人生ゲームより桃鉄を


【呪力回復まで残り2時間(残り呪力:2)】

真っ暗な視界に浮かんだ文字。とりあえず残り呪力が0でなくなれば、意識だけは回復するらしい。と言ってもただ真っ暗な空間を2時間もボケーッと過ごすのも暇なので寝る事にした。呪力回復したら勝手に起きるっしょ。そう思って目を閉じた。私の予想は的中して、目が開いて視界に白い天井が見えたので体を起こしてみた。お、起きれた。

「んー、よく寝た!」

ベットに寝てたって事は、保健室かな?カーテンに囲まれたそこを見回しながら、大きく背伸びをした。カーテンを開けてみれば、ソファーに座って顔を顰めて私を睨む悟がいた。てか今何時?そう思っていると突然頭に降ってきた拳。

「いったい!!なんで?!」
「呪力切れでぶっ倒れるとかザコの極みだろ!お前のせいで給食も食いっぱぐれたじゃねえか!」
「え、食べればよかったじゃん!わざわざ起きるの待っててくれたの?優しいとこあるね?」
「はぁ?!俺がここまで運んでやったんだから感謝しろよ!」
「マジか?どうやって?」
「俺の術式で。」
「…なるほど、無限か。」
「…知ってんのか。」
「昨日うちのお父さんに聞いた。五条家って御三家なんでしょ?色々大変そうだね、息詰まらない?うちはなんてことないただの平凡術師の家系だから、大変さはよく分かんないけど、いつでも話聞くからね。」

私なりに気を遣って言ったのに、返事は悟のゲンコツ。でも頭上には55%になった好感度。ほんと、可愛いなショタ五条。私には需要しかないぞ?ん?いいのか?ん?

「教室戻ろっか。」

悟の手を掴んで保健室を出る。大人しく私に手を引かれる悟に、私は思い出したように振り返った。

「そうそう、悟、運んでくれてありがとうね!」
「…別に、オマエの為じゃねえし。」
「…アンタなんでそんな可愛いのよ…よーしよーしよし!」

思わず悟に抱き着いて頭をなでなでしてやった。腕の中で暴れ回る悟が無限を発動したことで私は諦めて体を離す。顔を真っ赤にした悟が口をパクパクさせてて面白い。可愛いのう。

「お、オマ、オマエバカじゃねえの!?」
「照れてるねー、可愛い可愛い。」
「調子乗んなブス!」
「あ、コラ、さっき名前で呼んでくれてたじゃん?!」
「なんで覚えてんだよ!」

私を置いて走り去る背中を見ながら、私はまた1人で笑った。悟の好感度は60%になっていた。

「…帰るぞ。」
「ほいほーい。」
「ん。」
「ん?」

帰りの会も終わって、教室を出た所で悟が私に手を出した。首を傾げる私の手を悟が掴む。そのまま私を引っ張って歩く悟に、私はニヤニヤと1人笑いながらついて行った。校門を出るまで繋がれていた手。また黒塗りの車に乗せられて、私は家まで送ってもらった。

「明日、朝、8時にここで待ってろ。」
「明日?なんで?」
「…乗せてってやるよ。」
「マジ?いいの?超助かる!正直さ、ランドセル重たいし黄色い帽子ダサいし、登校班とか見当たらないからつまんなかったんだよね!悟と一緒なら退屈しないわー!」
「フン…そうかよ。」
「…アンタ自分で言っておいて照れるってなんでそんな可愛い事すんの?喧嘩売ってる?」
「はァ?!」
「悟と友達になって良かったって言ってんの。ありがと!」
「…フン。」

私たちの会話を聞いていた運転手さんが小さく吹き出した。

「おい、笑うな。」
「…失礼しました。」
「あ、悟、今度うちで遊ぼうよ。一緒にゲームしない?」
「…いいけど、何あんの。」
「あー、なんだっけ。人生ゲーム。」
「それ2人でやって面白いか?」
「知らね。」
「…今度うちにも遊びに来いよ。」
「マジ?ね、悟の家ってどんくらいでかいの?東京ドーム何個分?」
「知らね。」

昨日は無言だった車の中で、今日の私たちはとても盛り上がった。車が私の家の前で停ると、運転手さんにお礼を言って車を降りる。ドアを閉める前に悟に手を振れば、今日はちゃんと振り返してくれた。

「また明日ねー。」
「…おう。」

バタン、ドアを閉めて私が家に入るまで、やっぱり車は動かなかった。お母さんが家にいる気配がする。そうと決まれば言うことはひとつ!

「ただいまー。」
「おかえりなさい、学校どうだった?」
「あ、今日倒れた!」
「…はい?」
「なんかトイレに呪霊いたっぽくて、自力で祓ったら呪力切れでぶっ倒れちゃったんだよね!あはは!」
「…理玖、怪我はなかった?どういう風に祓ったの?」
「え、なんか、あーしてこうして…って言いたい所なんだけど、私の術式って多分人に話せない縛りあるみたいなの。怪我もないよ!」
「よく、縛りなんて言葉を知ってるわね?」
「うん。色々悟った!あ、そんでね、悟が保健室まで運んでくれたから、お礼に今度家に招待してもいい?」
「悟って、昨日言ってた五条家の?」
「うん。悟と一緒にゲームしたいんだけど、お母さんお願ーい!買って〜?」
「…そうね、理玖のお友達だし、保健室まで運んでくれたなら…、いいわよ。なんのゲーム?」
「桃鉄!」

その日の内にお母さんとゲームを買いに行った。お父さんには帰って同じ話をしてめちゃくちゃ怒られた。

「1人で危ない事しないでよ理玖ー!お父さん泣いちゃうぞ!うう…っ!」
「もう泣いてるけど。」
「泣いてるわね、うふふ。」

その後両親と桃鉄をした。明日、悟に桃鉄買ったことを教えてやろう。あー、学校楽しみになってきた!

「おはよー!」

翌日、悟が宣言通り黒塗りの車に乗って家の前で待っていた。お父さんと一緒に家を出たからお父さんもギョッとしている。

「お父さん、こちらお友達の五条悟くんでーす。」
「…。」
「は、初めまして、1級術師の廻神織神です。娘がお世話になっております。」
「別に、」
「悟聞いてよ、昨日桃鉄買ってもらった!明日休みだしうちでやろう!」
「うん。」
「お、お待ちしております。」
「いやいやお父さん堅いな、じゃあ行ってきます!」

ガチガチに緊張していたお父さんを置いて車に乗り込むと、お父さんに手を振った。手を振り返しながらペコペコと頭を下げてるお父さんに笑いが出る。

「明日楽しみー!」
「…。」
「何、どしたの?緊張したの?」
「…別に、」

そう言いながらも少しだけ持ち上がった悟の口角に、私はこっそりと笑った。



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