私が目を覚ますと部屋には誰もいなかった。さっきの天井だ…。どこだここ。起き上がろうとして腰に激痛が走った。いや、マジでアイツらヤりたい放題ヤりすぎでしょ!痛みに耐えながらゆっくりと体を起こそうとすると、ドロリと中から流れ出る感覚。なんてこった…アイツら現実でも生でしやがった…!!!
「うぅ…お腹痛いし腰痛いし喉からからだし気持ち悪いぃ…、なんで誰もいないのぉ…、」
クソ…こうなったらセレクトするしかねぇ。セレクト!
【あなたは負傷しています。選択してください。選択すると呪力を50消費します。(残り呪力:160)】
【1.反転術式を使う 2.なにもしない】
マジ?私反転術式使えるんだ!?ラッキー!1番!!
【1.反転術式を使う を選択しました。呪力を50消費しました。(残り呪力:110)】
ふぃ〜…体の痛みが取れていくぅ〜…。腰の痛みがなくなると漸く立ち上がることができた。部屋の中を探索して着る物を探す。クローゼットを開けてみた。引き出しには下着や靴下などの小物類、ハンガーラックには私の私服と…、
「これ、制服…?」
高専の制服と思われるものが掛かっていた。記憶を確認してみれば、どうやら昨日入学したばかりだったらしい。そしてこの部屋は高専の女子寮にある私の部屋らしい。下着と制服を手に浴室を探す。ていうか入学して早々ベッドがいろんなものでぐっしょぐしょってどういうことだよマジで。洗濯機を見つけて、とりあえずシーツを突っ込んだ。洗剤と柔軟剤も見つけてシーツを洗濯する。その間にシャワーを浴びた。とりあえず中に出されたものは一人で可能な限り掻きだした。マジで妊娠したらどうすんだよ、マジで…!!!
「…ピル貰いに行こ。絶対間に合ってないと思うけど…。」
はぁ…、と大きくため息。シャワーを終えて髪を乾かすと洗濯が終わったらしい。制服を着てシーツをベランダに干すと、携帯を探して部屋を出た。とりあえず硝子に会いたい。携帯を操作して硝子に電話を掛ける。
『もしもーし。』
「あ、硝子、今どこ?!」
『教室だよー、理玖以外皆いるけど。』
「は!?マジで!?ちょ、迎えに来てくれない!?迷子なの!!」
『マジー?夜蛾センセー、理玖迷子だって。』
『まったく…何をやってるんだアイツは。すまんが硝子、理玖を迎えに行ってやってくれ。』
『はーい。』
『センセー、俺も行くー。』
『私も。』
『おまえたちはダメだ。』
『『チッ。』』
『て訳だから、今どこ?』
「女子寮!私の部屋の前!」
『りょーかい。一旦切るね。』
「ごめんね、ありがとう!」
自分の部屋の前で硝子を待った。それにしても、高専の制服いいな。野薔薇ちゃんタイプの制服で、プリーツスカートの丈はミニだ。それにニーソとガーターベルト。スカートにベルトを付けて、十手を引っ掛けている。うっひゃあ!せくすぃー!絶対領域展開!!なんつって!!!ひとり制服を眺めてニヤニヤしていると、硝子が携帯を弄りながら歩いてくるのが見えて駆け寄った。
「しょーこおおお!」
「あ、理玖おはよー。」
「うわああん、寂しかったぁああ!」
「うわ、マジ泣きじゃん。」
硝子に抱き着くと、硝子は笑いながら私を抱きしめ返してくれた。硝子と腕を組んで歩き出す。
「聞いてよ硝子、起きたら誰もいないんだよ!?起きる前は悟も傑も甚爾様もいたのに!!!」
「甚爾様?誰それ。」
「私のお師匠様。呪具使う戦い方を教わった人なの。」
「へー。ていうか、部屋隣だから声かければよかったね、ごめん。」
「え、隣!?やったー!」
「けど理玖、アンタマジで大丈夫?すっごい声漏れてたけど。3人いたってことは4Pでもした?」
「…………聞いて硝子。アイツらマジであり得ないんだけど。」
「ウケる、やっぱりか。」
「ゴムしない男ってどうよ。」
「あークズだわ。ちゃんと掻き出した?」
「できる限りね。ゴムを大量に買い置きするか、ピル飲むか、どっちがいいと思う?」
「懲りてねー。」
「正直ヤバかった。クセになりそう。」
「やめろ、聞きたくないわ。」
ガールズトークをしながら教室に着くと、扉を開けた。サングラス姿の悟と傑、夜蛾さんと目が合って、私はにっこり笑った。
「お疲れサマンサー!」
「…遅いっ!!」
「ごめんなさぁい!」
ニヤニヤ笑う悟と傑の背中を叩く。悟は無限で防がれた。くそっ!硝子が座ったので空いてる席が私の席なんだろう。悟と傑の間に座る。溜め息を吐いた夜蛾さん。
「今からオマエ達に実習という名の任務に行ってもらう。実力は以前から知ってはいるが、まだ入学したてだからな。今日は任務に向かう際の流れを知ってもらう為に4人で行ってもらう。」
