「やだやだやだぁあああ!!!」
「廻神さん、困ります…!」
私は絶賛駄々っ子中だ。任務で狗巻家に呼び出された私は、意図せず呪言を使って自分の母親を呪ってしまった棘ピーに出会った。無事に解呪して棘ピーとの好感度イベントも終わり、棘ピーとのツナマヨおにぎり交流会も終わって、高専に戻ることになった私。棘ピーが私にぎゅっとしがみ付いて離れない。私も棘ピーを抱きしめて離れない。かれこれ1時間以上膠着状態が続いているのだ。だってこんなに可愛い棘ピーと離れるなんて無理じゃない?!?!?!?!え、むしろ離れられる人いるの!?!?いるなら頭おかしいんじゃね!?!?!
「…ツナマヨ…、(しゅん)」
「ひぇえ…きゃわよぉ…!」
「…明太子…!!(ぎゅううう)」
「荒井さん私今日からここに住みます。」
「真顔で何言ってるんですか。」
「こんなに可愛い棘君と離れるなんて無理です、私この子育てます。」
「しゃけしゃけ!!!!(すりすり)」
「はぅっ…!」
さっきから心臓を撃ち抜かれてばかりだ!!!ちょっとわざとやってんの!?もしかしてわざとそんな可愛いことして私を引き留めてんの!?やだああ小悪魔じゃあああああん!!!!!
「小悪魔だろうが大悪魔だろうが許せる可愛さ…!!!」
「高菜?」
「うん、ただの天使だったわ。大天使トゲエルだったわ…。」
「廻神さん…、」
「やだやだやだぁ…!もう棘君連れて帰るぅうう!!」
「しゃけしゃけ!!(ニコニコ)」
「廻神さん…。」
荒井さんが凄い引いた顔で私を見ている。そんな顔したって棘ピーが可愛すぎるのが悪い。棘ピーしか勝たん。
「…あの、廻神理玖様、」
「あ、棘君のお母さん、元気になって良かったです。」
「この度はありがとうございました…。」
「いえいえ、なんとかなって良かったです。」
「…はい。…あの、またいつでも棘に会いに来てください。この子、いつも一人ぼっちで、」
「…こんぶ…。」
「いいんですか!?出来ることなら毎日通いたいですけど!?というか棘君を育てたいくらいなんですけど!!!」
「育て…?」
「あ、いえ、何でもないです。」
「…棘も、あなたに懐いているようですし、お時間ある時ならいつでも構いません。」
「やったあああ!!」
「しゃけしゃけ!いくら!!」
「うんうん、私も棘君大好きだから、絶対また会いに来るからね!!!」
「すじこ!(ちゅ)」
「ごふっ…!」
「廻神さん!?!?」
棘ピーから…!!!棘ピーから…!!!唇にちゅーされたあああああ!!!!あまりの破壊力に吐血してしまった私。
「お、おかか…!高菜!?(おろおろ)」
「違うの、棘君が可愛すぎて、発作が…、」
口元を拭って棘ピーを抱きしめる。うぅ…なんという破壊力…これが呪言!?(違います。)棘ピーが私の耳に両手を添えた。
「…理玖…好き、」
「ぴぇ…、」
「…大人に…なったら…結婚、して?」
「する。」
「明太子?」
「棘君早く大人になって!!!」
「しゃけ!」
にっこり笑った棘ピーに私の心は浄化されていく。はあああマジでてえてええええええええ…!!!
