出来ることからコツコツと


硝子とのデートはその後、結局4人で遊ぶことになってしまった。悟と傑が見たがっていた映画に誘われ、新宿に移動した私たち。4人で電車に乗って新宿に降り立つと、映画館に向かう。2人が見たがっていたのは「ミミズ人間」だった。…マジか。

「無理無理無理無理!!!きっしょいから!!!」
「私は平気。」
「俺も。」
「私も。」
「なんで!?ミミズだよ!?きしょいでしょ!?」

悟が右腕、傑が左腕、硝子が私の背中を押して、私はずるずると劇場に引き摺られていった。ミミズ人間…いや、見てみたいとは思っていたけど、やっぱきしょいわ。一人でひぃひぃ言いながら両手で顔を覆う。時折指の隙間からスクリーンを覗き見ながらなんとか耐えきった2時間半。いや、長すぎだから。映画館を出る私の顔はげっそりしていた。

「理玖のリアクションが映画より面白いってどうなの。」
「確かに。」
「ひぃひぃ言ってたな。」
「だから無理って言ったじゃん!酷い、皆して苛める!!」

私の言葉に3人が楽しそうに笑う。いいね、高専に通い始めたらこの4人でずっとこんな風にバカやりたい。

「あ、そろそろ帰るわ。」
「え!?硝子もう帰っちゃうの!?」
「うん。理玖、また遊ぼー。」
「硝子おおお!」

ひらひらと手を振って硝子は去って行った。風と共に去りぬ硝子…。そして取り残された私たち3人。

「…不思議な子だね。」
「そうでしょ?サバサバしてて好きなの。」
「ふーん?」

私たちも帰ることに。電車に乗って最寄り駅まで行くと、2人は私を家まで送ってくれた。その日の夜、私は布団の中で何となくセレクトしてみた。

【選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:120)】
【1.好感度反転について 2.領域展開について 3.セレクト使用について 4.なにもしない】

…これはまた悩む選択肢きたぁぁああ…。待ってね、好感度反転についてってあれだよね、悟とか傑とかのハートが黒とかグレーとかになってる事についてってことだよね…。領域展開についてってなんだろ…。領域展開使ったときにちょっと説明出てたよね?それ以外にも何かあるってこと?え、マジ?んー…セレクト使用についてはなんだ…。一番予想がつかんぞ。な、や、む…。んむぅ…。悩んだ時は1番!!!

【1.好感度反転について を選択しました。呪力を40消費しました。(残り呪力:80)】

さて、何と出るかな…。

【好感度が反転すると、相手のあなたに対する態度が変化します。好感度の反転は3段階あります。】
【通常時:赤色 あなたとの関係性は良好です。】
【反転1:青色 嫉妬度★☆☆☆☆ 難易度★☆☆☆☆】
【反転2:灰色 嫉妬度★★★☆☆ 難易度★★★☆☆】
【反転3:黒色 嫉妬度★★★★★ 難易度★★★★★】

………( ^ω^)?

【好感度イベントは相手を選択するまで続きます。】
【好感度反転中の相手を選択すると、好感度の反転は終了します。】
【選択した相手を変更する場合は、選択していた相手の好感度が反転3になるので注意しましょう。】

え、ちょっと待って、好感度イベントって相手を選択したら終わるってどういうこと!?イベントとして会えないってこと!?それとも本当に会えないの!?え!?困りますぅう!!困りますううう!

【また、好感度イベント中に領域展開を挟んだ場合は、領域展開終了時点でイベントが無効になる可能性があるので注意しましょう。】

…ということは…夜蛾さんとのイベントはやっぱり無効になってるってこと?!また出会い直さないとダメってこと!?マジで?!?!クッソマジか…!いや待てよ、夜蛾さんとのパイプはお父さんを通じればいつでも…、あれ、悟と傑も連絡先知ってたりすんのかな?あ、いやでもあの2人いたら好感度イベント集中できないよなぁ…。やっぱお父さんに頼むか?

