理玖の手を引いて動物園を後にした。お土産コーナーで理玖の家にお菓子を買って、傑にも小さいお菓子の箱を買った。理玖と繋いだ手とは逆の手に荷物を持って、次はどこに行くかを話しながら遠くに感じた呪力の気配。それは俺たちにどんどん近づいてきた。
「悟、」
理玖も気づいたらしい。安心させるように握った手に力を込めた。理玖ごと無限を展開してるから、理玖も俺も攻撃されても痛くも痒くもない。理玖が俺を見上げている。
「俺が守るって言ったろ。」
「あはは、そうでした。」
「気にせず行こうぜ。」
理玖の手を引いて歩き出す。俺を狙っているのか理玖を狙っているのか、気配は一定の距離を保ってついてきた。喫茶店に入って向かい合って座る。その間もテーブルの上で理玖と手を繋いだ。
「悟、あの人ついてきてるよね?」
「ん。窓際の角の席。」
「…めんどくさいから私やるよ?」
「は?」
そういうと、理玖は立ち上がった。相手は女だった。窓際の角の席で俺たちの席を睨むように見ていたソイツに、理玖が歩み寄る。俺も席を立って理玖を追う。
...
動物園を出たあたりから何となく悟が私ごと無限を使ってる気がして、悟を見た。悟は私を守る、と言っていたけど、正直ずっと付きまとってくる視線が鬱陶しい。喫茶店に入ろうと誘って席に座ると、相手も少し離れた席に座った。セレクトしてみるか。
【???があなたと五条悟を尾行しています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:120)】
【1.殺す 2.気絶させる 3.正体を暴く 4.なにもしない】
ふむ、折角のデートだし、邪魔されるのも嫌だから退散してもらおっかな。そういえば正体を暴くって選択一回も使ったことないけど、使ったらどうなるんだろう。試してみるか。
「悟、あの人ついてきてるよね?」
「ん。窓際の角の席。」
「…めんどくさいから私やるよ?」
「は?」
そういって立ち上がる。私が近付いてきたことで相手は少し警戒したらしい。私を見上げて冷や汗を流した。3番。
【3.正体を暴くを選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:90)】
「な…なんですか…?」
【豊橋心海。呪術師。××神社の巫女。】
「初めまして、豊橋心海さん。」
「!…な、なんで、名前を…、」
【芻霊呪法:対象の毛髪、血液、体液、爪など体の一部から遠隔で呪うことが可能。形代を使用する。】
「へぇ〜、芻霊呪法使えるんだぁ、いいね。」
「!」
【五条家に縁談を持ち掛けるも、断られる。】
「なるほどね、悟との縁談を断られたから逆恨みってとこ?」
「っ、」
「理玖、なんでそんなことわかんの?つかコイツ誰だ?」
「私の術式でちょっとね。さて、豊橋心海さん。あなたに選択肢を与えます。選んでください。1.呪術界隈から身を引く。2.大人しく真っ当な呪術師を目指す。3.今、ここで、死ぬ。はい、選んで。」
私が10秒カウントを始めると、女は立ち上がった。お、帰るか?荷物を持って席を離れようとする女に、私は一つ溜息を吐く。悟が私の手を握った。
「…絶対に諦めないわ、」
私を睨んだ女に、私はにっこりと笑う。
「じゃ、私が選択してあげるよ。セレクト。」
「理玖?」
【豊橋心海があなたを呪おうとしています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:90)】
【1.天罰を与える 2.天罰を与える 3.天罰を与える】
ウケる、どれも天罰じゃん。1番。
【1.天罰を与える を選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:60)】
「あなた、神職やってんだから、神様怒らせちゃだめだよ。」
「ひっ…!?きゃぁああ!!!」
女は突然悲鳴を上げて走り去った。うん、何やったんだろうね?悟が私の手を引っ張ってを抱きしめた。ちょ、他のお客さんも見てるから…!
