妹ラブなお兄ちゃんに、日頃の感謝を込めてバレンタインチョコを作ってみた!Part1


「じゃ、行ってくるわ。」
「はーい、いってらっしゃい!」

世間はお正月も終わり、今日は2月11日の土曜日。お兄ちゃんは朝から傑君の家に行った。というか、私が傑君に頼んでお兄ちゃんを部屋から連れ出してもらった。2月に入ると大きなイベントが2つある。1つは節分に傑君の誕生日、そしてもう1つは…!

「るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆の妹、馨です!今日は「みゃおん!」あ、ごじょにゃんもいま〜す!よいしょっ!」

足にすり寄ってきたごじょにゃんを抱っこして、カメラにその顔を見せてあげる。今日は私が1人で撮影をする日だ。というより、1人で撮影したくて傑君にお兄ちゃんを頼んだ。そして私が今いる場所は、キッチン!ごじょにゃんが私の頬をザリザリと舐める。

「ちょ、ごじょにゃん擽ったい!」

ごじょにゃんを撫でながら今日の動画撮影についてを語った。

「今日はどうして私だけかと言いますと、皆さんもう、2月になりましたよね…!2月といえば節分と…??そう!バレンタインデーがありますね!今日の動画は、【妹ラブなお兄ちゃんに、日頃の感謝を込めてバレンタインチョコを作ってみた!】いえーい!」
「なぁおん?」
「というわけで、今日はお兄ちゃんには内緒でバレンタインチョコを作ろうと思います!お兄ちゃんは傑君に頼んで連れ出してもらいました!そして今日のアシスタントは!」
「どーもー。」
「もう皆さんお馴染みの、幼馴染の硝子ちゃんでーす!」
「アシスタントってなにするの?」
「えっとねぇ、レシピを読み上げて貰ったり、なんか質問?とか?」
「あー、了解。なに作るの?」
「はい、今日作るのはお兄ちゃんも大好きなガトーショコラと、生チョコサンドクッキー、それから…マカロンです!」
「凄い作るね?」
「でも絶対足りないって言われる…ふふっ、絶対言いそうじゃない?」
「アイツなら馨の手作りなら永遠に食べてそうだな。」
「ね〜??この前動画で作ったプリンも、次は寸胴で作ってって言われたの。」
「ウケる、糖尿病になるぞ。」
「ほんとにねぇ〜!?」

そんな前置きトークを終えると早速本編の撮影開始。抱っこしていたごじょにゃんを下ろして、服についたごじょにゃんの毛をコロコロで綺麗に取ってエプロンを付けた。手をしっかり洗って材料をキッチンテーブルに置いていく。計量をしながら硝子ちゃんとフリートーク。

「バレンタインといえば、今までで一番印象に残ったエピソードは?」
「え〜…、なんだろう…、あ!えっとねぇ、お兄ちゃんがやっぱりモテるから、」
「ああ、性格はクズでも顔があれだからな。」
「そう!」
「そう。」
「それで…えっとね、何年生だったかな…、今もそうなんだけど…ていうか毎年??トラック1台分くらいチョコ貰ってて、」
「ああ、あったな。」
「もうあれ、家のお手伝いさんに頼んで…あ、その頃は両親も日本にいたから実家にお手伝いさんがいっぱいいたんだけど、じいやに、」
「待ってじいやって…あー、いたね?」
「そう、じいやに車大きいので来てって電話して、トラックで学校まで来たの!あ、ヤバい、零れた、」
「思い出した、中等部の2年くらいの時だ。」
「あ、そう、多分そのくらい!それで、じいやと他にも何人かお手伝いさんが来てくれて、お兄ちゃん宛てのチョコレート全部トラックに積んでくれて、私もお兄ちゃんよりちょっと少ないくらい貰ってたから、それも全部トラックに積めたの。あのあれ、工事現場でよく見かける大きいトラック!あれにてんこ盛り!もうね、走る度にぽろぽろ落ちるんじゃないかってくらいあって、でもお兄ちゃんはなにが入ってるか分かんないから無理って言って、そのままゴミ処理場に持って行かれちゃって、」
「ヤバ、あれ全部捨てたの?」
「うん、捨てられちゃったの。だから私ももうどうしようって思って、お返しも考えないとって思ってたのにもう誰がくれたのか分かんない!みたいな?でも多分全校生徒くれたんじゃないかってくらいの量だった。」
「まあ確かに、なにが入ってるか分からないのは分かる。夏油は刻んだ髪の毛入ってたことあるらしいし。」
「ねぇ!?あったね!?そういうのもあったから、申し訳ないけど諦めて、でもホワイトデーにはちゃんとごめんなさいの意味も込めて全校生徒にクッキーを配りました。」
「クッキー…。」
「でもあれだよね、硝子ちゃんと傑君には毎年渡してたよね。」
「うん。馨宛て以外は全部義理って言ってな。」
「そうそう、あははっ、言ってたね!」
「私らも学校の連中から貰うの無理だったな。親もうるさかったし。」
「そうなんだよね、うちのお母さんはいいじゃないって言ってたけど、お父さんは絶対ダメって言ってた。昔お父さんも髪の毛とかあと…これあの、凄い言っていいのか迷うんだけど、…毛?が入ってた事があったらしくて。」
「あー、下の毛?」
「そう、あとは爪?だから絶対ダメって言われて、それでぬいぐるみとかもあったけどよく触ってみたら、中になにか硬い物が入ってて、ぬいぐるみの中を見たらしいの。」
「うん。」
「そしたら盗聴器?みたいなのが入ってて、すぐに捨てたんだって。」
「ヤバ。」
「…はい、軽量終わりました!それじゃあまずは…ガトーショコラから作っていきます!」

