リアコ凸


ガリッ。

「意味わかんない、なんで私だけ弾かれるわけ?」

ガリッ。

「マジ意味わかんないし。あぁああムカつく!!なんなの、なんであんな女が大事なの!?」

ガリッ。

「こんなに悟君のこと愛してるのに、なんで私のこと見てくれないわけ?」

パキッ。噛んでいた爪が割れる音がしてハッとする。パソコンの画面には『入場できません』の文字。なんでなんでなんでなんで!!!

「…そうだ、裏垢で…、」

アカウントを切り替えて裏垢にしてる鍵付きのアカウントでログインする。…入れた。

『これ?これも紹介してって言われた品なんだけど、』

「悟君…、好き…はぁ…好き、」

『すごくいい匂いがするよね!寝室で使ってるんですけど、凄くリラックス効果があって、』

「テメェが喋んじゃねぇよ!!」

ダンッ、テーブルを蹴りつけるとパソコンがテーブルから滑り落ちた。

「あ、悟君!!ごめんね、悟君!!」

画面の中の悟君は私に優しく笑いかけてくれる。それだけで幸せ。けど、アイツが…アイツだけが邪魔だ…!!!!

『僕もこの匂い凄く好きなんだよね〜。』

「なに、それ何処の!?え、私も悟君と同じ匂い嗅ぎたい…!!」

すぐにスマホで商品名を検索してポチった。…結構高いけど、悟君と同じ匂いに包まれたいからこのくらい、

「あ?…誰だっけこれ、」

ふとスマホに届いたDMを開く。明日の19時、5万でどう?…5万か、安いな。もっと金出せよクソ。

「…いいよ、っと。適当に貢がせればいっか。あ、ていうか今のも買ってもらえばよかった!!」

いやでも悟君と同じものは自分のお金で買い揃えたいし、

『お兄ちゃん、そろそろパック外していいよ?』
『あ、忘れてた。』

「あ、悟君のご尊顔!…いやぁああ今日もカッコいい…好き…!!」

『すごいお肌しっとりすべすべだよ!』
『ホントだ〜、馨のほっぺもちもちして柔らかいねぇ!ちゅーしていい?』

「やめて!!ソイツに触んないでよ!!」

『ちゅーはやめてよ?!』
『照れちゃって〜、可愛い!皆もこのパック使ってみてよ!僕たちみたいにしっとりすべすべもちもち肌になるよ!』

「ソイツよりも私の方が可愛いし…!…パック買お。」

『時間余っちゃったね。質問コーナーでもする?』
『うん、いいよ。皆さん何か質問ありますか?』

「質問?…質問、悟君に読んでもらえるかも…、質問、…あ、」

キーボードを叩いて質問を投稿する。お願い、私の質問読んで悟君…。

『ん?あー、多分前も紹介したと思うけど、2人とも同じ石鹸使ってるよー。』
『○○ってやつです。匂いもいいし、髪の指通りが代わります!』
『ノンシリコンだし、おすすめ。匂い夜まで続くし、馨が髪結ぶ時とかフワッと匂いするからドキッてする。』
『汗かいた時も匂いが香ってきます。』
『そうそう、ベッドで汗掻いた時とかね?』

「は?」

『お兄ちゃんの言い方だと語弊を生むからやめて!』
『え〜?事実なのに?』
『言い方!!』

「なに、ベッドで汗掻いた時って、は?何?兄妹でしょ?」

もう一度キーボードを叩いて、さっきとは違う質問を投げた。

『え?兄妹でどこまでシたのかって?』

「読まれた!!!悟君が読んでくれた!!」

『どこまでシた?何を?』
『馨ったらとぼけちゃって、可愛い〜!』

「お願い、何もシないで…!!!」

『さぁね、どこまでシたと思う?』

ニヤリと笑う悟君。その顔もカッコよくて好き。けど、

『たとえ僕と馨がヤることヤってたとして、それを言ってどうなるの?野暮な質問やめてよね〜。』
『お兄ちゃん、』

「…ヤることヤってたとして…?」

『兄妹なんだから、その辺ちゃんと弁えてるよ。ま、僕はいつでも馨とヤることヤりたいとは思ってるけどね〜。』
『な、なんて話してるの!?』
『馨〜大好き〜!!』
『わぁっ!!』

ガリッ。


...



