告知:仲良し兄妹から重大発表あるよ!!


「ふぁ、ファンです!握手してください…!」

目の前の女はそう言った。

「ありがとうございます!」

馨がにっこりと笑った。いつも通りかわいい。けど、俺たちのファンだという女は、ずっとの俺の顔だけを見て馨に一切視線を向けない。…コイツ俺のファンかよ。めんどくせ。

「何で追いかけてきたわけ。」
「その、たまたま見かけて、声を掛けようとしたら配信が始まっちゃって、」
「ふーん、」
「お兄ちゃん、」
「だからって追いかけていいわけないよね。これじゃあ付きまといだよ。いくらファンとは言え、節度守んないと。次はないから。」
「…ごめんなさい、」
「馨行くよ。」
「え、握手しないの?」
「いいよ、めんどい。」

俺と馨の分のデザートを手にレジに並ぶ。女もついてきた。会計を済ませて、さっき乗ったタクシーに戻ると、女は慌てて追いかけてきた。

「あの方は、」
「気にしないで行って。」
「お兄ちゃん、さっきからどうしたの?ファンの人なのに、」
「アイツ、多分昨日配信中に通報したやつ。」
「え…、」
「適当に走ってから、歌姫の車に合流して帰る。」
「…うん、分かった。」
「運転手さん、とりあえず適当に走って。」

歌姫にLIMEで前のマンションに迎えに来るように伝えた。女はさっき同様タクシーで後を追ってきたらしい。

「動画録るか。証拠になるし。」
「でも、」
「いいから、こういう奴らは痛い目見ないと学習しねぇの。」

タクシーの中で動画を回しながら、女の乗ったタクシーを撒くように伝える。それでも尚、後ろのタクシーは着いてきた。

「ずっと追ってくんじゃん、なにしてぇんだよ。」
「ねぇ、どうするの?このままじゃ帰れないよ。」
「大丈夫、俺が何とかするから。運転手さん、とりあえずこのまま警察署行ってくれる。」
「あ、はい。大丈夫ですか?」
「なんとかするよ、迷惑かけないから。」

タクシーが警察署に入ると、流石に諦めたらしい。あの女が乗ったタクシーはそのまま警察署を取り過ぎた。

「めんどくせぇ。」
「…歌姫さんに迎えに来てもらう?」
「いや、まだ近くにいるかもしれねぇし、このまま前のマンションに行こう。」

前のマンションの住所を告げて、少し様子を見て警察署を出た。前のマンションに着くと、料金を支払ってタクシーを降りる。周囲を警戒しながら馨の手を引いて歌姫の運転する車に乗った。

「遅かったわね、」
「ストーカー並みにしつこかった。流石に警察署に入ったら逃げたっぽいけど。」
「今後は外の配信控えた方がいいわ。2人とも目立つし。」
「うん…。」
「馨、大丈夫か?」
「…うん、大丈夫、」
「暫くは私が代わりに買い物に行くから、学校以外はなるべく出歩かないように。ランニングも暫く控えた方がいいかも。」
「めんどくせぇ。」
「通報したアカウント、後で送って。こっちで調べるわ。」

部屋に帰ると一番に馨を抱き締めた。馨のストーカーの件だってまだ2週間近く前の話だ。

「馨、一緒に風呂入るか?」
「…うん、入る。」
「…可愛い。」

俺に抱き着く馨の髪に鼻を埋めて大きく息を吸い込む。お揃いのシャンプーの香りがしてフッと笑った。

「ほら、さっさと風呂入って寝ようぜ。」
「うん。」

馨と一緒に風呂に入って、これでもかってくらい優しく抱いた。付きまとい女のせいで夜も遅くなったし、2回で我慢した。次の日、学校に向かうまでに歌姫にあの女のアカウントを送った。馨は少し落ち込んでるように見えたから、手を握ってこれでもかってくらい抱きしめた。

「アンタ達くっ付きすぎよ!!」
「いっそのこと公表する?」
「え?何を?」
「付き合ってまーすって。」
「えぇ!?」
「ダメに決まってんでしょ!!」

ギャーギャー騒ぐ歌姫を無視して馨にキスをする。学校に着くと馨を教室まで送って、自分の教室に入った。

「はよー。」
「おはよう。」
「おはー。昨日配信見たけど、タクシーで心霊スポット巡りできるんだね。」
「私も初めて知ったよ。楽しそうだった。」
「その後がクソだるかった。」
「またなんかあった?」
「傑が教えてくれたアカウントあったろ。馨のこと邪魔とか言ったやつ。」
「ああ、いたね。」
「なんだっけ、みるくとかいう奴?五条のガチ勢でしょ?」
「多分ソイツ。昨日配信中ずっと追いかけてきた。」
「マジ?」
「それで?」
「何とか撒いたけど、しばらくは外出控えるわ。」
「マンションの近くをパトロールさせようか?」
「そんなのここにいますって言ってるようなもんだろ。逆に怪しすぎる。」
「そうでもないよ。不審者が出たからってパトロールを強化することはよくあるからね。相手の顔が分かるなら尚更警戒しやすい。」
「あー、そういや動画に録った。あとで確認して顔映ってたら送るわ。」
「そうしてくれ。」
「人気者は大変だね。馨は大丈夫だった?」
「落ち込んでる。」
「早く解決させなきゃね。」
「ああ。」

