安全と平和を


「お前たちには今から呪術高専に来てもらう。」

…え?

「今から?」
「なんで?」
「それはついてから説明する。」

そう言われて私たちは車で2時間近くかけて高専にやってきた。…え、ひっろ…でっか…!!てか高専!!ここが!?すげぇえええ!!聖地巡礼じゃん!!!テンションが上がる私をよそに、車から降りて案内されたのは応接室。お父さんと夜蛾先生と向き合うように座った私たち。…え、マジで何の話!?!?めっちゃ緊張するんだけど…!!!

「単刀直入に言う。廻神理玖。」
「は、はい。」
「…何者かがお前に、100億円の懸賞金が賭けた。」
「「「…は?」」」

…え?今なんと???100億???ひゃくおくううう!?!?驚くのも束の間私の両サイドからとんでもない殺気が放たれる。悟と傑だ。…これあれだわ、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームってやつだわ。ちょっと古いか?

「誰が理玖に懸賞金賭けてんの?」
「それは現在調査中だ。だが、呪詛師御用達の闇サイトに個人情報付きで掲載されているのを、うちの補助監督が発見した。」
「それで?」
「なんで理玖が狙われてんの?」
「…それは私から説明します。」

今まで黙っていたお父さんが口を開いた。…ていうかマジか、1億の次は100億か。…あれ、でも私を狙う宗教団体や組織はパパ黒がほとんど壊滅させてなかったっけ?…もしかしてパパ黒が結婚したから?年代的に結婚してるはずだし…、それで東京から離れたからまた私を狙う奴らが出て来たってこと…?…いやいやいやいやまさかぁ!…はは…いや、…ホント、噓だよね…?

「もしかしたら聞いているかもしれないけど、理玖は…神の子だ。廻神家は神に愛された子が生まれる事がある…。それが理玖だ。記録では、神の子は才色兼備、そして神のお告げを聞くとされている。そして…理玖の術式は謎に包まれている。代々神の子は術式を公言できない縛りがあるらしい。…理玖もそうだね?」
「…うん。」
「それが理玖を狙う理由になるんですか?」
「…私の名前は廻神織神、式神を使うんだ。折り紙を折ってその折り紙に神を降ろす、式神というよりは降霊術の方が近いかな…。廻神家は代々そういう術式を使う。妻の…理玖のお母さん…風鈴は封印術を使う。名前の通りで、封印には風鈴を使うんだ。」
「それがなんだよ。」
「理玖…、落ち着いて聞いて。」
「…なに。」
「…母さんが、何者かに殺された。」
「…は?」

お母さんが、殺された…?はぁ?…意味分かんないんですけど。

「嘘でしょ?」
「本当だ。」
「いやいや、だって今朝だって普通に話したし、朝ご飯作ってくれて食べたし、いや…嘘だって、」
「理玖、聞いて。母さんを殺したのは、」
「私に懸賞金賭けた奴?」
「…恐らく。」
「で、誰がお母さん殺したの?」
「…名前までは分かっていない…。けど、私の術式で1つだけ入手した情報がある。ソイツには額に縫い目(・・・・・)があったと。」

…は?額に縫い目…?ハッとして傑を見る。当たり前だけど傑は死んでないから縫い目なんてない。縫い目…縫い目って…あの喋るメロンパン…?加茂憲倫…?違う、アイツの名前は確か…羂索…!

「…マジかー…ははは、マジかあ!」
「理玖?」
「あ…うん、大丈夫。大体わかった。ソイツ私が祓うわ。」
「え、」
「理玖、何か知ってんの?」
「…ソイツは私がこの世に生まれた理由だよ…。ぜってぇ殺す。死んでも殺す。」
「お前たち3人がここに来てもらった理由はただ一つ。廻神理玖を守る為だ。織神からはお前たちが高専に入学したがっているという話を聞いていた。…お前たちには特別1級術師として、その呪詛師を追って欲しい。そして廻神理玖、お前には危険を伴う任務を任せたい。」
「囮でしょ。いいですよ。でもその前に一つ試したいことがあります。少し時間を貰ってもいいですか?」
「…いいだろう。」

お父さんに頼んでお母さんに会いに行った。霊安室に横たわっているのはお母さんだったもの。お母さんの右腕だけが乗っていた。私はその手を握って頬に添える。冷たく硬くなったお母さんの手。この世界に生まれてから、ずっと私を大事に育ててくれた、優しくて大好きだったお母さんの手。ちょっとお茶目で、でもズバズバと毒舌を吐いて、怒ると怖くて、でも笑った顔はとっても優しくて綺麗な人だった。大好きだった。

「お母さん、今まで育ててくれてありがとう。大好きだよ。」

不思議と涙は出なかった。お父さんが私を抱き締めてくれた。ごめんねお父さん。ごめんねお母さん。絶対敵はとるからね。絶対に。お父さんの背中に手を回して、私は、

「セレクト。」

【あなたは敵をとりたいと思っています。選択してください。選択すると呪力を120消費します。(残り呪力:120)】
【1.領域展開をする】

迷いはない。

「1。」
「理玖…?」
「お父さん、ごめんね。」

【1.領域展開をする を選択しました。呪力を120消費しました。(残り呪力:0)】
【あなたの残り呪力は0です。呪力が回復するまでセレクトできません。これより呪力回復イベントに入ります。呪力が回復するまでイベントが続きます。】

お父さんに身を委ね、私の意識は―――





【領域展開をしました。領域展開をすると最後にセレクトを使用した場面に戻ります。領域展開中にセレクトを使用すると、呪力を通常の倍消費します。(残り呪力:0)】

気付けば白い空間にいた。けどそれはすぐに、

【生徒A、B、C、D、Eがあなたを恐れています。選択してください。選択すると呪力を5消費します。(残り呪力:115)】
【1.制裁を与える 2.なにもしない】

…これは、昨日…?領域展開したら最後にセレクトした場面に戻るって…。私は自分の両手を見る。濡れた両手と、濡れた制服。肌に纏わり着く制服と透けたブラ。

「てことは、お母さんまだ生きてる…?」

…それじゃあ、私がすることは1つだ。

「ねえ、アンタ達。」
「ひっ!」
「悟君たちが来たからって…、ちょ、調子に、」
「今私機嫌悪いからさ、ちょっと黙ってくんない?次一言でも喋ったら、アンタらにGの大群が押し寄せるから。」
「「…っ!」」
「わかったらさっさと行って。金輪際私に絡まないで。」

走り去った女子共を見ながら私は深く息を吐く。お母さんを守らなきゃ。その為には明日、私は学校を休む。悟と傑がゴリマッチョヤンキーを伸して私の元へ来た。

「あれ、あの女共は?」
「逃げたよ。それよりさ、2人にお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「なんだい?私たちにできる事なら何でもするよ。」
「…明日、私学校サボるから。2人も一緒にサボらない?」

私の提案に2人は顔を見合わせて、

「「いいよ。」」
「うん、そう言ってくれると思ってた。実は明日、殺したい奴がいるの。」

私がそういうと、悟と傑が目を見開いて、そして笑った。

「なにそれ、誰殺すわけ?」
「この世に私が生まれた理由。」
「言ってる意味が良く分からないけど、理玖がそうしたいなら手を貸すよ。」

悟と傑が私に手を差し伸べた。私は笑顔でその手を取った。羂索、オマエは明日ぜってぇ殺す。



← 53 →
back

top