来たる決戦の日。いつも通りに学校に行く支度をして、お母さんの作った朝ご飯を食べて、そして、
「お母さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、理玖。気を付けてね?悟くんと傑くんも。」
「はい、行ってきます。」
「ん、行ってきます。」
お母さんに見送られて学校に行くフリをする。お母さんの姿が家の中に消えたのを確認すると、私達はナナミンの部屋に向かうべく、七海家のインターホンを押した。ナナミンの母、ハハミンに軽く挨拶をして、ナナミンの部屋に。ナナミンがなんと説明したかは知らないけど、ここまでは作戦通りだ。そして問題はここから。パパ黒が家の前に来たのを見つけて電話を掛ける。うちの庭からナナミンの部屋の下に来たパパ黒に、ナナミンの部屋の窓を開けて呼んだ。軽いジャンプで二階の窓から部屋に入ってきたパパ黒、すっげ。流石だわ、フィジカルギフテッド。
「2人には昨日メールしたけど、新たな作戦メンバーです。禪院甚爾様。私のお師匠様です。」
「禪院甚爾…。」
「五条悟か。」
「名前からして、話に聞いた御三家の禪院家だね。」
「コイツが師匠ってどういうこと?」
「甚爾様は、私が小1の時に呪詛師に誘拐された事があって、その時助けてくれたの。その時から私に呪具を使った戦闘のイロハを教えてくれたんだよ。だから2人とも、甚爾様と仲良くしてね?お願い。」
「へー。」
「ほーん。」
「ハッ。」
「はいはい3人ともガン飛ばさないで!いつ奴が来るか分かったもんじゃないんだから!」
「オマエ、理玖の何。」
「オマエらこそなんだ。」
「私たちは「やめなさいってば!」
今にも一触即発しそうな三人の間に割り込んで、今回の作戦をもう一度確認した。そして、その時は来た。
「来た。」
うちの門を潜った人物。額には縫い目。…女だ。
「悟、」
「『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』」
帳が降りて、パパ黒と傑が奇襲をかける為に飛び出した。悟は窓からそのまま向かいにある私の部屋に飛び移る。私も窓から飛び降りた。傑の呪霊が奴の体を締め上げている。パパ黒が天逆鉾で奴の心臓を一刺し。最強な仲間のおかげであっさりと事が運んだらしい。
「初めまして、羂索。そして、さようなら。」
「ガハッ…っ、廻神…理玖…っ!」
「セレクト。」
【羂索があなたを狙っています。選択してください。選択すると呪力を240消費します。(残り呪力:120)】
【1.祓う】
「アンタが全ての元凶だ。私はアンタの描く未来を赦さない。」
「廻神理玖…なにも、分かっていないな…。」
「分からなくて結構。私はただ、皆に幸せになって欲しいだけだから。だからアンタはここで終わらせる。1番。」
【1.祓う を選択しました。呪力を240消費しました。(残り呪力:-120)】
バチュン、と羂索がいたであろう首が消滅した。これで、良かったんだよね…?
