「ふぅ〜…、」
喫煙所。吸い込んだ煙を理玖にかからないように吐き出した。理玖はずっと私がタバコを吸う姿を見つめている。…そんなに見られるとちょっとハズいんですけど?
「硝子って煙草似合うよねぇ…。」
「そ?」
「うん、でもやっぱり体に悪そうだから、今度ココアシガレッツあげるね?」
「小学生かよ。」
「あれでタバコの真似するのが小学生の可愛いところじゃない?」
「そう?」
それよりもずっと気になっていたことがある。理玖と私から少し離れたところにこそこそとついてくる男二人だ。
「…ほっといていいの?」
「あぁ、あれね。来るなって言ってもついてくるんだもん。ほんと手に負えないわんこ達だよ。」
「あれでわんこ?とんだ狂犬じゃん、ウケるー。で、あいつら誰?」
「幼馴染だよ。小1からの付き合いなの。」
「へー。」
「白髪なのが悟、前髪たらーんが傑。」
「前髪たらーんはウケる。」
「硝子は普段どんな感じ?学校生活とか。」
「別に?普通だよー。」
「なんか変なの見えたりする?」
「…どういうの?」
「例えば、あ、あのおじさんの肩見て。」
理玖が指をさしたのは携帯で電話をしながらぺこぺこと頭を下げているおじさん。その肩に小さな羽虫のような何かが止まっている。
「ど?見えた?」
「…見えてるよ。理玖にも見えるんだー?」
「見えるし、祓えるの。見てて?セレクト…1番。」
「セレクト?」
理玖が指をさした。おじさんの肩に乗っていた羽虫みたいなものが「キュ、」と声を上げて潰れて消えた。私が理玖の顔を見れば、理玖はにっこりと笑う。
「硝子はどんなことができるの?」
「…別に、大したことできないよ。」
「私、もっと硝子の知りたいから、教えてほしいな?」
「…耳貸して。」
「なになに?」
「…怪我、治せるの。」
昔から怪我をした人に手を翳すと、不思議と傷が癒えることがあった。騒ぎになるから使わないようにしてきたこの力。理玖は反転術式ということを教えてくれた。それを人に使える人は珍しいらしい。喫煙所から喫茶店に場所を変えて、理玖の話を聞いた。理玖は高校生になったら呪術高等専門学校というところに通うということ。私にもそこに通ってほしいということ。
「硝子はきっと優秀な医者?術師?になると思う!」
「どっち?」
「…どちらかというと医者?あとは解剖とかそっち系に向いてると思う。」
「なんでそこまでして私をその高専?ってところに通わせたいの?」
「…そういう運命だから?あ、ちなみにさっきのわんこ2人も私みたいに不思議なことができるの。人それぞれ使える術式っていうのが違うんだけど、私たち4人は他と別格っていうか、特別っていうか?」
「…いいよー、別に。面白そうだから通ってあげる。」
「ほんと!?」
私の言葉に理玖が嬉しそうに笑う。なんか不思議な感じ。初めて会った時から勢い凄いなって思ってたけど、その勢いは別に嫌いじゃないし、むしろ気兼ねなく接しやすい。そんなに人と出会うのは久し振り…いや、もしかしたら初めてかも。自分の力を自覚してからは、人にバレちゃいけない気がしてずっと隠してきた。それなのに私に自分の力を見せた理玖に、私はなんだか今まで自分が隠してきたことが馬鹿らしくなった。私だけじゃないんだ、不思議なことができる人って。
「硝子が一緒なら絶対楽しい!」
「私も、理玖が一緒なら楽しいかも。」
「かも、じゃなくて絶対楽しいからね!?覚悟しておいてね!?」
「はいはい、わかった。」
「ふへへ、硝子すきぃ〜!」
「酔ってんの?」
「硝子に酔ってる。」
「はいはい。」
少し離れた席からずっとこちらを見てくる悟、傑、と呼ばれた理玖の番犬。私が二人を見ると、2人は私を見て顔を顰める。なるほどね、理玖のこと大好きってか。…面白そうだからからかってやろう。