その日の放課後、帰りの車の中でふと思い立ったことを提案してみた。

「オフ会ぃ!?危険よ!」
「だからこそさっさと捕まえなきゃだろ。」
「でも、もし他のファンの人を巻き込んだら…、」
「傑に協力頼めば、警備の強化もできるし問題ねぇよ。」
「…でも、」
「大丈夫、俺のこと信じろ。」
「…うん、」
「…歌姫、会場とか諸々オマエに頼むわ。」
「…分かったわよ。ていうか、オフ会って何するわけ?」
「ん?俺と馨のラブラブ度を見せつける。」
「それ、相手を煽ることになるんじゃ、」
「だからこそだろ。煽った方が見つけやすい。ああいうヒス女は煽って逆上した方がボロ出しやすいんだよ、歌姫みたいに。」
「誰が!!ヒス女よ!!誰が!!」
「こっわ。」

「るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆のお兄ちゃん、悟だよー!」
「お疲れサマンサー!皆の妹、馨です。今日は皆さんに重大発表があります!」
「何と、僕たちるんるんチャンネルのオフ会を開催することが決定したよー!」
「会場や日時などの詳細については、現在調整中なので、もう少し待っててくださいね!」
「オフ会当日は、握手会と撮影会もやろうかなって話になってるから、皆是非参加してねー!」
「あと参加者には私達からプレゼントもあるので、出来ればたくさんの人に参加してもらえたら嬉しいです!」
「詳細は決まり次第、動画とジュイートで報告するよー!沢山の参加待ってるからね!お疲れサマンサー!」
「お疲れサマンサー!」

Jwitterに告知動画を貼ってジュイートをする。すぐにフォロワーからの反応が来た。うまいこと餌に引っ掛かってくれることを願って、俺はニッと笑った。

『西中の虎:@るんるんチャンネル マジで!?馨ちゃんに会えるじゃん!!絶対行く!!』
『恵:@るんるんチャンネル 絶対行きます。』
『おにぎり:@るんるんチャンネル しゃけしゃけ!すじこ!いくら!!!(((o(*゚▽゚*)o)))』
『モブ美:@るんるんチャンネル 絶対行きますなにがなんでも行きます2人に会いたい!!!』
『モブ子:@るんるんチャンネル え、悟君と馨ちゃんを生で見れる上に握手までできるの…!?行くっきゃねぇええ!!!』
『直哉ちゃんねる:@るんるんチャンネル 勿論俺は特別席やんな?』
 『るんるんチャンネル:@直哉ちゃんねる は? 悟』
『傑:@るんるんチャンネル 参加するよ。』
『73:@るんるんチャンネル 参加します。』
『モブ佳:@るんるんチャンネル 地方民だけど絶対参加します!!バイトでお金貯める!!!』
『パンダ:@るんるんチャンネル パンダも参加できんのか?』
 『おにぎり:@パンダ ツナマヨ?おかか…?』
 『パンダ:@おにぎり パンダに優しい世界はよ。』
『呪いの王:@るんるんチャンネル オフ会とは何だ。よく分からんが参加してやってもよい。』
『脹相:@るんるんチャンネル 馨に生で脹相お兄ちゃんと呼んでもらえるというわけか…!!!いくぞ!!!』
『硝子:@るんるんチャンネル 参加ー。』
『モブ代:@るんるんチャンネル 仕事休んででもいきます!!!詳細決まったらすぐ休み取ります!!』
『伊地知潔高:@るんるんチャンネル 是非、参加します。楽しみです。』
『苺みるく:@るんるんチャンネル 絶対行きます!すっごく楽しみ♡♡♡』
『はいばら:@るんるんチャンネル 僕も行きまーす!』
『野薔薇様:@るんるんチャンネル 行く!!!馨さん大好きです!!!』
 『西中の虎:@野薔薇様、@恵 3人で一緒行こうぜ!』
 『恵:@西中の虎、@野薔薇様 ああ。』
 『野薔薇様:@西中の虎、@恵 もち。』

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