悪霊退散!


どうやって高専に戻ったのか覚えていない。パパ黒の言葉が耳に残っていた。

「…愛してる。」

あの生得領域でも言われた言葉。

「私も、愛してます。」

高専に戻る電車の中、1人呟いたことだけは覚えている。



高専に戻ると、補助監督と合流するために駐車場に向かった。今日は女性の補助監督だった。

「初めまして、今日担当する時田です。」
「廻神理玖です、よろしくお願いします。」
「早速向かいますので、乗ってください。任務概要も後ろに乗せてますので、確認お願いします。」
「はい。…あの、私1人ですか?」
「はい。五条さん、夏油さんも今日はそれぞれ任務に出られてます。」

そんなことあるんだ。車に乗り込んで任務概要を確認する。都内にある有名なお寺に供養に出された人形から呪霊が発生したらしい。階級は不明。マジか、不明とかあんの?何級相当とかじゃないんだ。お寺に着くとすぐに帳を降ろしてもらった。人払いも済んでいるらしい。聞いておいた人形の供養部屋に辿り着くと、より一層不気味な呪力を感じる。

「出ておいで、お人形さん。」

私の声に、ズシン、と音がした。大きな市松人形がゆらゆらと髪を揺らめかせていた。セレクト。

【???があなたを狙っています。選択してください。選択すると呪力を120消費します。(残り呪力:160)】
【1.すべて祓う 2.すべて供養する 3.すべて供養して祓う 4.なにもしない】

「皆、大事にされてたんだね。もっと、一緒にいたかったんだね。」

3番。

【3.すべて供養して祓う を選択しました。呪力を120消費しました。(残り呪力:40)】

「おやすみなさい、ありがとう。」

ドゴゴゴゴと轟音が鳴り、呪霊の頭上に大きな手が下りてきた。指の位置からして仏様の右手だろう。指先が呪霊の頭をトン、と突くと、人形呪霊は湯気を上げて消えた。人形の部屋を出てお寺の中を歩く。仏像を祀っている部屋を見つけて手を合わせる。

「仏様、ありがとうございます。」

帳も上がってお寺から出ると時田さんと合流した。どうやらもう1件任務が入ったらしい。マジかよ。

「五条さんと2人でお願いすることになりましたんで、現地で合流します!」
「そんなにヤバい任務なんですか?」
「いえ、ヤバいって言うか…その…、五条さんからのご指名でして…、」
「悟が?」

携帯を見てみると、悟から電話が何件も着ていた。メールも着ている。

『理玖今どこ?』
『おーい、理玖?』
『勝手にいなくなんなよ。』
『任務入った。』
『理玖も任務って聞いた。危ねぇの?何級?』
『何で返事しねぇんだよ。』
『大丈夫か?』
『理玖、返事して。』
『怪我してない?』
『理玖、頼むから返事して。』

悟のメールを読み終わって、すぐに電話を掛けた。電話はすぐ繋がった。

『理玖!!』
「ごめん、携帯見てなかった。」
『…ったく、心配させんなよ。』
「心配かけてごめんね、怪我ひとつしてないよ。悟は?」
『は?俺が怪我するわけねぇじゃん。』
「そうでした。」

くすくすと笑うと、悟が電話口で静かになった。どうしたんだろう。

『理玖、…なんかあった?』
「え?」
『…なんつーか、いつもと違う感じする。』
「あー…はは、いや、大丈夫、何もないよ。それより今向かってるんだけど、悟が指名したって何?任務内容知ってるの?」
『ああ、どうしても理玖が一緒じゃないと無理だからって頼んだ。』
「え、なにそれ。」
『着いたら話す。あとどのくらいで着く?』
「え、ちょっと待ってね。時田さん、あとどのくらいで着きそうですか?」
「スムーズに行けばあと10分くらいです!」
「ありがとうございます。もしもし、あと10分くらいだって。」
『分かった。…な、着くまで電話繋いでていい?』
「いいけど、どうしたの?もしかして、私と連絡取れなくて寂しかったとか?」
『うん。』
「まさか悟が寂しいなんて…え?」
『寂しかった。』
「…マジ?」
『マジ。』
「…え、あ、それは、その、すみませんでした。」
『後で覚えてろよ。ぜってぇ泣かす。』
「え、なにそれ怖い。」

