おててのしわとしわを合わせて


3階に向かうに当たって階段を上るんだけど、傑はなぜか私の隣ではなく後ろを着いてくる。振り返れば携帯を操作している傑。

「どしたの?」
「いや、何でもないよ。行こうか。」
「…怪しい。」
「ははは、」

誤魔化すように笑った傑。まあいいや、と階段を上がっていると、ピロリン、と音がした。もしや…、

「ねぇ、今写真撮った!?」
「ふふ、可愛いお尻が見えたからつい。」
「大丈夫?ちょっと性癖ヤバくなってきた!?」
「まさか、正常だよ。」
「嘘だろ承〇郎。」
「承太〇?」
「なんでもない。いいから早く行くよ!」
「待って、その角度もいい。」
「やめろ変態。」
「心外だな、変態という名の紳士と言ったのは理玖だろう?」
「紳士は盗撮しません!」
「悟にも送ってあげるか。」
「おいやめろ。」

3階に着くと、悟の気配を辿って西棟に向かう。

「悟ー、」
「ん?」
「おや、もう終わったかい?」
「とっくに終わってるけど、」
「行方不明者見つかった?」
「いや、いねぇから食われたんじゃね?」
「2階にもいなかったね。」
「1階も。困ったね、どうしよっか。」
「呪霊は祓ったから戻ろうぜ。」
「んー、いいのかな?」

戻る前に念の為にセレクトしてみるか?行方不明者が本当に呪霊に食われてたとしたら、家族にはなんと連絡がいくんだろう。セレクト。

【行方不明者が取り残されています。選択してください。選択すると呪力を30消費します。(残り呪力:136)】
【1.探す 2.呼び出す 3.なにもしない】

マジ?何処に取り残されてんの!?1番!

「待って、行方不明者の場所が分かりそう。」
「マジ?」

【1.探す を選択しました。呪力を30消費しました。(残り呪力:106)】

私の足が勝手に歩き始める。3階の非常口に着き、ドアノブを回す。ギギギ…と 錆びついた音がして、ゆっくりとドアを開けると、血塗れの3人の若い男女が倒れていた。

「…もう死んでるみたいだね。」
「うん…。助けられなくてごめんなさい。」
「…。」

私が3人に手を合わせると、傑も手を合わせた。悟はガシガシと頭を掻いて、小さくため息を漏らす。

「自業自得だろ。」
「悟、そういう言い方はよくない。」
「たとえ自業自得でも、人の死は皆平等に訪れることだよ。悲しむ家族や恋人、友達がいる。たとえ赤の他人でも、弔う気持ちが大事なの。ほら、悟も手を合わせて。」
「…分かったよ。」

悟が手を合わせる。相変わらず正論が嫌いらしい。ちょっと不服そうな顔をする悟に、私は手を伸ばして背伸びをして頭を撫でてあげた。

「…何、理玖。」
「えらいえらい。悟も一歩成長したね!」
「はぁ?」
「私はさ、悟も傑も硝子も夜蛾さんも甚爾様も、家族も、私に関わる全ての人が幸せになって欲しいと願ってるの。だから2人とも、私より先に死なないでね?死ぬときは皆老衰で死んでほしい。いい人生だったなって、皺くちゃなおじいちゃんおばあちゃんになって死んでほしい。」
「…俺達がすぐ死ぬと思ってんの?」
「思ってないよ。けど呪術師はいつも死と隣り合わせだから。ね、約束して、私より先に死なないで。」
「私は理玖が先に死なれる方が辛いかな。理玖のいない人生は到底想像できないくらいだよ。」
「俺も。…置いていくなよ。」
「じゃあ誰が一番長生きできるか勝負する?」
「いいね。」
「ハッ、ぜってぇ負けねぇ。」

廃病院を出て車に戻ると、行方不明者の位置を荒井さんに伝えた。高専に戻ると教室で報告書を書いていく。それぞれが担当した階層で祓った呪霊の数や、行方不明者の発見状況などを記していく。

「夜蛾先生に提出すればいいんだよね?教員室かな?」
「多分ね。」
「1人で行くなよ、迷子になるぞ。」
「え、それは困る。誰か一緒についてきて。」
「俺行く。」「私が行くよ。」
「言うと思った。どうせなら皆で校内探検しない?」
「いーよー。私も行きたかったし。」
「じゃ、レッツラゴー!」

4人で教員室に向かう。夜蛾先生に報告書を提出すると、そのまま高専内を歩き回った。いや広いな相変わらず。途中で自販機を見つけて飲み物を買って飲んだ。ここって…離反前の夏油が九十九由基と会ったとこじゃん…!ふぅっ!!テンション上がる!!ジュースを飲みながら駄弁っていると、ピコンと音がした。

【好感度イベント発生!選択してください。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:140)】
【1.イベントを選択する 2.イベントを無視する 3.なにもしない】

まじ!?だれだれ!?1番!!!

