しゃけ、いくら、明太子!


硝子が煙草から戻って来ると、私の部屋で4人で桃鉄をした。さっき買っておいたお菓子やジュースを持ち寄って、その日は眠たくなるまで桃鉄をした。さすがに99年はやり切れなかったので、また集まってやろうと約束を取り付けると、3人は自分の部屋に戻っていった。自分の部屋のお風呂に入って、ベッドにぼふんと身を委ねる。そういえば、もう恵生れてるよね。パパ黒に恵に会いたいって言ってみよっかな。…あれ、ちょっと待って、恵ママは…?ドクン、と心臓が重たくなった。携帯を操作してパパ黒に電話を掛ける。すぐに繋がった。

『どうした。』
「甚爾様…、ちょっと聞きたいことが、」
『…ん。』
「…奥様は、お元気ですか?」
『…。』
「…あの、」
『…元気だ。』

…なんだろう、凄く違和感。恵ママが亡くなったことについて何も情報がなかった気がする。今恵何歳だ…?もしかしてもう伏黒恵になった?

「甚爾様、恵君は元気ですか?」
『…ああ。』
「今度会いに行ってもいいですか?」
『…ああ。』

なんとも歯切れの悪い返事だ。…やっぱり恵ママはもう亡くなっているのかな…。そう思うと目頭が熱くなった。

『理玖、』
「っ、はい。」
『…いや、何でもねぇ。じゃあな。』

電話が切れた。恵ママも救いたかったのに、遅かった…。ごめんなさい、恵ママ。恵ママが亡くなって、パパ黒はもうそろそろ伏黒家に婿に入るはず。そして恵は伏黒恵になって、津美紀ちゃんも…。パパ黒はまた術師殺しの仕事を再開するんだろうか…。となると星蔣体任務についても策を練っておかないと。あとは…羂索は祓ったから、津美紀ちゃんが羂索にマーキングされることはないはずだけど、八十八橋の呪いは防いで、宿儺の指も…、

「はぁ…やること増えて来たな…。」

その日私は眠れない夜を過ごした。


次の日、目の下にできた隈を化粧で誤魔化して、硝子と一緒に教室に向かう。

「今日は理玖に単独任務だ。」
「え、私だけですか?」
「ああ。」
「着いて行っちゃだめなの?」
「私達に任務がないなら、一緒に行っても問題ないですよね。」
「いや、先方からの依頼だ。すまんがオマエ達は実技の時間になる。理玖、悪いが移動しながら任務内容を確認してくれ。急ぎの案件だ。」
「はーい。じゃ、行ってきます!」

任務概要の書かれたプリントを手に駐車場に向かう。昨日と同じ補助監督の荒井さんが担当してくれた。後部座席でプリントに目を通す。…え、

「マジ!?」
「っ!?どうされましたか!?」
「あ、いえ、なんでもないです!」

車で2時間ほどで着いたのは、大きなお屋敷。そして表札には『狗巻』の文字。トドメとばかりに発生した好感度イベントに、私のテンションはダダ上がりだ。あぁおにぎり持ってくればよかった…!荒井さんに頼むか。私は財布から千円札を取り出して、荒井さんに握らせた。

「荒井さん、」
「え!?は、い、」
「すみませんが、コンビニでおにぎり買ってきて欲しいんですけど。」
「え?」
「ツナマヨおにぎりでお願いします!4つほど!あ、お釣りは荒井さんにあげます。あと急ぎで!」
「え、は、はい、わかりました。」
「じゃ、行ってきますね!」

屋敷の中に入ると、女中らしき人が私を迎えた。案内された部屋には布団に寝かされて唸っている女性。そして、その女性に縋りついて泣いている着物を着た小さな男の子。

「なんという呪言を?」
「…『嫌いだ』と、」
「分かりました。あなたは下がってください。」
「…よろしくお願いします。」

女中の姿が見えなくなると襖を閉めた。男の子が私を見上げる。その口には蛇の目。間違いなく彼は狗巻棘だ。めっちゃ可愛い!!!抱きしめたい!!!!けど今は命にかかわる事態だ!!セレクト。

【???が狗巻棘に呪われています。選択してください。選択すると呪力を50消費します。(残り呪力:160)】
【1.解呪する 2.跳ね返す 3.なにもしない】

「1番。」

【1.解呪する を選択しました。呪力を50消費しました。(残り呪力:110)】

女性の顔色が変わり、呼吸も安定したらしい。様子が変わった女性に、ショタ棘きゅんは安心したのかわんわん泣いていた。そっと隣に座って、ショタ棘きゅんの頭を撫でる。

「…あり、が、と、」
「どういたしまして。狗巻棘君だね?」

ショタ棘きゅん…全然略してないけど棘ピーが小さく頷く。可愛い!!!!食べたい!!!!誘拐したい!!!!!