計量を終えた材料を手順通りに混ぜ合わせながら、他にも印象に残ったバレンタインエピソードを語っていく。

「あとあれ、私とお兄ちゃんが体育館に呼び出されて、」
「あー、あれか。」
「わざわざ誰かが先生に許可取って体育館借りたらしくて、私とお兄ちゃんの前に長蛇の列。」
「あったな。」
「延々と告白されるんだけど、本当に一言も喋ったことない人からも告白されるし、高等部の人とかも混ざってるしでもう皆さんにごめんなさいって全部断りました。」
「ハハハッ、」

バレンタインデーのエピソードを語りながら、硝子ちゃんにレシピを読み上げて貰い、ガトーショコラはオーブンで焼く所まできた。次は生チョコサンドのクッキーを作って、焼き上がったガトーショコラと入れ替わりにクッキーを焼き、その間に生チョコを作って冷蔵庫で冷やす。そして最後はマカロンを作って、クッキーに生チョコをサンド。あとはトッピングの準備だ。生クリームも大量に泡立てておいた。

「はい、できましたぁ!」
「お疲れ〜。」
「めちゃくちゃ疲れたぁ〜!凄いいっぱい作っちゃった…。あ、硝子ちゃんにはアシスタントを務めてくれたお礼にこちらを…。」
「あはっ、ありがと。」

硝子ちゃんにはお礼に準備していたコーヒー豆と、ビターチョコが入った紙袋を渡して使ったものを片付けていく。洗い物をしながらも録画は続けているので、あとで編集で出せない部分はカットしないと…。片付けまで終えると、エプロンを脱いでスマホを準備。お兄ちゃんに電話をかけて呼び戻す!

「それじゃあ、お兄ちゃんに連絡してみます!」
「絶対夏油放置してすぐ帰ってくるね。」
「ねぇ、傑君に申し訳なさ過ぎるけど、…あ、もしもしお兄ちゃん?」

電話が繋がるとすぐにスピーカーにした。変なことを言われても、録画なので編集は可能だ。生配信だったらお兄ちゃんが爆弾発言したらヤバいし!

『んー、どうした?』
「まだ帰って来ない?」
『…え、なに、俺に会いたくなった?』
「うん、早く帰って来て。」
『傑俺帰る。』
『はいはい。』
「あ、もう帰って来るの?」
『傑の買い物に付き合っただけだし、もう終わってスタダで駄弁ってただけだし。』
『悟、トレイ貰うよ。』
『ん、サンキュ。』
「傑君も連れて来ていいよ、硝子ちゃんもいるから。」
『は?なんで硝子いんの?』
「実はね、ちょっとお手伝いを頼みまして。」
『なんの?』
「帰って来てからのお楽しみ!あと傑君にも渡したい物があるから絶対連れて来てね?」
『悟、もう出れるよ。』
『ん。え、傑になに渡すわけ?』
「帰って来たら分かるから絶対連れて来て!待ってるね!」
『分かった、すぐ帰る。傑、タクシー拾って。』
『はいはい。』
『馨、今なんか撮ってんの?』
「撮ってない。硝子ちゃんがいるだけ。」
『あー、わかった。すぐ帰るわ。渋谷だから……10分くらいで帰れるだろ。』
「はーい、気を付けてね。」
『ん、愛してる。』
「んふっ、はい、ありがとう…♡」

電話が切れて、硝子ちゃんの視線に苦笑い。スピーカーにしていたから今の会話は全部硝子ちゃんにも聞かれている。

「アイツ隠す気なさ過ぎでしょ。」
「ははは…、なんかもう慣れてきちゃった…。」
「まあ、私も夏油もガキの頃からで見慣れてるからいいけどさ。」
「すみません。」

お兄ちゃんが帰って来るまでにリビングのテーブルにテーブルクロスを敷いて、お皿に盛りつけたガトーショコラと生チョコサンド、マカロンを並べていく。ナイフとフォークも準備して、絞り袋にも生クリームを移しておいたし、ボウルにはまだたんまりと生クリームが残っている。カメラをリビングの入り口に向けて三脚にセットすると、お兄ちゃんが帰って来るのを待った。少しして玄関の開く音に、私は硝子ちゃんと一緒にクラッカーを構える。がちゃりとドアが開くと同時にパァン!とクラッカーを鳴らした。

「うおっ!?なに!?」
「ハッピーバレンタイン!お兄ちゃん、いつもありがとう!」
「…は?え?なに、撮ってんの?!」
「撮ってる!」
「……え、わ、すげぇ、え、馨が全部作ったわけ?!」
「全部作りました〜!」
「あ〜…もう、マジでそういうとこ…、」
「ぎゃあっ!ちょ、まっ、」

お兄ちゃんはカメラが回っているのにもかかわらず私をぎゅうぎゅうと力いっぱい抱き締めた。それだけで済むわけもなく、硝子ちゃんと、お兄ちゃんの後に続いてリビングに入って来た傑君の目の前で、顔中にちゅっちゅっとキスを落とされた。

「スト、ストップ!」
「俺の馨マジで最高!!!ん〜〜〜っま♡」
「んぅ〜〜〜!?!?!」

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