ、探検しよっか。お母さん、建人くんと公園行ってくる!」
「携帯持って行きなさいよ?」
「はーい!」

携帯と財布を持って、ショタミンと手を繋いで近所の公園に向かう。途中にある駄菓子屋でショタミンに駄菓子を買ってあげた。んまい棒を齧るショタミン…。かわいい…。さっきまでの沈んだ心が浄化される…。ありがとうおぶありがとう…。公園に着くと、ショタミンと追いかけっこをした。金のサラサラヘアーを靡かせて私を追いかけるショタミン…ゲロかわいい…!立ち止まって両手を広げれば、ショタミンが私に勢いよく抱き着く。衝撃で後ろに倒れそうになった体で、悟との特訓で鍛えた受け身をとる。ショタミンが怪我をしないようにしっかりと抱き締めた。

「建人くん、足早いねー!」
「かけっこはいっとうしょうだよ!」
「すごいすごい!」
「理玖おねえちゃんは?」
「私もいっとうしょうだよー!一緒だね?」
「うん!」

眩しい笑顔だ…!サングラスくれ、誰か、悟がかけてたサングラスくれ!あ、でもあれほとんど見えないじゃん!やっぱ普通のサングラスくれ!!

「建人くん、大きくなったら何になりたい?」
「理玖おねえちゃんとけっこんして、こわいのから守りたい!」
「ふふ、ありがとう!私も建人くんを守るヒーローになりたいな!」
「ヒーロー?けんともなれる?」
「うん、なれるよ!一緒にヒーローになる?」
「うん!」

ショタミンが私を抱きしめる。私もショタミンをぎゅーっと抱き締めた。ふと、感じた呪力の気配。私の視線の先、公園の奥にある遊具の影からこちらを見つめる大きな1つ目。目が合わないように気を付けないと…と思った矢先、ショタミンも気配に気付いたらしい。止める間もなく振り向いた。大きな1つ目がパチリと瞬きをしたかと思うと、凄い速さでこちらに向かってきた。やば!はや!こわ!セレクト!

【???があなたと七海建人を狙っています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:60)】
【1.祓う 2.動きを止める 3.なにもしない】

1番!

【1.祓う を選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:30)】

私とショタミンの目前まで近付いていた呪霊がバチュン、という音と共に煙をあげて消えていく。…間に合って良かった…。ショタミンに怪我とかさせたら私切腹するとこだったわ。それに今度こそ外出禁止間違いないし!

「建人くん、大丈夫だった?怖かったよね、ごめんね?」
「…うん、だいじょうぶ…。今の理玖おねえちゃんがやったの?」
「そうだよ、怖いのはもういないからね、大丈夫だよ。」
「…うん。」
「怖いのを見つけても、目を合わせちゃだめだからね?今みたいに襲ってきちゃうからね!分かった?」
「…分かった。」

暫くぐすぐすと鼻を啜っていたショタミンを抱き締めて慰めた。かわいい…。あのナナミンが…ショタミンとはいえグズってる…。かわいい〜…。

「落ち着いた?」
「うん。理玖おねえちゃんありがとう。大好き!」
「私も建人くんのこと大好きだよ!」
「えへへ。」

えへへ、だって!!!あの!!!あの七海建人が!!!えへへですって!!!!その後、落ち着いたショタミンとお腹が空くまで遊具で遊んだ。お昼を食べにショタミンを家まで送り届けて、すぐ隣の自分の家に帰る。…つーか、今思うと私ヤバくない?あの最強の五条悟と幼馴染で、夏油傑とお友達で、禪院…伏黒甚爾の弟子で、七海建人のお隣さんって…!!!ヤバくない?!?!どんなポジションよ、私!!!!え、あ、ごめん孔!忘れてた訳じゃないよ?!?!



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