「私は廻神理玖だよ。理玖って呼んでね。」
「…、(ふるふる)」
「私は大丈夫、呪言効かないから。ほら、呼んでみて?理玖だよ、理玖。」

私がそう言うと、棘ピーはごしごしと目を擦って、ぱちくりと瞬きをした。きゃわいいいいいいいい!!!!はああああああああああてえてえええええええええええええ!!!!!!!!!!!

「…理玖…?」
「ん゛んっ!!!」
「!!(おろおろ)」
「大丈夫!!!今のは呪言じゃないから!!」

可愛すぎる棘ピーに思わず吐血するとこだった…。いや、正直ちょっと口から垂れた。こりゃ可愛すぎる!!!!たまらずぎゅっと抱きしめると、棘ピーがぴしりと固まった。もう何から何まで可愛すぎて辛い…!!!!単独任務でよかった!!!夜蛾さんありがとう!!!!!

「棘君、私といる時はたくさんお喋りしようね。」
「…。(ぎゅ)」

ああああああ!!!!!これはたまらん可愛さ!!!!!!!神様仏様ありがとうございます!!!!!!

「廻神さん、買ってきました!」
「あ、荒井さん、ありがとうございます!彼と2人になりたいので、ちょっとお部屋移動しますね。」
「あれ、もう大丈夫なんですか?」
「はい、彼女はすぐ元気になりますよ。」

おにぎりの入った袋を受け取って棘ピーを抱っこするとぎゅっと首に抱き着かれた。ひぇえええええ!!!きゃわいいいいい!!!

「棘君のお部屋どっち?」

そういうと、棘ピーは部屋の方向を指さして案内してくれた。棘ピーの部屋に着くと、そっと棘ピーをおろして座る。ちょこんと座った棘ピーが可愛すぎる何この子。腕に引っ掛けていた袋を開けて、おにぎりを取り出すと、棘ピーはきらきらと目を輝かせていた。思わず吐血しかけた私は頑張って飲み込む。

「おにぎり好き?」
「!!(こくこく)」
「今は私しかいないから、喋って大丈夫だよ。」
「…おにぎり、好き!」
「はぁぁあああかわいいいいい!!!」
「!?」

天を仰いだ私。ツナマヨおにぎりの包装を開けて、棘ピーに渡した。

「ツナマヨおにぎりなんだけど、好き?」
「すき!!」
「好きなだけ食べて!!!」

両手でおにぎりを持って嚙り付く棘ピー可愛すぎワロタ。携帯を取り出して棘ピーがおにぎりを食べる姿を写真に収める。可能な限り連写した。そして動画も録った。早くスマホになってくれ、時代よ!!!私は今!!棘ピーのムービーをいろんな角度から録りたい!!!!スマホで連写したい!!!!

「…美味しい?」
「うん!」
「良かった!」
「…理玖…ありがとう。」
「どういたしまして。」

もきゅもきゅとツナマヨおにぎりを頬張る棘ピー。ありがとう世界!!!ありがとう神様仏様!!!!ありがとう狗巻棘!!!!

「棘君、何があっても私は棘君の味方だからね。」

私の言葉に、棘ピーは目を潤ませて、こくんと頷いた。抱きしめて額にキスをすると、ぼふん、と真っ赤になる棘ピー。はあああマジで…あああああ…連れて帰りてぇえええ…!!!!!!

【狗巻棘との親密度が100%になりました。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:116)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】

2個目のツナマヨおにぎりを開けて渡すと、私も一緒におにぎりを食べた。2人でもぐもぐして、時折会話を挟む。

「棘君は今までどうやって会話してたの?」
「…文字、書いた。」
「そっかー。あ、おにぎりの具でしゃべるのはどう?しゃけとかいくらとか、」
「…しゃけ…。」
「例えばしゃけ、がはい。おかか、がいいえ。とか!」
「…しゃけ!」
「うん、いいね!」
「ツナマヨ?」
「ふふ、棘君可愛い!私以外の人と話す時は、それでいこう!」
「しゃけしゃけ!…明太子!」

ぎゅうっと抱き着いてきた棘ピーを抱きしめ返す。私を見上げる棘ピー。今度はほっぺにキスをした。

「!!!」
「棘君大好き。」
「…理玖…す、好き…。」

真っ赤な顔でそう言った棘ピーに、私は満足げにもう一度抱きしめた。



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