そういうと、悟が笑った。私も小さく笑う。それから2人で他愛もない話をしている内に、次の目的地に到着した。車を降りると悟と荒井さんが立っていた。そしてそこは…、

「え、歌舞伎町?ラブホ?」
「すみません、廻神さん、五条さん。未成年のお2人をこんな場所に連れてくることになるなんて…。」
「あ、いえ、任務なので、」
「理玖、さっさと行こうぜ。終わったら理玖と2人で帰るから、先帰っててよ。」
「え、五条さん!?」
「廻神さん!」
「悟、ちょっと、私任務内容知らないんだけど!」
「俺が覚えてるから大丈夫。じゃ、必要ねぇと思うけど帳よろしく。」

悟に腕を引かれてホテルの中に入る。帳が下りる気配がして、私の腕を掴んだまま部屋を選ぶパネルを見ている悟を見つめた。私の視線に気付いた悟が、サングラスをずらしてニヤリと笑う。あ、眩しいご尊顔ですありがとうオブありがとう…!!!!

「ここ、飛び降り多いらしいよ。」
「だろうね。ホストと客がよく使うとこじゃん。」
「そ。だから顔のいい俺と理玖が来た。」
「顔がいいは余計だ。いや事実だけども。」
「折角だから一番いい部屋使おうぜ。」
「え?何使うって。」
「ん?言葉通りの意味だけど?」
「は、ちょ、」

エレベーターのボタンを押した悟に連れられ、その箱に入る。最上階を押した悟が鼻歌交じりに私を見た。

「理玖ってラブホ来たことあんの?」
「…まあ、前世で何回か。」
「マジ?俺初めてなんだけど。」
「ラブホ記念日が任務かよ、ウケる。」
「だから理玖にしたんじゃん。」

そう言って悟は私を壁際に追いやって、壁に腕をついた。こ、これは…肘ドンとかいう奴では…!?それになんかめっちゃ近いしいい匂いするしめっちゃ顔がいいし…!

「俺の初めて、また理玖にあげちゃった。」
「う、うん。」
「ウケる、顔真っ赤じゃん。誘ってんの?」
「そうじゃなくて、近い!!あといい匂いする!!無駄に顔がいい!!!」
「褒めるか貶すかどっちかにしろよ。」

エレベーターが最上階に着くと、悟に手を引かれて奥の部屋に入った。

「え、鍵持ってたの!?」
「理玖が来る前にホテル側から借りた。」

部屋の中は途轍もなく濃い呪力が満ちていた。これ1級案件か?悟が部屋の中をウキウキしながら物色している。こんな時によくそのテンションでいれるなぁ…。

「で、どうするの?もう祓う?」
「いや、誘き出してから祓うから、理玖は何もしなくていいよ。」
「誘き出す?出没条件ある系?」
「そ。お、すげぇ、ジャグジー風呂じゃん!理玖、これどうやって使うの?!」
「いやいやテンション。」

浴室に消えた悟を追いかけると、悟はジャグジー風呂を見て目を輝かせていた。いや可愛いかよ。お風呂の線を閉めて蛇口のハンドルを捻った。温度を調節しながらジャグジーのボタンを押す。浴室内のライトが点滅してしゅわしゅわとジャグジーが噴き出した。

「すっげ。理玖慣れてんの?」
「いや、そんなに使った事ないけど、ジャグジーはある所とない所があるよ。…ていうか何で服脱いでんの!?任務は!?」
「だから任務遂行中だっての。理玖も脱げよ。」
「え、ちょ!」

悟が私を後ろから抱きしめて耳に噛みついた。ピクリと震えると、舌先で耳の形をなぞられて小さく声が漏れる。

「ゃ、悟、なにして、」
「いいから、理玖は大人しくされるがままでいてよ。」
「ちょ、ぁっ!」

悟の手がスカートの中に入り込む。耳に甘噛みをしながら悟の手は私の太ももを撫でまわし、ガーターを引っ張ってペチンと弾いた。部屋の中に渦巻いていた呪力がより一層濃くなった気がする。顎を掴まれてキスをすると、舌が割り込んできた。舌を絡め合っていると低い女の唸り声が聞こえた。視線を動かすと、体の関節が歪に曲がった女の姿をした呪霊が立っていた。恐らく飛び降りた女達の呪いだろう。悟が一振りでそれを祓うと、部屋は嘘のように軽い空気に変わった。え、終わり!?呆気ないな!?

「じゃ、風呂入ろうぜ。」
「え!?ここで!?」
「だからジャグジー風呂入れたんじゃん。つーかやっぱ理玖のガーターエロいわ。」

サトルはそういうと、またぺちんとベルトを弾いた。



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