「えっと、苺みるくちゃん?」
「そうです!たむたむさんですか?」
「そうです。じゃ、行こうか。」

次の日、時間通りに待ち合わせ場所に向かった。たむたむは今日のパパ。

「ホントに大学生?高校生かと思ったよ。」
「大学生です!よく高校生に間違えられるけどね。」

嘘。本当は高校生。パパと食事をして、お金を受け取って帰るだけの簡単なバイト。こんなに簡単に5万も稼げるんだから最高。

「ねえ、この後どう?」
「えー、」
「着いてきてくれたら、プラス5万出すよ。」
「でもぉ、」

クソ、めんどくせぇな。別について行ってもいいけど、悟君の配信見たいし、

「ごめんなさぁい、レポート提出近いから、今日は帰るね?」
「そっか。じゃあまたね。」

パパと別れて駅に向かう途中、悟君らしき人物を見かけた。え、嘘、マジ!?だって、あの背の高さと髪色とオーラからして間違いないよね!?

「運命じゃん…!」

悟君の後を追いかける。…やっぱりあの女もいた。悟君と手繋いでるし、なんなのマジで。ていうかこんな時間に何でこんなとこにいるの?!配信は!?

「え、もしかして今から!?」

スマホに通知が来て急いで開く。本垢ではまた入場できなかったから、裏垢で入った。数メートル先にいる悟君が画面の中で話してる!凄い!!ヤバい!!

『るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆のお兄ちゃん、悟だよ!』
『お疲れサマンサー!皆の妹、馨です。』
『今日は僕たち外にいまーす!なぜかというと、久し振りの心霊スポット巡りだよ〜!』
『今日は、タクシーで回れる心霊スポット巡りがあると聞いて、撮影許可を頂きました!』
『撮影協力してくださるのは、○○交通さんでーす!よろしくー!』

え、タクシー!?タクシー探さなきゃ…!あ、いた…!

『それじゃあ早速出発するよー!』
『よろしくお願いします。』
『どうぞ、』

悟君がタクシーに乗った。私もタクシーを止めて乗り込む。

「あの、前のタクシー追ってください。バレないように!」
「え?あ、はい、」

『まずはこちらの同意書にご記入をお願いします。』
『うわぁ、本格的だねぇ。何か起きても自己責任ってやつ?』
『え、ホントに何か起きるんですか?!え、やだ、怖い、』
『大丈夫、僕がついてるからねっ。』

悟君今日もカッコいい…!!けどその女に触んないでよ…!!!

『では、出発します。最初にご案内しますのは、―――…、』

悟君の乗ったタクシーを追いながら配信を見る。あの女が怖がる度に悟君が引っ付いてるのがホントに癪。ガリッ。

「お客様…、メーター上がってますけど、大丈夫ですか?」
「お金あるからいい。いちいち話し掛けないで。今大事なところなんだから。」
「…あの、何か犯罪に纏わる様な事でしたら、当社は関わることができないので、」
「うるさいわねっ、違うわよ!!」
「ひっ、失礼しました。」

配信が終わると悟君がタクシーを降りた。あの女も。タクシーはコンビニの駐車場に停まっていた。

「降りる。いくら。」
「は、はい、」

タクシー代はパパに貰ったお金で支払った。半分以上使ってしまったけど、悟君とお近付きになれるチャンスだから仕方ない。タクシーを降りてコンビニに入る。悟君もコンビニいた。デザートコーナーを見てる。可愛い。待って、あの女は!?もしかしてトイレ!?え、悟君今1人じゃん!近付くチャンスじゃん!悟君がデザートに手を伸ばした時、私も同じデザートに手を伸ばして手が当たって、ドキッみたいな!!

「お兄ちゃんお待たせ!」
「ん。」

クッソがああ!!!なんで今!?もしかして今の素の悟君!?やだぁレアだったじゃん!!!

「馨どれ?」
「んー、これ!」
「やっぱり?馨が好きそうって思ってた。」
「お兄ちゃんはこれ好きそう。」
「当たり。さすが、俺のことわかってんじゃん。」
「えへへ。」

こうなったら無理やりにでも近づくチャンスを。

「あ?何アンタ、さっきから。」
「え!?」
「お兄ちゃん?」
「配信中もずっとタクシー追ってきたよな。ストーカーか?」
「ちが、」

嘘、気付いてたの…!?てことはずっと私のこと見ててくれたってこと!?嬉しい!!!

「なに?なんか言えよ。」
「ちょっと待ってお兄ちゃん、」
「馨は危ねぇから下がってろ。」
「ふぁ、ファンです!握手してください…!」

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