「廻神さん、ホントにそろそろ…、」
「…うぅ…分かりました…。ごめんね棘君、また必ず会いに来るからね?」
「…しゃけ…。」
「あぁああんそんな顔しないでよぉおおお!!!」
「ツナマヨ、(にやり)」
このやり取りが20回くらい続いて、私は荒井さんに引っ張られて泣く泣く狗巻家を後にした。別れ際に私に手を振る棘ピーが可愛いのなんの。何枚写真撮ったか覚えてない。暫く棘ピー待受け確定だ。車に乗って高専に戻ると、報告書を書く為に教室へ戻った。教室には硝子がいた。
「あれ、硝子1人?」
「あ、お帰り理玖。何の任務だったの?」
「呪言師の末裔が意図せず呪言使っちゃって、その解呪。」
「マジか。」
「見て、この子、棘君って言うんだけどめちゃくちゃ天使でさ、可愛すぎて連れて帰りたいくらい。」
「…何歳?」
「3、4歳くらいじゃないかな?歳まで聞いてなかったけど、そのくらいだと思う。」
「めっちゃ可愛いじゃん。」
「大人になったら結婚してって言われた。可愛すぎて無理、しんどい。」
「ウケる。前にも子供相手に言われたって聞いたけど。」
「あ、憲紀君のことかな?加茂家の子だよ。正妻に迎える!!って言ってた。あの時2歳くらいだったと思うけど、難しい言葉良く知ってるなって思ったわ。」
「子供にもモテモテじゃん。」
「一夫多妻ならぬ一妻多夫制になって欲しい。全員私の旦那にする。」
「こわ。」
報告書を書き終えると、暇だという硝子と一緒に教員室に報告書を提出しに行った。今日は特に授業もなく、体術の実技と自習だったらしい。
「悟と傑は?」
「さあ?映画でも見てんじゃない?」
「硝子これから何する?」
「やることないし出掛けようかな。理玖も一緒に行く?」
「え、久しぶりに硝子とデート?行きたい!!!」
「まだ15時だし、制服のまま行くか。」
「行こ行こ!え、どこ行く?」
「新宿とか?」
「いいね!」
硝子と一緒に高専を出ると、最寄り駅までタクシーに乗った。そこから電車で新宿へ。新宿駅周辺をブラブラ買い物していると、チャラ男が2人、前から歩いてきた。そしてチラチラと視線を感じたので、硝子の手を取って指を絡める。
「理玖?」
「ナンパ避け。」
「…ああ、あれか。」
「私の硝子を見るなチャラ男共め。」
「何ポジ?」
「硝子は私の親友であり彼女であり嫁よ。異論は認めない。」
「いや、多すぎでしょ。」
案の定、チャラ男は一度私達の横を通り過ぎて、後ろから声を掛けてきた。私と硝子は無視して歩き続ける。男の1人が硝子の肩に手を伸ばしたのが横目に見えて、硝子の腕を引き寄せた。硝子を背にしてチャラ男達を睨みつける。
「さっきから鬱陶しいんですけど。」
「なんだ、聞こえてんじゃん。」
「アンタ達に興味ないから。さっさとどっか行って。デートの邪魔。」
「女同士でデートしてんの?俺達も入れてよ。」
「4人の方が楽しいよ〜?」
「は?その耳飾り?」
「もしもし五条?今どこいる?」
「は?何、助け呼んでんの?」
「今、オマエ等の後ろにいる。」
「「!!」」
「私達も混ぜてもらおうかな。ん?」
悟と傑がチャラ男の肩をがしりと組んだ。大男2人が突然現れたことにチャラ男達は顔を真っ青にしている。
「硝子がもっと早く連絡してくれたらよかったんだけど。」
「2人とも新宿にいたんだ?」
「映画見てた。」
「ミミズ人間2。」
「うげぇ。」
「で、こいつら何?ナンパ?」
「そ。邪魔だから捨てといて。」
チャラ男2人は悟と傑がボコボコにした。その間硝子と2人で夜ご飯を食べるお店をサーチする。
「夜何食べる?」
「俺ラーメン食べたい。」
「いいね。近くに天上一品があったはずだよ。」
「ラーメンか。久し振りに食べたいかも。」
「じゃあラーメン行こう。」
チャラ男をその辺に転がしてラーメン屋に向かおうとした時、チャラ男の1人が最後の抵抗とばかりに私に殴りかかってきた。それをさっと避けると勢いのまま男は地面に突っ込んだ。
「おい、」
硝子がチャラ男の前に立つ。え、なんか硝子ちゃんキレてる?え、いつの間にメス出してんの!?いつから持ってたの!?
「私の理玖に手ぇ出したら、その粗末なもんちょん切るぞ。」
「ヒィッ!す、すみませんでしたああ…!!!」
チャラ男達が逃げていく。硝子はふー、と息を吐いてメスを仕舞った。悟と傑が爆笑している。私は硝子にぎゅうっと抱き着いた。
「硝子…!!!好きっ!!!!」
「はいはい、さっさとラーメン食べよ。」
私の背中を撫でる硝子。はぁああマジで硝子は頼りになる嫁だわ。ラーメン屋について、4人でラーメンを啜って高専に戻った。電車の中で満腹感と心地よい揺れに私はうつらうつらと船を漕ぐ。ふわりと香った香水の匂いと、抱き寄せられた肩。…誰だろう。落ち着く匂い。
「理玖…、」
誰かが私の名前を呼んだ。私は返事の代わりにその声の主に擦り寄ると、今度こそ眠りについた。