【1.イベントを選択する を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:140)】

「はぁ〜疲れたぁ〜…。」

そう言ってやってきたのは…、う、歌姫姉さんじゃねぇっすか!!!

「あら、アンタ達見ない顔ね。もしかして1年生?」
「はいっ!初めまして、廻神理玖です!」
「家入硝子です。」
「五条悟。」
「夏油傑です。」
「私は4年の庵歌姫よ。よろしくね!」
「歌姫先輩って呼んでいいですか!?それともパイセン!?」
「なんでもいいわよー。私も名前で呼んでいいかしら?」
「是非っ!!」

やったー!と飛び跳ねる私。他の皆との温度差など気にしない!!!早速歌姫と電話番号とメアドを交換する私と硝子に、悟は面白くなさそうな顔をしている。傑に至っては携帯弄ってるし。2人にも歌姫と連絡先を交換するように言うと、渋々といった顔で交換していた。おい、歌姫姉さんに失礼な態度取ってんじゃないよ!!と思ったけど言わないでおいた。

「この2人はいつもこんな感じなので気にしないでください!」
「そ?それにしても女子が2人も入ってくれて嬉しいわ!今度女子会しない?買い物とか!」
「したいです!!」

「理玖のコミュ力ってどうなってんの?」
「知らね。」
「毎度驚かされるよ。」

暫く歌姫と話して好感度は上々、あっと言う間に40%だ!この後任務だという歌姫と別れて探索を再開した。食堂や寮の共有スペースや共有キッチン、お風呂などなど、色々充実しているらしい。皆とご飯食べれるの良いねぇ!!

「勝手に使っていいのかな?」
「いいんじゃね?」
「特に決まりも聞いていないよ。」
「じゃあ今日は理玖ちゃんが皆に手料理を振舞いましょう!」
「マジ?食えるの?」
「食えるわ!失礼な!!」
「それは楽しみだね。」
「何作ってくれるの?」
「皆何が食べたい?」
「「「肉。」」」
「お、揃ったね。じゃあ無難にから揚げとか?」
「いいね。」
「楽しみー。」
「材料買いに行くだろ。」
「行く行く!外出許可とかいるのかなぁ?」
「いらないんじゃね?」

それじゃあ今から行こう、という話になり、財布を取りに寮の部屋に戻った。ついでにシーツが乾いていたので取り込んで部屋を出る。硝子と一緒に集合場所になってる寮の入り口に向かうと、悟と傑はもう来ていた。4人で歩いて近くのスーパーを目指す。共有キッチンに調味料があったのは確認済みだ。必要な材料と、それぞれが持ち寄ったお菓子や飲み物などをカゴに入れてレジに並ぶ。私と硝子が袋詰めをして、悟と傑が袋を持ってくれた。高専に戻って共有キッチンに辿り着くと、早速調理に取り掛かった。ご飯を炊いてお肉に下味を漬けている間に汁物とサラダと小鉢、そしてメインの唐揚げを揚げる。私の手際の良さを見て悟と傑が感心していた。フッ、前世分も生きてるからね、料理なんざ余裕のよっちゃんよ。盛り付けたお皿を4人掛けのテーブルに並べると、3人がおぉ、と拍手をした。

「理玖ちゃん特製から揚げ定食!おあがりよ!」
「理玖俺と結婚して。」
「理玖、私に毎朝味噌汁を作ってくれないか。」
「ウケる。」
「いいから温かい内に食べて!」

手を合わせていただきますをして食べ始めた3人を見ながら、私も箸を掴んだ。うまいうまいとがっつく男2人に笑いながら、私もから揚げに嚙り付く。硝子は味噌汁を啜って、ほぅと息を吐いていた。ふと人の声と足音が近付いてきた。先輩だろうか。ちらりとそちらを見れば、派手な男女2人が腕を組んで共有スペースに入ってきた。うわぁ…高専にもDQNっているんだぁ…。

「え、なんかめっちゃいい匂いするぅ〜。」
「マジだ。あ?誰オマエ等。」

オマエ等こそ誰だよ、と言いかけて慌てて飲み込んだ。

「初めまして、私達1年生です。」
「何コイツら、クソ雑魚じゃん。」
「悟、思っても口にしてはいけないよ。」
「ウケる、2人とも煽ってるし。」
「ちょっとみんな黙ってて!」
「何この1年、クソ生意気じゃん。」
「え、悟ってあの五条悟!?やばっ、実物かなりイケメンじゃん!超タイプなんですけどぉ!」
「おい、マリン!浮気かよ!」
「えー、浮気じゃないよぉ!私にはトモくんだけだよっ!」
「俺もマリンだけだから。」
「トモくんっ!」
「マリン〜!」

ああ、これウザい奴だ。私たち4人の目は死んでいた。



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