そうだ、京都行こう!


翌日、息苦しさに目を覚ました私。それもその筈、ベッドで寝ていたはずの私はなぜかパパ黒の腕枕で寝ていた。え、なにこの幸せ。そう思って首だけ動かせば、反対側には傑が私の体にしがみ付いている。そして私のお腹の上には悟が乗っていた。…え、どうしてそうなった?

「…ぐるじぃ…、」
「…んぁ、起きたか…。」
「…おはようございます甚爾様。どうして私はこんなところに…?」
「俺が抱き枕にした。」
「えぇ何その幸せぇ…なんで私暢気に寝てるのぉ…、」
「…理玖…?」
「あ、傑おはよう。」
「…悟は何をやってるんだい。」
「起きたらこうなってた。自然になるわけないからわざとでしょ。」
「んん…、」
「あ、悟おはよう。」
「…おう、」
「はい、みんな離れてー、私動けないから。」
「「「あと5分。」」」
「ぐええぇ…、」

三者三葉私の体に回した腕に力を込めるので、私は苦しさに声を漏らした。くすくすと笑い声が聞こえる。お母さんの声だ。首だけでドアの方を見れば、案の定お母さんが私達を見て笑っていた。

「いや、笑ってないで助けてよお母さん。」
「はいはい、皆起きて。朝ご飯できてるわよ。で、誰が本命なの?」
「俺!」「私。」「俺だろ。」
「「オマエ既婚者だろ!」」
「あらあら、うふふ、」
「いや本命とかないから!皆等しく平等に愛してるから!!」
「俺のことは遊びだったのねっ!?」
「悟くーん?」
「私のこともあんなに弄んで…!」
「傑くーん?」
「あー俺も俺も。」
「甚爾様に至っては適当すぎです。」

ワイワイと騒ぎながら階段を降りる。洗面所で順番に顔を洗ってリビングに行く。

「お父さんは?」
「もう出かけたわよ。」
「はっや。」
「皆ご飯は足りそうかしら?」
「うん。」「はい。」「ああ。」
「いいわね、男の子がいるのも。皆いつでも遊びに来て頂戴ね。」

ご飯を食べ終えて学校へ行く支度をしていると、パパ黒が私を抱きしめた。悟と傑がぎゃいぎゃい騒いでいる。え、急になに!?

「甚爾様?」
「…迷惑かけたな。」
「あ、いえ、私は平気です。それより、禪院家が今後どう変わるか、一緒に見ててくださいね?」
「ああ。…じゃあな、先に行くぜ。」

そう言って私にちゅっとキスをして立ち去るパパ黒。えぇぇしゅきぃぃいい…。

「何アイツ、俺らの理玖に気安く触ってんじゃねぇよ。」
「理玖、ほら消毒するよ。」
「うわっぷ、ちょっと!?」

悟と傑が私に引っ付く。

「こらこら、学校行かないと怒られるから!」
「んだよ、アイツには触らせやがって!」
「不可抗力!!!」

家を出て3人で手を繋いで学校へ向かう。今日こそ平和な一日が過ごせますように…!

「…で、結局こうなるのね。」

私の靴箱には何故か花束が入っていた。萌部谷の呼び出しの次は花束?花束を手に取ってみる。特に何もない普通の花束だ。悟と傑が私の持っている花束を見て顔を顰めた。

「またかよ。」
「懲りないやつがいたもんだ。」
「花束って。手紙ひとつなしで唐突すぎじゃない?誰からかもわかんないし、」
「捨てとけ。」
「え、それはさすがに花が可愛そう。」

花束を手に教室に向かう。教室なら花瓶の一つくらいあった気がする。教室の後ろに飾られた花瓶に花束を解いてさしていく。私が花束を持ってきたことにクラス中の視線が集まったけど、悟と傑が威嚇していたので気にしなかった。いつも通り授業を聞き流しながら、昨日のこともあり睡眠不足でうとうとした授業。両サイドからシャッター音が聞こえるのはこの際無視だ無視。昼休みになって、知らないクラスの女子が悟を呼び出した。悟はめんどくさがって動かない。私と傑はニヤニヤしながらその様子を見つめる。悟がめんどくささを十二分に発揮する欠伸をかましていた。

「ここじゃ話せないわけ?」
「…え、でも…恥ずかしいし、」
「じゃあ無理。俺理玖の傍から一歩も離れたくねぇし。」
「……廻神さんのどこが好きなの?」

え、本人を前にそれを聞く?私が傑を見ると、傑も私と同じ顔をして私を見ていた。悟が私を振り返って、顎に手を添える。え、おい、まさか、

「理玖の全部。」

そう言って悟は人目も憚らずに噛みつくようなキスをしてきた。傑も便乗して私の耳にキスをする。え、ちょ、公開プレイ!?やめて!?さすがにハズいんですけど!?視線だけで例の女子を見れば、顔を真っ赤にして涙を流していた。あぁああほら、また私恨まれるじゃん!!!!ぺしぺしと悟の胸と傑の腕を叩くと、ようやく離れた2人。クラス中の視線が私達に集まっている。