「ごめん、俺のせいで巻き込んだってことだろ。」
「別に、私がやりたくてやったんだから気にしないで?」
「…理玖、好き。」
「ふふ、私も悟のこと好きだよ!ていうか、縁談断って逆恨みされるなんて、天下の五条家も大変だね?」
「…俺も、俺の親も、理玖しか認めてねぇから。」
「マジか。」
やたらと悟をお勧めしてくるくらいだもんね。悟と席に戻ってデートを再開する。一緒にパフェをつついて、他愛もない話をしたり、経験した記憶の中の思い出話をした。あっという間に夜になって、うちの近所の公園のベンチに手を繋いで座った。
「今日は楽しかったよ、悟。」
「ん、俺も。」
「明日は傑とデートだけど、やきもち妬かないでね?」
「…うん。」
「えらいえらい。」
悟の頭を撫でてやると、その手を取られてキスをされる。ただのキスから悟の舌が侵入してきて深いキスになる。それに応えていると、悟の手が私の背中と脇腹を撫でた。カーディガン越しにくすぐったい感触。少し身をよじると、悟が唇を離す。私の目を見つめる碧眼の美しさに、私は釘付けになってしまった。
「理玖…好き…。」
「…うん、」
「俺、理玖のためなら何でもするし、理玖のこと守るし、絶対幸せにするから、」
「うん、」
「だから、絶対に俺のこと選んで。」
「…さとる、」
「…じゃないと俺、どうにかなりそう…。」
【五条悟の好感度が反転しました。今後は好感度の変動に注意してください。】
…は?
「理玖…好き…絶対俺のものにするから…理玖、理玖、」
「え、ちょ、悟…?」
私を苦しいくらいに抱きしめる悟。見えたハートは黒くなっていた。…おい、これってまさか…、メンがヘラったああ!?!?!?それともヤンがデレたぁぁあ!?!?
「俺の理玖…絶対誰にも渡さねぇし…傑にも、」
「さ、悟くん?落ち着こ?ね?私は私のものだぞ〜☆」
「…理玖は俺のだし。」
「あ、うん、そっか、」
やべぇええええ悟の目がイってる…!!!!ヤバい目してる、目が据わってる!!!ど、どうしよう、どうすればいい!?!?!?誰、誰か!!!説明書!!!誰か悟の取説持ってきてええ!!!!
「さ、悟くん?落ち着いてね?」
「…理玖…明日傑と二人でデートすんの…?」
「え、う、」
悟が私の首元に顔を埋めた。ひぇぇえええ何この可愛い生き物ぉおおお…、
「…行くなよ…、」
「…そ、そういうわけには…、」
「行くなっ!」
「えぇっ!?ぃったっ!!」
悟が私の首に嚙みついた。えええ!?!?噛みましたよこの人、噛みましたあああああ!!!噛まれたところがジクジク痛む。え、これ血出てない?!?絶対出てるよね!??!?めっちゃ痛かったもん!!!私の悟が首筋に吸い付いた。やっぱり血が出ていたのか、傷口周辺を舐められて小さく声が漏れる。
「ぃ、痛い…悟、」
「理玖…好き…、早く俺のものになって、」
「わ、わかったから、悟が私のこと大好きなのはわかったから!!」
胸板を押すとようやく離れた悟。ベンチのすぐ後ろで街灯が灯って、悟の顔がハッキリと見えた。血の付いた口元を舐めとった悟が、不敵に笑っていた。
「俺の理玖になって。そしたらぐちゃぐちゃに愛して、俺なしじゃ生きれなくしてやるから。」
「さ、悟…、」
「絶対俺、絶対、俺選んで。」
「そ、それには答えられないから!」
「…明日、傑とデート行くなよ。」
「…それは、約束したから行かないと…。」
「俺…何するかわかんないよ…?」
えぇぇええ…、ど、どうしろと…!?セ、セレクト!!
【五条悟との親密度は100%になっています。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:83)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】
ああああ、忘れてたこの選択肢…!でも、これ選べないって!!!と、とにかく、今は悟を何とかしないと…!!
「「!」」
突然私の携帯が着信を告げた。ポケットから取り出すと、お母さんからの着信だ。た、助かったあああ!!!!
「ご、ごめん、お母さんから電話きたから出るね!」
「ん。」
「もしもしお母さん遅くなってごめんね今から帰るから!!!」
『理玖…?どうしたのそんなに焦って。』
「え、あ、いやなんでもない!とにかく、今から帰る!」
『はいはい、気を付けて帰りなさい。もうご飯できてるから!』
「はーい!」
電話を終えると私は立ち上がる。不機嫌そうな悟が私を見上げていた。
「帰って来いって、言われたから…今日は帰るね…!」
「…送る。」
「あ、うん、ありがとう…。」