「…悩む前に行動だな。」

もぞもぞと起き上がった私は携帯を操作する。お父さんは任務で家を空けることが多いし、今日も出張だ。お父さんに電話を掛けると、3コールで繋がった。

「もしもしお父さん、今大丈夫?」
『理玖、こんな時間にどうした?』
「高専にさ、夜蛾さんっているよね?」
『ああ、いるよ。父さんの先輩だ。』
「会いたいんだけど、紹介してくれない?」
『いいけど…会ってどうするのか聞いていいかな?』
「…神の思し召しってやつ。」
『…分かった、父さんから話しておくよ。』

電話を終えると今度こそ目を閉じた。翌日の日曜日、私は一人タクシーで高専に向かった。タクシー代はかなり掛かった。お小遣い結構使った。高専について敷地内を歩く。領域展開前に歩いた道程だ。応接室について扉をノックする。中から聞こえた低く渋い声。…間違いない。

【好感度イベント発生!選択してください。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:120)】
【1.イベントを選択する 2.イベントを無視する 3.なにもしない】

勿論1番!

【1.イベントを選択する を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:120)】

扉を開けると、若かりしガッテム系ダンディマンこと夜蛾さんがいた。

「夜蛾正道だ。織神から話は聞いている。座ってくれ。」
「失礼します。初めまして、廻神理玖です。」
「もう体は平気か。」
「はい、お陰様で。その節はご迷惑をお掛けしました。」
「迷惑という迷惑は掛かっちゃいないが、あまり両親に心配をかけるなよ。」
「はい。」
「…それで、本題はなんだ。」
「私と、五条悟、夏油傑を特別一級術師に任命してくださったと聞いたので、その事で。」
「ああ、上からの許可も得て、実力からそう判断した。」
「ありがとうございます。…実は、お願いがあるのですが…。」
「言ってみろ。」
「今後、神仏に関わりがある、もしくは関りがあるかもしれない案件は、すべて私に回していただけないでしょうか?」
「…何故だ。」
「神様仏様は、私の味方だからです。…あ、何言ってんだコイツって思うかもしれませんが、これは神の子としてのお願いです。」
「いや、すまん。そんな事を思ったつもりはないが、何か理由があるなら聞かせてもらえるか。」
「詳しい理由は言えません。唯一言えることは、私の術式に関わりがある、ということだけです。」

私がそう言うと、夜蛾さんは顎髭を撫でながらうむ、と頭を悩ませていた。

「些細な案件でも構いません。例えば、付喪神、土地神、祟り神、何でも御座れです。上層部の判断が必要でしたら、直談判いたします。」
「いや、そこまでする必要はない。君の特別一級術師としての許可が下りた時点で、ある程度の任務許可は下りている。神仏関係は特に慎重に行わなければならないからな、君が神の子である時点で任務が振られることは間違いないだろう。…俺から一つ、聞いておきたいことがある。」
「はい、何でしょうか?」
「…どうして、呪術師になりたい。」
「私がこの世に生まれた理由は、先日殺した呪詛師…いや、呪霊を祓うためです。」
「どう言うことだ…。」
「私はあの呪霊を祓うために生まれました。そしてその任を成し遂げた。あとはただ、少しでも多くの人が呪いに苦しまずに平和に過ごせるように、大事な家族が、友達が、生まれてきてよかったと、幸せだと思える世界にするために、呪術師になります。」
「…聞いていた通りだな、合格だ。」

…うん、誰に何を聞いていたんだろう?けど夜蛾さんの好感度一気に50%になった!やったぜ…!あとはそうだな、夜蛾さん関連はやっぱりパンダかな?

「それと予言を一ついいですか?」
「なんだ?」
「パンダが生まれます。」
「…パンダ?」
「はい、パンダです!私はその子に早く会いたいので、早く作ってくださいね、夜蛾センセ?」
「ま、待て、そのパンダは呪骸のことを言っているのか?」
「勿論、あなたの大事な子供です。あ、私の予言については誰にも言わないでくださいね?バレるとめんどくさそうなので☆」

バチコーン☆と理玖ちゃんウインクをして、席を立つ。パンダに関してはヒントを言わずとも作れるだろう。応接室を出ようとして、私はふと思い出した。

「夜蛾さん、最後に確認しないといけないことが…。」
「な、何だ?」
「羂索…いえ、私が払った呪霊の器だった人物は、今どこへ?」



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