【あなたの残り呪力は-120です。呪力が回復するまでセレクトできません。これより呪力回復イベントに入ります。呪力が回復するまでイベントが続きます。また、残り呪力より多く呪力を消費したため、普段の回復よりも時間がかかります。】
【呪力回復まで残り168時間(残り呪力:-120)】
私の意識はそこで途切れた。
【領域展開を終了します。】
目を覚ますと、私は病院のベットらしきところにいた。…どこだろ、ここ。
「理玖?」
「…お母さん…?」
「理玖っ!よかった…!目を覚まさなかったらどうしようかと…!全く、この子は…!」
「ぁ…、お母さんだ…お母さんっ…!」
お母さんが私を抱き締めた。温かくて、ちゃんと鼓動も聞こえる。生きてる…!良かった…。お母さんにしがみ付いて、私は声を上げてわんわんと子供のように泣きじゃくった。お母さんは私が落ち着くまで静かに抱きしめてくれた。
「…一週間も眠ってたのよ?」
「マジか…。」
「悟くんも傑くんも、甚爾さんも、理玖の事を心配して毎日お見舞いに来てくれたのよ?ちゃんと自分でお礼言いなさいね?」
「うん。お母さんも、ありがとう。」
「…全く、この子は…。」
領域展開をしたからか、それとも羂索という原作に関わる人物を祓ったからか、私は一週間も眠り続けていたらしい。お父さんが血相を変えて病室に入って来た時はビックリしたけど、お父さんがお母さんごと私を抱き締めて号泣していて、お母さんと私は二人でドン引きした。けど、すぐに笑って、三人で泣きながら笑い合った。お父さんが私に説明してくれた。どうやらここは高専の医務室だったらしい。報告にない帳が降りてしかもそれが我が家だと報告を受けて飛び帰ったお父さん。そして帳が降りて、なぜか私の部屋から悟が出てきたことに驚いたお母さん。そして庭には首のない女の死体と、倒れた私。血のついた呪具を持ったパパ黒と、呪霊を出していた傑。2人が私を見つけた状況を想像して、私はちょっと笑った。なんちゅうカオスだ。女の死体…羂索の器は高専で処理されたらしい。多分これでもう原作の様な地獄のような未来は回避できたはず。…一つ気になる事を上げるとすれば、それは羂索の最後の言葉。
「廻神理玖…なにも、分かっていないな…。」
一体何を分かっていないというのか。…けどまあ、アイツがいないだけまだマシな未来が描かれるはず。体も呪力が元通り回復したから、何ともなく元気だ。お父さんとお母さんと3人で家に帰る。協力してくれた3人には今度お礼をしないとな。起きたよ、ありがとう、と3人にメールをした。私の携帯に鬼のように着信が鳴り響いて、お父さんとお母さんと3人で笑った。最初の着信は悟だった。
「もしもし、悟?」
『理玖!…ったく、心配かけやがって…!』
「ふふ、ごめんね?でもうまくいった!ありがとう、皆のおかげだよ。」
『ま、俺は今回ほとんど何もしてないけどな。』
「それでも、ありがとう。」
『…ん。オマエに…理玖に何ともなくて良かった。』
「お陰様で、怪我もなく元気です!倒れることが分かってたとはいえ、ビックリさせてごめんね?」
『ホントだよ。…元気になって良かった。』
「うん!じゃあ、また明日ね?ありがとう、悟。大好きだよ。」
『俺も、理玖の事大好き。』
次に着信が入っていたのはパパ黒だ。意外だな。やっぱパパ黒私の事大好きじゃね?
『理玖…。』
「甚爾様、ご心配をおかけしました。お陰様で私もお母さんも助かりました。ありがとうございます!」
『…ん。元気そうでよかった。』
「はい!あ…その、突然ぶっ倒れたからビックリさせちゃいましたよね?」
『…まあな。だが、オマエの声が聞けて良かった。』
「もう…甚爾様ったら…!好き!」
『ハッ、言ってろ。』
「今度お礼させてくださいね?」
『ああ、高くつくぜ。』
「ふふ、覚悟してます!…そういえば、甚爾様結婚されたんですよね?奥さんとの仲は円満ですか?」
『…ガキがもうすぐ生まれる。』
「あ、そっか、まだ5月か。」
『…生まれたら見に来いよ。ちょくちょくそっちには行くから、また稽古つけてやる。』
「ふふ、はぁい!甚爾様、ありがとうございました。大好きですよ!…じゃ、また。」
『…ああ、またな。』
最後に傑に電話を掛けた。すぐに繋がった上にすごい勢いで名前を呼ばれた。かわいいかよ。
『理玖!!』
「傑ー!久しいねー!」
『よかった…。目を覚まさなかったらと思うと、怖かったよ…。』
「あ、…そういえば前も傑と一緒に呪霊狩りして私がぶっ倒れたことあったね。」
『虹龍の時だね。あの時もとてつもなく怖かったよ。』
「ごめんごめん!でも、傑たちのおかげでお母さんが助かったし、私も助かった!ありがとう!」
『理玖の頼みだからね。私も理玖と理玖の家族が無事で安心したよ。』
「ありがとう傑。大好きだよ!」
『私も理玖の事大好きだよ。理玖に怪我がなくて良かった。』
「私も、皆無事で本当によかった。ありがとう傑、また明日ね?」
『ああ、また明日。おやすみ、理玖。』
イエーイ、一件落着!!