「理玖、」
「ん?」
テーブルの上で理玖の手を取って、指を絡める。理玖が目を見開いて、でもすぐにふにゃりと笑った。
「ちょっとこっち来て。」
「え、なに?」
繋いだ手とは逆の手でこいこいと手招きをすれば、理玖が手を繋いだままゆっくりと立ち上がって私の隣に座る。あの2人からこちらが丸見えだから、反応が楽しみ。
「私も理玖に酔ってる。」
「へ?」
理玖の頬に手を添えてキスをすれば、理玖が顔を真っ赤に染めた。ウケる、反応可愛すぎ。ガタガタと向こうで音がしたのも構わずに理玖にもう一度キスをすれば、理玖の方から舌を入れてきた。…へぇ、やる気じゃん。私もそれに応えるように舌を絡める。他の客の視線とか、店員の視線とか、なんかどうでもいいや。今はただ理玖とのキスが心地よくて気持ちがいい。唇が離れると、理玖がはぁ、と色のある息を吐いた。
「ウケる、ガチじゃん。」
「硝子めっちゃ好き。私男だったら硝子と付き合うわ絶対。」
「私も男だったら理玖と付き合うかもね。その前にあの狂犬共どうするかが問題だけど。」
「私がハウス!っていえば、たぶん大丈夫。」
「何が大丈夫だよ。」
「人の気も知らないで本当に罪作りな女だね、理玖は。」
「…ヤバ。」
「ウケる。」
「笑い事じゃねぇよ。」
「すとーっぷ!私のために喧嘩しないで!」
「理玖のせいで喧嘩しそうなんだよ。」
「そりゃすまん。」
「プ…、」
「あ、硝子笑った!!」
「…笑ってない。」
廻神理玖、不思議な子。面白い友達。親友認定してやってもいい。あと結構好き。
...
【家入硝子との親密度が100%になりました。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:120)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】
お!?やっぱり女の子同士なのもあってか、硝子の好感度はすぐに100%になった。けどまさか硝子とちゅーできるとは思っていなかったぜ、ぐへへへへへ!悟と傑が私と硝子の席に乱入してきたけど、硝子は特に気にしていないらしい。
「こっちが五条悟、こっちが夏油傑だよ。2人とも、こちらは可憐なる家入硝子ちゃん!私の彼女。」
「付き合った覚えはないけど、理玖の彼女です。」
「付き合った覚えがないならそれは彼女じゃないよ。」
「理玖は俺のだし。」
「私のだよ、悟。」
「はいはい、理玖ちゃんは理玖ちゃんのですよ〜。」
「ウケる、皆して理玖のこと大好きすぎでしょ。」
「は?皆?」
「まさか、」
「好きじゃなかったらちゅーしないでしょ。ね、理玖。」
「ひゃぁあ…硝子しゅきぃ…!」
「ほら。」
どうやら私は誰にでも尻尾を振ってしまうようだ。まあそりゃ、皆大好きだからね!!!好きな人に尻尾振らないやつはいないよね!!
「でも誰とも付き合わねぇんだろ?」
「そりゃ勿論。術式に関わってるからね。」
「そうなの?」
「私さ、神の子って言われてんのね。」
「…中二病?」
「いや、マジのマジ。そのせいで人に自分の術式について詳しく語れないの。これがほんと厄介でさぁ…、できることも今のところ限られてるし。」
「ふーん?」
「あ、悟と傑にも言っておかなきゃ。硝子も高専に通うって!反転術式使えるんだよ、凄くない?!」
「マジ?」
「反転術式ってなんだい?」
「呪力操作で傷を治すんだよ。出来る人って滅多にいないみたい。呪霊を除いてね?」
「へぇ、それはすごいな。」
なんだかんだで悟と傑と硝子も少しずつ打ち解けた。3人もアドレスと番号を交換し合った。いいねいいね!どんどん皆が仲良くなって平和に過ごしたいねぇ!