任務概要の書かれたプリントを受け取って4人で回し読みした。早くタブレットとかスマホとかの時代になんないかなー。手書きの報告書とか怠かったもんなぁ。教室を出て4人で駐車場に向かった。悟と傑が私の後ろに来た。足の長い2人が私の後ろを歩くなんて…絶対なんか企んでる。
「ぷくく、」
「くすくす、」
「うぇーい!」
「きゃっ!?」
予想通り、悟が私のスカートを捲った。
「ちょっと!!」
「うわ、理玖めっちゃエロいの穿いてんじゃん。」
「いいね、お尻舐めてもいいかい?」
「そういうの私がいないとこでやってくれー。」
「硝子も混ざる?」
「ヤダよめんどくさい。」
「待って、ナチュラルにお尻舐める発言の傑は何なの?」
「?」
「なにその、私変なこと言った?みたいな顔!!」
わいわいと騒ぎながら駐車場に着くと、補助監督らしき黒スーツの男が駆け寄ってきた。
「1年生の皆さんですね?今回担当します、補助監督の荒井です。早速向かいますので、車に乗ってください。」
「よろしくお願いします!」
「しゃーす。」
「お願いします。」
「まーす。」
「1人助手席になってしまいますが、好きに席順を決めてもらって大丈夫ですので。」
「じゃんけんする?」
「いいね。」
「じゃーいくよ、最初はグー、じゃんけんポン!」
助手席は硝子になった。私は悟と傑に挟まれて座る。車が動き出して、荒井さんが改めて任務の内容を話してくれた。場所は心霊スポットになっている廃病院。2級相当が2体、3級相当が5体確認されているらしい。そして肝試しに言った3人の若者が行方不明。呪霊の祓除と3人の回収が目的。説明を受けている最中、両隣から私の太ももに伸びてきた手。ぺちん、と叩き落とす。
「?どうかしましたか?」
「いえ、ちょっと虫がいたみたいです〜。」
「え、いつの間に、すみません…!」
荒井さんは何も悪くないのに…!キッと2人を睨みつけると、2人にてへっ☆って顔で返された。いや可愛いけど、可愛いけどね!?今から任務だよ!?もっと集中していこうよ!?そうこうしている内に廃病院に着いた。硝子は車に残って私と悟と傑の3人で廃病院に向かう。荒井さんが帳を降ろすと、私は十手を取りだした。
「ねえ、さっきの何。」
「あ?何が?」
「車の中で太もも撫でてきたやつ!ていうかさっきも何で誰もいなかったわけ!?」
「理玖が起きなかったからね、仕方なくそのまま寝かせておいたんだ。」
「いやいや、誰のせいだと!?甚爾様もいつの間に高専来てたの!?いつ帰ったの!?」
「知らね。傑、欲しいヤツいる?」
「2級が使えそうなヤツならね。」
廃病院の中に入ると、さっそく3級呪霊が2体飛び掛かってきた。悟が2体を祓った。3階建ての建物を分かれて探索することになった。私が1階、傑が2階、悟が3階だ。階段の前で別れて1階を探索する。特に強い気配は感じない。病院の奥に進むと手術室を見つけた。そして濃い呪力の気配。2級がいるらしい。傑に電話しておくか。
「傑、2級見つけた。1階東棟奥の手術室。」
『ありがとう。こっちには3級しかいなかったから、すぐに向かうよ。』
「じゃあ待ってるね。」
携帯をポケットに締まって、クルクルと十手を回す。肝試しした若者の姿は見当たらないから、たぶん上の階だろう。少しして傑が来ると、2人で手術室の扉をこじ開けた。中には体中にツギハギのある呪霊がいた。一瞬真人を連想させたソレは、複数の肌の色が縫い合わされ、蜘蛛のように人の手足を生やしていた。
「ヒェッ、きっしょ!!!」
「うーん、いらないかな。」
「じゃあさっさと祓っちゃおう!!」
「理玖やるかい?」
「きしょいけど働かないとだから、頑張る。」
「偉いね。」
ツギハギの蜘蛛呪霊は動きはそこまで早くないらしい。縫い目の間からジュクジュクと黒い血のようなものが滲み出ている。呪霊が伸ばした手を十手で受け止めると、シュゥウという音と共に白い湯気のようなものが上がった。へぇー、呪霊相手だとこうなるんだ!呪力を吸収してるからか、呪霊からしたら体を溶かされてる感じらしい。触れた部分が抉れるように無くなって、呪霊は劈くような悲鳴を上げた。煩いからさっさと終わらせよう。タン、と地を蹴って、逆手に持った十手を呪霊の頭に突き刺した。呪霊の悲鳴が途切れて、体全体から湯気のように蒸発する呪霊。血振りをして振り返ると、傑がにっこりと笑った。
「お疲れ。」
「へへっ、」
パチン、ハイタッチをして手術室を後にした。さて、悟のいる3階に行くとするか!