「何この公開処刑。」
「理玖は俺達のだし、」
「私達は理玖のだってアピール。」
「ああ、うん、もうどうにでもなれ。」
「つーわけだから、理玖以外の女に興味ねぇし、話かけんなブス。」
「ブスは酷いだろう悟、例えブスと思っても口に出すのは失礼だ。」
「2人とも煽るのやめなさい。あと女の子に向かってそれは失礼でしょう!?次そんなこと言ったらひっぱたく。」
「「はーい。」」
「返事だけはいいんだから、まったく…。えっと、何さん?」
「…山田…、」
「山田さん、この2人のことは例えどんなに好きでも、諦めてくれる?理由を述べるとするならこの2人はクズだから。いい?見た目だけに騙されないで、この2人は性格クソ悪いから。私の為に言ってる訳じゃないからね?山田さんの為に言ってるから。それと山田さん可愛いから、ちゃんといい人見つかるよ。だから見た目だけじゃなくて心で判断してあげてね?」

山田は私の言葉に頷いて教室を出て行った。いやぁ、ホントめんどくせぇな?悟と傑が私の体にぎゅむぎゅむと抱き着いてくるので、私はまた一つ溜息を吐いた。平和とは何ぞ。

「ちょっとトイレ行きたいから離れて。」
「ついてく。」
「お供するよ。」
「やめてよハズい。」

2人の腕から抜け出して女子トイレに向かっていると、一人の若い男とすれ違った。見覚えのない男にふと足を止める。振り向こうとしてハッとした時には男の拳が私の顔に当たっていた。何とか身を逸らして掠めるだけに留めたけれど、唇は切れてしまった。血の味が口の中に広がる。

「…よくも私のご尊顔を…!」
「…廻神理玖…、悪いが抵抗せずついて来てもらおう。」
「アンタ誰。」
「…。」
「だんまりって訳。いいわ、神様に聞く。」

セレクト。

【???があなたを狙っています。選択してください。選択すると呪力を20消費します。(残り呪力:120)】
【1.正体を暴く 2.気絶させる 3.殺す 4.なにもしない】

1番。男が印を組んだ。何を?

【1.正体を暴く を選択しました。呪力を20消費しました。(残り呪力:100)】

「『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』」
「なっ、」

男は学校の中で帳を張った。帳は私と男の周辺、半径10mと言ったところか。

【二階堂君彦。呪術師。加茂家分家。】

「二階堂君彦さんね、」
「!」
「で、加茂家分家のあなたがどうして帳まで張ったのか、教えてもらおうかな。」

悟と傑の気配が近付いてくる。帳の気配と私たちの呪力を察知したんだろう。

【封印術:術者の血が付着した物・人を対象に動きを封じる。赤血操術の派生。】

「なるほどね、あなたの封印術便利そうじゃん。」
「…何故分かった。」
「だから、神様に聞いてるんだっての。話聞いてた?」
「…廻神理玖、貴様を加茂家に連れ帰る。」
「はいはいどうぞいいですよ、なんていうわけないでしょ。」

十手を取りだして構える。

【加茂家の当主争い中。廻神理玖を連れ帰った者を次代当主とする条件。】

「はぁ!?私で当主の座を争うってバカなの?」
「…頼む、大人しくついて来てくれ。」
「あなたが当主になって、加茂家をどうしたいかによりますね。」
「…今の加茂家は地獄だ。愛する者と結ばれることも叶わん。そんな馬鹿みたいな地獄を変えたい。」
「ふぅん…。」

なんだ、ちょっとはまともな頭の奴いるんじゃん。…あれ、ちょっと待てよ。加茂家と言えば…、

「加茂憲紀はいますか?」
「…現当主の側妻の子だ。」
「…ちなみに、あなたが愛した人は?」
「…その側妻だ。」
「なるほど、分かりました。いいですよ、加茂家に行きましょう。」
「…いいのか。」
「私、加茂家にどうしても用があるんです。加茂憲紀、彼に会わないといけません。」
「…感謝する。」

二階堂が帳を上げた。悟と傑は帳の中に入れなかったらしい。私を見つけると2人が構える。

「2人ともストップ!」
「理玖、ケガは!?」
「大丈夫!」
「この男は何者だい。」
「加茂家分家の人。ちょっと聞かれたくない話だったから帳降ろしてもらったの。」
「禪院の次は加茂かよ。」
「人気者はつらいね。」
「私今から京都に行くわ。」
「「は?」」
「一体何のために?」
「加茂家に神の鉄槌を。」
「意味わかんねぇ。」
「2人もついてく?」
「「行く。」」

かくして私達は、再び京都に向かったのである。



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